トレセン学園では、変なことが流行ることがある。 外と隔離された乙女の花園なので、まぁ仕方ない部分もあるのだが、それでも変なのは変である。 「ハクマイちゃん、ゲンクロウちゃん、トレ吸いってしてますか?」 「いきなり何を聞いてくるんだい!?」 「シンクさん、如何したんですか」 一緒にお茶を楽しんでいたカンナンシンク、ハクマイ、サキガケゲンクロウ。 だがシンクの思いがけない質問に、ハクマイは飲んでいた抹茶ラテを吹き出しかけ、ゲンクロウも動揺していた。 「最近、トレーナーさんを吸うのが流行ってるから」 「いや、僕も聞いたことあるけどさ、吸う物かなトレーナーって」 「拙者もその、吸ったところで」 トレ吸い、猫のようにトレーナーを吸うことでいろいろいいことがあるとかないとか。 最近ではトレセンで流行ってるらしいが、聞かれた二人は縁がなかった。 「シンクちゃんは、吸いたいの?」 「…エアグルーヴ先輩もたまに吸ってるし」 「それは匂いを嗅いでるだけでは?」 カンナンシンクを可愛がっている、そしてたまに吸ってるエアグルーヴ。 彼女の場合は異臭がしないか確認してるだけだと思うが、昨今の流行のせいで勘違いしているかもしれない。 「まぁ吸う吸わないはともかく、僕はいいかな」 「拙者も、近くにいれば安心するし」 「そうなんですね」 興味はないというか、吸わなくても傍にいれば二人にとっては十分だった。 「シンクだってお昼寝してたらトレーナーさんやエアグルーヴさんに抱っこされてたりするんだし、無理に吸わなくていいと僕は思うな」 「ハクマイちゃん、うん、そうだよね」 「そうと決まれば、ボードゲームしようぜ、デュアルブースターももうすぐ来るし」 「なにをするんですか?」 「今日はドンジャラ持ってきたんだ」 乙女の切り替えは早く、話の次は遊びに、青春にも全力であった。