「こちらはセントラルタワー、サー・メタラジーが発信している…」 「話したい事がある…私の友についての話だ。彼の名はエンツォ。私がただ1人天才と認める男にして、異端者の烙印を押され、非業の死を遂げた者だ」 「私が出会った頃の彼はこの都市にはよく居るスチームバード暴走族の頭目で、あまりの騒音に私が彼らの溜まり場に怒鳴り込んで行ってデュエルになったのが友情の始まりになったんだ」 「彼はスチームバードという機械の全てを知り尽くし、ジャンクの寄せ集めに等しいそれすらも完全に調和させ、何よりも速く飛ばして見せた。 しかし彼は類稀な機械工学や流体力学のセンスを持ちながらも、蒸気という速さの限界を感じているようだった。だからこそ、私は彼を勧誘したんだ、蒸気よりも速い物を我々ならばきっと作れる、とね」 「そこからは私の見込み通りだった。学院の試験をあっという間にパスし、受講の態度はともかく、彼は恐ろしい勢いで知識を吸収し、私すらも越える機械工学者に成長した。 そして共にビーカーズに加わり、内燃機関という新たな地平を拓く事をライフワークにすると誓ったんだ」 「だが、その実現を目前にして、エンツォは死んだ。それは何故か?答えはひとつ、この都市そのものの構造そのもののせいだ。 この都市は…この都市を支配する構造は変化を拒む、そして未来が開かれる事を拒む。だからこそ、彼のもたらすプロメテウスの火を疎ましく思う者達の手で彼は死んだ」 「…私はこの醜悪を終わらせる手段を導き出した。この都市そのものを、最初からなかったかのように、壊し尽くしてしまえばいい、と」 「この都市を全て破壊出来るだけの爆薬を既に敷設させてもらった。そして今から6時間後、全てが起爆するようになっている」 「止めに来るのも自由だ。これは私からの、この都市とそこに生きる全ての人間に対する宣戦布告であって、君達は決闘によってこれに抗議する権利があるのだから」