収穫の季節、学園の畑では人参を始め多くの野菜が収穫される。 それと同時期に、ハクマイの田んぼも収穫シーズンが始まる。 複数の田んぼを使い、早く収穫できるものから遅く収穫するものまで、ハクマイは複数の品種の稲を植えていた。 「そういうわけなので、収穫期間中の安全と、実りへの感謝を込めて、神様へのいろいろお願いするよ」 「私達サキガケ一門、誠心誠意努めさせていただきます」 サキガケ一門代表、サキガケサンゾウはハクマイにお辞儀する。 稲荷神社由来の名前を持つ者が多いサキガケ一門、今日はハクマイの頼みで皆巫女服に身を包み、神事の準備を進めていた。 学園にいるサキガケのウマ娘達が全員巫女服を着てここにいるので、事情を知らなければどこかの神社からやって来たのかと勘違いしそうである。 「ハクマイさんも巫女服を」 「あ、ボクは神事の後収穫あるから」 ハクマイは神事の後、収穫があるので巫女服は着ない、コンバインに乗らなければいけないので動きやすい服装でないといけない。 そうしてサンゾウが離れると、別のウマ娘が話しかけてくる。 「ハクマイさん、ハクマイさん」 「ミホショットさん、どうしました?」 声を掛けてきたのはミホショット、その目的は? 「合鴨農法をしていたなら、合鴨がいますよね?」 「うちはカルガモ農法だし、なんならそのカルガモも借りてるから」 「そうですか…」 どうもミホショットは合鴨農法の合鴨は、この時期に処分されると知っていて、それを貰いに来たようだった。 合鴨は逃がすことができないので、食肉として処分する、残酷ではあるがこれも家畜の定め、命を食べて弔うもまた一つの形である。 とはいえいかにハクマイでも学生の身ではそこまでできず、近所の同業者から一部の田んぼにカルガモを放ってもらっていた程度、ミホショットに渡すカモはいなかった。 「まぁ、そっちの農家さんの住所は教えてあげるから」 「ほんとですか!」 「う、うん」 ハクマイにカルガモ農法農家の住所を教えてもらうと、ミホショットは駆けていった。 「ハクマイちゃん、お鍋の準備の事で」 「ゼットさんも来てたんですね」 「はい、人が集まると聞いて」 いつの間にか参加していたゼットシンザン、すでに鍋の準備をしていた。 「新鮮なカモ系の肉が手に入るかもしれないけど」 「鶏肉は用意してあるから、どっちでも大丈夫」 「なら、お供え分もお願いできる?」 「もちろんです」 「じゃあ、サンゾウさんと相談して」 「わかりました」 こうして、ハクマイの収穫シーズンは、幕を開けたのだった。