自分をこの様にしたのはあいつだ、今眼の前にいる。 百寿の王は一度失われた憎しみが再び心を満たしていくのを感じている。 憎悪の花を咲かせ、怒りの葉を散らすそれは、もはや無差別に人を害する機構へと変化しつつある。 それでいい、それでいいと思う、この憎しみを産んだアイツを滅ぼす事が出来るなら何を犠牲にしても…。 そうやって底の見えないくらやみに踏み出そうとしたその時、後ろから悪魔の声が聞こえた。 「なんだ、獣に戻るのか、まあ我はそれでも構わんが1つだけ、娘が苦しんでいるぞ」 百寿の王は悪魔からの天啓を受け振り向いた。 ああ苦しい、息が出来ない、身体から熱が無くなっていく、操り人形が順番に糸を引き千切られるみたいな感じ。 そうか、これで終わりか、思ったような終わりじゃなかったけど、突然だけどいつか来るとは思っていたし、後悔、後悔は、あるけれど。 花ちゃんにデスブレイド様、お父さんは大丈夫かな…。 彼女は長くは生きられない身体だった。 だけどその運命を恨むような事はしなかった、彼女はその生命を懸命に輝かせていた。 それなのにこんな終わりだなんて、狩りでもなく争いですらなく、戯れに生命を摘み取られてしまうだなんて、そんなの、そんなの許せるはずがない。 「そうか、許せないか」 悪魔は囁く。 「ならばどうする、復讐するか?」 「我は悪魔だ力を授けてやってもいいぞ」 「ただし代償が必要だ」 「お前は何を差し出して何を得る?」 悪魔は、囁く。 「最後まで旅を続けられないのは残念だけれど、この娘が死んでしまうのはもっと耐えられない」 「だから僕の生命を捧げる、イレーヌを助けてやって欲しい」 「よかろう」 獅子の願いは聞き遂げられ 契約が悪魔の力を目覚めさせる。 「貴様のその後悔と生命を代償にする」 「我はザンネン・デスブレイド」 「あまねく生命の後悔を糧にする悪魔」 百寿の王は生と死のサイクルをその身に宿す魔獣である、デスブレイドはその1と0、静と動の概念を変容させて彼の肉体を1つの種へと変化させた。 種は苦しむイレーヌの胸へと吸い込まれる様に消えていった。 「契約完了だ百寿の王」 「お前は自らの生を捨てた後悔と共に」 「娘の心臓として生きるのだ」 「娘が死ぬまで永遠にな」