ファイブエレメンツ社のみなさん、こんにちは! こうして直接お会いするのは初めてですね?わたしは名張一華といいます。 陸上自衛隊電子生命特技中隊、通称Dレンジャーで装備開発担当主任を拝命しています。 今回はわたしを特別講演の講師としてお招きいただき、ありがとうございます。 今日はみなさんに、先日の愛媛迎撃作戦でのわたしたちDレンジャーの運用について解説したいと思います。 どうぞよろしくおねがいします! まずDレンジャーがガードロモンのみで構成された部隊だというのはご存知ですね? これはガードロモンがあまり強い自我を持たない種族であること、そして防衛意識が強く専守防衛を旨とする自衛隊に最適と判断されたからです。 さらには成熟期であれば比較的数を揃えやすいというメリットもありました。 しかし近年はリアルワールドでも完全体や究極体が確認される事態が多発。 仮想敵国がそれら強力なデジモンを配備することを懸念し、ガードロモンの進化を求める声が出ました。 ですがガードロモンをアンドロモンに進化させてしまうと体格が大きく変化してガードロモン用に開発した装備品類が使えなくなります。 加えてメンテナンス用設備や輸送機器も全て更新となると莫大な費用がかかります。 自我の変質、そもそも全ての個体が進化できるわけではない、成熟期の調達性の良さが無意味になる、といった問題もありました。 そこでわたしが提唱したネオテニー型進化理論が着目されました。 これはせっかくかわいらしい成長期や成熟期のデジモンたちが進化してかわいくない姿になるのが嫌だったわたしが、かわいいまま進化できないかと考えたところが発端でした。 幼形成熟……幼生のままで生殖可能な状態まで成長する、サンショウウオで見られるこの現象のデジモンへの応用を試みました。 リアルワールドでの幼形成熟的進化の代表例がわたしたち人類です。 サルが幼形成熟することで大きな頭脳と器用な手先を獲得し、代わりに素早く力強い肉体を手放しました。 ネオテニー型進化のためのアプローチとして、わたしはまずデジメンタルによるアーマー進化の研究を始めました。 アーマー進化はあらかじめ『外殻』を用意してそこにデジモンを当てはめることでデジモンの中心情報体、いわゆるデジコアの情報書き換えを最低限にして一段階上に進化します。 ということは、『外殻』をさらに限定的にすればより負担の少ない簡易な進化が、逆にさらに外側に『殻』を被せればさらなる進化が同様に少ない負担で可能になると考えました。 わたしはこれを「仮面の重ね着によるアイデンティティ追加の可能性理論」と名付けました。 そのままでは長いので英語にして「Over-Persona Potential Append Identity」、略してOPPAI理論です。 ……いえ、政府の偉い人たちがおっぱいおっぱい連呼する様を見たかったとか、そういう気持ちはありませんよ? このOPPAIデジメンタルによって、ガードロモンの限定的なアーマー進化が可能になりました。 わたしが以前ショコラトリーで配っていたデジモン強化パックもそうですね。 そこからわたしは、用意する『外殻』をあらかじめ元のデジモンと同じような形のものにして進化させる、ネオテニー型進化のためのデジメンタルを開発しました。 実験は問題なく成功し、ガードロモンは大きく姿を変えることなく完全体相応の能力を獲得できるようになりました。 これが先日の愛媛迎撃戦でみなさんが見た『パーフェクトガードロモン』です。 これにさらに同系統のデジメンタルアップを繰り返すことで究極体に相当する『アルティメットガードロモン』への進化もご覧になったと思います。 このアルティメットガードロモンは通常のガードロモン用の装備・設備がすべて使用可能なだけではなく、ガードロモンでは運用できなかった大型装備も運用できるようになりました。 愛媛迎撃戦での前半でガードロモン部隊が大型の対空ミサイルであるPAC3を発射してたのは知ってますね? あれはアルティメットガードロモンに進化し、なおかつ専属のデジメンタルオペレーター……つまりわたしによるバックアップで可能となったものです。 残念ながらすべて迎撃する前にPAC3の残弾が尽きてしまいましたが……。 まあおかげでわたしがヒマになったのでそちらのお手伝いができたのですけど。 現状では大型武装運用以外にも、全デジメンタルを同時起動してのフルアーマーモードもわたしのバックアップが必要です。 愛媛迎撃戦の最終局面でわたしが離脱したのはそれが理由の一つです。 話がそれました。このガードロモンによる武器運用なのですが、進化レベルが上がると火力が向上するという現象が確認されています。 先程のPAC3の場合では射程と弾頭威力が4倍ほどになっていたみたいです。 今のところ詳しい原理は不明ですが、デジモンの持つエネルギーが付加されているものと推測されます。 この映像のパ……自衛隊が極秘裏に投入したレイヴモン亜種が運用していたのは、米軍が日本国内で隠匿していた戦艦用核弾頭で本来の威力は40キロトンほどなのですが実際に観測された威力はICBM用弾頭に匹敵する400キロトン以上と見積もられています。 ここまでで何か質問は?……デジメンタルとスピリットがどう違うのか?いい質問ですね! デジメンタルは先ほども言いましたけどデジモンの『外殻』を作るものです。 スピリットはそれとは逆にデジモンの内側……つまり『核』を作ります。 正確には、対象のデジコアあるいはそれに相当する部分を自身の情報で上書きすることで進化させます。 デジメンタルとは正反対のアプローチで、数を増やすと加速度的に負荷が増えます。 そのかわりデジモン以外の存在であってもスピリット自体がデジコア化することで対象をデジモン化して進化させることが可能です。 世界一の大天才美少女赤瀬満咲姫せんぱいはこれを応用して非生物である建物をデジモン化させることに成功しています。いまのデジ対庁舎ですね。 ……実は挙動が真逆と言うだけで、デジメンタルとスピリットの基本構造には大きな差はありません。 世界でニ番目の天才美少女であるわたしが人工デジメンタルの開発に成功できたのは、先にミサキせんぱいのimgアニマ開発成功があったからです。 わたし一人じゃ無理だったと思います。みなさんもミサキせんぱいの爪の垢でも煎じて飲めばいいと思います。 ……こほん。ともかく、デジメンタルにスピリットのような挙動をさせればデジモン以外の存在をデジメンタルアップさせられるのはすでに実例が観測されています。 愛媛迎撃戦で観測されたエヒメンタルによるエヒメンタルアップがそうですが……アレ見た時は誰かわたしの研究記録盗んだんじゃないかって思いましたよ。 わたしのほうでもこの理論について現在じんた……えっと、研究と実験を進めています。 ただ、それには膨大なシミュレーションデータが必要になのですが……ファイブエレメンツ社のみなさんならそれぐらい自前で用意できますよね? どこかからデータだけかき集めて作ると手っ取り早いですけど絶対に予想外の挙動を引き起こしますからやめたほうがいいよ? さて、最後にこちらの資料……これはガードロモンの各種装備を開発するにあたってわたしのパートナーで実験した時のものです。 ウイッチモンをウイッチモンとしての特性を残したままの進化実験、局地戦用装備の限定的デジメンタルアップ実験、そうして生まれたのがこのネーバルウイッチモンです。 デジメンタルの使い分けでサブマリナーモードとアヴィエイターモードになります。 これが今のわたしのパートナーの最高戦力で……えっ?愛媛に出没したちびっこいウイッチモン? なんですかそれ?わたしそんなデジモン見かけた記憶はないですね。嘘じゃないです。 配給所で配ってたポーションと同じもの投げてた?じゃあ配給所で貰ってたんじゃないですか? ポーションピッチのプラグイン?ああ、あれはですね…… (スマホの呼び出し音が鳴る) ちょっと失礼……もしもしママ?うん、そっちも終わった?じゃあわたしももうすぐ終わらせてすぐ帰るね。 ……ところでここの警備員の方々って装備おかしくないです?どうみても要人警護や会場警備じゃなくて不審者制圧とかそういう方向の装備ですよね。 仮にも自衛隊で装備開発やってる人間が気づかないとでも思ったんですか? わたしのカラダが目当てなんでしょ!エロ同人みたいに!……なんて展開はゴメンですね。ゴースモン! (白衣の袖から煙が吹き出る。演壇の周囲が煙に覆われる) さようなら。そちらのデータ諸々は講演料として貰っていきますね。ショートカット! (煙の影に白衣を羽織ったとんがり帽子の背の低い人型が一瞬見え、すぐに見えなくなる。煙の晴れたあとには誰もいない。) 補足 OPPAIプラグイン:本当はOver-Persona Polutionなのだが流石にそれを政府に提出はできなかったので嘘ではない程度に別の言葉に差し替えている。 戦艦用核弾頭:発射に使われた大和型主砲の予備砲身ともども、日本政府どころか米軍関係者もその存在を関知していなかった代物。発見者は蔵之助。開発・製造した予算上の痕跡すら見つかっていない。