重力制御ユニットについて 今回搭載された重力制御ユニットは推進補助・短距離飛行・バリア発生の機能があります。 重量軽減機能により今までより2割ぐらい重いものが積めるようになっています。 推進補助機能は速度が+50km/hぐらいになります。 飛行距離は1km程、上昇限度は対地高度300mぐらいです。 バリアの展開時間は車体を覆うサイズで1分間ほどです。 飛ぶ高さを低くしたりバリアを小さくすることで稼働時間が延ばせます。 飛んでいる間はフロントウインドウに各種情報が投影されます。 またステアリングは飛行操縦に対応できるよう前後に動かせるようにしました。 地上走行時は前後方向はロック可能です。 これらの機能は追加されたバッテリーで稼働しています。 走行中の減速エネルギーやエンジン、外部電源などから発電・充電が可能です。 飛行操縦練習用にシミュレーターモードも搭載しました。 実際に飛ぶ前にまずはこれで練習されることをおすすめします。 おまけ 「じゃあ操作マニュアルと整備マニュアルはクロスローダーで見れるようにしておいたよ。」 図書館近傍、着地した輸送艦「ちた」の艦内。 重力制御による飛行が前提となっているちた型輸送艦は旧型のみうら型輸送艦を基にして設計されている。 平底船体でないと着地できないからである。 今は艦首バウ・ランプを開放し車両がそのまま出入りできる状態になっている。 その奥の格納庫内の一画にバギーが停められていた。 そこに2名の人間と2体のデジモンがいる。 バギーの持ち主である倉間舞、彼女のパートナーであるバコモンとブラックテイルモンUber。 そしてこの艦に乗り込んで先日まで目の前に聳える「図書館」を襲撃していた名張蔵之助である。 娘に殴られた鼻っ面の絆創膏も生々しく、表情には普段の自信が感じられない。 「念のため印刷もしておいたよ。耐水難燃紙で作ってあるけどあまり乱雑には扱わないでくれよ?」 月刊コミック誌サイズの、しかしずっしりと重たい本を渡しながら蔵之助が言う。 「空を飛ばすには練習が必要だ。シミュレーターモードも追加しておいた。」 そう言って蔵之助がフロントウインドウを起こして操作をする。 するとスクリーンにCGの地面と空が映し出された。 「ウインドウはヘッドアップディスプレイも兼ねてる。電動でも動くようにしておいたよ。」 ステアリングに追加されたスイッチを押すとウインドウが透明になって前方に折り畳まれた。 「ここまでで何か質問は……倉間君?」 「あっ、はい!すいません!ありません!」 明らかに何か考え事をしていた様子だ。そして蔵之助には心当たりがあった。 このジープの改造作業をしている間に、浮状希理江が舞を訪ねてきたことがあった。 (親子喧嘩は仲直りしたんだって!)希理江は無邪気にそんなことを言っていた。 (やっぱり家族は仲良しが一番だよね!)しかし舞の反応が芳しくなかった。 (そうだね、そうだよねぇ……あんな想い合えるような家族、仲良くしてるのが一番だよね……) 顔や声はなんとか取り繕っていたが、パートナーたちはそうではなかった。 バコモンもブラックテイルモンUberも、微妙に浮かない表情で舞の顔を見上げていたのだ。 「……一華とこの前まで親子喧嘩してた僕の仕事だと、やっぱり不安かい?」 蔵之助はわざと少し意地悪な言い方をした。 「いえっ、そんなことありません!」慌てて否定する舞。 「はははゴメンゴメン、大丈夫、僕はこういう仕事では嘘をつかないよ。」 そう言うと蔵之助はすぐ傍にあったオイル缶を椅子代わりにして座る。 「あの喧嘩はね、僕が親として未熟だったから起きたようなものなんだ。」 「……はぁ。」 「正直言うと僕は子育てには失敗しててね……一華、いい子だろう?」 「ええ、それはもう!」 「あれ、僕じゃないんだ。茜でもない。一華は穂村拝君と出会って、勝手に自分でいい子になったんだ。」 「……!」舞は咄嗟に言葉が出なかった。 「侘助もね、今ちょっと問題を抱えてて……どうしたものかなあ、ってなってるんだ。」 あの明るくて快活な少年が?舞には少し意外に思えた。 「僕は時々、自分は親失格なんじゃないかって不安になるよ。それなのに更に三つ子まで……」 蔵之助は額に手をあてて天を仰ぐ。 「そんなことないって!」思わず敬語を忘れて舞が声をあげる。 「蔵之助さんはちゃんと一華ちゃんの話を聞いてあげたんでしょ!ちゃんと子どもの声に耳を傾けられるじゃない!」 舞の様子に蔵之助は一瞬きょとんした表情をする。 「子どもの声を聞くのは親なら当然じゃ……ああ。」蔵之助は何か得心がいったような顔をする。 「そうか、そういうのを全く聞かない親もいるね、うん。」 何かを思い出したのか、少し遠い目をしている。 「……倉間君、親だってね、最初は初心者なんだよ。子どもとの接し方についてはズブの素人から始めるんだ。」 舞には、蔵之助の言わんとしていることの察しがついた。 「だいたいの親はね、自分が子どもを良くしなきゃ、幸せにしなきゃ、って考えで動いてる。でもね?」 立ち上がってジープのボンネットに手をつく。 「それは往々にして独善的で押し付けがましいんだ。子どもにはたまったもんじゃない。」 「……そうですね。」 「子どものことが憎いとか愛してないとかそういうことはないんだ。むしろ愛してるからこそ、やらかすんだ。」 「そういうものなんですか?」少し予想外の言葉だ。 「そういうものさ。愛してなかったら、ネグレクトとかの方向に行くからね。」 「……!」 「だからさ、今すぐじゃなくていい。いつの日か、で十分だけど、」 そこで一旦言葉を切る。バコモンとブラックテイルモンUberを見る。 「親のことを許してあげられるように、なってほしいな。」 そう言って2体のデジモンの頭をそっと優しく撫でる。 「心配ないよ、君にはこの二人がついてる。」 「……ありがとう、ございます」 蔵之助はあえて舞のその表情を窺おうとはしなかった。 「さ、説明を続けるよ?」 解説:ちた型輸送艦 全長99メートル 基準排水量2100トン 満載排水量3300トン 装備 各種レーダー・探知装置 62口径5インチ単装砲×1 CIWSファランクス×4 C別所属時代の名張蔵之助が提案したデジタルワールド探索計画の要となる輸送艦。 ガードロモン部隊用輸送トラックとの連携運用が前提であり、艦首ランプを開けて格納庫に収容できる。 1番艦の「ちた」はトラック側の核融合炉の動力で重力制御ユニットを稼働させ、飛行能力やバリア展開能力を有する。 2番艦「つねがみ」では艦側に核融合炉が搭載され1番艦と同様の能力を持っている。 いずれもバイタルブレスや成熟期以下のデジモンでは核融合炉の起動すらできず、最低でも完全体以上のデジモンをコア制御役として必要とする。 安定稼働には究極体以上のデジモン、最大出力の発揮にはデジメンタルを介しての艦との一体化が必要である。 艦の全体をデジメンタル化するプランは開発担当者の名張一華の出奔によって頓挫している。 また艦首に超重力砲ユニットを搭載するプランは設計まで完了した所でキャンセルされている。