静かな夜。 陸上大開拓船ザニドは、夜の帳の中を駆け抜ける。 星々も見えない暗闇の中で、しかし船上ではむしろ活気づいていた。 怒声にも近い掛け声が響き渡る中、船内のあちこちで開拓者たちが忙しなく動いている。 「どうよこれ! 今回の戦利品!」 そう言って、手に持ったものを誇らしげに掲げる者や、 「いやぁ、まさかこんなものが手に入るとは……」 と、何やら感慨深げに呟く者もいる。 そんな中、自らの相棒と共に甲板上を歩く男がいた。 「ここは活気があって良いな」 そう言う彼の名はリッダル・ブローエルド。 開拓者としては少しばかり年若いながらも、幾つもの武功を上げている、期待の新星だ。 彼の近くでは、その相棒であるサンジェラ・アルバストルが上機嫌で歩いている。 「私はダーリンの拠点も好きだよ?二人の出会った場所だし、愛の巣みたいでさ♪」 そんなことを言いながら、腕を組んでくるジェナを振り払うこともなく、彼は軽く笑みを浮かべた。 「まあ、自分で勝ち取った場所だ、あそこも悪くはないと思う‥‥だが」 そこで言葉を切って、視線を上げる。 「折角ジェナが来てくれたんだ、あそこで立ち止まるのは勿体ないだろ?」 そう言って、彼もまた上機嫌そうな表情を見せる。 その様子に、サンジェラはますます嬉しくなって、一層強く彼に抱きついた。 「うふっ、嬉しいこと言ってくれちゃってー♪」 そのまま二人は、次の遠征に向けての準備をすべく、歩みを進める。 太陽が苦手なジェナの為、彼等が活動するのはいつも夜だ。 これからまた新たな土地に赴くということもあってか、今夜のザニドは一段と騒がしい。 「今回はどんな場所かなぁ?楽しみね!」 「ああ、そうだな」 この世界には、未だ人類未踏の地が多く存在する。 広大な大陸を開拓する為には、まずそういった未開の地に足を踏み入れなければならない。 だが、その事実に尻込みせず、燃え上がる者こそが開拓者なのだ。 「さて、そろそろ日が昇る、俺達は一旦部屋に戻ろう」 「えぇ‥‥もっとこうしてたいのに‥‥それならさ、朝日が昇るのは一緒に見ようよ!」 甘えた声でそう言うジェナに苦笑いしつつ、リッダルはザニドの一番高い艦橋へ向かう。 「ジェナ、太陽苦手じゃなかったのか?」 「ダーリンと一緒に見るのは別だよぉ♪」 夜明けが来る。 開拓者たちの朝が訪れる。