… | 1424/09/11(水)00:45:10No.1231436164+ 踊り子とは何か。踊りという芸で魅せて対価を得る事を生業とする人の事である。 であるならば、ユニは間違いなくその定義には当てはまらないだろう。何せ踊りを人前でやった経験などないのだから。 「メイドですので」 メイドらしからぬ、ほぼ水着であるような、しかし泳ぐことは想定されていないような衣装を纏って尚、彼女はそう言い放った。 ちょっと頬を赤らめているのは見逃す事にした。それに踊り子と言えど、この衣装で変わらず芸を披露する人物はこの世にそう多くはないだろう。メイドを踊らせるなど金持ちの道楽そのもので、多分自分が言えば実現しかねない事も薄々感じていた橘花だが、アパートで成金ロールをやるほど虚しい事もないだろう。何故かあったワイングラスにぶどうジュースを注ぎ、指で挟んで徐に座る。 虚しさと言えばこの衣装である。要所こそ工夫の凝らされた意匠があしらわれているのに、従者にこれを着せた主人はもれなく布をケチったという誹りを受けかねない。しかし自分が着れば、主に腹部と首の間から更なる虚しさが去来する事を予見する。 「踊りましょうか」 「……私も踊るよ」 せめて、その方が損はしないだろうから。 |