二次元裏@ふたば

画像ファイル名:1732928120240.jpg-(70502 B)
70502 B24/11/30(土)09:55:20No.1258128824+ 12:03頃消えます
 プラントより少し離れた、ボアズ要塞跡。
 そこに秘密裏に作られたクライン派の拠点から、二機のMSが発進する。
「核動力に換装されてるとはいえ、よくもまあこんな古い機体をとっておいたものだ……」
「俺は気に入ってるけどな。ザクのコントロール系は使いやすい」
 搭乗するのは、イザーク・ジュールとディアッカ・エルスマン。ジャガンナート中佐が起こしたクーデターからラメント議長を逃した後しばらく潜伏していたが、ミレニアムが動いたのとキラの生存を知り、彼等も機は熟したと判断した。
 彼らの操る二機はエターナルから分離したミーティアと合体する。
「イザーク・ジュール、『デュエルブリッツ』発進する!」
『ディアッカ・エルスマン、『ライトニングバスター』発進!」
 生まれ変わった、かつて苦楽を共にした相棒を駆り、二人は月面へと向かった。
このスレは古いので、もうすぐ消えます。
124/11/30(土)09:55:33No.1258128864+
「じゃあマリューさん、行ってきます」
『ええ。必ずラクスさんを』
「はい!」
 ズゴックと合体したキャバリアーアイフリッドに乗り込んだキラ達は、マリューにしばしの別れを告げる。ミレニアムはレクイエムの破壊、自分達はラクスの救出。どちらも重要な作戦だ。
 出発前に、キラはシンに通信を繋ぐ。
 ……本当は、ずっと怖かったのだろう。トールが目の前で死んでから。
 だが、自分一人で全て何とかしようというのが土台無理な話なのだ。
 トールも、そんな自分を助ける為に戦おうとしてくれたのだから。……もう一度、頼ってもいいのかもしれない。
「……シン。ミレニアムを頼むよ!」
「!!……はいっ!!」
 シンは、力強い返事を返す。
「良かったな、ボウズ」
「本当、単純なんだから」
 ヒルダとルナマリアは、ほのかに笑みをこぼした。
224/11/30(土)09:56:01No.1258128961+
「変、だったかな?」
 キラが、アスラン達に問う。
「いいんじゃないか?」
「犬みたいで結構可愛いとこあるじゃない、あの子」
「犬……犬かあ……」
 フレイの評に、キラは少し複雑な気分になる。
 そのまま『アメイジングズゴック』はミラージュコロイドを展開しつつその場を飛び去った。
324/11/30(土)09:56:42No.1258129083+
「……お食事です」
「ありがとうございます」
 アルテミス要塞の一室に軟禁されているラクスは、イングリットの持ってきた食事を口に運ぶ。美味しいことは美味しいが、フレイの作ったような温かみには欠けると何となく思う。とは言え自分の体の状態を考えれば、食事を摂らないという選択肢はなかった。
 食事をぱくぱくと平らげていくラクスに対し、イングリットは気まずそうに告げる。
「……失礼ながら、貴女の事を個人的に調べさせて頂きました。結果、貴女はキラ・ヤマトの愛人であったとの情報が入っています」
「世間一般的に言えば、そうなるのでしょうね」
「……貴女はそれで良かったのですか?」
「キラはわたくしの事も分け隔てなく愛してくれましたし、フレイさんもとても良くしてくれました。二人と過ごした時間は、わたくしにとって掛け替えの無い物です」
 ラクスは、食事の手を止めることなく淡々と答える。
424/11/30(土)09:57:09No.1258129181+
「……分からない。自分の遺伝子……運命に従って生きる事こそが幸せだと、アウラ様もオルフェ達も言っています。貴女も我々の仲間なら、同じはずでしょう?」
「幸せは他人に定義されるものではありません。何時だって己の中にしか存在しないものです。……それに、失礼を承知で申し上げるなら、貴女はとても幸せそうには見えませんわ」
「……っ」
 ラクスの一言にイングリットは整った顔を歪める。
「貴女に何が分かるの!? アウラ様から生まれながらに全てを与えられた貴女に!!」
「わたくしに与えられた姿も、声も、能力も、わたくしや周りの者には災いを振り撒く事の方が多かった気がしますわ」
「貴女とあの男では子供は出来ない! 未来なんて無いのに、どうして……」
 イングリットの追求に、ラクスは普段からは考えられない妖艶さを含む笑みを浮かべた。
「大切な事を、一つ教えて差し上げます」
 ラクスは、人差し指を唇に当てる。
「何事も、実際にやってみなくては分からないものなのですよ」
 ラクスの雰囲気の変化と答えに呆然とするイングリット。
524/11/30(土)09:57:32No.1258129254+
 その直後、部屋のドアが開き、オルフェが入ってくる。我に返ったイングリットは、そのまま入れ替わるように部屋を出て行った。
「頭は冷えましたか? いい加減、貴女も自分の使命を自覚し、私の手を取ってはいかがです?」
「……何度問われても答えは同じです。わたくしが愛するのは、貴方ではありません」
 オルフェの要求を撥ねつけ、ラクスは冷めた目を彼に向ける。
「っ!!」
 激昂したオルフェは、ラクスの肩を強く掴む。
「キラ・ヤマトは死んだ!」
「いいえ、死んではいません」
「何故、事実を受け入れない!?」
「彼を信じているからです」
「何故だ!」
 オルフェは、ラクスの肩を掴んだまま彼女をベッドに押し倒す。
624/11/30(土)09:58:00No.1258129348+
「何故、あんな奴を! アコードになり損ねた失敗作を!」
「わたくしが、愛すると決めた人だからです」
「貴女が望むものを、あいつは何一つ創れなかった! 平和な世界も! そんな奴が貴女のそばにいる資格があるというのか!?」
「愛に資格はありません。それに、わたくしは彼から既に多くのかけがえのない物を受け取りました」
 堪忍袋の緒が切れたオルフェは、着物の襟に手をかける。ラクスの胸元が少しはだけた。ラクスは恐怖で震えそうになるが、精神力でそれ抑える。
 そして、静かに告げる。
「力で人を従えても、心はけっして従えることはできません。何をされても、わたくしの中からキラがいた証を消すことはできません」
「何故だ……!? 貴女は私と世界を統べるために生まれたはずだ! なのに、どうして私を受け入れない……私の愛を!?」
 ラクスは見透かすような目を向ける。
「貴方の愛する『ラクス・クライン』は、わたくしではありません」
 ラクスの言葉の意味が分からず、恐怖が混じったようにも見える失意の表情で部屋を去る。
724/11/30(土)09:58:14No.1258129397+
 当面の脅威が去ったラクスは一安心するとともに、どっと来る疲労感に襲われる。
 ……キラ以外の男に身体をまさぐられるのがこんなに不愉快で恐ろしいものだとは思わなかった。
 ラクスは思わず涙ぐむ。
 ……さっきはキラが生きていると言ったが、別に確証があったわけでは無い。もし、本当に死んでしまっていたら……
 先ほどとは別の恐怖に震えそうになるが、何となく下腹部の辺りが疼いたような気がした。
「……そうですわね。あなたの御父上はきっと……いえ必ず生きています。わたくしが信じずに、誰が信じるというのでしょう」
 ラクスは、自分のお腹を愛おし気に擦りながらひとり呟く。
824/11/30(土)09:58:29No.1258129451+
 部屋を飛び出したオルフェは、苛立ち紛れにイングリットに告げる。
「私は月へ向かう。こちらの防衛はお前とシュラに任せる」
「……はい」
 ファウンデーション軍旗艦『グルウェイグ』に乗り込んだオルフェは、将校たちにてきぱきと命令を下す。
「ミレニアム、および他の敵性艦隊の動きは?」
「オーブ月艦隊と地球軍の残存艦隊はレクイエムへ向かっており、前面に展開するザフト艦隊との交戦が予想されます」
 状況をモニターに表示しつつ、部下は続ける。
「ミレニアム、最短コースでこちらへ向かってきます。会敵予想時刻までおよそ四分」
「……全艦隊、クロスウィングフォーメーション。逆進、相対速度合わせ。十二連陽電子砲、敵艦予想進路に照準合わせ!」
924/11/30(土)09:59:36No.1258129676+
 そしてレクイエムに接近するミレニアムもまた、会敵準備を始めていた。
「ブリッジ遮蔽。第一戦闘配備」
 マリューの声がブリッジに響く。
「この陣形では、こちらの陽電子砲は使えませんな……」
「大丈夫です、我に新兵器あり。耐熱耐衝撃結晶装甲展開!」
 ハインラインが心なしか嬉しそうにモニターを操作する。すると、ミレニアムの各部からジェルのようなものが展開され、瞬く間に艦全体を覆う。
「戦術『バジルール』を行う」
「ミサイルタイミング、入力完了」
「アンチビーム爆雷発射。トリスタン、CIWS起動。ミサイル発射管、ナイトハルト、ディスパール装塡。最大戦速で中央突破!」
 ミレニアムの周囲にアンチビーム粒子が展開される。互いに準備は整った。
「撃て(Feuer)!」
 オルフェの号令と共に、ファウンデーション艦隊が一斉に火を吹く。
 放たれた陽電子砲含む砲火は全てがミレニアムに向けられる。しかしミレニアムは回避行動をとらず、そのまま弾幕に突っ込んでいく。
1024/11/30(土)09:59:48No.1258129717+
「回避もしないだと!?」
 オルフェはその様に驚愕する。
 一方ミレニアムブリッジは、砲火による光に包まれていた。
「ディスパール、CIWS、撃ちぃ方始め!」
 マリューの号令と共にミレニアムの攻撃が始まる。
「耐えられるか!?」
「当然です!」
 そして、爆炎の中から……無傷のミレニアムが姿を現す。ミレニアムは姿を現すや否や砲撃を開始、敵艦数機を墜として見せる。
「やるな、賊どもが……超高速誘導弾を敵予想進路にばらまけ! 全艦回頭! 全速で敵を追撃せよ!」
 オルフェは悪態と共に次々に命令を下す。
「超高速ミサイル接近、追撃です! 敵艦隊回頭中!」
 オペレーターのジェミー・トンプソンが報告する。
「ディスパール撃て! 艦回頭180度。左ドリフト、相対速度合わせ! 各モビルスーツ、発進!」
1124/11/30(土)10:00:10No.1258129791+
『カタパルト接続。全システムオンライン。超伝導キャパシタ1番から10番、臨界到達。誘導システム異常なし。進路クリア』
 アビーのアナウンスと共にカタパルトに就いたデスティニーは、フェイズシフトを展開する。
『デスティニー、発進どうぞ!』
「シン・アスカ、『デスティニー』行きます!」
 シンは力強い掛け声とともにミレニアムを飛び立つ。
『インパルス、発進どうぞ!』
「ルナマリア・ホーク、『インパルス』行くわよ!」
「ゲルググ、発進どうぞ!」
「ヒルダ・ハーケン、『ゲルググ』行くよ!」
 ルナマリア、ヒルダもそれに続く。ヒルダはギャンの修理が間に合わなかったこともあり、ルナマリアの赤いゲルググに搭乗している。
『誘導システム、オンライン。全フライヤー及びシルエット射出!』
 そして、ミレニアムから三機のシルエットと一機のチェストフライヤーが射出される。インパルスはそのうちの一つ、ブラストシルエットを装着した。インパルスの装甲が、薄緑色に変化する。
1224/11/30(土)10:00:32No.1258129858+
「戦闘艦橋に上がります。あとはよろしく」
「ご武運を」
 マリューとノイマンの座る座席が上方にせりあがっていく。
「メインブリッジ、戦闘モードへ移行!」

「敵艦、モビルスーツを発進。数3!」
「迎撃……いや、待て?」
 ミレニアムから発進した機体はデスティニー、インパルス、ゲルググ。
「……フリーダム(キラ・ヤマト)はどこだ?」
 オルフェは、何処かに居るはずのキラの動向に不気味さを覚えた。
1324/11/30(土)10:00:46No.1258129910+
 その頃、アルテミス要塞。
「接近するモビルスーツあり。数1! X20A『ストライクフリーダム』です!!」
「「「!?」」」
 アウラ、シュラ、イングリットは動揺する。
「何故ここが分かった……!?」
「だが姫を救わんとたった一騎で挑んでくるとは、泣かせるではないか。……シュラ?」
 アウラがシュラに目を向ける。シュラもまた、その意を汲む。
「ならば集団で対するは愚。私が参ります」
「愚かな望みを、完膚なきまでに叩き潰してやるがよい」
「御意!」
1424/11/30(土)10:00:57No.1258129953+
(何だ、この嫌な予感は……!?)
 オルフェは、敵の不可解な動きに言い得ぬ悪寒を感じていた。
「だが闇雲に戦力を分散させるとは……まあいい、モビルスーツ隊発進! 敵を殲滅せよ!」
 グルウェイグからハンガーに吊るされた四機のブラックナイトスコード・ルドラが発進準備に入る。
「デスティニーだと? ふざけた連中ですね」
「少しは殺しがいがあるんじゃね?」
「ま、兵隊どもの訓練にはちょうどいいさ」
 緊張感のない会話と共に、ブラックナイツは発進していく僚機を見やる。
1524/11/30(土)10:01:09No.1258129992+
「舐めるなぁーっ!!」
 シンのデスティニーの高エネルギー長射程ビーム砲が、敵のジンと戦艦を次々と撃ち落としていく。
「私だってー!!」
 ルナマリアのブラストインパルスも、ケルベロスとデリュージーの一斉掃射により敵機を掃討していく。
 ヒルダのゲルググもまた、こなれた動きで敵機を撃破する。
1624/11/30(土)10:01:20No.1258130030+
 アルテミス要塞から、シュラの駆るブラックナイトスコード・シヴァが出撃する。
「今度は討ち漏らさん!」
 シュラはそう吐き捨てつつ、アルテミスに到達したストライクフリーダムと戦闘を開始する。
 ……シヴァの発進を確認したズゴックは、その際に発生した光波シールドの隙間から内側に潜入する。
 侵入に成功したズゴックは、手始めに内部ドッグに係留されていたバルドル級戦艦を破壊する。
「!? 防衛ラインの内側に突発音!」
「何事じゃ? 事故か?」
「おそらく、第一ドック内で火災発生の模様」
「私が対処します」
 そう言うと、イングリットはその場を後にした。
1724/11/30(土)10:01:40No.1258130096+
 ズゴックから降り立ったキラとフレイ、オーブ兵の部隊は、奇襲で即座に対処できないファウンデーション兵を撃ち倒していく。
 そして、特定の部位に小型の装置を次々に取り付けていく。
「早く早く早くっ!」
 ズゴックに残ったメイリンはキーボードを高速で操作しながら、画面内の区画が赤く染まっていくのを確認していく。
「よし、全隔壁強制閉鎖!」
 アルテミス内部を完全に掌握したのを確認すると、メイリンはスイッチを押した。
 内部の隔壁が次々に閉鎖されて行く中、潜入メンバーのキサカは通風口へ袋詰めにされたハロを次々に投入する。
「ミトメタクナイ!」
「Here we go!」
「アカンデー!」
「ゼッコーチョー!!」
 そのまま循環装置に辿り着いたハロ達は、耳の内側から次々とガスを噴出していく。
1824/11/30(土)10:02:05No.1258130193+
「駄目です! コントロールを奪われました! システムダウン!」
 事態の重大さを理解したアルテミス司令部はてんやわんやの大騒ぎとなっている。
「何をしている!? シュラを呼び戻せ!」
 アウラが命令を下す。
「通信不能で……」
 兵士は、最後まで言い終えることなく糸が切れたようその場に倒れる。アウラもまた、後を追うように気を失った。
 一方、ラクスの元に向かっていたイングリットは兵士たちが倒れるのを見て、ヘルメットのバイザーを下げた。
 思考を集中し、シュラに思念を飛ばす。
『シュラ、敵が侵入した!』
1924/11/30(土)10:02:22No.1258130251+
 イングリットの思念を受け取ったシュラは、目の前の敵モビルスーツを睨みつける。
「そうか、貴様……! アスラン・ザラだな!?」
「心を読めるんじゃなかったのか? 使えないな……」
 フリーダムのパイロットーーアスランは、これまでにない嘲笑するような口調でシュラを嘲る。
「……殺す!!」
 頭に血の上ったシュラは、更に動きの切れを増してフリーダムに襲い掛かる。

「……本当におっかないわね、あれ!」
 ラクスの元へ向かう道すがら、倒れているファウンデーション兵たちを見てフレイは吐き捨てる。
「本当は、アロマの噴出機構だったらしいんだけど……」
 キラは、苦笑交じりにフレイに告げつつ、幼馴染の脅威の技術力に自身も戦慄せざるを得なかった。
2024/11/30(土)10:02:46No.1258130334+
 ラクスの部屋に向かったイングリットは、部屋に入るや否やドアのロックを銃で破壊する。
「……貴女を渡すわけにはいかない」
 イングリットは、ラクスに銃を突きつけながら告げる。
「……キラが来たのですね?」
 ラクスは、イングリットの言動の意味を即座に理解する。胸の中に喜びがこみ上げるが、極力表に出さないようにする。
「何が嬉しいの……彼等も、貴女がいれば戦いが有利になるから、だから危険を冒して貴女を奪いに来た! それだけでしょう!?」
「そうでしょうか?」
「オルフェだって……貴女が優れているから、だから愛している。誰だってそうでしょう? 優れたものが欲しい。そばに置きたい。その価値があるから必要とされるの、愛されるんでしょう!?」
 イングリットは銃を突きつけながら、悲鳴を上げるように叫ぶ。
「……それは本当に『愛』でしょうか?」
 ラクスがそう答えるや否や、背後で大きな音がする。ドアが破壊され、パイロットスーツを着た複数の男が侵入してくる。
2124/11/30(土)10:03:10No.1258130418+
「ラクス!」
 先頭に居たのは、ラクスがこの世で最も信頼し、愛する人だった。
「キラ!」
 キラの隣にはオーブのパイロットスーツを着た女性がそばに居るが、遮光ヘルメットで顔がよく見えない。ラクスはルナマリアかメイリンではないかと考えるが、彼女らが共にここまで来た理由については思いつかなかった。
 しかし、その答えはすぐに示される。
「帰りましょう、ラクス。私達の家に」
 そう言うと、女性はヘルメットを外す。
「フレイ、さん……!!」
 素顔になったフレイは、ラクスに優しく微笑みかけた。
「……っ、来ないでっ!」
 イングリットは素早くラクスを後ろから羽交い絞めにし、ラクスの喉元にナイフを突きつける。
「少しでも動けば、この人の目を潰すわ! 喉を切ってもいい! 歌えなくなったこの人を、それでも愛してるって言えるの!?」
 キラとフレイは一瞬驚いた顔をするが、キラは直ぐに毅然とした表情に戻す。
2224/11/30(土)10:03:51No.1258130559+
「……ああ。その目が見えなくなっても、声が失われても、ラクスはラクスだ。僕はその全てを愛おしく思う。それは、変わらない」
「キラっ……」
 ラクスは瞳を潤ませる。直後、ラクスのポニーテールの付け根に隠されていたブルーが飛び出す。キラとフレイのバックパックに隠されていたトリィとエンジも同時に飛び出し、三羽は戯れる。
 その動きにイングリットが気を取られた一瞬の隙を突き、ラクスは拘束を解いてキラの胸元へ飛び込む。イングリットは咄嗟に銃を抜くが、フレイが放った銃に弾き飛ばされる。それでもナイフを抜きキラに切りかかるが、躱され、キサカに当て身を食らい倒れる。起き上がろうとしたところに、キサカに銃を突きつけられる。
「キラ!」
「ラクス! なんて無茶を!」
「うっ、うう……」
 愛する人の生存と再会に心から安堵したラクスは、キラに縋りつき泣き続ける。
 その様を見たイングリットは、衝動的に叫ぶ。
「……早く行ってください! 行って!!」
「……ごめんなさい」
 ラクスはそう告げると、キラ達と共にその場を後にした。
2324/11/30(土)10:05:18No.1258130887+
 アルテミス要塞の中を、一行は大急ぎで駆け抜けていく。
 ――しかしその最中、ラクスは急に足を止める。
「? どうしたの?」
「――やはり、わたくしは行けません……」
「はあ!?」
 フレイは、今更ラクスがこんな事を言い出したことに戸惑いを隠せなかった。キラもまた、意味が分からず呆然としている。
 しかしラクスは、目元を伏せながら叫ぶ。
「ずっと考えておりした! キラを戦場に駆り立てているだけでなく、そもそも二人の元に災いを呼び込んでいるのは他ならぬわたくしなのではないかと! であるなら、わたくしは今すぐにでもあなた方の元を去るべきなのす!」
 ……ああ、そうか。この娘も。
 フレイは、ラクスもまた自分と同じことを考えていたことに気付く。
2424/11/30(土)10:05:33No.1258130933+
「……この火種だらけの世界じゃ、アンタ関係なく遅かれ早かれキラは戦場に戻ってたわよ。キラは、周りの人の為に戦う事のできる男だもの」
 フレイはラクスの手を引きながら言う。
「アンタはキラと一緒に居たい。キラもアンタと一緒に居たい。まあ……私もアンタと一緒に居たいわよ。何年一緒に暮らしてると思ってんの!」
 その言葉にラクスは一瞬呆けた後、目に涙を浮かべ答える。
「……わたくしもですわ、フレイさん。あなたが許すのなら」
「ラクス!」
 同じく反対の手を引きながら、キラがラクスに呼びかける。
「ごめん、ずっと悩んでるのも、身体の事も気が付かなくて……でも、もう大丈夫だから!」
「ラクス……僕の赤ちゃん、産んでくれる?」
 キラの言葉を聞いたラクスは、既に涙目だった目からポロポロと涙を零す。
「……はいっ、勿論ですわ!」
 ラクスは、満面の笑みでそれに応えた。
2524/11/30(土)10:05:46No.1258130988+
 ズゴックに乗り込んだ一行は、アルテミス要塞を急速に離脱する。その直後、仕掛けられた爆弾が作動し、アルテミスの各地で爆発が起きる。
 それを確認したフリーダムは、シヴァから距離を取り飛んできたズゴックと合流する。
「……チッ!!」
 シュラは追いかけようとしたが、アウラがまだ残っていることを考え、苦渋の末に爆発するアルテミスに戻る事にした。
2624/11/30(土)10:06:08No.1258131066そうだねx1
 アメイジングズゴックの中で、キラ達は地球のカガリと通信を行う。
『ラクス! 無事だったか!』
「はい、お陰様で」
 ラクスは画面の向こうのカガリにピースサインを送る。
『あのオルフェって奴に何か変な事されなかった?』
 少し心配そうにミリアリアが問う。
 それを聞き、キラは思わずラクスを見る。
「少し、危なかった所はありましたが……まあ、平気です」
『良かった……』
「しかしまあ、これだけやった目的の一つが女の寝取りとはな」
 キサカが気だるげに言う。
「いやまあでも、女性の寝取りでキラさんに張り合おうってのがそもそも無茶ですよー」
「……やめてよね。いやマジでやめてよね」
 メイリンの何気ない言い草に、キラは割と本気で傷つく。
2724/11/30(土)10:06:29No.1258131144+
「……さ、次はフレイさんの番ですよ」
 メイリンは、それもお構いなしに含みのある笑みをフレイに向ける。フレイは、それに仏頂面を返す。
「……アスランから聞いたの?」
「はい♪」
 フレイは思わずアスランを睨みつける。アスランは、少したじろいで目を逸らす。
「え、なんの話?」
 二人のやりとりの意味が分からず、キラは問いかける。そこに、後ろから深刻そうな顔をしたラクスが顔を出す。
「簡単な話です。フレイさん、貴女もご懐妊なされているのでしょう」
「「「「……ええっっ!!?」」」」
 キラとアスランと後ろのイケヤ達、そしてモニターの向こうのカガリとミリアリアが驚きの声を上げる。
「……いつから気付いてたの」
「何となくと言った感じではありましたが」
「ふーん」
2824/11/30(土)10:06:49No.1258131215+
「……どうして言ってくれなかったんだ!!」
 キラは、フレイの両肩を思わず掴む。
「……だって、しょうがないじゃない。私みたいな女、キラの側にずっと居ていいわけないもの」
「ふ、フレイ……?」
「……私はキラに酷い事もしたし、キラの為に何も出来ない。ラクスが居るなら、それでいいじゃない」
 キラはフレイの物言いにまたも呆然とする。ラクスだけでなく、フレイもまた、ずっと深い闇を抱えていたという事に。
「フレイさん、前にも言ったはずです。幸せになる権利は誰にでもあると。貴女の存在がわたくしやキラにとってどれほど救いになったか、おわかりになりませんか!」
「でも……!」
 ……相手を思いやるが故に、相手のそばに居るべきではない。
 確かに、それも一つの愛の形なのかもしれない。でも、そんなの悲しすぎるとキラは思う。
 ……自分も、伝えるべきことを、伝えるべき時なのだ。
 キラは、一つの決意を固める。
2924/11/30(土)10:07:00No.1258131244+
「……本当は、ミケールの件が片付くか、これが終わったら渡そうと思ってたんだけど」
 キラは、懐から小さな箱を二つ取り出す。フレイとラクスは、不思議そうな顔でそれらを受け取る。
「開けて」
 二人は、箱を開ける。中に入っていたのは、羽の形を模した指輪だった。
「これは……」
「……オーブの法律的に、籍はどちらかとしか入れられないかもしれないけど。でも、僕は二人にずっとそばに居てほしい……ダメ、かな?」
 フレイとラクスは、少しの間呆然と指輪を眺めていたが、その内、目から大粒の涙を流し始める。
「「キラっ!!」」
 二人はキラに抱き着くと、そのまま泣き続けた。
 その様子を、クルーやカガリたちは優しい目で見守っていた。
3024/11/30(土)10:08:09No.1258131476+
 フレイとラクスが落ち着いた後、キラは自分の愛機に乗り込む。
「二人を頼む。僕はレクイエムへ」
『奴らは強い。気をつけろよ』
「うん、今度は負けない……僕は一人じゃないから」
『キラ……』
『どうぞ、お気を付けて』
 フレイとラクスが、薬指に付けた指輪を示しながらキラに告げる。
「……うん!」
 ズゴックから分離したストライクフリーダムは急速発進した。
3124/11/30(土)10:09:44No.1258131796+
 シュラから『ラクスを奪還された』と言う知らせを受けたオルフェは、拳を血が出んばかりに握りしめる。
「……レクイエム発射だ! オーブを焼き払え!」
『はっ! レクイエム発射、目標オーブ首都オロファト』
「……貴様がやったことの報いを受け取れ、キラ・ヤマト!!」
「レクイエム発射十秒前、九、八、七……」
3224/11/30(土)10:10:20No.1258131925+
 レクイエムの砲門が開き、エネルギーが収束していく。
 ――その上空に、一つの構造物が現れる。
 それは外装と共にミラージュコロイド・ステルスを解除すると、その黄金に輝く姿を露わにする。
 金色のモビルスーツ――アカツキは、装備した長大なリニアキャノンユニット――ゼウスシルエットを構え、レクイエムに背を向ける。
「垂直軸線、誤差修正。射出電圧臨界……行けえええっ!!」
 レクイエムの真上に存在する第一偏向リングに向かって、ムウの駆るアカツキはリニアキャノンを発射する。
 放たれた高威力の実体弾は姿を隠す偏向リングに直撃し、牽引艦もろとも吹き飛ばす。
 ――その直後、レクイエムが発射される。
 素早くゼウスシルエットをパージしたアカツキは身を翻し、その極大なビームを構えた盾で一身に受ける。
3324/11/30(土)10:10:32No.1258131969+
「ぐうぅぅぅっ!!!」
 装甲が赤熱し、コックピット内には無数のアラートが鳴り響く。
 しかし特殊装甲『ヤタノカガミ』の効果により、反射されたレクイエムのビームは周辺に散乱し、周囲の船団やレクイエム周辺を破壊していく。
 そしてビームの奔流が終わった時――アカツキは満身創痍となっていたが、まだそこに存在していた。
『ムウっ!!』
 コックピット内にマリューの悲鳴じみた叫びが響く。
「ふう……やれやれ、不可能を可能にするのも辛いよね……」
 ムウはこんな事は二度と御免だとばかりにそう呟くと、合体しMA形態となったゼウスシルエットと共にその場を急速に離脱した。
3424/11/30(土)10:10:42No.1258132010+
「一次中継点、攻撃を受け消失!」
「偏向リング設置艦、航行不能!」
「レクイエム外殻損傷! ビーム収束システム損傷!」
「レクイエムに接近する熱源あり。数8!」
 目の前であり得ない光景を見せられたオルフェはしばらく呆然としていたが、すぐに我に返る。
「……ただちに復旧にかかれ!」
 次から次へと起きる不測の事態に、オルフェは苛立ちを隠せなかった。
「おのれ旧人類どもが……!」
3524/11/30(土)10:11:15No.1258132140+
 アカツキの離脱と共に、潜伏していたオーブ軍第一宇宙艦隊が次々とミラージュコロイド外装を脱ぎ捨てる。
「偽装解除。目標はレクイエムの制圧、または完全破壊である。全機、武器使用自由! オーブに死の刃を向けた者を決して許すな!」
 艦隊旗艦『クサナギ』艦長アマギは、全軍に向けて号令を発する。それとともに、艦隊から次々とモビルスーツが発進していく。
「モビルスーツ隊、射線軸より退避。ローエングリン、てーっ!」
 クサナギの両脇から展開された陽電子砲が火を吹き、クーデター軍のザフト艦数隻を薙ぎ払う。
 また、ミレニアムも着々とレクイエムに近づきつつあった。
「誘導砲、分離! トリスタン一番二番、クルヴェナール! 目標、敵艦隊。てーっ!」
 ミレニアム本体からガンバレルのように分離した砲塔が、敵艦を次々と沈めていく。
 しかしその後方から飛来する5つの影があった。
「!! ブラックナイツが来るよ!」
 ヒルダがシンとルナマリアに警告する。
3624/11/30(土)10:11:35No.1258132220+
「……ビームは通じない、ルナは援護を!」
 デスティニーはビーム砲の代わりに、対艦刀『アロンダイト』を引き抜き構える。
「対艦刀はこっちにもあるわ! 私だって!」
 インパルスはブラストシルエットをパージし、代わりに後方から飛来したソードシルエットを装着する。VPS装甲が薄緑色から、自身のパーソナルカラーに近いワインレッドに変化する。
「……本っ当学習しねえバカ! お前ら俺達には勝てねえんだよ!」
「また墜としてあげる! キャハハハ!」
 グリフィンとリデラートが挑発的に笑う。ルドラ四機は一糸乱れぬ連携をしながらデスティニーに襲い掛かる。
 一方、ルナマリアはルドラ四機と共に飛来した機体のコードを確認する。――白いギャンだ。
「あのモビルスーツ……アグネス!? 何で!?」
『インパルス……ルナマリア!』
「アグネス、生きてたのね!」
 核に巻き込まれたと思っていた相手の生存に、ルナマリアは思わず攻撃の手を止める。しかしギャンは胸部を展開し、ビームガトリング砲の照準をインパルスに向ける。
3724/11/30(土)10:11:49No.1258132273+
『シュラだけが私の価値を分かってくれた!』
 状況を理解したルナマリアは、咄嗟にビームシールドで放たれた砲撃を防御する。
「利用されてるだけよ! 分かんないの!?」
 ルナマリアは対艦刀『エクスカリバー』でギャンのビームアックスと切り結ぶ。
『あんただってコーディネイターでしょ!? 何でそっちの味方するの! 馬鹿な男の影響でアタマ煮えちゃったの?』
「っ……コーディネイターは新人類でも、進化した種でもないわ!」
 ルナマリアは、眉間に深い皺を寄せながら叫んだ。
「そっちこそ、隊長に相手にされないからってこんな事!」
「っ……黙れえぇぇぇっ!!」
 激昂したアグネスはスレイヤーウィップでインパルスのエクスカリバーを右腕ごと弾き飛ばす。負けじとルナマリアはバックパックからフラッシュエッジを引き抜き投擲する。一本は防がれたが、もう一本はスレイヤーウィップを途中から切断する。
3824/11/30(土)10:12:08No.1258132366+
 一方デスティニーは、波状攻撃を仕掛けるルドラ四機の攻撃をいなしつつ少しづつダメージを与えていく。――シンは、もう自分の元を去ってしまった、しかし今も心の中に居る大切な者達に思いを馳せる。
(マユ、ステラ、レイ……分かってるよ)
「俺が……みんなの『明日』を護るんだ!!」
 シンの奥深くで『種』が弾ける。
 思考がクリアになり、何をするべきかが直感的に分かる。
 更に動きの切れを増したデスティニーに、グリフィンたちは圧倒される。
「なんだ、コイツ……!」
「この間はジャスティスだったから負けたんだ。デスティニーなら、お前らなんかにぃっ!!」
 そうして、瞬く間にルドラ二機の腕が切り落とされる。
「思考が見えない!?」
「コイツ、考えていないのか!?」
3924/11/30(土)10:12:20No.1258132398+
 一方、月面でも激しい戦闘が続いていた。
「一隻も通すな! しょせんナチュラルどもの寄せ集めだ!」
 クーデター軍の首魁、ジャガンナートは部下たちに発破をかける。
「ジャガンナート中佐! プラントからです! ラメント議長が軍に対して、全軍の停止とクーデター鎮圧を呼びかけています」
「何だと?」
 今まで身を伏せていたラメントが急に動きを見せたことに、ジャガンナートは不穏なものを感じる。しかし、今更立ち止まれるわけもなかった。
「攻撃続行だ! レクイエムがオーブを撃てば、時代は変わる!」
4024/11/30(土)10:13:17No.1258132635+
「ハミルトン、シェクター撃沈!」
「敵モビルスーツ接近!」
 一方、クサナギ率いるオーブ軍はクーデター軍の猛攻に押されていた。
「ゴットフリート一番二番! ヘルダート撃て!」
 アマギは指示を飛ばすが、クサナギの右舷にナスカ級のビームが直撃する。
「くっ! ダメージコントロール!」
 しかし敵の猛攻の手は止まず、敵のザクから放たれた多数のミサイルがクサナギに迫る。アマギがここまでか、と覚悟を決めた時。
 それらのミサイルが、同じくらいの量のミサイルとビームによって相殺される。
 現れたのは、イザークとディアッカの駆る、ミーティアを装備したデュエルとバスターだった。
4124/11/30(土)10:13:32No.1258132700+
「こちらはザフト軍情報省、イザーク・ジュール中佐だ。軍本部からの命令を達する! ジャガンナート中佐麾下のザフト軍将兵は、ただちに戦闘を停止、原隊に復帰せよ! すでに本国のクーデターは鎮圧され、ラメント議長が復帰、権限を掌握している」
『何!?』
「引け、ジャガンナート中佐! 反逆罪に問われたいか!?」
『反逆ではない! 我らこそがプラントの未来を担う者だ!』
 猛弁するジャガンナートだったが、そこにある通信が届く。

『わたくしははラクス・クラインです』
 画面には、最早見飽きたと言っていい女性の顔があった。その背後には、腕を組んだ赤毛のショートカットの女が映り込んでいる。
 ジャガンナートは、直感的に自分達の作戦が失敗したことを悟った。
4224/11/30(土)10:14:04No.1258132823+
『たった今、ファウンデーションによる監禁を逃れ、みなさんにお話ししています』

『まず、わたくしはファウンデーションの見解には、いっさい賛同しておりません』

『彼らの提案する『公正で平等な社会』とは、デスティニープランによる統治であり、かつて申し上げたとおり、私がそれを受け入れることはありません』

『失敗も、変化も、夢も――すべてが許されない世界。人の価値を遺伝子で決める社会。私は自分の価値を、他人に委ねはしません』

『ましてそれを、暴力や恐怖で人に強制するなど、けっして許されることではないのです!』

『どんな命にも、自らの運命を決める自由があります』

『わたくしも、そのために戦います。あなたを愛してもいない者に、決してあなたの価値を決めさせてはいけません!』
4324/11/30(土)10:14:35No.1258132945+
 キラはラクスの放送を聞きつつ、ドラグーンで敵を無力化しながら高速でレクイエムに向かう。1年前に自分が沈めた、要塞メサイア近くまで来たその時だった。
『これ以上は行かせん!』
 シュラの駆るシヴァが猛スピードで襲い掛かる。
「くっ!」
 キラはビームシールドで攻撃を防ぎつつ、再度シュラとの戦いに挑む。
4424/11/30(土)10:14:57No.1258133019+
 ラクスの放送を聞いたオルフェは、アウラと共にグルヴェイグに避難していたイングリットの頬を思いきり張り倒した。
「役目を果たせなければ、我らに生きる意味はない!」
 イングリットは反抗も抵抗せず、ただ涙を流していた。
「敵艦隊、レクイエムに接近!」
「M1MAシュラ、X20Aと交戦中!」
 部下から次々入る悪い知らせに、オルフェは苛立ちつつも命令を下す。
「旗艦艦隊はレクイエムに向かう! ミレニアムに対しては艦隊防御ラインに引き込み、これを殲滅せよ!」
 オルフェは、アウラに向き直る。
「……母上、あとを頼みます。フリーダムは私とシュラで始末いたします。行くぞ、イングリット!」
 険しい顔で、オルフェはその場を後にした。
4524/11/30(土)10:15:08No.1258133059+
「お疲れさま、ラクス」
 フレイは、放送を終えたラクスを労う。
「ええ……ですが、我々にはまだしなければならないことがあります」
「ふっ、そうね」
 フレイとラクスは、お互いに笑みを向ける。
 ラクスは大急ぎでパイロットスーツに着替えると、フレイと共に格納庫へ向かう。
「てか、そのスーツヤバくない?」
「ハインライン大尉が研究中の新素材だとか……」
「……やっぱりアイツムッツリスケベね。最初見たときからそう思ってたわ」
 ここに居ないのをいいことに、少し会っただけの相手の悪口を言い放つフレイ。
「……まあいいわ。私たちはお互いに出来る事をする、それだけよ」
「ええ、その通りです」
 格納庫に付いた二人は、それぞれの乗機の前に立つ。
「行きましょう、『プラウドディフェンダー』」
「さあ行くわよ、『ストライク・フオ』!」
4624/11/30(土)10:15:49No.1258133237+
 話は半年ほど前に遡る。
 ある日、フレイは唐突にカガリの所を訪ねる。首長官邸は当然ながら厳重な警備が成されているが、カガリの弟であるキラの恋人という立場や、前大戦で共に戦ったという戦友という事もあり顔パスで通る。
「ねえカガリ、お願いがあるんだけど」
 顔を合わせるや否やフレイは切り出す。
「珍しい、一体何の用だ」
「私専用のモビルスーツが欲しいの」
「ハァ!?」
 カガリは思わず膝を机の角にぶつけた。
4724/11/30(土)10:16:07No.1258133303+
「っつ〜! 化粧品感覚でモビルスーツをねだるな! ……一体どういう風の吹き回しだ?」
「私、ずっと辛かったのよ。キラも、ラクスも、アンタも、皆自分の戦場で戦ってる。なのに、私はずっと守られてばかり。先の大戦でも、私は殆ど何も出来なかった。それで思ったのよ。自分の身は自分で守りたいし、可能なら……手の届く範囲の誰かを守りたいって」
「……なるほどな。だがそれならシビリアンアストレイのような高級民生機でも良いんじゃないか?」
「嫌よあんなダッサいの。出来ればフェイズシフト装甲のがいいわ。ていうかルージュよこしなさいよ。もう滅多に乗ることもないでしょ」
「ルージュは私のだ! ……待てよ」
 カガリは何かを思い出したかのように思案する。
「一機ちょうどいいのがある。少々癖は強いがな」
 後日モルゲンレーテの特定の場所に行くように言われ、そこへ向かうとカガリとエリカ・シモンズが待っていた。
「来たか。こっちだ」
 案内された先の倉庫にあったのは、見覚えのある、しかし自分の知るそれとは微妙に異なる機体だった。
4824/11/30(土)10:16:52No.1258133451+
「これ、ストライク……じゃ、ないわよね」
「GAT-X105E、ストライクE(エンハンスド)」
 エリカが解説する。
「アクタイオン・インダストリー社がストライクに大規模な改修を行った機体よ。全体的な駆動系・冷却系の構造が見直されているほか、意欲的な新機能や武装がいくつか導入されているわ」
「アクタイオン社って、確かユーラシアの企業よね? 何で大西洋のストライクの改修請け負ってる上にオーブの同業他社に兵器売ってんの?」
「ストライクの改修については連合内で何らかの政治的理由があったらしいが、よく分からん。うちに売った件については、あそこは元々節操がないことで有名でな。第一次大戦中にはあろうことかザフトにもモビルスーツを売り込もうとしたらしい」
「うわっマジ?」
4924/11/30(土)10:18:11No.1258133733+
「実際の所は、うちのオオトリのデッドコピーを勝手に製造販売しようとしたんで追及しに行ったら賠償代わりにこれを譲渡してきた、と言うのが真相だ」
「……聞いてて不安になってきたんだけど。大丈夫なのこれ?」
「既に解析や技術検証は終わっていて機体に問題はないわ。あと、本機には連合で採用予定の『超スーパーセーフティーコクピット』及び『超スーパーセーフティーシャッターグレイト』が標準装備されていて、パイロットのサバイバビリティも非常に高められているの」
「な、何何何!?」
 エリカの口から飛び出してきた小学生が付けたようなネーミングにフレイは困惑する。
「これを譲渡した技術者がおまけとして付けてくれたらしい。向こうとしては技術力アピールやあわよくばうちでの採用も目論んでの事らしいが……」
「はあ、随分厚かましいというか商魂逞しいというか。で、どうだったの?」
「機能自体はうちの技術陣をも唸らせる見事なものだったが、連合はともかくうちで採用するにはコストが高すぎてな。量産機への制式採用は見送られた。現在構想中のアカツキの後継機に採用するか検討中、と言った所だ」
5024/11/30(土)10:18:25No.1258133780+
「ふーん。まあでも……いいじゃない! 何よりストライクの後継機って所が気に入ったわ!」
「この機体は本来エース用のカスタム機だ。OSやサポートシステムにも順次改良は加えるが、それでも生半可な腕では使いこなせんから覚悟しておけ。訓練用のシミュレーターも用意しておくから、空いた時間にでも乗っておくといい」
「頼んどいてなんだけど、至れり尽くせりね」
「半端な事をしてお前が死んだらキラやラクスが悲しむし、私としても寝覚めが悪いからな。それに誰かを守るための力が欲しい、と言うのなら、それには応えてやりたい。こいつとしても、倉庫で埃を被ってるよりはよっぽどいいだろうさ」
「ありがと。でもストライクエンハンスド(強化型)って名前ちょっと厳ついし可愛くないわね。新しい名前考えていい?」
「……好きにしろ」
「そうねえ……『ストライク・フオ』。この子の名前は、ストライク・フオよ」
「フオはどういう意味なんだ?」
「中国語で『炎』って意味よ」
「……なるほど」
5124/11/30(土)10:18:44No.1258133870+
「本艦は敵艦隊を突破し、敵旗艦に突撃する。決戦よ!」
 マリューは、クルー達に最後の号令をかける。
 しかし、そこへ格納庫から通信が入る。
『艦長』
「ラクスさんに、フレイさん?」
『我々も出撃します。許可を』
「えっ!?」
『これをキラに届けなければ。それはわたくし達がすべきことなのです』
「でも、それは……」
『露払いは私がするわ』
 ラクスの提案に渋るマリューに、フレイもまたモニター越しに告げる。
5224/11/30(土)10:18:58No.1258133911+
「フレイさん……」
『お願いします。今回だけは行かせてください』
 尚も渋るマリューに、ハインラインが早口を挟む。
「総裁、アルバートです。機体は百パーセントの性能で稼働できますが、ドッキングは手動での微調整が必要です。私が完璧に誘導しますのでご安心を」
「……分かったわ。発進を許可します」
 根負けしたマリューが許可を出す。
『『ありがとう』』
 フレイとラクスは、一個人としてマリューに礼を告げる。
5324/11/30(土)10:19:17No.1258133985+
「正気か!? 君たちは……!」
 二人の状態を知るアスランは流石に引き留めようとする。
『ええ、分かってるわ』
『だからこそです。子供が父親の顔を知らないという事態は絶対に避けたいですから』
 そう言うと、二人は早々にアスランとの通信を切る。
 アスランはキャバリアーを利用しカガリに通信を行う。
「カガリ!」
『アスランか、どうした?』
「どうしたじゃない! 一体何を考えている! フレイにモビルスーツなど……」
『ああ、それか。彼女の意思を尊重した結果だ』
「しかし……!」
5424/11/30(土)10:19:28No.1258134030+
『安心しろ。あの機体の安全性は他の機体の比ではない。それに……』
 カガリはニヤリと笑って見せる。
『あいつ、お前が考えるよりかなり筋がいいぞ?』
「……キラに何を言われても俺は知らないぞ」
「……ま、いいじゃないですか」
 剣幕を崩さないアスランに、メイリンがにこやかに告げる。
「見ているだけの方がよっぽど辛い、ってこともあるんですよ」
 アスランは納得したようなしないような微妙な面持ちのまま、カタパルトに着く。
「アスラン・ザラ、『ズゴック』出る!」
 そして、ズゴックは高速で発進した。
5524/11/30(土)10:19:49No.1258134113+
『ディフェンダー、発進どうぞ!』
「ラクス・クライン、行きます! ……っく!」
 軽いGに多少の衝撃を受けつつ、ラクスもまた発進した。
5624/11/30(土)10:20:25No.1258134233+
「貴方の未来は、私が守るわ……!」
 フレイは、自分の腹部をさすりながら一人決意する。
『ストライク・フオ、発進どうぞ!』
 先ほどと同様、アビーがアナウンスを行う。
「フレイ・アルスター、ストライク・フ……」
 しかしフレイは何か思ったのか、発進直前で台詞を止める。
『どうかしましたか?』
 アビーが問いかける。
5724/11/30(土)10:20:38No.1258134279+
「ごめん、もう一回やり直していい?」
『はあ!?』
『何考えてんだ、この状況で!』
「ごめん、お願い!」
『はぁ……発進、どうぞ!』
 フレイは深呼吸すると、再び表情を引き締めた。
「フレイ・アルスター……『ガンダム』、行きます!」
 そして、改めてストライク・フオ……『ガンダム』は発進した。
5824/11/30(土)10:20:52No.1258134336+
「……なるほどね」
 マリューは、彼女の意図を理解しクスリと笑みを浮かべた。
『ガンダムって、『あの顔』した機体のあだ名みたいなものでしょう? 何で彼女、わざわざ言い直すくらい拘ったんです?』
 アビーがマリューに問いかける。
「あら、知らない?」
 マリューはアビーにニヤリと微笑みかける。
「あの機体群、中でもストライクを最初に『ガンダム』って呼び始めたの……キラくなんのよ」
 マリューが朗らかに告げる。
「「「……ええっ!?」」」
 その場に居たミレニアムクルー全員が、驚きの声を上げた。
5924/11/30(土)10:22:39No.1258134696+
GAT-X105E-ALTA ストライク・フオ

アクタイオン・インダストリー社のMS開発計画「オルタナティブ・プロジェクト」によりアップデートされた「ストライクE」のセカンドロットの一機を、モルゲンレーテが独自に調整した機体。名前はパイロットであるフレイ・アルスターによる命名。
基本性能はファーストロットからほとんど変わっていないが、内部構造の見直しにより劣悪とされた整備性が格段に改善されている他、肩部スラスターが取り外し可能となり通常のソードストライカー・ランチャーストライカーが装備可能となっている。
また、連合で採用予定の「超スーパーセーフティーコクピット」及び「超スーパーセーフティーシャッターグレイト」が標準で装備されている。
6024/11/30(土)10:22:52No.1258134750+
モルゲンレーテへの譲渡後、解析及び各種試験に供された後に保管されていたが、専用MSを欲していたフレイ・アルスターに譲渡される。彼女の機体となることが決定した際VPS装甲に調整が加えられ、ストライクルージュよりもさらに濃く鮮やかな赤を基調としたカラーリングに改められた。
OSは従来通り「G.U.N.D.A.M Synthesis System」が搭載されているが、本機のものはMVF-X08 エクリプスの運用データを元に「機体のOSを専属パイロットの神経網専用に調整する」と言う独自のアプローチが(試験的に)取られている。結果、本機は「フレイ・アルスターが搭乗した場合にのみ」コーディネイターのエースパイロットが操縦したレベルの能力を発揮する。
今回の実戦配備に際しバッテリーが最新の物に交換された。また、オプション装備としてリアスカートにビームサーベルをマウントしている。
6124/11/30(土)10:23:49No.1258134995+
スレッドを立てた人によって削除されました
 レクイエムの砲門が開き、エネルギーが収束していく。
 ――その上空に、一つの構造物が現れる。
 それは外装と共にミラージュコロイド・ステルスは解除すると、その黄金に輝く姿を露わにする。
 金色のモビルスーツ――アカツキは、装備した長大なリニアキャノンユニット――ゼウスシルエットを構え、レクイエムに背を向ける。
「垂直軸線、誤差修正。射出電圧臨界......行けえええっ!!」
 レクイエムの真上に存在する第一偏向リングに向かって、ムウの駆るアカツキはリニアキャノンを発射する。
 放たれた高威力の実体弾は姿を隠す偏向リングに直撃し、牽引艦もろとも吹き飛ばす。
 ――その直後、レクイエムが発射される。
 素早くゼウスシルエットをパージしたアカツキは身を翻し、その極大なビームを構えた盾で一身に受ける。
6224/11/30(土)10:28:45No.1258136133そうだねx1
お久しぶりですキラフレ「」です
とうとうここまでやってきました
恐らく次の投稿で完結できると思います
フレイをモビルスーツに乗せるのは当初から構想していたのですがここに来てようやく実現できました
ストライクEにした理由は好みもありますがルージュのパイロットが当初フレイの予定だったというのもありストライク系にするべきだろうなと言う拘りです
ちなみに本作のストライクEのスペックは大体これを見ていただければ分かるかと思います
https://p-bandai.jp/item/item-1000182649/
6324/11/30(土)10:28:57No.1258136179そうだねx1
良いものを見れたありがとうね
6424/11/30(土)10:29:54No.1258136405+
今までのまとめです
https://www.pixiv.net/novel/series/11861256
今回は24及び25です
ではもう少しだけお付き合いください
ありがとうございました
6524/11/30(土)10:29:58No.1258136425+
スレッドを立てた人によって削除されました
​「​一​次​中​継​点​、​攻​撃​を​受​け​消​失​!​」​
​「​偏​向​リ​ン​グ​設​置​艦​、​航​行​不​能​!​」​
​「​レ​ク​イ​エ​ム​外​殻​損​傷​!​ ​ビ​ー​ム​収​束​シ​ス​テ​ム​損​傷​!​」​
​「​レ​ク​イ​エ​ム​に​接​近​す​る​熱​源​あ​り​。​数​8​!​」​
​ ​目​の​前​で​あ​り​得ない光景を見せられたオルフェはしばらく呆然としていたが、すぐに我に返る。
「……ただちに復旧にかかれ!」
 次から次へと起きる不測の事態に、オルフェは苛立ちを隠せなかった。
「おのれ旧人類どもが……!」
6624/11/30(土)10:31:06No.1258136701そうだねx2
長い
6724/11/30(土)10:32:09No.1258136948+
>長い
一応映画で言うと20分刻みに投稿しているんですがやっぱり長いですよね…
6824/11/30(土)10:36:08No.1258137898+
スレッドを立てた人によって削除されました
「ラクス!」
 先頭に居たのは、ラクスがこの世で最も信頼し、愛する人だった。
「キラ!」
 キラの隣にはオーブのパイロットスーツは着た女性がそばに居るが、遮光ヘルメットで顔がよく見えない。ラクスはルナマリアかメイリンではないかと考えるが、彼女らが共にここまで来た理由については思いつかなかった。
 しかし、その答えはすぐに示される。
「帰りましょう、ラクス。私たちの家に」
 そう言うと、女性はヘルメットを外す。
「フレイ、さん......!!」
 素顔になったフレイは、ラクスに優しく微笑みかけた。
「......っ、来ないでっ!」
 イングリットは素早くラクスを後ろから羽交い絞めにし、ラクスの喉元にナイフを突きつける。
「少しでも動けば、この人の目を潰すわ! 喉を切ってもいい! 歌えなくなったこの人を、それでも愛してるって言えるの!?」
 キラとフレイは一瞬驚いた顔をするが、キラは直ぐに毅然とした表情に戻す。
6924/11/30(土)10:36:32No.1258137999+
幼いころから運命の相手と言い聞かせられてきた相手は!
自分の出来損ないの愛人でマンコどころか子宮まで使用済み!
オルフェなんてそんなんでいいんだよ…
7024/11/30(土)10:41:19No.1258139194+
>『超スーパーセーフティーコクピット』及び『超スーパーセーフティーシャッターグレイト』
このワードが公式なの本当に笑う
7124/11/30(土)10:48:42No.1258140957+
ルージュはフレイの機体にする没案もあったんだっけ
7224/11/30(土)10:49:50No.1258141240+
>>『超スーパーセーフティーコクピット』及び『超スーパーセーフティーシャッターグレイト』
>このワードが公式なの本当に笑う
そうなの?!
7324/11/30(土)10:50:57No.1258141507+
スレッドを立てた人によって削除されました
‌「‌舐‌め‌る‌な‌ぁ‌ー‌っ‌!‌!‌」‌
‌ ‌シ‌ン‌の‌デ‌ス‌テ‌ィ‌ニ‌ー‌の‌高‌エ‌ネ‌ル‌ギ‌ー‌長‌射‌程‌ビ‌ー‌ム‌砲‌が‌、‌敵‌の‌ジ‌ン‌と‌戦‌艦‌を‌次‌々‌と‌撃‌ち‌落‌と‌し‌て‌い‌く‌。‌
‌「‌私‌だ‌っ‌て‌ー‌!‌!‌」‌
‌ ‌ル‌ナ‌マ‌リ‌ア‌の‌ブ‌ラ‌ス‌ト‌イ‌ン‌パ‌ル‌ス‌も‌、‌ケ‌ル‌ベ‌ロ‌ス‌と‌デ‌リ‌ュ‌ー‌ジ‌ー‌の‌一‌斉‌掃‌射により敵機を掃討していく。
 ヒルダのゲルググもまた、こなれた動きで敵機を撃破する。
7424/11/30(土)10:54:06No.1258142229+
多分付けてくれた技術者がね…
7524/11/30(土)10:55:19No.1258142491+
オオトリのデットコピー作ってるのも事実なのが酷い
7624/11/30(土)10:57:04No.1258142914+
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お久しぶりですキラフレ「」です
とうとうここまでやってきました
恐らく次の投稿で完結できると思います
フレイをモビルスーツに乗せるのは当初から構想していたのですがここに来てようやく実現できました
ストライクEにした理由は好みもありますがルージュのパイロットが当初フレイの予定だったというのもありストライク系にするべきだろうなと言う拘りです
ちなみに本作のストライクEのスペックは大体これを見ていただければ分かるかと思います
https://p-bandai.jp/item/item-1000182649/
7724/11/30(土)11:03:15No.1258144348+
>オオトリのデットコピー作ってるのも事実なのが酷い
‌長‌い‌
7824/11/30(土)11:09:22No.1258145753+
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「駄目です! コントロールは奪われました! システムダウン!」
 事態の重大さを理解したアルテミス司令部はてんやわんやの大騒ぎとなっている。
「何をしている!? シュラを呼び戻せ!」
 アウラが命令を下す。
「通信不能で......」
 兵士は、最後まで言い終えることなく糸が切れたようその場に倒れる。アウラもまた、後を追うように気を失った。
 一方、ラクスの元に向かっていたイングリットは兵士たちが倒れるのを見て、ヘルメットのバイザーを下げた。
 思考を集中し、シュラに思念を飛ばす。
『シュラ、敵が侵入した!』


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