二次元裏@ふたば

画像ファイル名:1731488360676.jpg-(70502 B)
70502 B24/11/13(水)17:59:20No.1252736261+ 19:29頃消えます
 75年振りに地球上で核爆弾が使用されたと言う知らせは、瞬く間に世界中を駆け巡った。
 それから四日後、カガリは諸々の件について事後対応に追われていた。
「第二爆心地の東1.5キロにアークエンジェルと思われる残骸を確認しました。フリーダム、ジャスティス、その他、作戦行動中のモビルスーツ隊はいまだ発見できず、こちらからの呼びかけにも応答はありません。全て爆発に巻き込まれたものと……」
 トーヤが、淡々と報告書を読み上げる。
『……それで、クライン総裁はご無事なのですな?』
 画面内のラメント議長が問う。
「ええ。ミレニアムからの報告では、ファウンデーション高官らとともに脱出したと。プラントに連絡は?」
『いや……』
このスレは古いので、もうすぐ消えます。
124/11/13(水)17:59:34No.1252736325+
『どうしてくれるのです! ユーラシアからは厳重な抗議が来ていますよ! 全てはヤマト隊長が協定を破り、軍事境界線を越えたためだと』
 大西洋連邦大統領、フォスターが吼える。
『だからと言って、核を撃っていい理由にはならん! それは全人類に対する背信行為だ』
「ヤマト隊長の件も納得できない。報告書を読む限り、不可解な点が多すぎる。何が起きたのかさっぱり分からん!」
 カガリがジェスチャーも交えながら告げる。
『真実は闇の中だ。ヤマト隊長なりミケールらが生きて口を開かぬ限りはな……』
『都合のいいことですね。誰の責任も追及しようがないとは』
『何がおっしゃりたいのです?』
『本当にヤマト隊長の行動は彼の独断だったのか、ということですよ。今回の件は、プラントがユーラシア領に介入できる絶好の……』
『言いがかりはやめて頂きたい!』
224/11/13(水)17:59:47No.1252736384+
 果ての無い応酬に、カガリはとうとう堪忍袋の緒が切れた。
「キラがそんなことをするものか!」
「か、カガリ姉様……」
 カガリの剣幕にトーヤは怯む。閣僚の一人として控えていたサイ・アーガイルも、困惑を隠せなかった。
『なるほど。ではわが国はこれ以上、コンパスにかかわるつもりはありません!』
『我らもだ。このように痛くもない腹を探られるのでは!』
 そういうと、フォスターとラメント、その他二人の参加者も次々に画面から消失する。
 カガリは自分の失言に後から気付き、がっくりと机にうなだれた。
324/11/13(水)18:00:00No.1252736457+
「そうか、やはりファウンデーションが……」
「ジャミングのタイミングといい、黒である可能性は92パーセント。ブラックナイツの仕業ですよ」
 難を逃れ、オーブのオノゴロ島に停泊していたミレニアム内で、コノエとハインラインが相談していた。
「ああー、ブラックナイツだけに黒……って、ええっ!? じゃあ、あの核攻撃をファウンデーションが、ってことですか!?」
 言った後で、副艦長のアーサー・トラインは自分の放言のまずさに気付き、思わず口を覆った。
424/11/13(水)18:00:15No.1252736531+
「だが我々には、それを証明する手段がない」
「ミレニアムには帰投命令。手持ちのモビルスーツはゼロ。アークエンジェルも墜とされてクルーの生存は絶望的……」
「それに、飛び出して行ったホーク中尉も結局帰って来ませんでしたし……」
 コノエとハインラインのやり取りに、クルーの一人、アビー・ウィンザーも口をはさむ。
「いや、それはどうだろうな……そう簡単に死ぬかな、あの連中が?」
 コノエは、クルーを見回しながらニヤリ、と笑った。
524/11/13(水)18:00:50No.1252736706+
 その頃、オーブ・アカツキ島。
 エルドアから逃げ延びたアークエンジェルクルー及びヤマト隊は、海中港内の秘密研究室に隠れていた。
『ファウンデーション、エルドア地方を含め、死者五万、負傷者、行方不明者は十万人以上と推定され、ユーラシア軍は報復に備えて全軍に出動待機を要請。全国民へ……』
 テレビで放送される惨状を見て、クルー全員、特にルナマリアが顔を曇らせる。
「私が、撃ち落とせてさえいれば……」
 隣のシンは、そんなルナマリアの手をしっかりと握る。
「……ルナのせいじゃない」
 そして、テレビの画面を睨みつける。
「ルナのせいで、あるもんか……!!」
 しかし、その次に流れてきたニュースは二人にとって更に悪い内容だった。
『既にコンパスの活動は当分の間、凍結とされ……』
「なっ!」
「えっ!」
 シンとルナマリアが同時に声を上げる。
624/11/13(水)18:01:09No.1252736810+
「……カガリは頑張ったようだが、今は世界中の非難が集中してるからな」
 後ろに立っていたアスランが、補足的に説明する。
「あいつら……くそっ!」
 シンは思わずソファーの背を殴りつける。
「唯一残ったミレニアムは、現在オーブに入港している。こちらの状況は伝えていない」
「……ラクスは?」
 アスランの報告をよそに、キラは半ば茫然と問う。
「彼女はファウンデーションのシャトルで脱出したらしい」
「……そう……」
 キラは虚無的な表情で、アスランの言葉を聞いていた。
「……ターミナルの調査に、こんなものが引っかかってきた」
 アスランは、ファイルから一枚の写真を取り出す。映っているのは、アウラ女王とよく似た女性。
「これは……アウラ女帝?」
 マリューは呟く。
724/11/13(水)18:01:24No.1252736880+
「19年前、メンデルの遺伝子研究所にいた頃の彼女です」
「19年前!?」
 シンは驚きを隠せない。
「彼女の研究テーマは、コーディネイターを超える種を創り出すこと。恐らく全てがアウラの、彼らの計画だったんだ」
 渋い顔で告げるアスランに、マリューも苦い表情で頷く。
「核攻撃も、ね」
「少なくとも核を撃たせたことで、口実はできる」
「え……?」
「彼らが……ユーラシアを討つための口実が」
 ちょうどその時、部屋のスピーカーからエリカ・シモンズの逼迫した声が響く。
『ザラ一佐! すぐに管制室に来て!』
824/11/13(水)18:01:35No.1252736935+
 アスランとともに、キラ達は管制室に向かう。
 そこに映し出されていたのは、巨大なキノコ雲だった。
「モスクワよ……」
 エリカが告げる。
「これが、ファウンデーションの報復……?」
 彼等がもたらした惨状を見て、マリューは呆然と呟く。他の者達もまた、その光景に言葉を失った。
「また、核……攻撃?」
「いや、これは……『レクイエム』だ!」
 呆然と呟くルナマリアに、アスランは怒りに満ちた表情で告げた。
「あいつら……!!」
 シンはファウンデーションの所業に恐怖と怒りを覚えると共に、こんな行いの片棒を担ごうとしたかつての自分の愚かさを改めて悔いた。
 その直後、モニターの映像が切り替わる。
 ファウンデーション宰相、オルフェだった。オルフェは、挨拶も無しに黙々と語り始める。
924/11/13(水)18:01:52No.1252737018+
『我々は地上を追われた……ナチュラルが放った憎しみの核によって』

『平和と安定のみを望む我々の思いは、またしても頑迷なナチュラルによって踏みにじられた。何故か?』

『我が国は国策として、先のプラント評議会議長、ギルバート・デュランダル氏の提唱したデスティニープランを受け入れた』

『遺伝子による、完全に公正で平等な社会。自らの遺伝子に刻まれた、自分たちの役割を受け入れることで、我らは貧しさを克服し、先の大戦では独立を果たし、奇跡的な復興を成し遂げてみせた……だが、怠惰なる人間たちはそれが気に入らない!』
1024/11/13(水)18:02:07No.1252737106+
『彼らは進化を否定し、人を妬み、過去の恨みを忘れず、醜い感情のままに互いを殺しあう。地球という安寧の地に住みながら、強欲にその恩恵を消費する寄生虫に等しい! 我らは問いたい! そんな蒙昧たる輩と、なぜ我々はともに歩まねばならないのか?』

『プラントに住むコーディネイター達よ。我々は貴方方の兄弟だ。諸君も我らと同じく、人類の進化を未来に引き継ぐ存在なのだ』

『我々も遺伝子操作によって創られた究極のコーディネイター……『アコード』だ!』
 オルフェは、毅然とした表情で告げる。
1124/11/13(水)18:02:21No.1252737178+
『遺伝子に刻まれたその役割は、人類の調停者として世界を導くもの。我らはそのために生を受けた』

『そして、君達の指導者の一人である、かのラクス・クライン総裁も我らの同胞なのだ』

『彼女も人類を導く者として、今我らとともにある。我々の意志は彼女の意志であり、我々の願いは彼女の願いでもある』

『共に行こう、コーディネイターの兄弟よ。旧人類による矛盾と暴虐の時代は終わった!』

『地球の総ての国家に通告する。ただちに武装を解除し、デスティニープランを承認、実行せよ。猶予期間は五日』

『なお、我らを受け入れられぬという勢力には、ラクス・クラインの名の下にレクイエムによる制裁を下す。その頭上にメギドの火が落ちることになるだろう』
 恐るべき宣告と共に、オルフェの放送は終了した。
1224/11/13(水)18:02:40No.1252737264+
「長くお一人でお待たせしてすみませんでした、姫」
 放送を終えたオルフェは、笑顔でラクスを迎え入れる。
「……お詫び頂けるというなら、私をできるだけ早く帰して頂けるよう、お願いいたしますわ」
「帰る? あなたの本来あるべき場所はここですよ」
 オルフェは笑みを崩さず、何でもない事のように告げる。
「そして、それがあなたのお母さまの意志でもある」
 扇子を弄りながら、アウラも事も無げに告げる。
「え……? 母の?」
「貴女は人々のために生まれた。全ての民に愛され彼等に道を示すために。――そのように、私が創った」
「私を、創った……?」
「貴方達二人が、すべての人類の頂点に立つべき存在。最後に組み合わさるピースの一対なのです」
 アウラは、この日をずっと待っていた、と言わんばかりに悠然と告げる。
1324/11/13(水)18:04:21No.1252737758+
「私と貴女で、共にこの世界を統治するのです」
 ゆっくり歩み寄ったオルフェは、ラクスの手を取る。
「感じるでしょう?」
 また『あの感覚』がラクスを包む。
「共に、貴方と……?」
「我らは互いに惹かれあい、結ばれる運命……」
 オルフェは、ラクスにラクスに顔を近づける。ラクスもまた、無意識のうちに顔を近づける。
 しかし、ラクスの中の『何か』が彼女を止めた。
「……っ!」
 我に返ったラクスは、オルフェの手を振りほどき彼から離れる。
「わたくしの愛する人は、貴方ではありません!」
 ラクスの宣言にオルフェは一瞬苦虫を嚙み潰したような顔を見せるが、すぐに取り繕う。
1424/11/13(水)18:04:37No.1252737835+
「キラ・ヤマトのことを気にしているのですか? 残念ながら、彼はもうこの世にはおりません。貴女がが『討ってもよい』と言われたのではありませんか」
 オルフェは、嘲笑するような表情を交えながら告げる。
「……! ああ、キラ……!!」
 ラクスは、その場で崩れ落ち、咽び泣く。
「どの道、彼はもう必要ない。これからの世界には」
「必要だから……」
 ラクスは顔を上げる。
「必要だから愛するのではありません! 愛しているから、必要なのです!!」
 ラクスは、決然とした表情で告げた。
「おやめなさい! ナチュラルのような世迷い言は!」
 オルフェは、心底不快そうに吐き捨てる。
「……出撃する。シュラ、イングリッド。母上と姫を頼んだぞ」
 そういうと、オルフェは部屋を後にした。
1524/11/13(水)18:04:58No.1252737937+
 その頃、コンパスの一同はレクリエーションルームに集まっていた。
「遺伝子で人を選別し、適性によって役割を定める『デスティニ・ープラン』。デュランダルとアウラは、その仕組みを管理し、人々を導く者たちを創った。それが、アコードだ」
 アスランは、ゆっくりとキラの方に向き直る。
「お前は前に言ったよな。『デスティニー・プランが実行されれば、いずれ役割の為に作られる人間が現れる』と。どうやらその通りだったようだ。……いや、なお悪いな。役割の為の人間達は『既に作られていた』んだ。そして、更に悪い事に……ラクスも、その一人と言うことだ」
「ラクスが……あいつらの、仲間……」
 キラは、呆然と呟いた。アスランはそれを見て頷く。
「彼等アコードの一番の要がオルフェ・ラム・タオ。そして……ラクスだ。だから奴等はラクスを攫った。彼等のプランに必要だったからだ」
「ターミナルの情報によると、プラントでは現在軍によるクーデターが発生している。詳細は分からないが、議長以下、評議会メンバーとの連絡が取れていない。おそらく、ファウンデーションの動きと連動しての事だろう」
「ええっ!」
 シンが声を上げる。
1624/11/13(水)18:05:31No.1252738100+
「だが、私たちは現状動きようがない。モビルスーツも艦もないしな」
 ヒルダが暗い顔で語る。
「つまり、ここにいる私たちはみんな、死人も同然、ってことよね」
 マリューもため息をつく。
「あと、これは推測だが……アコード達は、俺達の心が読める」
「えっ?」
「恐らく、人の精神にまで影響を及ぼすことが出来るんだろう」
「それで隊長が……」
 アスランの推理に、シンは得心する。
「……ラクスを救出しよう」
 アスランが力強く告げる。
「それしか方法がない。この状況を打開し、プラントを止めるには、彼女の言葉がいる」
 その言葉に、シンを始めとしたその場の面々は頷く。しかし。
「僕は、行かない……」
 キラは、ポツリと呟く。
1724/11/13(水)18:05:59No.1252738240+
「は?」
「キラ君……?」
 アスランとマリュー、そして他の周りの者も耳を疑う。
「僕は、行かない。君達だけで、勝手にやってよ」
 思いも寄らぬ宣言をしたキラに、周囲は信じられない物を見るような目を向ける。
「そんな……じゃあ、総裁は……ラクスさんはどうするんですか!?」
 シンはキラに詰め寄る。
「ラクスは、僕より相応しい人を見つけたんだろ。なら、それでいいじゃないか」
「き、キラさん……」
 あまりにも捨て鉢なキラの言い草に、シンは動揺を隠せない。
 部屋が気まずい沈黙に包まれたが、それを破るように後方のドアが勢いよく開き、一人の人物が入ってくる。
「フレイ……」
 ルナマリアが呟く。
 フレイは、部屋に入るやいなや、部屋の中央まで一目散に向かう。そして、キラの顔を見て心からホッとしたような顔をした後、両目から大粒の涙を流し始めた。
1824/11/13(水)18:06:44No.1252738441+
「うあ……うぁぁ…………」
 フレイは、キラの胸に飛び込むと、その胸板を何度も叩きながら叫んだ。
「バカ! バカバカ!! あんた一体何回MIAになったら気が済むのよ!」
「ご、ごめん……」
 キラは唐突に現れた恋人に少し驚きつつ、今まで生存を伝えられなかった事を心から申し訳なく思う。
「もう一人の身体じゃないんだから、しっかりして頂戴!」
「本当に、ごめん……僕は、ずっと君を泣かせてばかりだ。僕がこんなに不甲斐ないから……ラクスも、僕を捨てたんだろうね」
「は……? あんた、何を……」
 いきなり自虐を始めたキラに、フレイの涙は引っ込む。
1924/11/13(水)18:07:02No.1252738537+
「……ラクスは、僕を捨てた!」
 キラは、悲鳴を上げるように叫ぶ。
「僕じゃ駄目なんだ! ラクスの望むものを何一つあげられない。彼女を笑わせることもできない! 僕には幸せにできない! だから彼女は僕を裏切ったんだ!」
「……キラ……」
「それに、結局戦っても何も変わらなかった! 全部彼の……オルフェの言う通りだ! だから、ラクスは僕を捨てて彼を選んだんだろ!」
「それに何より……二股だし……」
「「「「……」」」」
 最後は流石に誰も反論できず、再び沈黙が場を支配する。
 それを破ったのはアスランの行動だった。
 アスランは唐突にキラの胸倉を掴むと、そのまま思い切り殴り飛ばす。
「「「「!?」」」」
 周囲の動揺もお構いなしに、アスランはキラを怒鳴りつける。
「さっきから聞いていればくだらない泣き言ばかりで何だお前は! 自分が自分がばっかりで彼女の気持ちなんかひとつも考えてないだろ! もういい、そんなに戦うのが嫌ならここでいじいじ腐ってろ!」
 それを聞いたキラはゆらりと立ち上がり、ゆっくりアスランに近づく。
2024/11/13(水)18:07:26No.1252738657+
「……痛いんだよ!!」
 そう叫ぶや、キラはノーモーションの裏拳を目にも留まらぬ速さでアスランの顔に叩き込む。アスランも咄嗟に対処できず、まともに食らい吹っ飛ばされる。
「……っ、やったなこの!!」
 怒りに我を忘れたアスランは殴った理由も忘れ、キラに掴みかかる。そのまま、二人は取っ組み合いの殴り合いにもつれ込んだ。
「そんなだからお前は!!」
「五月蠅い!! 君に、何が分かる!!!!」
「ちょ、二人とも止めてください!」
 シンが仲介に入るが、邪魔だと言わんばかりに二人から殴り飛ばされる。
「き、キラ君結構強いのね……?」
 アスランと互角にやり合うキラを見てマリューは慄く。
「大分前から鍛えてるらしいですよ? 二人も美人連れて歩いてるとやっかみに絡まれて困るからって」
「自慢かよ」
 他人事のようにメイリンが説明し、それにノイマンが毒づいた。
2124/11/13(水)18:08:08No.1252738885+
「はいはい、止め止め!!」
 繰り広げられる人類の頂上決戦に待ったをかけたのは、フレイの呆れ交じりの怒声だった。
「あんた達本っ当に馬鹿ね! これからラクスを助けに行くんでしょ。余計な怪我してどうすんのよ!」
「そ、そうだな……済まない」
「……」
 アスランが素直に謝ったのに対し、キラは無言のまま立ち竦む。
「大体キラも、今更二股がどうとかでラクスが離れる訳ないでしょうが! 私もあの子も、好きでアンタの所に居たんだから!」
「それに、これまで何も変わらなかったからって、これからもそうとは限らないでしょう!? 未来は誰にも分からない。私にも、あんたにも……勿論、ファウンデーションの連中にもね」
 フレイは、決然とキラに告げる。それでも、キラの顔は暗かった。
「……でも、ここ最近、ラクスはずっと何か悩んでるというか、苦しんでるみたいだった。何回かそれとなく聞いてみたけど、それでも僕に相談もしなかったのは、やっぱり……」
 それを聞くと、フレイは再度呆れたように大きなため息を付く。
2224/11/13(水)18:08:35No.1252739026+
「はあ……やっぱり男ってこういうのはっきり言わないと駄目ね。出来ればあの娘の口から聞くべきだったんでしょうけど」
 フレイは腰に手を当て、キラの目をまっすぐに見つめて言う。
「単刀直入に言うわ。ラクスも今妊娠してるの。勿論、あんたの子よ」
「えっ……」
「「「「「「「「ええぇっ!?」」」」」」」」
 キラ以上に周囲から大きな声が上がる。
 そして、全員が一目散にキラに駆け寄る。
「うわーっキラさん、おめでとうございます!」
「いやー先越されちゃったわね!」
「名前一緒に考えさせてください!」
「……チッ」
「えっ……えっ……?」
 あまりに唐突な情報と周囲からの祝いの言葉に、キラの脳はフリーズする。
2324/11/13(水)18:08:59No.1252739143+
「て言うかフレイ、貴女それでいいの?」
 遠巻きに見ていたルナマリアが半ば呆れ気味に問う。
「ラクスに先を越されるとは思わなかったけど別にいいわよ。それにプラントとしても喜ばしいことじゃない? あの娘から第二世代は子供ができにくいってのは聞いてたし」
「えっ!?」
「ま、待って! 何その話!?」
 フレイの発言に、シンとルナマリアは動揺する。
「あっ」
 しまった、と言った面持ちでフレイは口を押える。アスランとメイリンはそれを見て大きなため息をついた。
 一方キラは、周囲の騒ぎを意にも介さず俯いたままだった。
「そうか……ラクスと、僕の……」
 しばらくそのまま一人でブツブツと呟く。
 どれくらいそうしていただろうか。
 キラは、ゆっくりとフレイに向き直る。迷いを吹っ切ったかのような表情だった。
2424/11/13(水)18:09:18No.1252739237+
「僕、行くよ」
「当たり前でしょ。ラクスと、子供の為に行くわよ」
 フレイはまるで慈母のような笑みを浮かべる。
「うん……って、『行くわよ』?」
「ええ、私も行くわ」
「なっ……!」
 キラはフレイの思わぬ言葉に動揺する。
「駄目だ、危険すぎる!」
「レクイエムがある以上、危険なのは地球圏のどこに居ても一緒よ。なら、キラ達の側の方が安全でしょ」
「でも……!」
「お願い! 私もあの子を迎えに行きたいの!」
「……分かったよ。危ない事はしないでね」
「ふっ、待てキラ。俺達を忘れるんじゃない」
 アスランが傷だらけの顔に笑みを浮かべ、キラに語りかける。
2524/11/13(水)18:09:28No.1252739289+
「そうですよ、キラさん!」
「ええ、その通りね」
「ま、ラクス様が身重とあっちゃあね……」
 シン、マリュー、ヒルダも同調する。
「みんな……」
「お前は一人じゃない。もっと周りを頼れ。行こう、ラクスを助けに」
「……うん」
「人と人は……思いの力で繋がっているの。貴方は決して一人じゃないわ。だから、もっと皆を頼りなさい」
 フレイが、再び微笑みかける。
「ありがとう、みんな……」
 キラは、ようやく明るい顔を見せた。
2624/11/13(水)18:09:53No.1252739417+
 改めて、キラ達は作戦会議を開く。
「航跡を分析して、ファウンデーションのシャトルが向かった宙域を絞り込みました」
 メイリンがはきはきとした声で告げる。
「オーブの情報と合わせると、ラクスはおそらく……」
 モニターの、ある一点が発光する。
「アルテミス要塞……厄介ね」
「トリィとブルーとエンジの量子ネットワークを使えば、ラクスの位置は特定できる」
「トリィはともかく、ブルーとエンジって?」
 マリューがキラに問う。
「ああ、ブルーは僕がラクスにあげたトリィと同型のロボットです」
「エンジは私のね。この子よ」
 そう言うと、フレイは懐からトリィと瓜二つの赤い鳥型ロボットを取り出す。その鳥型ロボット――エンジは、ミーティングルームの天井近くを飛び回った。
「とにかく、近づきさえすれば、居場所がわかるのね?」
「もしも……まだラクスが持っててくれるなら、だけど」
2724/11/13(水)18:10:14No.1252739518+
「艦はどうするんですか? こっちにはマトモに戦えるモビルスーツもないし」
 シンがもっともな疑問を呈す。
「艦を調達することはできるかもね。まあちょっと……というか、大分荒っぽいやり方だけど」
 マリューは、少し悪戯っぽく微笑む。
「……モビルスーツの方は、私がなんとかできるかも」
 エリカが、真剣な表情で告げる。
2824/11/13(水)18:10:33No.1252739597+
 一同はエリカに案内され、アカツキ島内の地下格納庫に移動する。
「アスハ代表から預かって、新型融合炉と新装備の性能評価実験に使っていたの。こういう事態を想定していたわけじゃないんだけど」
 明かりが付き、そこに鎮座していたのは、キラやシン達にとってなじみ深い機体だった。
「デスティニー!」
「インパルス……!」
「フリーダム……」
 シン、ルナマリア、キラは、かつての相棒との再会に顔を綻ばせる。
「駆動系と武装は昔のままだけど、コントロールシステムは最新のものにアップデートしてあるわ。ブラックナイツに対抗するには心許ないでしょうけど……」
「いや……これさえあれば、あんな奴らなんかに!」
 シンは、自信に満ちた表情で告げる。それを、ルナマリアとアスランは優しい目で見ていた。
2924/11/13(水)18:10:43No.1252739647+
 一方で、一旦キラ達が離れたのを見計らい、フレイはエリカに密かに語りかける。
「……エリカさん、『アレ』の搬入もお願いね」
 エリカは少し渋い顔をしたが、どこか納得したように返す。
「……分かったわ」
3024/11/13(水)18:11:06No.1252739767+
 一旦解散した後、アスランはフレイを呼び止める。
「一つ確認したいことがある」
「何かしら?」
「君はさっきラクス『も』と言わなかったか?」
「ええ、言ったわよ」
「言い間違いじゃないんだな。じゃあそのもう一人は……」
 フレイは何処か妖艶な笑みを浮かべながら、人差し指を唇に当てる。
「……差し出がましいのを承知で言うが、せめてキラには話せ。君の言う通り、あの馬鹿は言われないと気付かないぞ」
「まだ言えないわ。言っちゃったら、間違いなく置いていかれるもの」
「なんなら俺もそうするべきだと思うがな。はっきり言うが、今回の作戦は今までで一番危険だ。俺とキラとシンが揃っていても勝てるか分からないと言えば理解出来るか?」
「あの子が話せなかったのは私のせいだもの。だから私も今は話せないし、あの子を迎えに行く義務がある」
「何故そこまでして……」
「そこまで難しい理屈じゃないわ。私も貴方と一緒。今後の人生はキラとあの娘のために使うって決めてるの」
「どういうことだ?」
 フレイは、どこか皮肉げな笑みを浮かべる。
3124/11/13(水)18:11:27No.1252739876+
「……私は本来、キラの側に居ていい人間なんかじゃないの。キラが居て欲しいって言ってくれたから居るのよ。あの娘がキラと子供を作れないって聞いたのもあるけどね」
「まさか君は……」
「そうでなければあの娘が側に居るだけで良かったんでしょうけど。ああ勘違いしないで。キラも、この子も愛してるって気持ちに嘘偽りはないわ。でも、それとこれとは話は別よ」
 フレイは、自分のお腹を愛おしげに擦りながら告げる。
「……キラもラクスも今更そんなことは望まないと思うがな」
「彼らの望みとかじゃなく、あくまで私自身の戒めやけじめみたいなものよ。そうでないと、自分で自分を赦すことができない」
 アスランはしばらく複雑そうな顔をしていたが、フレイの決意が硬いことを察し、表情を毅然としたものに戻す。
「……分かった。それに関しては俺ももう何も言わない」
「ありがと」
「って言うかキラの奴あの会話を君に話したのか!」
「いやあれ私もラクスもメイリンも直接聞いてたから。ついでに言うとカガリもね」
 それを聞いた瞬間、アスランの顔はゆでだこの様に真っ赤になった。
3224/11/13(水)18:12:03No.1252740057+
 変わらず、オノゴロ島の港に停泊していたミレニアム。その船内に、警報が響き渡る。
「艦長、インジェクションアタックです」
「そうか……」
 ハインラインとコノエは、特に驚く様子もなくそれを受け止める。
 そして間もなく、潜水服と銃を持った正体不明の勢力がブリッジに押しかけてくる。
「動かないで!」
「は、はいっ!」
 銃を向けられ、アーサーは思わず手を上げる。しかし、そうしたのはアーサーだけだった。
3324/11/13(水)18:12:16No.1252740123+
「……僕の計算より二分遅かったですね、ヤマト隊長」
 何でもない事のようにハインラインが告げる。
「えっ……?」
「コノエ艦長……?」
 思わず潜水服のキラとマリューは呟く。
「出航準備は終わっていますよ、ラミアス大佐。その物騒なものも必要ありませんな」
 コノエにそう言われ、キラ達は拍子抜けしたように潜水服のヘルメットを脱ぎ捨てた。
3424/11/13(水)18:12:34No.1252740205+
 ミレニアムへの元アークエンジェルクルーやヤマト隊、そして各種機材の受け入れは滞りなく行われた。どうやらミレニアムクルーのほぼ全員、こうなる事を予想していたらしい。
 そして出発前夜、シンとルナマリアは久しぶりに戻ってきた自室で隣り合ってベッドに腰掛けていた。
 ルナマリアは、ラクス……自分とそう変わらない年齢の女性が母親になると言うのにも驚いたが、それ以上に衝撃だったのはフレイがこぼした内容だった。
 自分たち第二世代コーディネイターは子供が出来にくく、第三世代の出生率低下が既に深刻なレベルに達しているという事。
 それを打開するため、プラント上層部は秘密裏に遺伝子的な相性の良い男女を番わせる「婚姻統制」を行っている事。
 そして遺伝子的な相性が悪い場合、プラントにおいてその二人の結婚は許されないという事。
 アスランを問いただしたところ渋い顔で「本当だ」と認めた為、間違いないのだろう。
3524/11/13(水)18:13:05No.1252740360+
「ねえ、シン」
 ルナマリアは、シンに不安気に問いかける。
「何?」
「もし、もしもの話よ? 私たちの間に子供が出来ないってなったら、どうする?」
「……あんまり考えたくないな、そういうの」
「……ごめん」
「まあでも、もしそうだったら……オーブにでも移住するかな。俺は帰国って事になるのか? 今更どの面下げてって感じだけど。オーブが嫌なら、同じ中立のスカンジナビアとか、赤道連合……はちょい治安が悪いか。親プラントの大洋州とかも悪くないかもしれない。どっちにせよ、俺はルナと一緒にいれるなら何処でもいいよ。勿論、ルナがどうしても子供が欲しいってんなら俺は……」
「っ、シンっ!」
 ルナマリアはシンを押し倒すように抱き着く。
「私も同じ気持ちよ。シンと一緒に居たい。貴方となら何処にだって行けるわ」
「ルナ……」
「大好きよ、シン」
 ルナマリアは涙目で、シンに顔を近づける。シンもそれに応え、唇を重ね合わせた。
3624/11/13(水)18:13:37No.1252740511+
『正直貴方には驚かされっぱなしだけど、まさかこの歳でお祖母ちゃんにされるとは思わなかったわ……』
 最早呆れさえ無くなったと言う口調でカリダが告げる。
 キラは秘密の回線で自身の生存とラクスの懐妊を義母・カリダに報告していた。
「……返す言葉もありません」
『前々から思ってたけど、フリーダムって貴方の下半身の事を言ってるんじゃないでしょうね?』
「そ、それは違うと思う……多分」
『はあ』
 カリダはわざとらしく盛大にため息をつく。
「……でも、いいのかな」
『何が?』
「いや、その……僕なんかが、父親になって」
『……』
「母さんも当然僕の事は知ってるだろ? 僕がそんな人並みの幸せを得ていいのかも分からないし、ひょっとしたら生まれてくる子供にも業を背負わせてしまうんじゃないかって……」
『……貴方が『最高のコーディネイター』とやらに産まれたのは貴方のせいじゃないし、貴方が幸せになってはいけない理由にもならないわ。産まれてくる赤ちゃんも、ちゃんと愛情を注げばまっすぐ育ってくれるはずよ。貴方の様にね』
「母さん……」
3724/11/13(水)18:13:53No.1252740582+
『たとえあなたの出生に罪があったとしてもあなたに罪はないわ。どういう風に育って、どういう選択をするかが大事なの』
『それにね、私は最近こうも思うの。確かにユーレンがした事は、それまでの過程を思えば正しいだなんて口が裂けても言えない。でも、姉さんは勿論、ユーレンもきっと貴方を愛していたし、幸せになって欲しいと願っていたはずよ。私やお父さん、フレイさんやラクスさん、そして他の周りのみんなと同じようにね。そのために貴方に与えた』
 キラの脳裏に、かつて出会った軍人の言葉が過る。
(君のご両親は、どんな夢を託して君をコーディネイターとしたのか……)
「……あ……っ」
『大体私は、貴方がラクスさんを書類上とはいえ未婚の母にしそうな事の方がよっぽど心配なのよ!?』
「す、すいません……」
『まあ……とにかく、その辺は後でフレイさんも交えてじっくり話しましょう。だから、ちゃんとラクスさんを連れて、みんな揃って帰ってきてちょうだい』
「……うん、分かった。ありがとう、母さん」
3824/11/13(水)18:14:05No.1252740640+
「ミレニアムがハイジャックされただと?」
 アルテミス要塞内で、オルフェは兵士からの報告を受ける。
「はっ。プラントならびに大西洋連邦への通達があり、衛星画像でもドック周辺で人と物の移動がにわかに激しくなっております」
「ふん! オーブめ、やはりな……」
 オルフェは、後ろに控えているシュラに目配せをした。
3924/11/13(水)18:14:23No.1252740726+
 出航の朝、キラ達はミレニアム艦橋で作戦会議を行っていた。
「僕らはアルテミス要塞に潜入して、ラクスを救出」
「ミラージュコロイドを使って、敵の探知をくぐり接近する――ニコルの戦術だな」
「我々は主力艦隊を突破して月へ」
「囮になる、ということね」
 キラ、アスラン、コノエ、マリューが発言する。
「いえ、こちらの素性が知れれば、奴らはすぐにオーブを襲う。その前にレクイエムの無力化は必須。レクイエム本体はシールドで覆われ、通常火力による破壊は不可能。ビーム中継ポイントはミラージュコロイドで偽装されていて、発射されるまではどこに存在するのか予想できない――ただ一ヶ所を除いては」
 ハインラインが早口でまくし立てしながら、モニターを操作する。
「ご存じかと思われますが、第一中継ポイントだけは、必ずレクイエムの真上、射線上にあります。発射直前であれば、確実に」
 ハインラインが、口元をニヤリと歪めながら図を示す。
4024/11/13(水)18:14:46No.1252740845+
 会議が終わり、出航直前。
「では、ラミアス艦長」
 コノエが、マリューに席を譲ように手を向ける。
「ええっ!? いえ、そういうわけには……」
「この艦は、今はコンパスでもザフトでもない。反逆者……いわば海賊です。それにふさわしい戦い方を知る者が、この席に座るべきだ」
「……わかりました。では、コノエ大佐には副長をお願いします」
「喜んで!」
 コノエは、勇ましく敬礼して見せる。その後ろで元副長となったアーサーが「ええーっ!?」と絶叫していたが、特に誰も気には留めなかった。
 自然な流れで操縦席に就いたノイマンは、状態を読み上げていく。
「各部チェック終了。メインエンジン出力上昇中。定格まで三十秒。出航準備完了」
「もやいを解け」
「水流ジェット、接続」
「港を出る。ミレニアム前進、第一戦速」
 ミレニアムは、その巨体を港から出航させる。
4124/11/13(水)18:15:02No.1252740933+
『停船せよ! ミレニアム、ただちに停船せよ! 従わない場合は貴艦を攻撃する!』
 オーブ防衛軍から、ミレニアムに向けて警告が送られる。
「針路このまま! 両舷第二戦速!」
「ええっ! でも……」
 アーサーが懸念を示すが、ミレニアムはそのまま進み続ける。予告通りオーブ軍からは攻撃が行われるが、その悉くが周囲に着弾するのみで、一発も当たらなかった。
4224/11/13(水)18:15:18No.1252741013+
スレッドを立てた人によって削除されました
「はあ……やっぱり男ってこういうのはっきり言わないと駄目ね。出来ればあの娘の口から聞くべきだったんでしょうけど」
 フレイは腰に手を当て、キラの目をまっすぐに見つめて言う。
「単刀直入に言うわ。ラクスも今妊娠してるの。勿論、あんたの子よ」
「えっ……」
「「「「「「「「ええぇっ!?」」」」」」」」
 キラ以上に周囲から大きな声が上がる。
 そして、全員が一目散にキラに駆け寄る。
「うわーっキラさん、おめでとうございます!」
「いやー先越されちゃったわね!」
「名前一緒に考えさせてください!」
「……チッ」
「えっ……えっ……?」
 あまりに唐突な情報と周囲からの祝いの言葉に、キラの脳はフリーズする。
4324/11/13(水)18:15:24No.1252741029+
「ふっ、茶番だな」
 監視衛星からの映像を、オルフェは鼻で笑いながら眺める。
「オーブ官邸に繋げ」
「はっ!」
 カガリの元に、ファウンデーションからの通信が入る。
『我々の警告を無視してくれたようですね、オーブは』
「何の話だ! 回答までの時間はまだあるはずだぞ。こちらは今、貴国の要求を議会に諮っている」
『見え透いた小細工だ。ミレニアムの動きはこちらも摑んでいる。十分後、貴国に向け、レクイエムを発射する』
「なっ! 待ってくれ! ミレニアムは何者かにハイジャックされたのだ! 先ほどプラントにも……」
『言ったはずだ。少しでも動きがあれば撃つと』
「誤解だ! 我々はこの件に何も」
 しかし、すげなく通信は切られる。
「……遅かれ早かれ、どうせ撃たねばならぬ国です」
 オルフェは、隣のアウラに悠然と告げた。
4424/11/13(水)18:16:02No.1252741216+
「……全国民の避難を急がせ、オーブ軍は全力でこれを支援せよ!」
「はい!」
 カガリの命令に、オーブ閣僚たちは大急ぎで動き始める。
「政府機能はオノゴロ島防空施設へ移す! 急げ、10分しかない!」
 カガリたちは、『次』を担うトーヤを逃がしつつ、迅速に準備を整えていく。
「後を頼むぞ、トーヤ」 
「カガリ姉さま……お気をつけて」
 カガリがうなずくと、トーヤは護衛の兵士たちとヘリに乗り、その場を離脱した。
「アスハ代表!」
 軍服姿のミリアリア・ハウとサイがカガリに駆け寄る。
「ストライクルージュ、キャバリアーアイフリッド2、準備完了です。急いで!」
「ああ!」
 自らの愛機に乗り込んだカガリは、首から下げた指輪を握りしめながら祈る。
「お父さま……民を、キラ達をお護りください!」
4524/11/13(水)18:16:33No.1252741362+
「機関最大、離水!」
「メインスラスター、エンゲージ!」
「ミレニアム、発進!」
 一方、ミレニアムはエンジンを点火し、上空に向かってその翼を広げる。
「艦長、ファウンデーションが!」
 そこに、アーサーが月面のエネルギーが急速に高まるっているのを報告する。
「やはり、騙されてはくれんか!」
「向こうは初めからオーブを撃つつもりだったのよ! 口実さえあれば!」
 キラはマリューとコノエのやり取りを聞き、ある決断を下す。
4624/11/13(水)18:16:52No.1252741441+
「さらばだ、オーブ……」
 レクイエムの発射準備が整ったのを確認したオルフェは、口元に笑みを浮かべる。
 しかし。
『ファウンデーション、聞こえるか? こちらはミレニアム、キラ・ヤマト』
 スクリーンには、葬ったはずの男の顔がそこにはあった。
「何だと!?」
『残念だったね。僕はまだ生きている。自分の国民を核で焼いてまで殺そうとしたのにね』
「どういう事だ、シュラ!」
「馬鹿な!? あの状況で!?」
 オルフェはシュラを詰めるが、シュラも状況を飲み込めていないようだった。
 それを知ってか知らずか、キラは続ける。
『君達は人類を導く者なんかじゃない。ただの殺戮者だ! 僕達は真実を知っている。証拠もある。世界中にそのことを訴える。君達の負けだ! アコードか何か知らないが、虐殺者の企みは絶対に潰す!』
 ――あと、言うまでもないことだけど。ラクスは、絶対に返してもらう。
 キラは、心の中でその一言を付け加えた。
4724/11/13(水)18:17:05No.1252741506+
「言わせておけば……!」
「母上!」
「あの出来損ないを殺せ! レクイエム、目標はミレニアムじゃ! 撃て、わらわの命じゃっ!!」
 激昂したアウラが、扇子を振りかざしながら命令を下す。

「月の裏側に高エネルギー反応!」
 レクイエムの発射を察知したハインラインが報告を告げる。キラの挑発でこちらに気を引くことに成功したが、自分達が墜ちてしまっては元も子もない。
「タンホイザー起動! 緊急制動!」
 ミレニアムは、減速しつつ大気圏離脱の準備を進める。
 直後。
 ミレニアムのすぐ傍を、巨大なビームが横切る。それはそのまま海に着水し、凄まじい爆発を引き起こす。
 回避を確認すると共に、マリューが叫ぶ。
「てーっ!!」
 ミレニアムはタンホイザーを発射し、針路に電磁ストリームが発生させる。陽電子砲によって針路が真空状態になると同時に、周囲の大気が一気に流れこみ、その圧力波に乗って艦体が加速していく。
 ミレニアムは全てのスラスターを全開にし、その巨体を宇宙へと押し上げていった。
4824/11/13(水)18:17:28No.1252741610+
「全軍に告げる。これより我々は祖国防衛のため実力を行使する!」
 ミレニアムの出発を確認したカガリは、再びアナウンスを発する。それと同時に、カタパルトで地上にせりあがって来た『アメイジングストライクルージュ』はフェイズシフトを展開する。
『国土防衛指令、発令! コンパス理事国、ミレニアム、エターナルと戦術リンクを構築! 軍は民間人の安全を第一に、即避難誘導を実行せよ!』

「フレイ、行っちゃったわね」
「分かってるよ」
 宇宙へ向かって飛び立つミレニアムを、キャバリアーアイフリッド-2の映像で確認しながら、ミリアリアはサイに話しかける。
「こんな時に聞くのもあれだけどさ、あの三人の事どう思ってるのよ?」
「いやまあ……最初は驚いたけど、始めたのはフレイなんだろ? ならいいよ、彼女の望んだことなら」
「はあ……」
「なんだよ」
「ほんと、サイっていい奴よね」
「……自分で言うのも何だけど、よく言われる」
「じゃあ私からも言わせてもらうけど、このままだと絶対人生損するわよ。少しはフレイの我儘さを見習いなさいな」
「……考えとくよ」
4924/11/13(水)18:21:32No.1252742789そうだねx3
どうもお久しぶりですキラフレ「」です
久々+いきなりのクソ長投稿すいません
種自由って2時間の間に情報がみっちり詰まっててただ書き起こすだけでも結構大変です
多分今月中には終わらせられると思うのでそれまでお付き合いいただけたら幸いです
いままでのまとめです
https://www.pixiv.net/novel/series/11861256
今回の分は22と23です
ではありがとうございました
5024/11/13(水)18:28:25No.1252744877+
スレッドを立てた人によって削除されました
「私と貴女で、共にこの世界を統治するのです」
 ゆっくり歩み寄ったオルフェは、ラクスの手を取る。
「感じるでしょう?」
 また『あの感覚』がラクスを包む。
「共に、貴方と……?」
「我らは互いに惹かれあい、結ばれる運命……」
 オルフェは、ラクスにラクスに顔を近づける。ラクスもまた、無意識のうちに顔を近づける。
 しかし、ラクスの中の『何か』が彼女を止めた。
「……っ!」
 我に返ったラクスは、オルフェの手を振りほどき彼から離れる。
「わたくしの愛する人は、貴方ではありません!」
 ラクスの宣言にオルフェは一瞬苦虫を嚙み潰したような顔を見せるが、すぐに取り繕う。
5124/11/13(水)18:30:08No.1252745409+
スレッドを立てた人によって削除されました
 出航の朝、キラ達はミレニアム艦橋で作戦会議を行っていた。
「僕らはアルテミス要塞に潜入して、ラクスを救出」
「ミラージュコロイドを使って、敵の探知をくぐり接近する――ニコルの戦術だな」
「我々は主力艦隊を突破して月へ」
「囮になる、ということね」
 キラ、アスラン、コノエ、マリューが発言する。
「いえ、こちらの素性が知れれば、奴らはすぐにオーブを襲う。その前にレクイエムの無力化は必須。レクイエム本体はシールドで覆われ、通常火力による破壊は不可能。ビーム中継ポイントはミラージュコロイドで偽装されていて、発射されるまではどこに存在するのか予想できない――ただ一ヶ所を除いては」
 ハインラインが早口でまくし立てしながら、モニターを操作する。
「ご存じかと思われますが、第一中継ポイントだけは、必ずレクイエムの真上、射線上にあります。発射直前であれば、確実に」
 ハインラインが、口元をニヤリと歪めながら図を示す。
5224/11/13(水)18:47:33No.1252751255そうだねx2
スレッドを立てた人によって削除されました
きんたま
5324/11/13(水)19:07:57No.1252758646+
生きてたんかお前!相変わらずクオリティ高い…
5424/11/13(水)19:08:49No.1252758998+
>生きてたんかお前!相変わらずクオリティ高い…
何回か死にかけましたが生きてます
5524/11/13(水)19:12:25No.1252760362+
ノイマンちょいちょいひがんでて笑う
5624/11/13(水)19:12:40No.1252760444+
> 繰り広げられる人類の頂上決戦に待ったをかけたのは、フレイの呆れ交じりの怒声だった。
ここすき


1731488360676.jpg