僕の村にはある言い伝えがある。 父さんから「これはお父さんから聞いた話だ。」と前置きして聞かされる話で、隣の家の権助も、そのまた隣の弥太郎も同じようにお父さんから聞くのだという。 きっと父さん達も、そうやって聞かされて来たのだろう。 言い伝えは、村の入り口の山道にはほら穴に続く脇道があって、その奥にはマラツボサマという悪い男の妖怪が封じられており、マラツボサマは大昔に悪さをしたため坊主に捕まって、封印されてしまったというものだ。 その悪さというのが、村中の男児を取って食っただとか山奥に続く小道に誘い込んで来るだとか、家に上がり込んで糞尿で汚して回るというのもある。 小さい頃は父さんの恐ろしい語り口と得体の知れないマラツボサマの所業に震えあがったものだが、今になって考えれば子供を脅かすためのただの作り話だ。 第一、悪戯めいた他の悪さに比べて「男児を取って食う」というのがあまりにも程度が大きすぎる。「子ども」じゃなくて「男児」というのも出来過ぎだ。 父さんにもその事を聞いたが、男の方が食べ応えがあるだの、マラツボサマの好みだのと歯切れが悪く言い訳して、挙句に5年もすれば本当の事を教えてやると言ってそれきりだ。 どうせ山奥に入ってはいけない、物を汚してはいけないといった躾を言って聞かせるための話で、深い意味は考えられてないのだろう。 しかしある日、隣の権助が深刻そうな顔をしてマラツボサマの話をし始めた。 権助の父が隣村での会合のついでに、道を覚えるようにと権助を連れて行った時の事だ。 覚えると言っても往来が少なく多少草木が茂ってはいるものの迷う事もなさそうな山間の一本道だったが、一つだけ分かれ道があったそうだ。 雑草一つ無い綺麗な道を隣村への道だと思い曲がろうとした権助に、父は血相を変えて行っては駄目だと叱りつけた。 去り際に覗き込んだ道の奥には、木々の影とは違う、真っ黒い空洞のようなものが見えたという。 どうせ勘違いだろう、そんな道あったとしても先は別の村だろうと僕は反論したが、権助も頑なにあんなに怒るお父うは初めて見たと言って譲らない。 キリがないのでじゃあ行って何があるのか見てきてやると僕は啖呵を切って、提灯を片手に隣村への道に駆け出した。 見ればすぐ分かると権助の言った通り、木々の間にぽっかりと大きく口を開けたような隙間のある奇妙な光景はすぐに見つかった。 異様な空間からまっすぐに土の露出した地面が伸びている様は気味が悪かったが、大人たちが作り話のタネにするのに持ってこいなだけだと自分を納得させ脇道に足を踏み出す。 先程までの草をかき分けて歩いていた音は消え、風の音もどこか遠くから聞こえる。 不気味な静寂を抜けて空洞のそばに寄るとさらに少し奥に洞穴がある事が分かった。 言い伝え通りの様相に一瞬怯んだが、恐怖心はすぐに消え別の不快感が僕を襲った。 臭いがしたのだ。古い便所のような、饐えた小便の臭いだ。 やれ入ってはいけないだの祟られるだのは名ばかりで、現に度胸試しか緊急の用足しかは知らないが人の立ち入った気配があるではないか、と僕は洞窟へと歩みを進める。 ここで「洞窟はあったけど何て事はない、小便まみれの薄汚れた洞窟だ。」と帰って権助に告げても話は終わりだったのだろうが、この小道が禁足地でも何でもない事を暴いて気の大きくなっていた僕は、この洞窟の正体も暴いてやるつもりになっていたのだ。 洞窟の入り口に立つと中からは生暖かくジメジメした、そして一層臭いの濃い空気が流れてきていた。おそらくどこかに通じているのだろう。 あまりの臭気に面喰いながらも、なんとなく嫌悪感のある湿った壁面を避け、できるだけ洞窟の真ん中を歩く。 中は熱くうっすらと汗ばみながら慎重に進んで行く。 未だ臭いには慣れず、まるで小便で蒸されているような不快な気持ちになるが、出口まで着けば権助や村の大人たちの鼻も明かせるとの一心で暗がりの先を目指した。 …提灯の明かりだけを頼りに進むというのは案外辛いもので、まだ疲れこそないものの薄ぼんやりとした明かりは眠気を誘い、変わり映えのしない風景は距離感を、日の射さない空間は時間の感覚を忘れさせる。 端的に言えば僕はもはや恐怖も何もない退屈な洞窟探検に飽き始めていた。 どうせ帰れば「何もなかった」と言うだけなのだからここらで引き返そうかと考えていると、少し先に日の差し込む広間を見つけた。 ちょうどいいから証拠としてここいらに目印でも残して帰ろうと一息に駆け出すが、何か柔らかい物に躓いてしまった。 迂闊な行動に後悔しながら目を瞑り硬い地面との衝突に備えたが、僕を迎え入れたのはまたしても柔らかい塊だった。 恐る恐る目を開けると、そこには目隠しをされた、そしてなお整った造形を感じさせる人間の顔があった。 マラツボサマだ!思わず僕は後ずさり、ふと気付く。先ほど手を触れたのはそいつの大きな乳房だったのだ。 洞窟の奥に鎮座する未知の存在に慄きながらもそれが敵意を示さない事を確認し、改めて観察してみる。 背筋をぴんと張って綺麗に座るそれは座ったままで僕の背と同じぐらいある巨体で、髪は長く女のようだった。 女の首筋から胸にかけて一切の衣服は無く、血色の悪い肌に乳房には確かに主張する薄桃色の乳首まで見て取れる。 マラツボサマは男の妖怪だというから恐らくこいつは妖怪ではないのだろうという安堵感と、あわよくばこの美しい女性と話してみたいという下心が僕の心に湧いてきた。 「ごめんなさい、こんな所に人が居るなんて思わなくて…あなたは大丈夫ですか?」と平静を装い話しかける。女は何も言わない。 提灯の小さな明かりを向けるとどうやら彼女は縄で縛られているようで、着衣の類は腹のあたりに何か書かれた欠片が僅かに張り付いているばかりだ。 ”魔羅…封…”…難しくて読めないが多分文字だろう。 「お姉さんは何か悪いことをしたの?こんな所にその…裸で…一体何をしているの?」彼女は答えない。 恐る恐る近寄ってみると彼女の汗ばんだ肌が日の光でぬらぬらと光る。この蒸し暑さでは無理もない、さぞ苦しい事だろう。 「もしかして喋れないの?今ほどいてあげるからちょっと待っててね。」そう言って僕は彼女の体に手を伸ばし、ある思い違いをしていた事に気付く。 何かの欠片が張り付いているように見えた彼女の腹だが、欠片の張り付いた部分と腹とは別の部分だったのだ。 下腹部から胸まで、真っ直ぐ腹に沿って伸びる紙片の張り付いた肉の塊は彼女の股と繋がっており、胸ばかりに気を取られていたが見ればその根元には握り拳を二つ並べたような巨大な陰嚢があるではないか! その存在感に思わず息を飲み、一際濃い異臭にむせる。 道中よりもさらに濃度を増した小便臭が目の前の肉棒から放たれており、同時にそれが自分の股間の物と同様である事を知る。 「お…男だ!もしかして君…マラツボサマなの…?」こわごわ尋ねるが、その問いにも彼女は首一つ動かさなかった。 しばし沈黙を噛み締めた後暗闇の中で逡巡する。この物言わぬ男とも女ともつかない物が化け物なのか、それともただの人間であるのかだ。 もっともそれは主観的な話で、正確にはそれは男ならマラツボサマかもしれないから助けないし、女なら恩を盾に助平心を満たさせる事も出来るのではないかという打算も暗に含んだ悩みなのだが。 汚臭に混じった鼻腔から脳天をくすぐるような甘い香りと、青白く艶のある肌を誘うように滴る汗が少年を惑わせる。 この美貌なら或いは化け物だったとしても…と手を伸ばしかけては邪な考えに首を振り、目の前のそれが何者であるか再び向き直る一人相撲を何度か繰り返す。 そいつが苦しそうに縄に縛られた身体で身じろぎをする。…ハッとして凝視するもそいつは微動だにしない。 女がむず痒そうに尻を蠢かせる。…女は汗の水たまりの上で一寸も様子を変えてはいない。 彼女がからかうように巨大な陰嚢を蠕動させて見せる。……目の錯覚だ、彼女は最初に対面した時から全く動いてなどいない。 もはや少年の目には手足を縛られ苦しそうにする女の姿しか映らなくなっていた。 女の股間に聳える奇怪な肉棒など気にも留めない様子だったが、女の雄々しき剛直に倣うよう、もう一本の小さな肉棒もいつの間にかか細く天を仰いでいた。 彼女を助けねばと使命感に駆られ、異臭と熱気で覚束ない少年が夢中で手を伸ばした先は、ネバネバの粘液に覆われた巨大な陰茎だった。 びちゃり、と触れた手が気色の悪い音を立てたのを聞いて、少年は我に返り飛び上がる。 一体何時からそうしていたのか、少なくとも少年が来てから十数分間、寸分の衰えも見せなかった精力絶倫の陰茎は、威容に劣らぬ熱で少年の手に灼けるような温もりを、陰茎全体を湿らせこんこんと湧き出でる先走り汁で蛞蝓の群れが這いまわったような粘液の糸を、洞窟に充満して有り余る熟成陰茎臭で一生取れない臭いの刻印を、触れ合った僅か数舜のうちに少年の手に残していた。 気持ちの悪い陰茎を触ってしまった衝撃に泣きそうになりながら少年が手を見やると、そこには夥しい粘液とぼろぼろの紙片が張り付いていた。 もしもこれが封印なら…と背筋に冷たいものが走りかけたその時、手のひら越しに何かが覗き込んできた。 見れば女の体を固く縛っていたはずの縄はぱさりぱさりと音を立てて脱ぎ捨てられ、目隠しの布は手も触れられないままに緩み、右目がこちらを捉えている。 女は大きく口を開けて少年の方へ四つん這いで近付き、少年は自分を頭から丸呑みに出来そうなその口腔に悲鳴を上げそうになる。 それより先に女が少年の口に、上唇から顎にかけて吸い付いたので少年の喉はモゴモゴと女の肉越しに僅か音を立てるばかりであった。 長い舌が身を強張らせた少年の唇を這い、力尽くでねじ込まれる。 少年は腰が抜けてへたり込み、女はそれを逃がさぬよう一層身を寄せる。 顔に吸い付くようだった大きな唇はいつの間にか器用にすぼませ、少年の唇を貪るための形になっていた。 味わうように少年の口内を舐めまわす女の口からは大量の唾液が溢れ出し、少年の体に流れ込んで行く。 喉奥を舐る肉と粘液に溺れそうになる少年を、女は失神する寸前で解放する。 巨大な口がゆっくり遠ざかりながら、女の妙に粘っこい体液が無数の糸を引いては落ちていくのが、朦朧とした少年の目には永遠のように見えた。 肩で息をしながら少年は、向こうは苦しくないのかと女を見るが、女は呼吸する素振りすら見せない。少年がここに来た時から依然として。 もはやそんな事すら疑問に思えない酸欠の少年は女としばらく虚ろな目同士で見つめあっていたが、ふと女が視線を下に向ける。 そこには少年の小さな小さな剛直があった。 先刻より硬度を増したそれは、流し込まれた唾液が咽頭から脳を痺れさせ、腸から血流を促進した、まごう事なき妖の体液の所業だったが、そんな異変も少年には分からない。 女は少年の着物を軽く払いのけると人らしからぬ緩慢な動きで顔を寄せ、先程の貪るような接吻とは真逆の繊細な口使いで暴発寸前のそれを口に含んだ。 少年は未知の快感に身をよじり僅かばかりの抵抗を見せるも、強烈な吸い付きとねちっこい舌使いのカリ責めに抵抗虚しく果ててしまう。 未熟な陰茎が初めて吐き出した露の如き少量の種汁を、女は少年の顔を見上げながらジュルジュルとわざとらしく大きな音を立てて啜る。 色事を知らぬ少年は理解の追い付かぬまま女の嗜虐的とも思える、ここに来て初めての人間味を感じる行動に恐怖し失禁した。 女は虚ろな目をにんまりと歪め少年に向けたまま、零れた種汁の次は陰茎に残った出しそこないの精を、その次は少年の尿までをもゴクンゴクンと喉を鳴らしてうまそうに飲み干した。 少年が膀胱と玉袋を空にしてからも女は暫し陰茎を咥えて離さなかった。 まるで赤子が催促するように物欲しそうに時折陰茎を吸い、見上げる虚ろな目も心なしか恨めしげに見える。 その刺激で少年が再び気を遣るも露の一粒も出ないのを理解した女はようやく口を離す。 女が顔を上げると、少年にはその下でブルンと何かが揺れるのが見えた。女の陰茎である。 元より胸の下まで伸びていたそれは封印が解けたためさらに質量を増し、今や首元近くにまで頭をもたげていた。 鉄のように剛直しながらも圧倒的な質量によって撓むそれのゆらゆら揺れ動く様に目が釘付けになっていると、視界に女の手が入り込んできた。 四つん這いになって少年の体を挟み込むように置かれていた手の右側の方を自らの腹に当て、ゆっくりと摩り始めたのだ。 思いの外逞しい指が、女の柔肌を押しへこませながら艶めかしく動く。輪を描くような動きに合わせて長い陰茎の先の亀頭も小さく上下する。 それがおぞましい行為の前触れだと知らずに、少年は目の前の光景に夢中になっていた。 女が再び少年の目の前に顔を寄せる。今度は妖しいゆっくりとした動きではなく、急かされるように口を突き出しながら… 「…ぐぼおえぇぇぇぇっぷ♡」 まるで洞窟に辻風でも吹き込んできたような、少年の髪を揺らすほど盛大な、野太いゲップだった。 先ほどのけたたましい種吸いの副産物であろう、胃に飲み込み汚染された空気を解放しているのだ。 微かな少年の零した青臭い子種の香りと、それを塗りつぶさんばかりの酸っぱく生臭い強烈な女の体臭で構成された気体が突風のように吹き付ける。 「おえぇっ…く…臭い……」 それを聞いた女は満足そうに笑みを浮かべ、さらに強く指を腹に沈みこませる。 「げえぇぇぇっぷ♡ごぇぇぇっぷ♡んぐぇぇぇっぷ♡ん……げええぇぇぇぇぇっぷ♡」 巨体ゆえか、それとも異形の腸の成せる技か、並みの大人では胃袋をひっくり返しても出せないような巨大なゲップを女は連発して見せた。 「んぐぉぇぇっ♡ぐげえぇぇぇぇぇぇ…っぷ♡げぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇっぷ♡」 女の口から粘着質な唾の飛沫を飛ばして吹き荒れる悪臭に、少年はたまらず倒れこんだ。 仰向けになった少年の腰に女は馬乗りになり、ふと何かに気付き少年の足のほうに向き直る。 ゴツゴツとした筋肉質な凹凸を汗がテラテラ強調する雄々しい背中と、不釣り合いな丸みを帯びた淫靡な尻、そしてその真ん中のお札を張られた肛門が少年の目に映る。 少年の手のひらほどの大きさのお札より肛門はさらに大きく、お札の端からその縁を覗かせている。 紙越しにも分かる立体感でそこに確かに穴がある事を主張する巨大な肛門は、尻割れに引っ張られるように縦に長く伸びていた。 女は大きな丸い尻をブルンブルン揺らし、封印を解くようにせがむ。 ここに至ってようやく少年は、目の前のものが女ではなくマラツボサマなのだと確信した。 それほどまでに、妖怪と断じて見捨てるのはあまりに惜しいほどにマラツボサマの肉体は魅力的であった。 どすん、どすんと魔羅壺は少年の顔の方に向かって尻を寄せてくる。 自分では封印に触れないのだろう、手は尻たぶにかけるばかりで、食い込んだ指はその肉感を強調する。 どすん♡…どすん♡……どすん♡………どっっすん♡ ついには目の前に差し出された魔羅壺の肛門は肉厚で力強く盛り上がっており、穴を形容するにはおかしな話だが、「逞しい」という言葉の似合う巨大な肉孔であった。 少年の腹の上を金玉袋で占拠し、胸には巨大な尻を乗せ、目には雄大な反り立つ筋肉で威圧感を与える格好のまま静止し、魔羅壺は待つ。 このまま何十年何百年でも、私がこうして待っていたのと同じ時間だけ根比べを続けてやるぞ。お前の精根が尽き果て真に封印を解いてしまうまで、この地獄は終わらないぞ。と言わんばかりの魔羅壺の威容だったが、それはすぐに終わった。 僕は刹那の躊躇いもなく、その吐き気を催す不気味な肛門に手を伸ばしていた。 あれほどまでに激しく尻を揺すっても剥がれ落ちなかったのが嘘のように、するりとお札は剥がれた。 お札の真ん中にはネットリと、それが排泄器官を封じていた事を示す粘液が糸を引いた。 封印が解けた快感によるものか、魔羅壺様は全身を打ち震わせ絶頂する。 肛門からは僕の顔に向けて汚臭のする汁を飛ばし、射精もしているのか下半身には生暖かく夥しい粘液の感触があるが、不思議と不快ではなかった。 魔羅壺様は僕のほうに向きなおり、耳元でそっと呟く。 「ありがとうね…ボウヤ…♡」 優しげな低い男の声に僕の一抹の理性はやっぱり女の人じゃなかったんだという落胆を感じるが、残る頭の中のよく分からない部分はぴりぴりと知らない快感に包まれていた。 「ご褒美をあげなきゃね…♡」 気色の悪い囁きに呼応するように小さな陰茎は強くいきり立つ。 魔羅壺様の巨大な肛門はあっさりと僕の陰茎を呑み込み、吸い付くように締め上げる。 巨体を押し付けるような荒々しい腰使いに身を任せている内に気が付けば提灯の明かりは消え、差し込む日の明かりは沈みかけていた。 なぜか暗い中でも魔羅壺様の女のような美しい顔と腰の動きに合わせて揺れる乳房、そして一際大きく揺れる大きな陰茎だけは、浮かび上がるように僕の目に映り続けた。 魔羅壺様の不似合いな野太い喘ぎ声と時折零れてくる小便臭い種汁の感触に包まれながら、僕はいつまでも魔羅壺様の姿を愛おしそうに眺めていた。