一つ、家の者以外蔵に入れないこと。二つ、蔵の一番奥の部屋を開けないこと。三つ、マラツボサマと言葉を交わさないこと。 これが僕の家に代々伝わるルールだ。 成人する時に伝えられるルールだけど、僕は兄が父さんに聞かされてるのを盗み聞きしたから知ってる。 今時こんな田舎の村でも家に大きな蔵があるなんてウチぐらいで、何でもここいらのオオジヌシ?だからだそうだ。 この土地を治めることと、蔵があること、そしてこのルールには関係があるらしい。 蔵の中は危ないから子供は入ってはいけないと言われていたが、さらに奥に開けてはいけない部屋があるというのは初耳だった。 僕はこの、きっと普通の家には無いであろう謎に心惹かれた。 僕はそれがどうしても気になって、ある夏の日友人たちと遊んでいる時にこの話をしてみる事にした。 「そんなの作り話だろ?マラツボサマなんて俺聞いたことないぜ!」 ガキ大将の金太が言う。 それはそうだ、そんな名前僕だってこの前初めて聞いたんだもの。 「でも、お父さんが言ってたよ…。昔この辺で悪さした妖怪を封印したのが地主の家だって…。」 引っ込み思案の国彦が珍しく反論する。 国彦の家も地元に長く続く家系らしいから、昔話には詳しいのだろう。 「じゃあその妖怪がまだ一雄の家の蔵に居るってのかよ?」 「いいじゃん、行ってみようぜ!おれ、蔵って一回見てみたかったんだ!」 金太が食って掛かるのを制してムードメーカーの圭次が言った。 「僕も気になるなー。きっと見た事もないような物がいっぱいあるんじゃない?」 真面目な幸助が言うのは、ちょっと意外だった。 それだけ知的好奇心が刺激されたのだろうが、僕も蔵の中に何があるか見当もつかないので否定も肯定もできない。 「とりあえず今日夕方まで家に誰もいないみたいだからさ、蔵の中を探検してみない?」 こうして僕たち5人は開かずの間と妖怪の謎を解き明かすため、ちょっとした冒険の準備を始めた。 各々が持ち寄った懐中電灯の明かりを向けると、今は使われていない家具や農具、古びた壺や置物に使い方の分からないものまで、 蔵の中には所狭しと様々な道具が積み上げられていた。 「すげー!一雄の家ってでっけーと思ってたけど倉庫もでっけーんだな!」 金太が興奮して声を上げる。 道具を詰め込んでなお有り余る空間にその声は反響して聞こえた。 強い日の差す外とは一転して、蔵の中からはひんやりとした空気が流れ出していた。 金田と圭次は用途のわからないガラクタを引っ張り出しては戻し、幸助は古い本や巻物に興味津々だ。 「ねぇ…開かずの間って…どこ…?分からないなら…一緒に探す…?」 もはや当初の目的を忘れ古道具漁りに終始するかと思われた一行だったが、国彦だけは妖怪に興味津々のようだ。 迷路のような古い棚や箱の隙間を、二手に分かれて扉を探す。 どうにか蔵の奥までたどり着き、壁伝いに見ていくとそこに古びた木の扉があった。 開けようとしたが建付けが悪いのかそれとも扉自体が重いのか、扉はビクともしない。 そのうちに国彦もやってきて、結局二人がかりで開ける事になった。 両開きの戸の片方をなんとか開けると、中にはさらに真っ暗な広い空間が続いていた。 埃臭い蔵の中とは異質な、清浄な空気が流れ出して来る。 おもむろに懐中電灯の明かりを向けると部屋の真ん中に何かが置いてあった。 「わっ…!」 思わず声が漏れる。 そこにあったのは目隠しと縄で拘束された女の精工な像、あるいはそれと見間違うほどの不気味に真っ白な肌の人間だった。 一見するとそれは女を思わせる長い髪に膨らんだ乳房をしていたが、その胸のすぐ下まで伸びる巨大な陰茎も兼ね備えていた。 陰茎にはお札が貼ってあり、複雑な模様の真ん中に「魔羅壺」と書かれている。 両手でも持ち切れるかという巨大な金玉二つをも携えたその下品で悪趣味な姿に、思わず言葉を失う。 「どう?そっちにも何か面白そうなものはあった?」 ドアの空く音を聞きつけてか、最初に来たのは近くをうろついていた幸助だった。 「これが開かずの間ってやつ?本当にあったんじゃん!」 入口近くで遊んでいた圭次が少し遅れて来る。 「なんだよ本当に居たってのかよ、マラツボサマってやつ。」 口では疑うような素振りを見せながらも結局気になったのか、最後にやってきたのが金太だった。 順番に開かずの間の前に集まった僕らだが、一様にその奇妙な像のようなものに目を奪われ言葉を交わす事はできなかった。 「…こんなの、作り物に決まってるだろ!来いよみんな!」 どれほど立ち尽くしていたか、長い沈黙を破って金太が言う。 座り込んだまま一向に動く気配のないそれを作り物だと断定して金太はその部屋へと入る。 臆病者だと思われたくなくて僕もそれについて行ってしまい、他の三人も釣られたように足を踏み入れる。 開かずの間はもはや肌寒さを感じさせるほど外界と隔絶し、さっきまで遠くで鳴いていた蝉の声すら全く聞こえなかった。 足音だけが響く不気味な静寂の中、ゆっくりと不気味な像に向かって歩く。 先頭を行く金太も気後れしているのか、その足取りはどこか不安げだ。 金太は大きく身を乗り出して、まるで鎖に繋がれた猛獣にするように指先を伸ばして軽く像に触れる。 「へへっ…なーんだ、やっぱり作り物だぜ。お前らも触ってみろよ。」 そう言われて恐る恐る手を触れてみると、すべすべした不思議な感触だが、まるで生気を感じない冷たい物体であった。 「でも柔らかい…布じゃないし、一体何で出来てるんだろう?」 幸助の言う通り、それは石や木ではないし、布製の人形というわけでもない。 樹脂製の精巧なマネキンだろうか?なぜそんな物が蔵の奥にあるのだろう。 「あはは!でっけーおっぱい!一雄の父ちゃんが恥ずかしくて隠してた、エロ人形なんじゃない?」 圭次が大胆にも像の胸を揉みしだきながら言う。 まるで本物のように形を変えるその様には、ある種説得力があった。 「ねぇ…マラツボサマのおちんちん…大きくなってない…?」 一頻り触ってもう部屋を出ようかというところで国彦が言う。 まさかと思って像の陰茎を見てみるが、先ほどと変わらない…いや、長さこそ変わっていないが少し太くなっただろうか? 最初は上を向いてぼーっとした印象だったそれは、反り返って血管の浮いた生気を感じさせる見た目になっている…気がする。 改めてその姿を見ていると、あまりの雄々しさに敗北感というか、意識せずとも自分のものと比べてしまう気持ちが湧いてくる。 「でもこれも偽物だろ?見たことないぜこんなチンコした奴…」 金太は一蹴するが、その目は国彦に向けられておらず像の陰茎に釘付けだった。彼も僕と同じような事を考えているのだろうか。 「生きてるってんなら、なんで動かねーんだよ。」 金太は像を揺らしたり叩いたりしながら言う。 やはりそれは精巧なだけのただの像なのか、全くもって微動だにしない。 更に調子付いて縛り付けてある縄を弄ったり、顔をつついたりするのを罰が当たるぞと諫めようとした瞬間、金太は動きを止めた。 目隠しの布を取り、その奥を覗き込もうとした格好で静止している。 ビチャビチャビチャッ! 一体どうしたのかと尋ねるよりも早く、金太の足元から激しい水音が聞こえた。 最初は金太が漏らしたのだ、と思った。 少しして4人のうち誰かが向けた明かりで照らされた白く濁ったその液体が、どうやらそれが精液というものらしい事に気が付いた。 実物を見るのは初めてだったが、一瞬で大きな水たまりを作り、今も裾に糸を引ているそれが異常である事はすぐに分かった。 「どうしたんだよ…金太…?」 恐る恐る尋ねるが金太は答えない。息を荒げて、まだじっと目隠しの隙間をのぞき込んでいる。 「な、なぁ金ちゃん!お便所行きたかったなら言えって!金ちゃんが脅かすから、おれびっくりしちゃったじゃん!」 今ならまだ冗談にできる。何もなかった事にできる。 そう一抹の願いを込めてか圭次が言ったが、金太は尚も答えなかった。 「はぁ……はぁ……うっ…お゙ぉ゙っ…♡」 ビチャッ…ビチャビチャッ…ビュル… 呻き声のようなものを上げて金太はさらに精液を絞り出し、そして崩れ落ちるように膝をついて倒れこんだ。 金太を助けなきゃ、と言おうとするも目の前の不可解な現象に圧倒され口を開けないでいると、僕ら以外の何物かが沈黙を破った。 「あぁ…男…若い男の…精だ…」 女のような男のような、気色の悪い声だった。 見ると金太の作った白い水たまりの端は像の爪先に触れており、そこからジュルジュルと吸い上げられているようだった。 封印されていたマラツボサマが、精液を吸って蘇ったのだ。 「うわあぁぁぁっ!」 圭次が慌てて逃げ出そうとするが、重くて動かせなかったはずの扉はなぜか閉まっていた。 ぶつん、ぶつんと魔羅壺を縛る縄が千切れていく。 僕と幸助も急いでドアを開けに行くが、国彦だけがぼんやりと動き始める魔羅壺の姿を眺めていた。 「何やってんだよ国彦!」 叫んでも返事はない。仕方ないので三人で必死に扉を押す。 魔羅壺は気持ち悪そうにモゾモゾと体を動かし、こちらに尻を突き出すように四つん這いになった。 「居るんでしょう…坊やたち…封印を解いてくれない…?お姉さん悪い妖怪じゃないの…」 魔羅壺の尻にはその真ん中に肛門を塞ぐようにしてまたお札が張られていた。 僕ら三人はなんとか扉を開けたが、その先に広がる真っ暗な空間に違和感を覚える。 蔵の入り口が開いていない。 まだ逃げ切れていない絶望と共に、魔羅壺が追いかけてくるのではないかと恐怖を感じて振り返る。 だが魔羅壺は、まだその場に這って不気味に体をくねらせ尻を振っているだけだった。 「おい!国彦…」 何をやってるんだ、と言いかけた所で幸助が止める。 「国彦はもうダメだ。まずは僕たちだけでも逃げないと。」 「そうだよ!金ちゃんも倒れちゃったし、大人の人を呼んでこないと!」 そう言って幸助と圭次は棚の迷路に消えていくが、僕はどうしても国彦の事が気になって振り返る。 「ねぇ…封印を解いてくれたら…何だってしてあげるわ…おっぱいも揉んで良いし…もっと気持ち良い事だって…♡」 囁くような声にも関わらず、低くよく通る魔羅壺の声は蔵中に響いているような気がした。 国彦は引き寄せられるように魔羅壺の元へ歩いて行く。 「いい子ね坊や…お札を剥がしてくれたら…お姉さんのお尻で…良いことしてあげる…♡」 そう言って魔羅壺が尻をブルン、と揺する様が部屋の外からでもよく見える。 国彦の懐中電灯がその一点を迷いなく照らしているからだ。 一歩、一歩と明かりが魔羅壺に近づく。 「やめろ国彦!何されるか分からないぞ!」 遠くでガチャガチャと音がする。幸助と圭次、あるいはそのどちらかが入り口にたどり着いて扉を開けようとしているのだろう。 「誰か!誰かいませんか!開けてください!」 居もしない家人を呼ぶために大声で叫んでいるのも聞こえてきた。 僕も行かなきゃ、と思って駈け出そうとしたその時、ごとり、と物音がした。 国彦が魔羅壺の間近にたどり着き、懐中電灯を置いたのだ。 明りを遮る影が魔羅壺の肛門へと収束していく。 とてつもなく悪いことが起きるような予感がして、僕は全速力で走りながら助けを呼んだ。 「誰か開けて!蔵から出られなくなっちゃったんだ!」 「助けてください!扉が開かないんです!」 「クソッ!何で開かないんだよ!」 扉を鳴らす音と僕らの声を遮るように、開かずの間から別の音が響いてきた。 ぶぷっ…ぷっすぅぅ~~~~~… 予想外の音に一瞬、僕ら全員が動きを止めたような気がした。 魔羅壺が、屁をこいた。 言葉にすればただそれだけの事だが、僕は足元にネットリと広がる不気味な熱い空気を感じていた。 徐々に体積を増していくそれは開かずの間から流れてきており、魔羅壺に関連した何か邪悪なものであるような気がした。 脛を這い上がってくるような気色の悪い感触に足取りを崩し、転んでしまう。 床に突っ伏すとその気体は猛烈な勢いで鼻孔から流れ込み、脳髄に灼け付くような刺激を与えた─── ぷぅぅぅ~~~~…ぶぷすっ…ぷしゅぅぅ~~~ 「おーい!誰か!開けてください!」 妙な音がしてから、一雄の声が聞こえなくなった。 何か悪い事が起きている気がする。早くここから出ないと。 助けを呼ぼうと大きく息を吸った瞬間、纏わりつくような熱気が顔を包み込んだ。 生臭い硫黄のような香りに息を止めようとするが、なぜか体が言うことを聞かない。 僕は全身をくすぐられたみたいに脱力し、その場に倒れこんでしまう─── ぶぴっ!ぶすぅ~っ…ぶぷぷぷぷぅ~~~~~っ 「開かない!開かない!何でなんだよぉ!」 さほど重くなかったはずの入り口の扉は、いくら押しても、体当たりしても動かなかった。 おれが行こうなんて言ったから、まさかこんな大変なことになるなんて。 一雄や幸助の声も聞こえなくなり、奥の部屋から鳴り響く変な音に泣きそうになりながら必死で扉を押す。 足元からは熱を帯びた空気が上がってくる。 まるでそれが毒ガスのように思えて息を止める。 「……!」 最後の力を振り絞っても扉はびくともせず、崩れ落ちてその気持ちの悪い空気を吸ってしまう。 股間がむず痒くなるような感覚に襲われ、最後に見たのはちんちんがさっきの金ちゃんみたいに白いおしっこを吹き出す姿だった─── 「このお札を剥がせばいいの…?」 「ええ…そうよ…お姉さんこれのせいで元気が出ないの…早く剥がしてぇ…♡」 マラツボサマはいやらしく腰を揺らして言う。 そのすぐ横に倒れている金ちゃんを見て、僕は思わず生唾を飲む。 お父さんに聞いた通り…マラツボサマは男の子を気持ちよくしておかしくしちゃう妖怪なんだ、って。 目を合わせただけでこれなら、一体本当の力はどんな凄い事になっちゃうんだろう。 期待に胸を高鳴らせながら、マラツボサマの大きなお尻に手をつき、その間にあるお札に手を伸ばす。 しっとりと濡れたそれは力を込めなくても剥がれて、目の前に大きな肛門が姿を現した。 ぶぷっ…ぷっすぅぅ~~~~~… その肛門は自由を取り戻すや否や何度か激しく伸縮し、一度閉じて力を込めるような動きの後にガスを放った。 一体どれほどの間彼女がここに封じられていたのか、まるで想像もつかないが封印と共に解放された膨大な質量がその長さを思い起こさせる。 人間ではとてもあり得ない事だが、マラツボサマの腸にはこれまで分泌されたフェロモンとガスの全てが溜め込まれていたようだ。 「んっ…失礼…♡」 ガスが封じられている事はマラツボサマも予想していなかったのか、恥ずかしそうに言う。 肛門から噴き出してきたそのフェロモンガスを顔に浴びて、僕は脳がとろけそうになりながら仰向けに倒れた。 「あら…?ふふっ…まさかそんな事になっちゃうなんて…♡そぉれ…♡」 ぷぅぅぅ~~~~…ぶぷすっ…ぷしゅぅぅ~~~ 僕が気持ちよくなってるのを見て、マラツボサマはさらに大量のガスを噴きかけてくる。 その肛門は殆ど開きっぱなしで膨大なガスをとめどなく噴出し続ける。 封印によって変質した予想外のガスであるにも関わらず、マラツボサマはそれを自在に操っていた。 濃厚なフェロモンに勃起する僕の上に覆いかぶさるようにして、マラツボサマは楽しそうにガスを放つ。 「んふぅ♡まだまだ出るわよぉ…♡」 ぶぴっ!ぶすぅ~っ…ぶぷぷぷぷぅ~~~~~っ 腰の動きと大量のガスとで、尻肉を外からも内からも揺らして見せるマラツボサマの下品な姿に思わず見とれてしまう。 辺りを包む熱い気体に隣で倒れてる金ちゃんもビクビクと反応している。 ガスを放つ快感のためかマラツボサマのチンポの中を精液が上がってくるが、お札にせき止められチンポの中ほどで止まる。 力の入らない手をそのお札に伸ばそうとするが、様子がおかしい事に気づいた。 「んふふっ…♡こういうのは初めてだけど…悪くないわね…♡」 ぶしゅぅぅぅぅ~~っ!ぶっ…ぶぷすぅっ! 熱いガスに侵されてお札の端が変色し始めているのだ。 今の一発で濃度を増したガスに呼応するように、お札はさらに茶色くボロボロに朽ちて行く。 メリメリと音を立てて劣化したお札は裂け、上がってくる精液を妨げるのはもはや亀頭にのこった僅かな欠片のみとなった。 「そろそろ出し切れそうかしら…最後に大きいのいくわよぉ…♡んっ…♡」 ぶふぅぅぅぅぅぅ~~~~~~~~~~っ!!!!! 低い唸り声のようなそれは壁一面に反響し部屋全体を、あるいは蔵そのものをガタガタと揺らす。 マラツボサマは大きく縦に割れた肛門を捲れ上がらせて、腸の底から夥しい量のガスをぶちまける。 快楽を鼻から脳に直接突き刺したような気持ちよさに、僕と金ちゃんは思わず射精してしまった。 「んんっ…♡あはぁ~……♡」 最後の一発でチンポのお札はもはや完全に黒ずんだゴミになってしまい、それが崩れ落ちると同時にマラツボサマは射精し始めた。 ドプッ…ビュクッ…ブシャァァーーーーーーーーーッ! 粘度を持った塊を、まるで消防車のホースみたいに横たわる僕の体に叩きつける。 何十年、何百年分かの溜まりに溜まった大量の精液を一斉に吐き出しているのだろう。 ゆっくりと地面に広がっていくドロドロの精液は僕の体全体を包み込み、横にいる金ちゃんを、金ちゃんの落とした懐中電灯を、そしてこの蔵の床全てを飲み込んでいく─── ピチャリ、ピチャリと真っ白な液体に波紋を起こしながら、いくつかの小さな足音が蔵の奥に向かう。 閉め切られた真っ暗な蔵の中を、熱く芳醇な空気と足元の液体の流れを頼りに、その源へと近付いていく。 絶頂を迎え、精液の海の中二人の少年を抱きかかえて眠る魔羅壺の陰茎と肛門からは、未だ封印の残滓が溢れ出ていた。 蔵の中は異様な臭気を伴った、蒸すような熱く湿った気体に支配され、床一面を青臭くねば付く液体に埋め尽くされていた。 そこはまるで巨大な怪物の胎内のようだった。 足音の一つが魔羅壺の元にたどり着くと、魔羅壺は目を覚ましてその少年の陰茎にしゃぶり付く。 フェロモンにあてられ意識の朦朧とした、かつて幸助と呼ばれていた少年は雄の本能だけで魔羅壺に向かって腰を振る。 力任せのそれを魔羅壺の巨体は難なく受け止め、口腔を吸い付かせるようにして刺激を強める。 纏わりつく柔肉の感触にも怯まず乱暴に腰を振り、無鉄砲に吐き出される若い精を魔羅壺は楽しそうに顔を歪めて貪った。 その最中にもう一人、今や本能で動く雄の獣と化した圭次が魔羅壺の元にたどり着く。 魔羅壺はその気配を察知すると、肛門をぐぱぐぱと開閉させて誘った。 三人の少年から吸い取った生気で湿潤さを取り戻した肛門はグチョグチョいやらしい音を立てて暗闇の中に存在を示す。 圭次はその音に導かれるままに自らの陰茎を押し付け、分厚い肉孔にねじ込む。 両の腕をも呑み込めそうな巨大な穴の壁面に擦り付けるように圭次が腰を振っていると、魔羅壺が尻を揺らし肛門を締める。 指先ほどの肉棒を器用に捉えたそれは妖しくうねって射精を促し、圭次は快楽に耐えながら何とか腰を振る。 漏れ出すガスが肉厚の肛門と小さな陰茎の間で奏でる滑稽な音と、肉と肉のぶつかる破裂音を交互に立てながら、圭次もまた魔羅壺の中に精を放った。 最後に一人、一雄だったものが魔羅壺の前で足を止めて蔵の中の足音は止んだ。 一雄はトロトロと粘液を吐き出し続ける魔羅壺の萎えた、それでもなお腕ほどの太さの陰茎に抱き着き、その先端に口付けをする。 みるみるうちに陰茎は怒張し、それを見た一雄は嬉しそうに全身と自らの陰茎を擦り付けて奉仕する。 数分と持たず一雄は射精するが、魔羅壺の未だ快楽の半ばといった様子の陰茎に精液を塗り込むように擦り付くのを止めない。 しばらくして魔羅壺の陰茎が一瞬、一際大きく膨張し、一雄の顔に向かって大量の精液を噴きかける。 出したての精液は強い粘性を持ち、口を塞ぐようにまとわり付く。 通常であれば手で拭いたくなるようなそれを一雄は恍惚として舌で舐めとるようにして剥がし、その様子に魔羅壺はわが子を慈しむように頭を撫でる。 零れた精液はドボドボと足元の精液の海へと流れ込み、さらにその嵩を増した。 果てては魔羅壺の豊満な肉体に抱かれ、果てさせては魔羅壺の慈愛を受け、気力を取り戻してはまた魔羅壺に精を捧げる。 魔羅壺の胸の中で眠っていた二人の少年もいつしか目を覚まし、魔羅壺の手や胸をも使ってその淫らな輪の中に加わる。 かつて村一帯を支配したという魔羅壺の逸話を再現するように、5人の少年はいつまでも魔羅壺と交わり続けた─── 気が付くと僕は、蔵の中で倒れていた。 4人の友人、金太に国彦に圭次に幸助も一緒だった。 開きっぱなしの入り口の戸から夕日が差し込んでいるのを見て、慌てて友人達を起こす。 「そろそろ父さんが帰ってくる!早く片付けなきゃ!」 友人達が起きるのを待っていると、ふとここが蔵の奥にある扉の前である事に気付く。 扉一枚隔てた向こうには、まだあのおぞましい空間が広がっているのような気がした。 言い知れぬ恐怖を感じて扉を見つめていると、目を覚ました友人達も同じように立ち尽くしていた。 「マラツボサマって…本当に居たと思うか…?」 誰にともなく聞いてみるが、それに答えられる者は居なかった。 もう二度と蔵には入らないようにしよう、今日の事は忘れようと思っていると、帰り様に金太が話しかけてきた。 「なあ一雄、また今度蔵の中探検してみないか?」 「えっ…!?嫌だよ…だって金太も見ただろ、開かずの間の中…」 「おれも何があったかよく覚えてなくってさ~!もう一回ぐらいみんなで入ってみない?」 あれだけ怖がっていたはずの圭次まで言う。 「実は僕も記憶が曖昧で…楽しかったからまた見に来てはみたいんだけど…」 「マラツボサマ…本当に居るのか、確かめたい…」 幸助に国彦も、今日の事が無かったかのように言う。 さっきまでの恐ろしい出来事は本当に夢か何かだったのだろうか? 「一雄…ちょっとだけでいいんだよ…あの開かずの間の中にさ…怖いなら一雄は入らなくてもいいからさ…」 「そうだよ…あの部屋…あの中が気になるだけなんだ…」 いや、違う。この異常な様子は絶対に良くない何かに取り憑かれたものだ。 「わ、分かったよ…見るだけだぞ…僕は行かないからな!」 僕はおかしくなってしまった友人達が怖くて、了承してしまう。 一体あの部屋に居たものは何だったのか、友人達はどうなってしまったのか。 いっそ僕も皆と同じようにおかしくなってしまえれば楽だったのかもしれないが、今となってはただ恐怖しながら彼らの行く末を見守る事しかできなかった。