眼前の少女は「何故」を問うた。だが私には、それが分からなかった。 エンツォの死に際して、私は彼の無念を感じた。そして同時に、この世界に対し、酷く失望した。 動機を説明するだけならこれで十分だが、このような方法を取るに至った経緯は何か。 何もかもを欺き、覆い隠すうちに…いつしか分からなくなった。 彼が私に何かを望んだのなら、もっと別のやり方はあっただろうか。しかしもはや後に退く事は叶わない。 私の「分からない」という答えに、彼女もまた答えに詰まったようだった。 だが、それにはむしろ安心した。これは本来、彼女のような子供が直面して良い問いではないからだ。 「無理もない、君には答えを、あるいは問いそのものさえも持ち得ぬ話だ。そして願わくば、それが永遠に続かんことを」 「そちらのお嬢さんなら、答えを持ち得ているだろうか?」 怯んで引き下がった少女と入れ替わるように前に進み出た黒衣の少女に、問いを持ち得てしまった者に、私は問いかけた。 「君とて、この街に、世界に、奪われた者だろう?ならば、何故そちら側に立つ?」 『貴方は奪われた、だから奪おうとする』 『私も奪われた、だから奪われないようにする』 『····それだけ』 明確で揺るぎない答えだった。そして言葉は最早不要とばかりに、彼女は決闘盤を起動させた。 「それでも、か。だが向かってくるのなら、更なる絶望で迎えるとしよう」 私もまた、それに応えるように決闘盤を起動した。 事ここに至っては、お互い成すべき事はひとつだった。