二次元裏@ふたば

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708519 B24/11/09(土)22:22:00No.1251547507そうだねx5 23:31頃消えます
イモゲンチャー自キャラの怪文書を書きました
今回逆井平介には思いっきりへこんでもらいます
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自キャラ
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また、ちょこっとですがキャラをお借りしています
お借りしたキャラ
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以下冒頭を貼っていきます
このスレは古いので、もうすぐ消えます。
124/11/09(土)22:22:36No.1251547812+
泣き虫狼 5話

 憧れがある人は幸いだ。どこまでも追いかけるための強い意志を持てるから。確かな目標がある人は幸いだ。どこまでも進むべき道が見えているから。
 じゃあ、そのどちらも否定されることになったら、その人はどう思うんだろう。おれには分からない。
224/11/09(土)22:23:23No.1251548185+
長く続いた雨がようやく止んだ。朝日が照らす水溜りが目に眩しい。青い影と透明な日差しが雨上がり特有の空気を伝える。

 どちらかといえば雨は好きな方だけれど、それでもカラッと晴れた日差しの気持ちよさには叶わない。何となくソワソワとしてしまう。今日は休日で何も予定はない。だから何をしたっていい。朝ごはんにも早い時間だが、思い切って出かけることにする。大人っぽくなりたいと思うけれど、こんな風に一日を決めてしまうことが楽しい。こういうところがまだ子供なのかなと思ったりする。

大学までの道を遠回りして歩く。

 雨の名残を避けながら、スッキリとした空気を胸いっぱいに吸い込む。淀んだ空気が入れ替わる感覚だ。ただでさえ気持ちのいい雰囲気の中、さらに気持ちが良さそうな道を選ぶ。自然公園の遊歩道だ。まだ湿ったままの葉っぱには艶がある。蜘蛛の巣に引っ付いた水滴が不思議な模様を浮き彫りにし、風に揺れる葉擦れの音や鳥の囀りが耳に心地よい。
324/11/09(土)22:24:00No.1251548466+
ウッドチップの散りばめられた足元は、水を吸ってぎゅむぎゅむとおかしな足音を生む。時折すれ違う散歩の老人やジョギングに汗を流す人たち。不穏な暗がりを湛えていた春先――アヤタラモンの騒ぎ――とはうって変わって、爽やかな明るさに満ちている。

 ふと思いついて辺りを見回す。せっかくだからあの子たちに挨拶をしようかと思いついたのだ。見える限り人はいないし、電柱もないからカメラの心配もない。それでもこそこそと遊歩道から外れて茂みに入り込む。
 まだ葉に残った朝露が服を濡らす。それもすぐに乾くだろう。気にせずガサゴソと奥へと突き進む。最後に見事な枝ぶりの紅葉をくぐれば、そこは木々が作った秘密のドームだ。そこは街の片隅で健気に暮らす、小さいデジモンたちの隠れ家である。

 久しぶりと声を掛ける。警戒心を全面に押し出した雰囲気が和らぐ。小さな幼年期、ピョコモンやタネモン、ユラモンを背後に、サイケモンとラブラモンが平介を迎えてくれる。
424/11/09(土)22:24:50No.1251548829+
 まだ寒さの抜けきれない頃、この公園にはリアルワールドから迷い込んだアヤタラモンがいた。今はもうデジタルワールドへと帰って楽しく過ごしているはずだが、平介が閉じるまでにこのゲートは何度か開いていたらしい。この小さなデジモンたちはその時に迷い込んできた子たちなのだ。

 この子らの存在を平介が知ったのは当のゲートを閉じたあと。今日と同じように散歩していたところを話しかけられたのがきっかけだった。アヤタラモンに怯えつつも平介――ヴォルフモンとアヤタラモンとの戦いを見ていたのだという。防犯カメラの映像から平介を見つけ出した、かのお嬢といい、どこで誰が見ているか分からないものである。
 
 迷い込んできたデジモンであることだし、本来なら何とかしてやるべきかと思って話をしてみたのだが、この子たちなりにリアルワールドへ適応していたのだから面白い。デジモンという強大な敵がいないというのは少なくないメリットだと感じたらしい。まあ時々野良猫に泣かされているらしいので苦労もあるとのことだった。
 
524/11/09(土)22:25:55No.1251549274+
「おはよう。久しぶりにお邪魔しに来だよ。」
「ヘイスケ久しぶりー!なんかお土産ある?お土産!」

 いつでも逃げ出せるようにサイケモンの後ろに隠れていたユラモンが平介の元へと飛び込んでくる。遅れまいとピョコモンとタネモンも平介に齧り付いてくる。
 この子たちはお土産があることを疑わない。だから、お土産が出てくるまで離れることはない。平介が鞄から菓子パンを取り出すと途端に静かになる。そして平介から離れて競い合うようにどれを食べるかでおしゃべりが始まる。その隙に、ラブモンとサイケモンと話をする。

「元気にしてだが。ながなが遊びに来る時間がなぐって久すぶりになったっけ、すまんなぁ。」
「ふふ、僕らは元気だよ。ここは過ごしやすいし、食べるものもあるからね。平介も元気みたいでよかった。」
「最近は僕たちの生活も結構安定してきてるからね。それより聞いてよ。僕たち神様扱いされてたりするんだよ。」

 信心深い老婆が掃除する御堂で遊んでいたら、神様が遊びに来たのだと拝まれてしまったらしい。その様子をラブラモンが面白おかしく語り、平介は声をあげて笑う。
624/11/09(土)22:26:36No.1251549569+
「それでね、僕たちをずっと拝んでくるから、僕たちも何かしなきゃって御堂の掃除とかしてるんだ。そしたらお供え持ってくるからさ、もう御堂に移ってもいいかなって思うくらい!」

 なかなかうまく都会に適応しているようで一安心だ。予期せぬリアライズで困っているデジモンを助けたい。そう思って頑張ってきたが、このような形で人とうまく付き合っていけるのならば、平介の助けなどいらないのだ。誰も困って泣いたりしない、それが一番嬉しい。

「でも、僕たちの中にも新しい居場所を探して出ていった子がいるから、いなくなったら驚かせちゃうかなって悩んでるんだ。ゴブリモンのこと、覚えてるでしょ?」
「おお、もぢろん! おれの剣さ真似すてくれでだもん。会いだぇなぁ。でも出でいったっけのが。」
「うん。ここはあまり大きくないからって、出て行っちゃったんだ。自分がいたらご飯もたくさん必要になっちゃうからって。」
「そうが。優しい子だったもんな。」
724/11/09(土)22:27:13No.1251549850+
「ね、平介、様子を見に行ってもらっていい? 僕たちが移動するかもって事、教えてあげて欲しいんだ。それに、もし困ってたら、ううん、困ってなくてもいつでも戻ってきていいんだよって伝えてほしいんだ。僕たちだってちゃんとちゃんと稼げてるんだからって。」

そう二つ返事で請け負って、彼がねぐらにしているという公園へと向かうことにした平介であった。
824/11/09(土)22:29:13No.1251550716そうだねx2
以上が開幕になります。
また長々とした話になりましたが、お付き合い頂ければ光栄です

本当はもっと短く明るい話を書くつもりだったんですが、何故か長く暗い話になってしまいました
不思議!
924/11/09(土)22:53:29No.1251561662+
ばかすか躊躇いなくデジモンを倒せる織姫ちゃんや文華が覚悟決まりすぎているだけで相手にこれだけ寄り添えるのは逆井くんの美徳だよね
1024/11/09(土)23:19:41No.1251572912そうだねx1
ログに残るのって10レスは必要だった気がしますので、蛇足もいいところな設定語りでもします
読まなくてもいいやつですね

前にも書きましたが、逆井平介はゴーストゲームを見て面白さのあまり自分でもやりたくなって出てきたキャラクターです
イメージは半泣きで立ち向かう姿です。トウマ君のお題絵とお手書きにかなり影響されていたりします。
で、この5話は当初から絶対にやりたかった話です

平介はなにかと受け身で今ひとつ勇気がありません。デジモン相手には役目と自分の決意がありますから割と積極性を見せます。しかし人間同士の関係についてはどこまでも受動的なままです
1124/11/09(土)23:20:47No.1251573358そうだねx1
なので、今までの話では先輩によって無理やり連れ出され、自己主張しないとどこまでも好き勝手振り回されることを思い知ってもらいました。また、千本桜さんに好き勝手されないために抵抗をすることを覚えます。同年代相手に誰もが普通にすることを学び始めました。そして文化祭で鞍馬さんと青石君という年下相手にいいところを見せたいという見栄が出てきます。自分が村の大人に対して抱くような立派な姿を見せたいと思うわけです。(キャラをお借りさせていただき本当にありがとうございます)

そして今回、それだけではまるで理想に届かないを学びます。どれだけ役目を果たそうと、平介自身の情けない姿がそのままでは意味がないのだと悟ります。
本当の意味で頼られる人間にならない限りは、平介がそう願ったように困った人を助けることは出来ないことを思い知ってもらいました。
1224/11/09(土)23:21:32No.1251573651そうだねx1
困りごとに追い詰められる前に何とかする。誰も泣かないままに解決する。そのためには泣いてばかりでは居られないのです。泣き言を垂れ流す人間に頼み事をするような人は居ません。だから今回の問題が起きた。そう平介は考えました。

もちろんゴブリモン達の考えは逆です。親身になって自分たちのために泣いてくれるからこそ、心配をかけたくないと思うわけですから。

ともあれ、ここから平介は頼れる男になる、そういう理想を持って大学生活を過ごすことになります。簡単ではなく、当然のごとく泣きますし泣かされていきます。それでも確かに理想の姿へと踏み出していきます。
つまりはそのための一歩を書きたかったというわけです。
1324/11/09(土)23:25:17No.1251575192+
しかし、長峰とホーリーエンジェモンの話がどうにも長すぎたので、反省を込めて短い話をたくさん書くつもりで書いていたのですが、締めの話とはいえ長くなりすぎたのはこれまた反省です。

ともあれ平介の話は当初の予定通り区切りのいい所まで来たのでひとまずこれにて。

それでは。


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