「イヤーッ!」 「ンアーッ!!」 デルファイのやや豊満な体がリングに叩き付けられ、リングに美少女の悲鳴が響く。 デルファイが起き上がる様子は無い。おそらく気絶したのだろう。 「ウィーピピピー!!!」「イイゾー!」「ヤーチマイナー!!」 処刑場めいた会場のボルテージは最高潮に達しようとしている! (((え?嘘でしょ?))) (((私の出番は回ってこないって言ってたじゃん!!))) キョート、アンダーガイオン シャドー・コン会場。ニチョームに住む善良なニンジャ、エフェメラルは何度目かの人生最大の危機に直面していた。 (((ナンデ?ナンデ?あのニンジャってドージョーに助っ人で呼ばれた時にいた人だよね?))) (((カラテする?私が?アシャーダロン=サンやキャンドル=サンでも敵わなかった相手に?ナンデ!?))) エフェメラルはソーマト・リコールめいて数日前の出来事を回想する。思えばタダでキョート旅行なんて話に釣られたのが運の尽きだったのかもしれない……。 「ドーモ、エフェメラル=サン!」 「ア、デルファイ=サン ドーモ!」 いつもどおりおばあちゃんの仕事を手伝っていたところ、デルファイが声を掛けてきた。 おしゃれな彼女にはファッション面でしばしば助けてもらっている。最近の彼女はよく旅行に出かけ、現地でのバカンスの様子をSNSにアップロードしたくさんの良いを貰っていた。 それに久しぶりに見る彼女からは以前とは違うカラテの高まりを感じた。 「エフェメラル=サン、ヤブカラボーなんだけど……キョート、一緒に行かない?」 「エッ、キョート?私と?ナンデ?」 「キョート行きのペアチケットがあってね。エフェメラル=サンにはいつもお世話になってるから!」 「ウーン…(せっかく誘ってくれてるのに断るのもシツレイだよね)いいよ、一緒に行こう!」 思い返せばあまりにもウカツだった。観光しておばあちゃんにお土産を買って。それから、それからなんて考えていたのはキョートに来てすぐに吹き飛んだ。 「エフェメラル=サン!こっち!こっち!」 「デルファイ=サン?大丈夫なの?ここ……」 キョートに来てすぐデルファイに連れてこられたのは奥ゆかしい街並みではなくアンダーガイオンのいかにも怪しい地下格闘場だった。 (デルファイ=サンってこういうのも趣味だったの?いや、それにしたってわざわざキョートまで来て真っ先にすることがこれ…?) いぶかしんだが止まることもままならずデルファイに手を引かれ格闘場の中へ進む。 「ドーモ、ネオサイタマでの予選を勝ち抜いて招待されました『釘バットの妖精』デルファイです。こちらはタッグパートナーの『ドージョーの秘密兵器』エフェメラル=サンです」 「お待ちしておりました。ドーゾ控室へ」 「え」 「エフェメラル=サン!これに着替えて!」 「え」 「エフェメラル=サン!まかせといて!私一人でやっつけて出番は回ってこないから!」 「え」 「ドーモ、ミラーシェードです」「ドーモ、バンシーです」 「え」エフェメラルは辛うじて失禁をこらえた。 「イヤーッ!」 「ンアーッ!!」 「え」 そして今に至る。 (((神様……もしもいるのならせめてデルファイ=サンだけでも無事に帰してあげて……))) (((ごめんねおばあちゃん……お土産、買って帰れそうにない……))) デルファイが倒れた今、戦えるのは自分だけだ。やれるわけがない。だが、やらなければならない。 エフェメラルは悲痛な覚悟を決めてキアイした。 「エフェメラル!」「エフェメラル!」「最終兵器!」「豊満!」「コロセー!」「前後したい!」「フィーヒヒヒ!」 「ドーモ、ミラーシェード=サン。エフェメラ「「イヤーッ!!」」「「グワーッ!!」」 アイサツ中のエフェメラルの後ろから突如として二人の新たなニンジャがエントリーした! 「ドーモ、ドラゴンドージョーのアシャーダロンです」「同じくドラゴンドージョーのキャンドルです」 「キョートまではるばるリベンジに来てやったぜェ」「ウチだって負けっぱなしじゃいられないもんね」 エフェメラルの後ろには頼もしい2つの背中。エフェメラルは心の底から神に感謝した。 「……おいキャンドル=サン、なンでここにエフェメラル=サンがいンだ…?」「ウチだって知らないよォ…」 おわり