ルカに突然連れてこられた岩陰。夏の海辺。二人きり。遠くからは、皆の賑やかな声がする。 見上げてくる赤い瞳は、普段とは違ってそわそわと忙しない。一方でその口は、ずっと沈黙を保ったままだった。 空から降り注ぐ陽光。海面と、彼女の白い肌をキラキラと彩る。乾いた喉は多分、暑さのせいだけではなかった。 「……貴方に、だけよ」 突然、彼女が口を開く。言葉の意味を問う間もなく、その腕は、纏った着物を解き始めた。 止めるべきか、止めざるべきか。あるいは、その奥を見るべきか、見ざるべきか――理性と欲望の天秤が片方に振り切れるより早く、着物の前が開かれる。 現れたのは、真っ白な肌と――黒い布に覆われた、カタチの良い胸。 ぽかんと見つめていると、彼女の着物がぱさりと音を立てて地面に落ちた。一呼吸の後、見上げてくる赤い瞳ともう一度視線が絡む。 「――っ!」 それはすぐさま逃げ出して、さらりと流れた髪の向こうで、頬には朱が差していた。 「……な、なんとか、言ったら……っ!」 絞り出す様な声に押されて、まじまじと彼女を見つめる。 小柄な体躯にスラリとした手足。けれど決して肉付きが悪いと言う訳ではなく。小さく華奢な彼女の体つきに比べれば、その胸の膨らみは十分なもので。腰回りのなだらかなくびれといい、十二分に女性らしさを主張していて、魅力的だった。 その上に、お腹の前で組まれた手と不安げに擦り合わせた足。恥じらう様に科を作ったその身体は、見ているだけで男の本能に訴えかけてくる。 華美な装飾はなく、控えめに主張するフリル付きの黒い水着。彼女にしては幼くも思えるそれは、派手すぎず、かと言ってシンプル過ぎもしない。真っ白な肌と美しいコントラストを作り、互いを引き立てて……そんな彼女の姿はいつもより何倍も、小さく、華奢で、そして愛おしく見えた。