自称八百屋のおっさんが、 アニメ制作の現場に紛れ込んでいた。 「え、八百屋さん?ここはアニメを作る現場ですよ」 スタッフが怪しむと、おっさんはニヤリと笑った。 「ほう、アニメ制作の現場か。わしはアニメには詳しくないが、 八百屋を営んでいれば、いろんな『ドラマ』が見られるもんじゃ。 ほれ、あそこの若いの、エゴサしておる。 きっと、自分の名前がどんな評価されているか気になっておるんじゃろ」 おっさんの鋭い指摘に、若手アニメーターは顔を赤らめる。 「らっしゃい、らっしゃい。 このアニメ制作の現場にも、いろんな『ドラマ』があるんじゃな。 わしは八百屋で、お客さんの『ドラマ』を聞きながら、 野菜を売っておる。 時には、その『ドラマ』に涙することもある。 ほれ、あそこのベテランさん、 若手の作品に厳しいこと言っておるが、 きっといい作品になってほしいんじゃろ? その気持ち、わかるで」 おっさんの言葉に、ベテランアニメーターは目を見開いた。 「おっさん、アニメのことは何も知らんのかもしれん。 でも、作品を作ることの『苦しみ』と『喜び』は、 八百屋を営むことにも通じるのかもしれんのう。 まぁ、ここはアニメ制作の現場じゃから、 残念ながらおっさんには出てってもらうが、 またいつか、アニメの『ドラマ』を八百屋から見守っておってくれ」 そう言って、スタッフはおっさんを優しく追い出した。 八百屋のおっさんは、 今日もどこかでアニメの『ドラマ』を見守っているのだろう。 野菜を売る傍らで、 若者のエゴサにらっしゃいと声をかけ、 その『ドラマ』に涙しながら。 テーマ曲例 https://www.youtube.com/watch?v=0HEerQb6DL0