「平和だねぇ……」
俺の名はWP-38号。
世界中の警察が俺に血眼。とぉころが、これが捕まらないんだなぁ。
ま、自分で言うのもなんだけど、狙った獲物は必ず奪う神出鬼没の大泥棒。
それがこの俺、WP-38号だ。
今日はおあしす団のしごともお休み。
相方のギリードゥモンと愛車のメンテでもしてのんびり過ごしてたんだが……。
ﾘｭﾐｰﾝ
ｽﾞﾊﾞﾊﾞﾊﾞ……
ﾊﾞﾛﾛﾛ……
なんだか騒がしい足音が聞こえてくるじゃねえの。

「てめえいい加減にしろっつったろうがコラァ!!!!」
「ひー！　お許しーーッ!!」
ﾀﾞﾀﾞドムゥ
「んﾞ！」

イカつい顔したあんちゃんが、でっけえ包丁振り回してナイスバディのお嬢ちゃんを追いかけ回してるじゃあないの。
「なんだぁ？」
それを見つけた俺達ゃ愛車に颯爽と乗り込み、楽しそうな追いかけっこを更に追いかけっこ。
「どっちにつく？「女ぁ！」」
「だろうな」
軽妙な会話を交わしてからの、愉快痛快追走劇の始まり始まりってなもんさぁ。

「何を勘違いしてたか知らねえがただのつまみぐいだ」
「あららぁあ」
「オレは下りるぜ」
……とまぁ、現実はそんなもんで。逃げてる嬢ちゃんがどこかのお姫様だったりしたら、
淡〜いなんとやらが始まっちゃたりなんかしちゃったりしてもおかしかなかったんだけどねこれが。
むしろ車で追っかけたこっち側が悪いみたいになっちゃってやんの。
とほほったらないぜこりゃ。

「ところでつまみぐい程度で包丁とは随分危なっかしいじゃないの。何か訳有りなら話くらいは聞いちゃうぜ？」
いつものようにノコノコ去っていくギリードゥモンを見送りながら話を聞く俺。
俺の目線はでっかいものに釘付けだ。
こいつはお宝だね。
「大した話じゃねえよ。料理人見習いが厨房から食材をギったから叱りつけてただけだ」
「あ〜らま」
本当に大した話じゃないでやんの。
ドメスティックな何かだったら解決してその後……とか考えてたのがばかみたい。

「ん？　てことはおたく、コックさん？」
「おう、まあな」
確かに、言われてみりゃあ真っ白な清潔な服を着ている。
今は被ってないが、コック帽を被れば立派な料理人に見えるだろう。
と、そう言われると腹の虫が鳴いてくらぁ。
お天道様も真上に差し掛かってるときた。
「何か注文してもいいかい？」
「カカカカ、構わねえぜ。こちとら店やってんだからな」
「そりゃまた気風の良いお返事で」
そういうことになった。

◆
「さて、今日のメニューは“肉丸面食(肉団子のスパゲティ)”だ」
「……ねぇ料理長、あの人ナントカ団の人じゃ……」
「以前もあったろ、今更だ今更」
「……。ま、そっか」

「まずは肉団子の下拵えをするぜ。タネに使うのは合い挽き肉と炒めた玉葱、韮、葱だ。そっちは任せる」
「りょーか〜い」
「次に肝心の麺だが、こいつはパスタマシンを使ってもいい。が、無いので……」
「手打ち麺！」
「えっ、それじゃほとんど拉麺みたいになるんじゃ……」
「何を。中華じゃ小麦を使ったもんは全部麺だ！　料理の仕方次第ですべてが変わるんだよ！　秋山の魔法を見せてやるぜ！」
「うおお、なんだか久々に中華料理じゃないから料理長が燃えてる……」

「ソースのベースはペースト状にしたトマトを使うぜ」
「無いならトマト缶でもいい」
「料理長ってよく“無いなら〜〜”言うよね。なんで？」
「そりゃお前……説明してるんだよ」
「誰に？」
「お前以外に誰がいんだ」ｶﾝｯ
「でっ」

「フライパンにオリーブオイルを馴染ませたら、火をかける前に大蒜を入れるぜ」
「それはなんで？」
「香りが油に移りやすくなる。逆に油を加熱したあとにいれると十分に香りが移る前に焦げるからだ」
「はえ〜」
「十分に火が通ったらトマトを投入し、水気が無くなるように中火で炒める。そこに岩塩、バジルを入れ味を整え、煮詰めるように弱火で火を入れる」

「さてその間に麺を茹でるぜ。茹で加減はアルデンテ、少し芯が残るくらいだ」
「食感のためとか？」
「いいや、仕上げに加熱して最後に芯を無くすためだ。ちなみにわざと完成まで芯を残す調理法は“貧乏人の食い方”とも言われるな」
「へぇ〜……なんで？」
「何度も噛むと満腹中枢が刺激されるんだよ、少量で満足するために芯を残すから、貧乏人ってわけだ」
「なんか言いがかり臭いね」
「まァな」

「──で、麺が茹で上がったから仕上げに入るぜ」
「肉団子は素揚げして火を通すと共に、表面をパリッとさせる」
「ソースに肉団子を投入し、麺をザルに上げ水を切り、フライパンに入れ、ソースに絡ませると同時に最後の水気を飛ばす！」
「強火で一気に仕上げるから間違っても焦がすんじゃねえぞ！」
「フライパンの中で粘り気が出るか出ねえかって所で更に盛り付けて完成了！」
「…………う〜ん？」
「さっきからどうした？」
「いやなんか、こう言っていいのかどうかなんだけど……」
「あァ？」
「簡単……だよね？　割と」
「まァなぁ」
「あれっ」

「スパゲティ料理はいくらかの差はあれど基本は　�@ソースを作る　�A麺を茹でる　�B合わせる　の三工程しかないんだ。だから簡単に見えるのかもな」
「あー！　それでか〜」
「市販のパスタソースなんかも茹でたパスタに絡めるだけだ。簡単っちゃ簡単だろうぜ」
「ふーん、あたしでも出来るかも」
「言ったな？　今度の『まかない』はお前がスパゲティ作れ」
「…………言うんじゃなかった」
◆

ちょちょいと目を向かわせてチラ見していた所、完成したらしくコックさんがこっちに料理を持ってくる。
いい匂いだぁ。ますます腹減ってきやがった。
「オラよ出来たぜ！　たらふく食いな！」
「まぁ〜ってましたぁ！」
「オレは乗るぜ」
いつの間にか帰ってきていたギリードゥモンも着席している。
こーいつぅ、いっつも調子だきゃいいんだから。
意趣返しとばかりに大皿に盛られたパスタをぐるぐる巻きにして多めにぶんどってやった。
フォークでカツカツやってるが遅いもんね。
へへーんだ、っとくらぁ。

「おんやぁ」
おっとこりゃ美味い。
いつぞやに相方と食った似たようなスパゲッティより幾分も美味いような気がするぜ。
味の秘訣は……。
「ん？　美味いか」
「そりゃ〜もう！」
「そうか！　カカカカーッ!!」
ニコニコ顔のコックさんからは盗めなさそうだ。
大怪盗にも盗めねえもんはあるのさ。
いや、盗まないほうがいいもんかね？

「ごっちそーさん！　いやぁ〜腹いっぱい食わせてもらいましたさ！」
「そうかそうか！　カーカカカ!!」
「オレは(溜飲が)下りたぜ」
さぁて、腹ごなしも済んだことだし……。
「じゃ、そゆことで〜」
「あ？」

「あらぁ？　言ってなかったっけ？　俺たちゃ泥棒。無銭飲食は義務なんです。さいなら〜」
「だっテメッ！　食い逃げたぁいい度胸だコラァ!!」
おっと最後に。
「困ったことがあったらね、いつでも言いな。おじさんは地球の裏側からだってす〜ぐ飛んで来てやるからな」
「いえ、別にいいです」
「ウチの店員ナンパしてんじゃねえよ！」
つれないねえ。
「金払えオラァァァァ!!!!!!!!」
「あ〜〜ばよとっつぁ〜〜ん!!」
「……なんて気持ちの悪い人だろう」

書き終えてから気づいたけどだいぶカリ城に侵食されてるような……
ご査収ください

早いって！これまたエミュが上手いしどうなってるんだ！
>「オレは乗るぜ」
乗った！？

うおおお久しぶりのャャャくん！ありがたい…

はえーよ！

>「……なんて気持ちの悪い人だろう」
そうだね

おのれャャャ〜〜〜！
仕事早すぎやろ〜〜〜！
（皿を嘗め回しながら）

カリオストロのアレだ…
はてカリオストロとは

カリオストロのスパゲティ取り合いするとこ思い出しちゃった

ルパ●とャャャだったら無銭飲食だろ…
と思い立ったら止まりませんでした

ル◯ンメインで始まるとは思わなかった

…デジモンの二次創作…だよな…？

こんな時間にメシテロしやがって…

幸せを数えて私はゆきたい(無銭飲食逃走)

>「そりゃお前……説明してるんだよ」
>「誰に？」
>「お前以外に誰がいんだ」ｶﾝｯ
>「でっ」
ここ好き
かわいい

クソッこんな時間に腹が減ってきた！

>クソッこんな時間に腹が減ってきた！
パスタはいいぞ…手軽だぞ…

パスタってゆで時間かかる印象だったんだけど最近はえらい早いのあるよね
時代は進歩してるんだなぁ…なんのスレだっけ？

>パスタってゆで時間かかる印象だったんだけど最近はえらい早いのあるよね
早茹での奴はなんかあんまり美味しくない印象だ