色々あったがひとまず黒江の意識が戻り電脳獣の支配からどうにか解放されたことによりいろは達は科学省からみかづき荘へと帰ってきた。 黒江の回復祝いとバブルマンの入居も同時にする為にささやかながら皆でお祝いをした。まだネオWWWとの戦いが控えているためあまり盛大には祝えなかったものの久しぶりに皆で楽しい時間を過ごすことができた。 そして就寝の時間になりいろはと黒江は自分達の部屋へと入った。  いろはがベッドに入ると黒江はPETのそばに立っていろはを見つめていた。 「……どうしたの?」 「ごめん、いつもの癖で」  いろはが尋ねると黒江ははにかむように笑った。いつもPETの中でいろはが寝るのを見守っていたからついその癖でPETの近くに寄ってしまったのだという。 いろはは一緒になって少し笑うとポンポンと自分の隣を叩いた。黒江が首を傾げるといろはは静かに「おいで」と言う。 意味を理解した黒江が赤くなって遠慮するといろはは無言で黒江を見つめ続ける。暫くすると根負けした黒江がゆっくりといろはの隣に寝た。 「……変なことしないでね」 「変なことって?」 「……意地悪」  黒江が恨めしそうに呟き、いろははそれを無視して黒江をぎゅっと抱きしめる。 「……黒江はいつも突然いなくなるんだもん」 「それは……ごめん」  入院していた時も、今度の電脳獣の事件の時も…不意にそばから離れてしまったのは事実で、黒江は謝るしかできなかった。 背中から伝わるいろはの温もりを感じながら、黒江は口を開いた。 「……約束するよ、もうどこにもいかないから…いろはのそばから離れたりしない」 「うん……」  黒江は寝返りを打っていろはと至近距離で見つめ合う。自然に惹かれあった二人の唇がそっと触れると、そのままいろはは黒江の上に移動して被っていた布団をゆっくりと除けた。  黒江は離れたりしないって約束したけれど、私は知ってるよ。あなたは優しいから…きっとまた迫られたら自分を犠牲にしてでも私を助けようとするって。 だから…もし、どうしても離ればなれになってしまうというのなら…私は、あなたにここにいて欲しい。そう思うのは…許してくれるかな? 私は、黒江の温もりを感じながら静かにそんな決意をした。