雨が降り返したうちに引き返せば良かった。あるいは、迂闊に山道に踏み込むべきでなかったのか。 「ネェ…見テ…オ姉サンノオチンポ…子種デパンパンノイキリ魔羅…♡」 何の因果か私は、巨大な男性器を携えたオカマの妖怪と山の廃屋で二人きり、言葉責めをされていた。 「子作リノ仕方ヲ教エテアゲル…♡オ姉サンノオチンポデオ勉強シマショウ…♡」 目隠しされているそいつは私の事を子供と思っているようで、気色の悪い低い男の猫撫で声で性知識を餌にした誘い文句を繰り返していた。 「種壺ガ疼クノ…♡ボウヤノオチンポ突ッ込ンデェ…♡一緒ニ気持チヨクナロウヨォ…♡」 一体なぜこんな事になってしまったのか。事の起こりは数十分ほど遡る。 社会人になり運動の機会の減った私は、何か体を動かす趣味を探していた。そこで目についたのが近所のとある山だ。 舗装されたハイキングコースがあるといい、標高も低い。ちょっとした運動にはもってこいだったが、一つ問題が発生した。 噂に聞いた舗装路の入り口は、調べてみれば家から丁度山の向こう側だったのだ。 すっかり登山をするつもりで週末の予定を開けていたため地図を片手に落胆するが、よく見ればこちら側に古い登山道があるのを見つけた。 これなら徒歩圏内だし、あまり険しい道なら帰りは舗装路と公共交通機関でもいい。 ちょっとした冒険の予感に胸を躍らせ、私は家を出た。 幹線道路を超え、無暗に広い公園を横切り、少し山道に入った所にその登山口はあった。 看板が無ければ気付かないほどの小さなそれは、人通りもなく舗装もされていないがさほど険しくもないようで、私の目的にピッタリの穏やかな道だった。 充電満タンのスマホにスポーツドリンクと、カロリー補充用のチョコとシリアルバー。 バッグこそ普段使いのものだが中身は十分だろうと確認し、山に入った。 しばらく歩いて、道なりは相変わらずだがパラパラと小雨が降ってきた。 今朝は雲一つない快晴だったので荷物を漁っても雨具の備えは無かったが、通り雨だと気にせず進む事にした。 その後少し雨脚は弱まったが、また数分の後に強い雨になった。 岩陰か洞にでも雨宿りするか、引き返すべきか。私は少し悩んで前者を選んだ。 もう登山道も半ばを超えているし、降りるにしても舗装路の方が安全だろう、と私はこの道を登りきる事しか考えていなかったのだ。 辺りを見渡すと、遠くに明かりのようなものが見えた。 こんな所に誰か居るのかと訝しんだが、ただ雨に打たれていてもしょうがないのでそちらへ向かってみる。 人であれば予備の雨具でも貸してもらえないか頼もうと思っていたら近付いてみるとそれは建物のようで、古い小さな社殿だった。 軒先だけ借りるつもりだったが、風が強く雨が吹き込んでくるので戸に手をかけてみると鍵などは無いようでするりと開く。 神様失礼します、と軽くお辞儀をし、私は中に入ることにした。 明かり一つ無いこの社殿に一抹の疑問を残しながら。 板張りの床の一角の砂ぼこりを払い、私はそこに腰を下ろした。 バッグからタオルを取り出し、濡れた髪を拭く。 社の中は明かりも採光もないようだったが、古びて建付けの悪くなった戸の隙間明かりでわずかに視界を得る事は出来た。 床や壁に大きな破損は無く、おおよそ安全であろう事を確認し、雨止みまで仮眠でも取ろうかとしていると暗闇からぎしり、と板の軋む音がした。 恐怖に一瞬鼓動が早まるが、先客が居たのだ、と心を落ち着かせる。 先ほどの明かりもその先客が様子を見るために使っていたに違いないと合点し、私は声をかける事にした。 「こんにちは。すみません、急に入ってしまって。雨が強かったものですから。」 返事はなく、気のせいか?と目を凝らすが、そこには確かに人影のようなものが見える。 返事をしないのか、出来ないのか、それとも誰も居ないのか。私はその正体を探る事にした。 「ちょっと明かりを点けますね。」 そう断りを入れてスマホを下に向け、ライトを点ける。 そこに居たのは確かに人間だった。人間ではあった。 長い黒髪の女が胡坐をかいて座っている、と形容する事もできただろう。 生気の感じられない青白い肌を着衣一つ無く露出したその姿と、周囲に張り巡らされた無数のお札の付いた縄を気にしなければ。 「ひっ…!」 突拍子もないその光景に面食らい、思わず声を漏らす。 今日日安っぽいB級映画でしか見ないような、使い古された恐怖演出のような光景だったが、実際目の当たりにするのは訳が違う。 空想の世界に迷い込んだような衝撃にくらくらする頭を、大きく息を吸って落ち着ける。 これは作り物だ。多分古い映画か何かのセットをそのまま打ち捨てて行ったのだろう。 現に女はピクリとも動かないし、わざとらしいお札だって演出用に決まっている。 改めてその姿を確認しようと足元からゆっくり照らしていくと、何かお札とは違う紙が落ちていた。 作り物の女より手前に落ちているそれを、一歩だけ踏み出し、精一杯手を伸ばして掠めるように拾う。 ”妖怪魔羅壺封ズ、触ルベカラズ” 「…ははっ、なんだこれ。」 確かに目の前のセットは本格的だが、こんな小道具が出てきてはもはや滑稽だった。 妖怪、封印、触るな。安いホラーの詰め合わせのような説明書きだ。 何を怖がっていたのかと急に馬鹿馬鹿しくなり、その魔羅壺様とやらを拝んでやろうと乱暴に明かりを向ける。 よく見ればそれは煽情的な裸婦像だった。巨大な乳房に、肉付きの良い太腿、黒い目隠し布や胸を強調する亀甲縛りのような縄にも大いに性的な意味合いを含んでいるよう見て取れる。 あまりにも男の欲望のままの造形に生唾を飲みじっくり観察していると、ある違和感に気付いた。 その像の周りだけが不自然に濡れているのだ。 確かに外は雨だし古びた建物だが、雨漏りなどしていただろうかと耳を澄ますと、すぐ近くで水滴の音がした。 なんだやはり雨漏りではないかと目を向けた音の先は、魔羅壺の像の乳首だった。 汗のように像の表面を満遍なく濡らす水滴が、乳首の先から滴り落ちる音だったのだ。 まさか、と思う私にあざ笑うように、ぽたり、ぽたりと立て続けに水滴は落ちて見せる。 そういえば、先ほどの軋むような音も像がひとりでに立てられるはずがない。 もしかするとこれは、本当に像ではないのだろうか。私はおもむろに魔羅壺の像に近付いて行く。 見るほどにそれは美しく、そして近くで見て分かったことだが大きかった。 座り姿のため分からなかったが恐らく立てば成人男性の身長は軽く超えているだろう、非常に長い脚と高い座高なのだ。 …異形の妖か、それとも特撮用のパースのついたただの裸婦像か、まだ区別は付かない。 張り巡らされた縄の、すぐ近くまで来た。 貼り付けられたお札はかなり経年劣化しているようだ。 劣化風の加工とも考えたが、何となく本物のような気がする。 縄の内側に、果たしてその意味があるかは知らないが、音を立てないよう慎重に、ゆっくりと足を踏み入れる。 魔羅壺の像のすぐ周りに張り巡らされていたように見えた縄だったが、入ってみるとまだ少し距離がある。像の大きさで遠近感が狂うのだ。 さらに近付こうとしたその時、像の足元で何かが動くのが見えて私は身をこわばらせる。 スマホのライトで照らされた影がゆらゆらと揺れている。大きさからしてネズミだろうか?足の隙間に入り込んでいるようだ。 私は動いている何かの正体を探るため、身を乗り出してのぞき込む。 そこで蠢いていたのは、像の股間に付いているお札の貼られた男性器であった。 ネズミと見間違えるのも無理はない、一般的なそれを大きく上回り、小動物ほどはあろうかという巨大な男性器の意匠だ。 しかもどういう訳かそれはビクン、ビクンと冗談のように大きく跳ね上がりながら、さらに巨大化していくのだ。 あまりの下品で低俗は仕掛けに私は先程とは違う意味で硬直する。 山奥に封じられた妖怪、という設定の巨大な女が、全身に汗を浮かべながら大きな一物を勃起させる様を撮影しようとした者が、かつてここに居た。 荒唐無稽だが目の前の情報を総合するとそういう事になるだろうか。 それにしてもどこまで大きくなるというのか、初めは足元にうずくまる小動物のように見えたそれはみるみるうちに背丈を伸ばし、今や腕ほどの長さになっている。 一体どういう仕組みなのかと作り物の陰茎に手を伸ばした私を襲ったのは生々しい肌の感触と、 「男…久方ブリノ…若イ男ノ気配ガスルワ…♡」 その像だったはずのものが発した低い声だった。 驚いて逃げ出そうとしたが、いつの間にか外は土砂降りになっていて思わず足を止める。 危険な山道と、未知の妖怪。どちらを選ぶべきかと振り向くと、そいつは追ってきてはいなかった。 「待ッテ…オ姉サンガイイコト…教エテアゲル…♡」 その場で座り込んだまま、相変わらず低い声で何かを呟いているだけだった。 身の危険には及ばないだろうと感じ、私はこの妖怪と雨宿りを続ける事を選んだ。 『魔羅』と名前に入っている事だし、この巨大な男性器を持った化け物の名が魔羅壺で良いのだろう。 私は改めて魔羅壺の事を観察する。 「オチンポ…気持チ良クシテアゲヨウカ…?オ姉サンノオクチニ入レテ…♡」 しわがれた老婆のようだと思った魔羅壺の声は、よく聞けばたどたどしいがハリのあるはっきりとした発声だ。 「ボウヤノオチンポ…射精サセテアゲル…♡トッテモ気持チ良イノヨ…♡」 わざとらしい女口調だが恐らく男の声に筋肉質な巨体…オカマの妖怪とでも言えば良いのだろうか。 奇妙に奇妙を重ねたような、奇っ怪なその妖怪は、目の前で勃起した陰茎をゆらゆらと揺らしてただ座りこんでいる。 「オトウサンヤ…オカアサンガ…教エテクレナイ…助平ナコト……ンァ…ッ…♡アァン…出ル…ッ…♡」 「うわっ!」 魔羅壺はいきなり喘ぎ始め、陰茎をピンと上向かせて夥しい量の粘液を吐き出した。私は驚いて声を上げてしまう。鈴口に張られたお札でせき止められ、隙間からビシャビシャと大きな音を立てて流れ出たそれは透明な、恐らく先走り汁であった。 数秒もの間流れ出た先走りは魔羅壺の下半身濡らすだけでは収まらず、数歩離れた私のすぐ近くにまで飛沫を飛ばした。 足元の汗と混ざって領土をみるみる広げて行く体液に触れないよう、私は後ずさる。 魔羅壺の新たな行動に驚いたが、そういえばこいつは私が近付いたのに反応して動き出したのだ。 人の生気でも吸って活力を得ているのか、近くに居たら危険かもしれないと思い、私は元居た社の入り口側の隅に戻る。 「ン…ハァ…♡我慢デキナイ…♡ボウヤノ手デ…オ姉サンノオチンポ…シコシコシテェ…♡」 最初は気にもしていなかった暗闇の一角の不気味なシルエットにうんざりしながら、私は暗闇に蹲って雨止みを待つ事にした。 そして今に至るというわけである。 「種壺ガ疼クノ…♡ボウヤノオチンポ突ッ込ンデェ…♡一緒ニ気持チヨクナロウヨォ…♡」 何が種壺だ、お前の股間には男の一物しか付いていないだろう、と先ほど作り物だろうと思い切りのぞき込んでしまった記憶を元に心の中で野次る。 思えば何と気色の悪い事をしてしまったのかと寒気がするが、今なお喋り続ける変態妖怪がそれを忘れる事を許さない。 「村ノ男ハ…ミィンナ知ッテル…オ姉サンノキツキツケツマンコ…♡ボウヤダケ仲間外レハ嫌デショウ…♡」 できるだけそいつの事を考えないように視線を外しながら、けれども背を向けるのも怖いので斜めに姿を捉えながらじっと待つ。 「金玉ノ中デ…子種ガグツグツ作ラレテルノ…♡交尾シタクテタマラナイッテ…ン……出ル………出ル…出ル…出ル出ル出ル出ル射精ルゥッ…!!!♡」 突然早口でまくし立てる魔羅壺の声に、私は身を強張らせる。 先ほどの文字通りに化け物級の先走り汁を吹き出す様がフラッシュバックし、魔羅壺の陰茎を注視し警戒する。 しかし私の目に映るのは、変わりのない様子でぼうっと上を向きゆらゆら揺れる陰茎であった。 平坦な呟きを繰り返すばかりだった魔羅壺が、ニヤリと笑うのが見えた。 依然目隠しをされたままの魔羅壺が、どうして私の動揺を知ったというのか、それとも妖怪には最初から目など必要ないのだろうか。 後から思い返せばそれは魔羅壺が私の心の隙を見つけ入り込んだ、私が”魅入られた”瞬間だったのだろう。 「アァン…コンナニモ出シタイノニ…ドウシテ出ナイノォ…♡」 気色の悪い猫撫で声をさらに上擦らせながら魔羅壺が呟く。 残念がるような内容に反して明らかに喜びの色を湛えた声は、今にも笑い出しそうなほど。 『お姉さんの射精が怖くて堪らないのね坊や♡』とでも言われているようだった。 不気味な巨体とはいえ、身動き一つできずチンポを勃たせるばかりの低俗な妖怪に一杯食わされた私は、怒りと恥ずかしさで顔を真っ赤にして睨みつける。 しかし魔羅壺は怯む事なく囁き続けた。 「コンナオ札ナケレバ…一ーッ杯オ射精デキルノニィ…♡天井ガビシャビシャニナルマデ出シテ…落チテクル種汁ヲ浴ビナガラ村ノ男衆皆トマグワウノォ…♡」 なぜか頭が勝手にその光景を思い浮かべてしまう。 先程見せた全開にした蛇口のような先走りからすれば、その程度の放精など訳ないだろう。 「金玉袋パンパンデ苦シイ…♡チョットダケデイイカラァ…♡子種汁出サセテェ…♡」 魔羅壺の声に耳を貸さぬよう雨の音に耳を傾けてみるが、効果はない。気色の悪い猫撫で声が途切れる間の焦燥感を増すだけだった。 私が奴の射精を気にかけているのを知って言葉責めをする魔羅壺の思惑通り、射精、種汁と言ってブルンとチンポを揺する度鼓動は高鳴り、私の意識にそれが強く刻まれていく。 再び魔羅壺が喘ぎ始め、塞がれた鈴口の隙間からバケツ一杯ほどの先走りを零した。 「ン…ハァン…♡私ノオ射精コンナンジャナイノニィ…♡ドロッドロノ雄交尾汁ブリブリ出セルハズナノニィ…♡オ札ガ邪魔デ精液出ナイノォ…♡」 脳がとろけたような甘ったるい語尾とあまりにも下品な内容の落差に吐き気を催しそうになる。 理性ではそう感じているはずなのに、脳裏に浮かぶのは魔羅壺が勃起チンポを扱き、盛大な射精をしている姿だ。 一体奴はどれほどの精液を吐き出すのか好奇心と、高揚に似たよく分からない感情が湧き上がってくる。 「一回ダケデイイカラ…オチンポシコシコシテェ…♡オ札ズラスダケナラ…スグ戻セバ大丈夫ダカラァ…♡何モ悪イコトシナイカラ…ネェ…ボウヤ…♡」 またどうやって私の機微を読んでいるのか。丁度私の心が傾きかけた所に魔羅壺は語りかけてくる。 魔羅壺の言葉の真偽はともかく、先走りが漏れてくる程度に隙間があるのは確かだ。お札は隙間なく張り付け続けていなければならないものでも無いのだろう。 それに封印を全部解いてしまおうというのではない。ただちょっと射精する分だけで十分なのだ。 私は立ち上がり、魔羅壺の鈴口のお札を剥がしに歩み寄る。 「オッキイオ手手デ…ボウヤノ魔羅モ…シコシコシテアゲルワ…♡一緒ニ千摺リコイテ…精液混ゼッコシテ飲ンダゲル…♡」 調子に乗って魔羅壺が下品な提案もして来るが、気にしない。 ただ射精を見るだけだと自分に言い聞かせながら、私は魔羅壺の亀頭に手を伸ばした。 よく見るとあの縮こまった陰茎のどこにあったというのか、長く伸びた陰茎には鈴口の他にも至る所にお札が張られていた。 これら全てが封印なのだとしたら本来の魔羅壺のチンポは一体…と思わず生唾を飲むが、惑わされないよう亀頭だけに手を触れる。 ハリのある赤黒い亀頭は、腕ほどの大きさという陰茎の目測通りに握り拳程度か、それを一回り上回ろうかという驚異的な大きさだった。 決して小さいものではない鈴口を塞ぐお札を幹の部分にはみ出させる事なく亀頭の上だけに収め、それ一枚では足りないのかカリ首や裏筋にもお札を張られている。 鈴口のお札をよく見ると、先ほど先走り汁が通ったであろう皺のような隙間が2、3空いていた。 私はその内の一つに指をかける。 ぐじゅぐじゅと隙間に残った粘液が音を立てながら私の指を受け入れる。粘液の滑りからか少し力を込めれば動かせそうだったし、何なら引っ張れば剥がれそうでもあった。 「アッ…♡ンゥ…ソコォ…♡」 出来心から少し引っ張ってみるとメリメリと音を立ててお札は亀頭から離れていくが、魔羅壺が気持ちの悪い声を上げるので止めた。 力を加えられなくなったお札は不自然に魔羅壺の亀頭の上に戻り、張り付いていく。これが封印の力だろうか。 知識のない封印の事など考えてもしょうがないので、私はお札をずらす事に注力する。 先走り汁の滑りの上を、お札が亀頭から離れないよう少しずつ滑らせて動かす。 「アァンッ…♡上手ヨ…♡イイワ…ボウヤ…ンフゥ…ンッ…♡」 図らずもそれは亀頭責めの様相を呈していた。射精させたいのだから不都合ではないのだが、喘ぎ声がキンキンと頭に響いて気持ち悪い。 魔羅壺の陰茎がブルンと大きく跳ね、鈴口からこんこんと先走りが湧き上がって来るのを合図に私は手を止めて離れる。 しかし発射の予兆のような動作に反して、魔羅壺は声も音も立てず沈黙したままだった。 もう十分鈴口は露出しているし射精できるのではないかと様子をうかがっていると、魔羅壺が沈黙を破った。 「オチンチン…シコシコシテェ…♡」 何を言っているのか、一瞬理解が出来なかった。 どうやら魔羅壺は私にさらに陰茎を刺激するよう懇願しているのだ。 粘液に包まれた気持ちの悪い肉の塊を散々撫で回させておきながらこの期に及んで、と怒りのあまり私は思わず反論してしまう。 「お前が射精したいって言うからお札を外してやったんだろ!早く出せよ!」 魔羅壺は気味悪くニタリと笑った。魔羅壺がもう一歩、私の心の奥に入り込んできた。 ハッとして私は口を塞ぐ。異形の妖怪と言葉を交わしてしまったという事実に、奴の大きな青白い手が私の体をすり抜けて心臓を掴んでいるような、生殺しの感覚を覚える。 「オ姉サンノオ射精…見タインデショウ…?ビューッビュゥーーーッテ格好イイヤツ…♡ボウヤノオ手手デ…オチンチン…シコシコシテクレタラァ…オ姉サン…トビッキリノヤツ出シチャウカラァ…♡」 魔羅壺は怯む事なく、むしろ私の射精が見たくてたまらないといった言葉尻に嬉々として、腰をくねらせ揶揄うようにしながら図々しく要求を続ける。 もうちょっとであのチンポが絶頂する様を見られる…と惹かれかけた心を理性で引き戻す。 何を言うことを聞く必要があるのだ。どうせ雨が止んだらすぐここを去るつもりなのだ、もう無視してしまおう、と思った私を、またしても魔羅壺は心を読んだかのように呼び止める。 「サッキミタイナ…オチンポ大洪水…見タクテ堪ラナインデショ…♡モウボウヤノ心ヲ満タセルノハ私ダケナノ…♡早ク一緒ニ気持チヨクナロォ…♡」 それは紛れもない事実であった。床一面を汚す先走り汁を軽く吐き出した巨大陰茎に対する畏怖にも近い感情は、魔羅壺の言葉責めを経ていつしか脳を焦がす中毒のようなものに変質していた。 雨が止んだら、こんな所早く離れるべきだ。もしも魔羅壺が絶頂する姿を見ずにこの場を離れたら、きっと一生後悔する。雨が止む前に、この汚らしい、気色の悪いチンポに触れるべきか決断しなければ… 救いだったはずのここを立ち去るという選択肢に追い込まれるように、出口のない思考を巡らせる。 「ネエ早クゥ…♡亀頭スリスリダケジャ…オ姉サンノ極太魔羅…満足デキナァイ…♡竿ノ方モ…早ク気持チイイノ欲シイ…ッテ…ウズウズシテルノォ…♡」 魔羅壺は相変わらず下品な懇願を続けるが、それに腹を立てている暇もないほど私は必死に考えていた。 相手は妖怪で、得体の知れない化け物で、封印までされていたのだ。現に出会って間もない私の心を読み、かどわかそうとしているのだ。 いくら自制のための理由を考えても、魔羅壺のチンポの事が頭を離れない。 もはやどうなっても構わない、私は半ば自棄になって魔羅壺の陰茎に手を伸ばした。 魔羅壺の陰茎は血色の悪い見た目とは裏腹な、確かな温もりで私の手を迎え入れた。 しっとりと湿った柔肌の吸い付くような感触と、触れているだけで何かを吸い取られるような、頭が空っぽになる感覚。 ただそれに奉仕するために全てを投げ出してしまいそうになる、魔性の陰茎であった。 首をもたげた巨大な亀頭に押しやられ、たっぷりと余った弾力のある包皮に指を食い込ませる。 ムッチリと指を包み込む生暖かい感触に、頭の片隅から理性が背筋を震わせてくる。もう戻れなくなる。そんな警鐘を鳴らしているような気がした。 私の手はそんな事お構いなしに、夢中で魔羅壺のチンポを扱いていた。 ぶ厚い皮越しに怒張した海綿体をゴリゴリと刺激するのに合わせて魔羅壺が低い雄の喘ぎ声を上げる。 背徳と不安で圧し潰されそうだった心が、その声を聞く度に彼女を満足させているのだという充足感で活力を取り戻す。 いつしか呼応するように息を荒げて手を上下させる私に、魔羅壺は新たな要望を出した。 「ン…♡左手モ使ッテェ…♡モット早クゥ…思イッキリ両手デ握ッテシコシコシテェ…♡」 そう言われて、私はその陰茎のあまりの太さに気付く。片手ではその周囲を囲い切る事が出来ていなかったのだ。 座り込んだままの魔羅壺の陰茎に合わせて屈む際に重心をとるため床についていた左手を離し、右手の隙間を埋めるようにあてがう。 地に膝をつき前傾し、チンポに体重をかけて縋りつくような姿勢になるが、魔羅壺のチンポは少々撓むばかりで天を衝く威容をまるで崩さない。 長いチンポいっぱいに両腕を激しく上下させる重労働に息を切らす私を顧みる事なく、魔羅壺はまた要望を出す。 「アァン…♡ソロソロ…イキソォ…♡カリ首ノトコ…シュコシュコシテホシイノ…♡」 絶頂が近いという彼女の言葉に胸を高鳴らせながら、要望に従う。 扱く手をカリ首に押し付けるよう移動させると、溢れ出る先走り汁がカリと余り皮の間でニチャニチャといやらしい音を立てる。 先ほどまでは嫌悪していたはずのその音に歓喜しながら、私は疲労と興奮に頬を染めながらスパートをかける。 そんな中またしても魔羅壺は、ふてぶてしく要望を告げる。 「ンフゥ…ン…♡金玉…私ノ金玉…モミモミシテェ…♡」 もはや言いなりであった。私は考える間もなく扱く手を右手だけに戻し、左手を巨大な金玉にあてがう。 それに何の意味があるのかなど、私には考えている余裕もなかった。ただ射精が見たい一心で左手を握る。 右手を止めないよう注意しながら、ぶよぶよした玉袋の中で手の平に収まりきらないような金玉が逃げ回る感触をしばし堪能する。 すると突然、金玉が収縮して固くなっていくのを感じる。射精が始まるのだ。 私は頭の片隅で、射精前に金玉が上がるって本当なんだ、などとぼうっと考えていた。 「ハァン…♡射精ル……射精ル射精ル射精ル射精ルゥ…!♡二百年ブリノ熟成種汁ゥ…♡デカマラカラブチ撒ケチャウゥゥゥ!!!♡」 ビュクッ♡ビュルン♡ドプッ…♡ドプン…♡ドビュルルルルルルルルルブシャーッ♡ ついに吐き出された精液は宣言通りに天井まで一直線に飛び、なおも有り余る勢いで飛び散って部屋一面に青臭い雨を降らす。 「…………………………………♡……………………………♡」 魔羅壺の喘ぎ声すら遮るとてつもない水音が、上から下からとけたたましく鳴り響いた。 もはや外の土砂降りなどどうでも良くなる惨状を私は仰向けに倒れながら受け止め、気が付けば手も触れないままに射精していた。 「オ゙ホォォォォォォォォォ……♡ン゙オォ…♡ン…フゥ…♡」 長い射精が終わり、まるで獣の唸り声のような魔羅壺の喘ぎ声も、次第に落ち着きを取り戻していた。 ふと見れば、ボタボタと天井から玉になって落ちる精液に混ざって、お札がボロボロと朽ちては剥がれ落ちている。 果たして長い封印で熟成され、変質したであろう魔羅壺の精液は、二百年前と同様のものであっただろうか、と知りもしない事に思いを馳せる。 ただ一発の射精をねだるあの様が、封印を解かせるための方便だったとはどうしても思えない。 体とチンポが大きいばかりの男好きの妖怪が何らかの理由で封じられ、そのうちに手が付けられないほどの力を蓄えていたのではないか。 そういえば、あの注意書きの紙は他のものよりも新しかった。ごく最近に誰かが様子を見て、退治出来ない事を悟って残した苦肉の策だったのではないだろうか。 そんな事を考えていると、すっかり拘束の解けた様子の魔羅壺が、驚いたようにこちらを見ていた。 封印を打ち破れるとも知らず、自らの吐き出した精を満足気に浴びていた魔羅壺の様子に、私はその仮説の確信を深める。 魔羅壺は精液まみれの綺麗な顔でにっこりと微笑みかける。 僅か一枚亀頭に残ったお札を軽々剥がすと、魔羅壺は私を子供のように抱き上げ、その巨体を余すことなく押し付けながら私にキスをした。 確かな幸福感に包まれて、しばしの時間魔羅壺と舌を絡ませあっていたが、雨音が収まりつつある事に気付いてしまった。 いつまでもここに居るわけにはいかない。雨が止んだら、帰ると決めていたのだ。 私が魔羅壺の肩を押すと、魔羅壺は素直に抱きしめる手を解いた。 硬さを取り戻しつつある巨大な陰茎が、名残惜しそうに糸を引く。 部屋の隅に置きっぱなしだった、白濁まみれになった荷物を手に取り、社を出ようとした所で、彼女はどうするのだろうとふと振り返る。 魔羅壺はまだそこに立ったまま、手だけをこちらに伸ばしていた。 「ねぇ坊や…良かったらここから、連れ出してくれない?」 魔羅壺は流暢に、穏やかな青年の声で喋る。 そういえば大量の精液に飲まれて朽ち果ててしまったお札や拘束具だが、周りを囲っていた縄だけはまだその姿を保っていた。 まだ封印は残っているのかもしれない。まだ私は取り返しのつかない事をした訳ではないのかもしれない。 力を蓄え再び封じる事はかなわない大妖と化した魔羅壺をこの社に押し留めておく、最後の決断のように思えたが…そんな事はどうでも良かった。 私は彼女の手を取り、囲いの外へと引っ張り出した。 雲の合間からは日が差し始め、右の手を青白く大きな彼女の手に強く握り返されながら歩く。私は、この上なく幸せだった。