12月25日。世間は浮かれ、街は赤やら緑やらの装飾に彩られる。 俺にとってはもう見慣れた光景だが、彼女にとってはそうではない。 「すごいなツカサ!みんなキラキラだ!」 「あんまはしゃぎすぎんなよ〜」 息を白くしながら、彼女は辺りをキョロキョロと見回している。 「なあツカサ!アレ食べたい!」 「ターキーレッグか…まあクリスマスだしな。」 クリスマスにチキンを食うのは、日本で手に入りにくかった七面鳥の代用だという。メルヴァモンがそれを知っているのかはわからないが…まあ、俺もターキーは好きだ。 「ターキーレッグ…6本で。」 「それで足りるか〜?」 「ケーキもあるんだ。二人でこんだけありゃ十分だろメルヴァモン」 俺は今、予約していた5号サイズのケーキの箱を抱えている。そもそも今こうして二人で外にいるのも、これを受け取るためだった。 他人のことはあまり言えないが、食べ過ぎでは?とは俺も思う。 「早く帰ろうぜツカサ!アタシもう待ちきれない!」 そう俺に笑いかけるメルヴァモンは、イルミネーションだらけの街の中で、一際輝いていた。 ───────── 「ツカサは用意しといてくれ。アタシ…ちょっと着替えてくる」 「…?おお。」 最近、親父は家を空けることが増えた。元々やたらと忙しい上に旅行も好きな人だったが、なんというか…露骨に気を使われている気がして恥ずかしい。 その気遣いがありがたいことが事実であるのも、また一層恥ずかしい。 ともかく、俺は買ってきた食べ物をテーブルに並べていく。 ホールケーキってこれ…どうやって切ればいいんだ…? 「えへへ…ツカサ…こっち見てくれ」 「おお…!なんていうか…すごいな…」 いつの間に手に入れていたのかはわからないが、メルヴァモンはサンタクロースの衣装を身に纏っていた。 「に…似合ってるか?」 「ああ。とても。」 「よかった〜!……メリークリスマス、ツカサ。」 「メリークリスマス、メルヴァモン。」