冬は忙しい。大掃除、滞納した税金の支払い、クリスマス、大晦日、正月、仕事始め……考えるだけで憂鬱な気分になってくる。
俺のような独身男にとり、そんな憂鬱を晴らしてくれるものが、ニンジャスレイヤーの漫画（角川コミックス・エース　全14巻）だ。
電子書籍という選択肢もあったが、単行本は紙に限るので見送った。特典ペーパーも付いてくるんだから、なおさら紙に限った。初版で買って、かれこれ10年近い付き合いの宝物だ。
ヒンヒョーン……ブザーが鳴った。宅配か？モニターを覗き込むと、ミニスカサンタの衣装を着たHOTな美女が映っていた。
ワッツ？今はまだ12月上旬だぞ？戸惑いながら覗き込んでいると、ベイブは胸をかき抱き、苦しそうに呻いてみせた。
たわわで自然なおっぱいは、サンタ衣装で下半分を隠してるだけだ。それが腕で寄せられて……すごい！
『アーン……ここ、とっても寒いわ！』
言わんこっちゃない。俺はドアへ走った。本心で言えばもう少しモニターの前で見ていたかった。なんせあと少しで衣装からこぼれる寸前……ダムンシット！
「大丈夫ですか」
だが俺はドアを開け、本物の美女を見る方を選んだ。

「ありがとう！嬉しい！」
ミニスカサンタ美女は猫じみてドアの隙間から滑り込み、俺にタックルを仕掛けてきた。そしてそのまま跨って腰を……なんてこった！
「ちょ、ちょっと、ここでは流石に」
「アラーン、ごめんなさい」
美女はあっさり引き下がり、倒れた俺を置いて立ち上がった。脳をよぎりかけた後悔を、眼上に来たミニスカの中身が押し流した。なんてこった！

20分後。
「では、クリスマスの特売キャンペーンに備えていたと」
「そんなところかしら、うふふ。だけど予定を早めちゃったの」
俺の正面に座るミニスカサンタ美女は足を緩慢に高々と上げ、丁寧に組み替えた。これでかれこれ五度目のアクションだ。憂鬱なんてものはもうどこかへ吹き飛んでいた。
「ところで、唐留戸さん」美女の視線が俺の宝物に向けられた「漫画を読んでらっしゃったのね？」
まずい。マニアックすぎたか？
「え、ええ、まあ……これは古本屋で気まぐれに買ったもので趣味ではないというか」
「面白そうな漫画！」
やった！美女はぴったりした衣装のどこからか、大きなタブレットを取り出した。そして検索をし、何かに気がついたらしい。

「ねえ！見て！これ！」
見せられた画面に表示されているのは、俺が持っているニンジャスレイヤーの漫画（角川コミックス・エース　全14巻）の販売ページだ。だが選択されているのは、紙ではなくKindleの方で……33円？こりゃ安い。
「でもあなた、もう買ってらっしゃるのでしょうね」
美女は何故かションボリとした。俺は可能な限り早くかぶりを振った。
「いえ、そんなことはありませんよ」
「嬉しい！じゃあ今すぐ電子で買って！」
美女が態度を豹変させ、猫のように飛びかかり、俺の腰に跨ってきた！憂鬱が吹き飛んで真っ白になった俺の頭は、もうアレをすることだけで一杯だ！
「早く！」
「ハ、ハイ！」
ファック！こういう時に限ってスマートフォンのアンテナの立ちが悪い。俺の息子は四本分の血液で万端だってのに！
「早く！早く！……早クゥ！」
「え」
美女の声に金属的な宇宙エコーがかかった。
いや美女ではない！俺の腰を挟み込んでいたはずのHOTな足は今やノコギリじみた軋む節足であり、俺の目の前に屹立しているのは、虹色のこの世ならぬスペクトルを孕む金属甲殻に覆われたカニの様な多足怪物だ！

怪物がガチャガチャと口器を鳴らした！
「早クゥ！早ク買エーッ！」
「ヒーッ！なんでそんな急かして……そもそもなんなんだ！もう紙の本持ってるんだから電子とかそんなもの」
「今ガチャンスナノダ！ニンジャスレイヤーノ電子ヲ全巻買エ！」
「ヒイーッ！」
金属カニ怪物が俺の手首をハサミで掴んだ。
「買ワヌナラ貴様ノ手首ヲ切リ落トシテ代ワリニ指紋認証スルマデダ」
「ヒイ、いや、ヤア、ヤーアアー！」
「そこまでだ！」
KBAM！俺のニンジャスレイヤーの漫画（角川コミックス・エース　全14巻）が収められた本棚が、内側から吹き出した超自然の炎で炎上した！
「本が！」
「キ、貴様ハ」
金属カニ怪物が狼狽を滲ませ唸ると、燃え盛る本棚を踏みしめて現れた存在が後を継ぎ、ダイナミックな見栄を切った！
「電子書籍割引キャンペーン締め切り探偵ザザ、参上！」

「アンタ、なんで本棚から」
「私はあらゆる並行次元を監視し、備えている。フィクションは最も身近な異次元への窓口となるのだ」
「邪魔ヲスルナ！」
カニ怪物の二対のハサミが、高速でザザへと伸ばされる。
「エイッ！」
だが、ザザは稲妻のようなチョップでそれらを瞬く間に切断した。飛び散る青色の宇宙体液！
「ギュララーッ！？」
武器を失った金属カニ怪物が怯み、後ずさった。
「バカナ……貴様ノ邪魔ガ入ルナドト」
青い宇宙体液が俺の部屋の床を溶かす。
「後少シデ電子書籍割引一斉購入ニヨリ発生シタ希望価格ト実売価格ノ極端ナ落差ニヨル強大ナ概念的位置エネルギーノ簒奪ニ成功シ、コノ次元ニ我ガ故郷ヘノワームホールヲ開通デキタト言ウノニ」
「叶わぬ夢だ」

なんてこった。俺は夢を見ているのか？電子書籍割引キャンペーン締め切り探偵ザザはダイヤモンドの両目義眼を光らせた。恐ろしい！
「……ギュララーッ！」
怪物が襲いかかる！
SMASH！「ギャーッ！」
カウンターパンチで怪物は吹き飛んだ。
「トドメだ！義眼光線！」
ダイヤモンドの目から光線が放たれる！
「ギュルアアアアアアーッ！？」
怪物は一瞬で蒸発して死んだ。なんてこった！
「この世には科学で解明できない謎が沢山ある」
ザザは言った。
「それらに対抗できる力を持つのが私、両目義眼のザザなのだ」

「ハイ」
怪物の死と共に本棚の炎は消えていた。俺はニンジャスレイヤーの漫画（角川コミックス・エース　全14巻）だった燃えクズを呆然と眺めながら、恐ろしい髑髏の頭部を持つ探偵に向かって、気のない返事をした。
「電子書籍Kindleにおけるニンジャスレイヤーの漫画の33円は去年に続き二度目だ。つまりお前は一度目をみすみす逃した」
「ハイ」
「紙があるからとか言って！」
ザザは俺の胸ぐらを掴み、天井近くにまで吊り上げた！
「アーッ！」
「何度もアナウンスされていたのにお前は！」
「アアアアーッ！」
「電子書籍は信用ならないとか言って！」
「アアアアーッ！アアアアアーッ！」
「怪物にみすみすお前は！わかっているのか！」
「アアアアアアアーッ！アアアアアアアアアアアーッ！」

（いじょうです）

ファンダイレクトマーケティング初めて見た…
いや結構見るな…

なんなんだよ…物理書籍買ってればじゅうぶんだろ…

サイバーマンデーブラックフライデーしんじつで脳が焼き付きそうな時に！
ザザ！

>なんなんだよ…物理書籍買ってればじゅうぶんだろ…
電子書籍はスマッホン一つで出先でも気軽に読めるのだ！わかっているのか！

彼は狂っていた。

本家でもだいぶ胡乱な展開になっているというのに更にザザを重ねるんじゃあない！

ファンフィクションにしては…ナニコレ…えぇ…

この作品変なファン小説多いな…

ザザの二次創作初めて見た

外道照身霊波光線！

Kindleな？iOSブックではなく？
では…スミマセン

>ファンフィクションにしては…ナニコレ…えぇ…
ザザ・シリーズはある程度フォーマットがある為にパロディとしてのハードルは比較的低いのだ！それをお前は！

ザザが懐かしくなったので書きました

https://diehardtales.com/n/ndf0fca50139f
ザザについてはこれがわかりやすい

メキシコで生き残るタフな男になるためのじょう件は自給自足だ

>Kindleな？iOSブックではなく？
>では…スミマセン
私はこいつやっつけた。

よくできたザザなだけにビルビルーッ！が無かったのが惜しまれる…

実際ブラックマンデーのきょうふで古参もザザを忘れつつあるのではないか

>ザザの二次創作初めて見た
実はとあるダイススレで何回かやってたりする…

「後少シデ電子書籍割引一斉購入ニヨリ発生シタ希望価格ト実売価格ノ極端ナ落差ニヨル強大ナ概念的位置エネルギーノ簒奪ニ成功シ、コノ次元ニ我ガ故郷ヘノワームホールヲ開通デキタト言ウノニ」

これすごく公式でも言いそう

ﾊｧ…ﾊｧ
僕は騙されないぞ！そうやって一部を買わせた後にRED版電子書籍を無割引で僕に全巻買わせる気なんだろ！！
残念だったな！！僕はRED版の物理書籍を全巻持っているんだ！！！