郊外の住宅街にある洋館の廃墟から幽霊の声がする。はじまりはそんな噂であった。
声を聞いたものは確かに何人もいたが、ただの気のせいだろと誰もが思った。
この噂に喰い付いたのは暇で娯楽に飢えている学生と節操なく噂に喰い付くデジチューバーくらいであった。
状況が変わったのはそのように何人かが肝試し感覚で廃墟に入り込んだ時からだった。殆どは何も見つける事はなくただ肝試しを楽しんで廃墟を踏み荒らすくらいであった。
だが、1週間前に肝試しに入った学生グループでひとり、探索中に忽然と姿を消した。
警察は行方不明の学生の素行を鑑みて事件性なしの家出として経過を見る事となった。
実際に警察を廃墟を捜索しても学生の姿は見つからなかった。
廃墟は確かに普通の家屋よりは大きいが2階建てで、誰にも見つからず姿を隠しきる事などできない場所であった。
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だが、猫塚 虎子はこの事件にデジモンが関わっているのではないかと思った。
学生グループに事情を聞いた(強引に)が嘘を付いてるように見えなかった。
そして今目の前に来たが確かにひとのうめき声のようなものが聞こえる。
…それが虎子の気を重くした。
「？早く行きましょう姐さん。」
レナモンは全く虎子の気持ちを察せず促してくる。
話を聞いた昨日も日が暮れてるが早い方がいいと急かすのをなんとか言いくるめて午前10時、どんなに探索しても日が暮れる事はない時間にしてやって来たのだ。
…それでも気が重かった。
「お…おう。」
虎子は重い足をプライドだけで進めた。
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廃墟の中は窓が殆ど杭打ちされているせいか昼間というのに懐中電灯を使わないといけないほど暗かった。
虎子の目論見は外れたのであった。
「クソ…なんでこんな暗いんだよ。ふざけんなよ…マジで出そうじゃねえか。」
「？姐さん当たり前じゃないですか。デジモンがいると踏んで来てるんですから居てもらわないと。」
「バカ！違えよ！そっちじゃあねえよ！アレだよ！…ゆ…ゆう」
「？どうしたんですか姐さん震えてますよ？武者震いですか？それとも風邪ですか！？」
「バッカ！！！お前！！！バッカ！！！これはお前…！！！バッカ！！！」
「？」
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「おい」
「キャアああああああああああああああああああああああああああああああああああああ！！！！！！！！」
突然後ろから誰かに話しかけられ虎子は普段の低めを意識した声ではなく高い絶叫を上げた。
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「何をやってるんだ君は。」
そこには虎子の同級生であり同じテーマ―でデジモンの起こす事件を追っている犬塚 恭介とパートナーデジモンのラクモンがいた。
虎子と恭介はデジモンが起こす事件を解決しようとする志は同じではあるが、堅物である恭介と虎子では水と油で会うたびに喧嘩をしていた。
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「てんめえ！クソ眼鏡！！！バッカ！！！チビルるとこだったろ！！！もっと存在感出せや！！クソ陰キャ野郎が！！！陰と同化してんだよ！！バカ！！！バカ！！！」
「女子がチビるとか言うんじゃない！！！そもそもまた君は事件に首を突っ込んで一生徒じゃ危険だからやめろといつもいつも言ってるだろ！！」
「てめえもただの学生だろうが！！！なに恰好付けてんだタコ！！！」
虎子を恭介のネクタイを引っ張りガンを飛ばすため近づく。それによって柔らかいものが恭介の腹に当たる。
「僕は風紀委員だ！生徒達を守る必要がある！！！それは他校の生徒でも同じだ！！！！」
騒ぐ人間ふたりを見ながらラクモンはレナモンに話しかけた。

「僕達も今日噂を聞いてすぐ来たんだ。一緒に頑張ろレナモン。」
「…。」
レナモンは声をかけるラクモンを無視しそっぽを向いた。
ラクモンはそんなレナモンの顔に飛び付く。
「が　ん　ば　ろ　って言ってるのになんで毎回無視すんだよ！」
「ば！…うるさい！！私はお前など眼中にない！離れろ！！狐と狸は昔から相容れるものじゃないんだ！！！」
「が　ん　ば　ろ　！　！」
「離れろ！！！」
顔に張り付くラクモンを引き剥がそうとする。
結局のところ両組とも毎度の事ながらぎゃーぎゃーと大声で喧嘩をする事となった。
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「…というか離れろ！その…当たってるだろ！！」
「あっ！？…！…きゃ！コイツおチチ触った！」
「触ってない！君が当てたんだ！」
虎子は恭介から離れ胸を抑え顔を赤くして涙目で叫ぶ。
「貴様…クソ眼鏡。よく分からんが姐さんを泣かすなど承知せんぞ。」
レナモンがラクモンを引き剥がし恭介の胸倉を掴む。
「誤解だ！気が利かなかったのは謝るが！！！ええい！もうとやかく言わないから静かにしてくれ！！」
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結局虎子と恭介達は一緒に探索をする事とした。
「なあ無理に来る事ないんだぞ。」
「あぁ！？てめえみたいなヒョロヒョロガリ勉野郎なんかにまかせられっかよ。」
「いつものなんというか口喧嘩とかじゃなくて…怖いの苦手なんだろ？さっきので分かるし、怖いのに無理に来る事はないって言いたいんだ。…その…なんというか心配なんだよ。」
恭介の顔は皮肉でもなんでもなく本当に心配しているものだった。
虎子もその様子に勢いは大人しくなった。
「おう…そうか。大丈夫だよ…その、お前らもいるし。」
「そうか…。」
「ああ！！」
虎子は気まずくなったのかずかずかと歩を進めた。
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「かっしいな。ほんとになんもねえな。」
廃屋を探索したがどこにも何か変なものは見つからなかった。
「あとは、この箪笥とか倒れてる先の部屋だけか。」
「警察もこの先行ったんだろうか。行けなくもないが…。」
その時であった。先の部屋から唸り声が聞こえた。
「猫塚！」
「おう！」
レナモン達が箪笥をどかし奥の部屋に入るとそこは他の部屋と違い家具などは無く。がらんどうであり、ダンボールが幾つかあるだけだった。

いつの間にか声も止んでいる。
ダンボールを覗いてみるが、何も入っていなかった。
「んだよ。ほんとにただの家出だったんか…。」
「恭介このダンボール何かおかしい…。」
恭介の頭にいるラクモンが何かを感じ取ったように呟く。
「…姐さん何かある。上のふたつじゃない下のだ。」
上のダンボールをどかし、下のダンボールを開ける。しかし、そこにも何もなかった。
ラクモンと恭介が目を合せダンボールに手を伸ばしてみる。
「っ！何かある！？」
「んだこれ！？手が宙で止まる！？なんかあんのか！？」
　何も見えないが確かに何かに触れているそして温度がある。奇妙だが透明な何かがそこにはいた。
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ガリッ。何かが天井から音がした。その音と共に何かの風切り音が聞こえる。
「猫塚！」
その音に気付いた恭介が虎子を庇う。
「きゃ！？」
何かが庇った恭介の首を翳め、血が溢れる。
「お…おい！…犬塚！？」
「大丈夫だ翳めただけだ！それより逃げろ！！！」
「バカ！ふらついて立ててねえじゃねえか！！！」
「姐さん！今は！」
「クソ！」
虎子達が恭介を庇うように風切り音の元の方に立ちふさがる。
壁の何かが揺れ姿が現れる。そこにはデジモンがいた。
「カメレモン！虎子こいつ色んなものを透明にできるデジモンだ！やっぱりさっきのは行方不明者だ！」
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「猫塚…頼む逃げろ…僕とラクモンでどうにかする。」
虎子は恭介を一瞥してカメレモンに向かって歩きはじめる。
「姐さん！」
「来るな！」
カメレモンが威嚇音を出しながら天井から降りてくる。虎子と目と鼻の先まで近づいた時に虎子は思い切りカメレモンに頭突きをした。
「なっ！？」
「姐さん！？」
虎子の頭から血が流れる。カメレモンがよろめき再び天井に逃げ、舌を虎子へ突き刺すように勢いよく伸ばす。
それに割って入るようにレナモンが舌を弾く。
「な…何やってんだお前！」
「は…はは！たく…怖えな！昔思い出すぜ！泣き虫で…ただ泣いて！庇ってもらうだけで！何もできなくて…！おい！犬塚！お前前に聞いたよな！なんでわざわざ首突っ込むんだってな！昔みてえに泣くだけで何もできねえ自分に私は勝ちてえんだよあんな！背中もう見たくねえんだ！それに何も言えなかった自分にもな！！！」
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恭介がふらふらと立ち上がり虎子の隣に並ぶ。
「正直…全く言っている事は分からんが…気持ちは分からんでもない。」
「へっ」
ふたりがデジヴァイスを構える。
「レナモン！」「姐さん！」
「ラクモン！」「恭介！」
「「進化」」
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デジヴァイスが光を放ちレナモン達を包む。
「レナモン進化！」「ラクモン進化！」
「キュウビモン！！」「ギョウブモン！！」
光の中から妖狐と妖狸が鬼火を纏って現れる。
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害あるものと判断したのかカメレモンは再び透明に姿を隠し、そして跳ねる轟音がする。カメレモンが部屋を縦横無尽と跳ね、攪乱しようとしている。
「ギョウブモン！」
ギョウブモンの能力である。デジモンの技をコピーする能力により、カメレモンの透明化の能力を読み取る。
「キュウビモン！一時の方角壁だ！」
「チッ！狸なんかに！」
キュウビモンがカメレモンを捉え飛びかかる。そのままの勢いで廊下へ壁を突き破る。
カメレモンが絶叫を上げキュウビモンも突き飛ばし、廊下の奥へ引っ込む。
キュウビモンを追撃をしようと迫るが舌を鞭のようにしならせる。
「ぐっ姐さんこれじゃ…！」
舌の勢いが強くキュウビモンがカメレモンに近づき損ねる。
「猫塚！突っ込め！僕達がなんとかする！」
「あぁ！？何言って！！」
「僕達を信じろ！！」
「チッ！キュウビモン！」
「クソ眼鏡たちが！」

キュウビモンがカメレモンに突っ込む。舌がキュウビモンに当たる瞬間壁を突き破りギョウブモンがカメレモンに爪を立て舌の勢いが落ちた。
「やるじゃないか狸の癖に！」
「カメレモンの能力をコピーして分かったがこいつ温度で周りを判断してたんだ。ものを透明化しても自分だけは分かったんだ。だからギョウブモンをアイススタチューで周りの温度と同じにした。」
「鬼火玉！！」
鬼火がカメレモンを燃やす。追撃しようとした瞬間カメレモンが勢いよく天井を突き破り高く跳んだ。
「高！？あの野郎逃げる気か！？」
「猫塚！」
「ああ！」
キュウビモンとギョウブモンが追うように跳ぶ。しかし、高さはカメレモンの方が圧倒的に高かった。
「けけけけ」
カメレモンがあざ笑うように唸りをあげる。
「ギョウブモン！」
「ああ！」
ギョウブモンの背中を思い切りキュウビモンが蹴り上げる。ギョウブモンはそれに合わせ背中を捻る事でより勢いを付けさせた。

「届いたぞ」
カメレモンが舌を伸ばすがそれより速くキュウビモンも尻尾から青い炎が龍の姿となりカメレモンを焼き尽くしデータとなって霧散させた。
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「はい。400万円です。」
カメレモンを倒したことで、行方不明者の姿は透明から元に戻った。
真相はこうであった。複数店舗の飲食店を経営する夫婦の婿養子で入った義理の息子が乗っ取りのためにカメレモンを使って廃墟に監禁。行方不明中の代理として店舗の権利を独占。殺す度胸はなかったのか透明にしてダンボールに入れて隠していたようだ。行方不明の学生は恭介達と同じように人間がそこにいると気付き、部屋を守っていたカメレモンに襲われたということであった。
「今回も美也子ちゃんの手がかりはなしか。」
虎子の隣の家の小学生の女の子である。デジモンが起こす事件に巻き込まれたようで虎子はその子を探していた。
「おい、レナモンいつまで選んでんだ行くぞ。」
「も…もうちょっと待ってくれ姐さん。いちごかチョコか決めかねるんだ！」
「恭介。僕頑張ったし2つ食べたい。」
「駄目だ。またお腹ピーピーになるぞ。」
「…それより首大丈夫かよ。」
「ああ？ああ。まあ大丈夫だ。」
「…」
恭介が虎子から目を逸らす。恐らく深手だったのを心配させないようにごまかしているんだろう。
虎子もそれを察する事ができた。
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虎子は少し早歩きで恭介の前を歩き振り向き小さく呟いた。
「あんがとな。」
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おわりんご

力作だあ…背景もきっちり描いててすげえ

絵本が増えた！

即興かよ！？

また力作が…！

恭介…もっと積極的に支えてやってくれ…

大作だ…

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さらっと長閑ちゃんだしてる？

わあボリューミー

力作見るとこっちもがんばろ…ってなる
お疲れ様でした

カッコ可愛いしすげえ

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いい雰囲気の駄菓子屋しやがって…

おてがきと怪文書のコンボだ情報量が多い

狸系はデジモンだとないんだっけ…

>狸系はデジモンだとないんだっけ…
ネーモンぐらい

>ネーモンぐらい
狸だったんだ…

>狸系はデジモンだとないんだっけ…
鎧脱いだルドモンがタヌキっぽく見えたけど
https://x.com/digimonweb_net/status/955277533607477248
確認したらそうでもなかった

毎度テイマーが身体張りすぎる…

絵本怪文書…！！いいんですかこんな贅沢！！

アイススタチュー使えるのか…

姐さん流血しながら笑われるとチンチンがしゅん…ってなります…

　　ア
　タ
リ

>姐さん流血しながら笑われるとチンチンがしゅん…ってなります…
（その顔が傷つくのが嫌だから僕に任せて）君には引っ込んで欲しいんだよな

これデジモン同士もｷﾃﾙ？

2人ともお互いが今の自分の出発点ってことには気付いてないか

しっかりデジモン絡みの怪奇ミステリーしてて話の質も高い…
その上でこの量と質の挿絵

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ビビり顔が愉快なコだね

挿絵良いね
こんな場所で見れて良いのかと疑問を覚えるよ...

虎子ちゃんはバリネコね…

>虎子ちゃんはバリネコね…
一度スイッチ入ったらいい笑顔で尻穴責めそう

恭介も受けの空気あるしお互い慣れてもおっかなびっくりそう

だがわしはみたい
人目を憚らずニャンついてる虎子ちゃんを

ｷﾀ━━━━━━(ﾟ∀ﾟ)━━━━━━ !!!!!

キブリジジイモン…