エイシンフラッシュはこの日も完璧なスケジューリングにより最上のトレーニングを完遂し完璧で平凡な日常を終わらせようとしていた。 しかし平和はもろく崩されるもの明日の約束を確認して別れようとした瞬間に黒い影、『トレーナー狩り』が襲来してきた。 「フラッシュ!逃げろ」 急な刺客に硬直した私をトレーナーさんは弾き飛ばした、自分の身に危険が迫っている時にまで私を守ろうとするのは嬉しい!しかし相手の狙いはトレーナーさんなのだ、本来なら私がトレーナーさんを抱き締めて奪われないようにしたか…するべきだったのに! ウマソウルからエペを取り出し応戦しようとしたが非常に旗色は悪かった。 「ッ!!数がッ多い!」 薙ぎではなく刺突用のエペでは大勢を相手にする時にはあまりにも手数が足りない。 更にここはダート、慣れない地形で命中にマイナス補正がかかり相手はダートにプラスの補正がかかっているので1撃で仕留められるはずの相手に2撃3撃と必要になる状態になってしまっている。 芝で戦う自分を相手にするため自分のホームグラウンドまで待ち仕留める、敵ながら完璧な作戦だ、そしてそんな単純な作戦にも気付かない思慮浅い私を強烈に恥じた、何がトレーナー狩り相手だろうと自分なら守れるだ、こんな醜態をさらして情けない! このまま連れ去られるわけにはいかないのに!命の危険はないのはわかっている!1週間くらいで帰ってくるのもわかっている!だけど!明日は!トレーナーさんとデートする予定だったのだ!! 同室のファルコンさんが「あーファル子ちょーっとその下着は学生には早いと思うなー…」とお墨付きをもらうくらい完璧な服装とそれに合わせた作戦を立てていたのにこんな馬鹿みたいな襲撃で瓦解させられるなんて!! 目の前の敵を排除している間にも視界の端でトレーナーを拘束したトレーナー狩りがどんどんと離れ、小さくなっていくのを歯噛みしながら剣を振るっていると。 「フラッシュさんどうしたのー☆」 何も考えてないようなまんまるい間延びした声がその場に響き渡った。 「ひィ!?」 「あ…赤鬼だぁ…!」 「もう駄目だ…おしまいだ…みんな殺される…逃げるんだぁ…。」 突然現れたファルコンさんの声が響いた瞬間になぜかトレーナー狩りは全員膝から崩れ落ちてガタガタと震え出したのでした。 「えーっと…☆」 自分以外が急に地面に付した光景に少し首を傾けていたファルコンさんでしたが自分の足元にいる子を見てピン!ときたのか耳をたて。 「あ!あなた!」 「ひィ!?」 「そうそう、この前の新潟記念に来てた子だよね?どうしたの?もしかしてファル子に会いに来てくれた?☆それともー…もう一回走りたい?☆」 「あ…ぁぁぁ…。」 ファルコンさんの近くにいた子に楽しそうに話しかけていた、怯えている姿を自分との会話に緊張していると勘違いしたのでしょう、いつもと変わらないファン相手のウマドルトークを続けていた。 「あ!いきなり話しかけてびっくりしちゃった?急にゴメンね☆」 何故来たのかわからないがファルコンさんの援軍には感謝だ、明日のデートの戦果は一番に教えましょう、そう心に誓いながらトレーナーさんが担がれていった方向へ走ろうとして。 「ひィィィィィ!!!!赤鬼のしもべええ!!!」 トレーナーさんを担いでいたトレーナー狩りが腰を抜かして震えている姿が見える、さらに見てみるとファルコンさんのトレーナーが首をかしげて震えるトレーナー狩りに話しかけていた。 どうやら大事は回避したようですね、エペを格納してふぅと一息ついて怯えている地方ウマ娘に追撃しているファルコンさんに話しかける。 「ところでファルコンさんはなぜここへ?」 「うん、何かフラッシュさんがこの人たちと騒がしくしていたから何してるのかなー☆って思って。」 なるほどこちらの対策として大勢で戦っていた作戦が逆に目立ってしまったというわけですか策士策に溺れるとはこういうことでしょう、それにしても異変を察知してすぐに来てくれたファルコンさんは流石という言葉しかありません、トレーナーさんを誘う以外なんでも出来るは伊達ではないのですね。 「ファル子!」 ファルコンさんのトレーナーと『私の』トレーナーさんが小走りでやってきました。 「トレーナーさんその子は?」 ファルコンさんは自分のトレーナーが背負っているトレーナー狩りのウマ娘をジッと見つめながら聞いていた。 「ああ、なんかこの子急にころんじゃって怪我をしたのかなって思って保健室へ連れてこうと思って。」 「あ…ああだだだだいじょうぶでしゅ…すsこしすべっただけなので。」 「へー」 会話を聞くに彼女は怪我をしたのだと勘違いしたのでしょう、誰か近くのウマ娘を呼べばいいのに責任感のある彼女のトレーナーはわざわざ転んだウマ娘を背負ってやってきたのだった。 …因みに知らないウマ娘を背負っているトレーナーを見た瞬間にファルコンさんの表情が固まった、視界の端で地方ウマ娘達がヒューヒューと言っている音が聞こえるに恐らくファルコンさんのトレーナ―以外全員が気付いたのだろうがこれはまあ無視してもいいだろう。 「ああそうなのかゴメンな。」 「もうトレーナーさん!ちょっとはデリカシー持たないと!☆」 まんまるにプンスコと怒っているうちに空気が緩んだのだろう、周りのヒュー音がやんでいった。 「その子たちは?」 「うんファル子と一緒に走った子たちなの、もしかしてトレセンに遊びに来たのかな☆って」 「そうなのか!なんだじゃ歓迎しないとな!」 「じゃあせっかくだしみんな一緒に併走トレーニングしちゃおうか!」 「いやああああ!」 「中央こわいよおおおおおお!!!!!!」 「おかあさああああんんんん!!!!」 「おうちかええりゅううううううう!!!!!!」 「ファルコンさん!ちょっとファンサしてくるね!よし!☆じゃあみんなでゴー☆ゴー☆」 トレーナー狩りをファンだと勘違いをしているファルコンさん達が倒れ伏しているトレーナー狩りの地方ウマ娘達を何人も掴み担ぎ上げ引きずりそのままグラウンドへと向かっていった。 余りの急転直下の出来事に取り残された私たちは呆然と立ち尽くしていた。 「えっと…フラッシュ大丈夫だった?」 「いえこちらはなにも問題なく、トレーナーさんこそ。」 「ああ…うん…アイツのおかげで何とか。」 グラウンドから聞こえる叫び声を呆然と聞いているに一つ妙案を閃きました。 「ですが少し心配なので部屋までは同行させてもらいます。」 トレーナー狩りの襲撃を口実に少しだけわがままを言うことにします、馬鹿みたいな事件に巻き込まれたのです、これくらいのいい思いをしてもいいと思います。 「え…そんな悪い…あー…そうだなじゃあもうちょっとだけ一緒にいようか」 断ろうとしてさっきの事件を思い出したのでしょう、こちらの要求に首を縦に振ってくれた。 さてこの逢瀬をどこまでこれを引き延ばせるかそう思いながら更衣室へ歩いて行った。 因みに次の日の昼スマートファルコンは昨晩の戦果を聞かされることになった。