白い壁が四方を囲み、真ん中にはテーブルとイスが一組と壁の側面にはマジックミラーもご用意。 それはまるで警察署の尋問室…そのテーブルを挟んでイスに座るのは二人のデジモン。 フェイク・ジョーカーモンとスプシモン(ピエロの姿)である。 ここはイーバ村に設けられたフェイク・ジョーカーモンの私室(遊び場)の一つだ。 「いやぁ〜〜〜〜マユツバと思ったら…お誘いメールのお陰で裏取りできちゃったねぇスプシモンくん」 「………」 「こりゃあ行くしかないねぇ…図書館♪」 スプシモンは答えない…彼が相槌を打つ必要は無いからだ。 フェイク・ジョーカーモンは首を鳴らしつつリラックス…友達に世間話をするかのようなフランクさ。 己のこめかみを指でグルグルなぞりながら、道化師は一人話を続けてゆく。 「時にスプシモンくん…”脳に直接声が届く感覚”…味わったことはあるかい? 俺はあるねェ〜」 椅子から立ち上がり、スプシモンを胡乱な一人芝居をお披露目する。 【いつまで進行を遅延させるつもりだ道化ェ!  より強き兵力でもってデジタルワールドとリアルワールドに破壊と混乱をもたらさんかぁ!!】 【ピエロくん!!あの少年!あの少年がいいのら!可愛い少年がピチスーにして身も心もお人形にするのら!】 【やっぱり健全なテイマーには健全な曇らせ…!!キミもそう思うよなぁ!】 【関係ねぇ…可愛い女の子のドスケベな様が見てぇ…はやくしたまえフェイクージョーカーモンくん!!】 数分と続く一人芝居…過去にスプシモンが観測したものとピタリと一致する。 どうやらフェイク・ジョーカーモンは悪性な【住人】の声を受信できるようだ。 当人は知ってか知らずか…ただ複数の人格が彼のカラダで好き勝手しているだけかもしれない。 それを確かめる術はここにはない。 ただし…”デジモンイレイザー”という存在が複数実在することも事実。 あるかもわからない頭の中のシコリを流そうとゴキゴキと首を回すフェイク・ジョーカーモン。 「まぁ…道化にとって…お客(デジモンイレイザー様)を楽しませてなんぼ…別に構わないのサ」 覆われた片目の包帯を掻きながら道化師は独り言をこぼす。 「デジモンイレイザー様がコチラにくるカラダをご所望だそうだ…お客様は壇上にあがりたいんだとサ♪」 何重にも巻いている包帯を無意識に?きむしりながら、道化師は笑い出す。 「いやぁ…君にはほんと助かってるヨ…観られてると思うだけで俺はいつまでも道化(おれ)で居られる♪」 道化の口角が鋭く吊り上がる。 「君は”視る”のが仕事だ…悪さはしないさ…ちょっと君のIDを借りるだけ…  なぁに…カラダには”あて”がある…ちょうどいいのがさ…渡りに船とはよく言ったもんサ…  この世はエンタ〜〜〜〜〜テインメント♪」 フェイク・ジョーカーモンは机に立ち上がり両手を広げ踊り出す。 真っ白な照明はただただ彼を照らすのみ。 「Welcome to this crazy time !! このイカれた世界にようこそ♪」 スプシモンは撮り続ける。 まばゆい光に照らされ、出来上がった影は今にも天を掻きむしりそうなフェイク・ジョーカーモンの姿を。 ただ撮り続ける…視聴者を楽しませるために…ただ撮り続ける。