旅の一幕  兄を探し旅に出た少年ロカは見返りの森にて良く動きよく喋る煩い剣と出会った。  なんやかんやあり一緒に旅をする事になった一人と一振りは現在北の大陸の洗礼を受けていた。 「いや〜!こんな寒いとか聞いてない!むり!刀身が冷えてキンキンになっちまうよぉ!」 「……黙ってろ、この寒さでお前のお喋りを聞き流す余裕は俺には無い」 「そんな事いってもよぉ…」  轟々と風と共に雪が舞い視界が白く染まっていく。ミツルギ(見返りの森の剣)の柄にもロカの炎のような髪にも雪が重くのしかかっていく。頭を振り雪を落としながら何とか目を凝らし前へと進むが全てが白いこの空間で果たして本当に前へと進めているのかロカには分からなかった。正直ミツルギのお喋りには助かっている、この吹雪の中で逸れるわけにもいかず声がする限りは側にいると分かり安心して足を進められる。 「おっ!?見ろよロカ!」 「っ見ろと言ったってこの視界じゃ…!」  ミツルギが声を上げた瞬間吹雪が晴れ、陽の光が雪原を照らす。そしてロカとミツルギの前には湯気湧き立つ温泉街が出現していた。 「っ助かったー!街だぜロカ!しかもこの感じは温泉街だ!」 「こんな場所に温泉街があるなんて酒場では何も聞いてないぞ…それにさっきまで確かに俺たちは何もない雪原に…」 「細かい事は良いじゃねぇか!とりあえず宿取って温泉で温まろうぜ!」  ミツルギはロカの背をせっつき待ちの方へと追い立てる。ロカも疲れている身体を休ませるのは賛成だったのかローブの雪を払い街へと足を踏み入れた。  街へと入る一人と一振りの後ろでクスクスと何かが笑う。次の犠牲者への嘲笑かそれとも遊び相手への期待か。一人と一振りが街に消えると再び雪原に吹雪が轟々と吹き荒れた。 ━━━【クエスト[雪原の幻]での一幕】