デジモンイモゲンチャードゥフトモン外伝一章『決定的な敗北』  極寒の地フリーズランドの一角で怪しげなローブに身を包んだ集団がストーブを囲みながら談話している。  なにを隠そう彼らこそ、デジモンイレイザーの配下である七大将軍(ネオデスジェネラル)たちであった。  己のテクスチャを偽装する特殊なアイテムであるナゾノローブに身を包んだ彼らは、ワイズモンに似た謎の存在であるマーケット店主にしか見えない。  さながら商談を進めているかのようであるが、その話の内容は、この地へやって来る敵対者への対策会議であった。 「敵の戦略はすでに知っている。ドゥフトモンがまず私達の前に姿を表す。  偶然怪しげな集団を見つけ駆けつけたように装い、単騎であると見せかけ自身を囮にし我々の情報を収集するのが目的だ。  ロイヤルナイツの中で神速を誇るアルフォースブイドラモンが我等が探知できないほど遠方に控えている。  ドゥフトモンは機雷である『エアオーベルング』をここまで来るまでの道筋に巧妙に隠しながら配置している。  起爆を指示代わりにすればアルフォースブイドラモンは一瞬にしてここへたどり着き増援となる。  増援はアルフォースブイドラモンだけではない。デュナスモンはデュナスモンXとなり、デュークモンを運びつつ高高度から我等に気づかれずに侵入、降下するつもりだ。  それと、彼らはイグドラシルから与えられたX抗体を隠し持っている。奥の手のX進化(ゼヴォリューション)には気をつけるがいい」 「ほっほっほっ、氷竜将軍様の慧眼はさすがじゃのぅ。よくもまぁそこまで手の内を見抜けるものじゃ。で、どう対処するというんじゃ?」 「我ら七大将軍を相手にロイヤルナイツがたった四騎とは舐められたものよ。その見込みの甘さを思い知らすべく我が罠を張りアルフォースブイドラモンを頂くとしよう。  我についてくるものは勝手にするがいい……X進化すら許さぬ面白いものを見せてやろう!!」 「じゃあよぉ、空から来るってヤツはこの俺様が貰っちゃっていいよなァ!」  ローブに身を包み正体を隠蔽しているそのデジモンは勢いよく空へと飛び立った。どうやら空戦にはよほどの自信があるらしい。 「若造めが先走りおって。ならばこのワシも上へ行くとするかのう。異世界の最新データより得たデジモンをカードに封印する新技術、試すには絶好の機会じゃて」  そう嬉々として語った老人のような喋りをする将軍は、ふわふわと浮き上がったかと思うと一瞬で姿を消した。 「皆、ロイヤルナイツと戦えると聞けばこうなるか。だが、ドゥフトモンの相手は、私だけで十分だ。残る将軍たちは私達の戦いに関しては手出し無用に願いたい」 「俺はオメガモンがいねーならどうでもいいぜ。 ま、どっかが苦戦してそうなら手伝いにいけるようにはしとくがよ」  そして、少し先の時間。  オーロラが妖しく見守る白き大地の上で、獣騎士と竜剣士は対峙する。 「私の名は水竜将軍オキグルモン。かのロイヤルナイツと手合わせできるとは光栄の極み。いざ尋常に勝負と参ろうぞ」 「……デジタルワールドを乱すデジモンイレイザーの手先。ここで倒させてもらう」  二人の間に火花が散る。  クトネシリカを手中に収めたオキグルモンは『氷雨』を放つ。  放たれた冷風は迫り来るドゥフトモンの肉体を凍結させんとする。 「私を倒すだなどという甘い考えは捨てろ。貴様の敗北はすでに確定しているのだ」  攻撃を繰り出そうとしていたドゥフトモンであったがいきなりの必殺技に対応すべく即座にレオパルドモードへと変形。  その人型のときとは大きく変化する速度を持ってオキグルモンの背後へと回り込むと、飛翔し襲いかかる。 「『ブロッカーデ』!!」  四方八方から襲い来る爪撃。   しかしオキグルモンはその奇襲を振り向きもせずに片手でクトネシリカを振るい全てを防ぐ。  それだけではない。あまつさえ徒手のほうの腕にて打撃を加えカウンターを与えてくる。  全身をクロンデジゾイドに覆われたドゥフトモンであっても、その衝撃を完全に消すことはできないほどの打撃だ。  ――――これが七大将軍か。もしや七大魔王とも互角かもしれんな。これは、デジタルワールドにとって排除すべき脅威だ。  戦いながらも、ドゥフトモンは分析を始めていた。  それがドゥフトモンというロイヤルナイツだ。的確な分析によってロイヤルナイツ個々の能力と敵の力を精確に把握し、適切な指示を行う。  戦いながら対抗できるワクチンプログラムやウィルスプログラムのデータを構築。  それを元に様々なウィルスデータを保有するアンブロシウスという槍を持つエグザモンなどにデータを送ることによってどんな力を持った相手へも対応してきた。  だが、そんな最終兵器とも言えるエグザモンは七大魔王の一体リヴァイアモンと交戦している最中に人間界へのゲートに飲み込まれ行方不明となっていた。  それでもドゥフトモンはエグザモンがいれば……などとは考えない。  所詮、彼にとってはそれは手段の一つにすぎないからである。  またこのオキグルモンとの戦いにおいて、エグザモンがなにかの役に立つとも思えなかった。  それほどまでにオキグルモンは恐ろしい敵であった。しかし、何度も仕掛けては防がれるうちにドゥフトモンには分かってきたことがある。  分析したデータからすれば、そのデータの密度は同じ究極体であってもドゥフトモンには劣る。  究極体の平均よりは強いだろうが、四聖獣、三大天使、七大魔王、そしてロイヤルナイツなどに匹敵するというほどではない。  その差を埋めるなんらかの魔法が存在しているのだ。そのうちの一つは熟練した剣技であるが、それだけではないと見抜いていた。 (始まりからずっと抱いてきた違和感、確かめさせてもらうぞ!)  ドゥフトモンはこの戦いの中、密かに隠蔽した『エアオーベルング』を配置してきた。  空中にも地上にも、無数に配置された見えない機雷は今、オキグルモンを取り囲んでいる。  そして『ヴォルケンクラッツァー』を用いて大地の壁を作り移動方向を制限。これで確実に誘導する事が可能だ。  さらに機雷の爆破に合わせ、壁の裏側から破壊の光である『エルンストウェル』を放ち、追撃を狙う。  また同時に『エアオーベルング』の爆破は後詰めのアルフォースブイドラモンを呼ぶ狼煙でもある。  どうあっても次の手につながるドゥフトモンらしい巧妙な戦術であった。  いかにロイヤルナイツと拮抗するほどの卓越した剣技を持つオキグルモンといえど、切り抜けることはできないであろう。  だが、それは起きた。 「すべて知っている。――――『氷焉世紀』!」  オキグルモンはこれまでの戦いでただ『氷雨』を放っていたわけではない。  ある目的のために空間の熱を下げていたのだ。  オキグルモンが持つ第二の必殺技、『氷焉世紀』は周囲の熱エネルギーをクネトリシカに吸収し絶対零度まで下げる効果を持つ技である。  熱を奪う特性上、より温かいところから優先的に奪っていく。  オキグルモンは本来は周囲の熱を無差別に奪うこの技に指向性をもたせたのである。  この戦いは互いに空間を支配しようという戦いだった。  一方は機雷と地形を、一方は場の温度を操った。  その結果が、凍りつき機能を停止した『エアオーベルング』と今まさに凍りつかんとしながらこの状況を分析しきったドゥフトモンである。 「貴様の次のセリフは『まさか、お前は未来を知っているのか』と言う」 「まさか、お前は未来を知っているのか……ハッ!?」  オキグルモンの顔に邪悪な笑みが浮かぶ。  それはずっとやりたかったいたずらが決まった少女のようにも、罠にかかった獲物を前にする冷酷な狩人のようにも見えた。 「……これで勝ったつもりと言うならば……私を……ロイヤルナイツを舐めすぎだ!!」  ドゥフトモンは自らにX抗体プログラムを流し込む。 「X-evolution!! ドゥフトモン(X抗体)!!」  ドゥフトモン(X抗体)はドゥフトモンの特徴である二面性を常に発揮する形態である。  レオパルドモードへの変形こそ失ったが、ブラウンデジゾイドへと変化したそのボディは高度な柔軟性を持ち、防御力を維持しながら瞬発力も兼ね備えている形態である。  女性的なしなやかさがありながらも男性的な力強いその姿へと進化した余波によりなんとか凍りつくことは避けた。  未来を読むことのできる規格外の相手に対してもはや戦術などない。  X抗体によって得た力を全力でぶつけるのみ。 「……これも知っている。知ってるが……実際に見て戦えるのとでは高揚感が違うな!」 『ブラオンネーベル』。たとえ全方位から同時に攻撃を受けたとしても回避するであろう絶対の体術である。  X抗体となったドゥフトモンはこの必殺技にまで昇華させた体術にて、どんな攻撃も避けきる自信が合った。  いくら未来視を行おうと、相手についていける動きができなければ意味はない。  ドゥフトモンXの攻撃が当たり、オキグルモンの攻撃は当たらなくなる。  とはいえ、未来視の力だろう。オキグルモンは致命的な攻撃はすべて避けるか軽症になるようとどめ、その狂気的な笑みを深めている。 (こいつは、この状況すら楽しんでいる。油断はできない。速攻で決める!!)  ドゥフトモンXは勝負を決めるべく動こうとする。  最大最強の必殺技である『アイネ・ビリオン』によって敵を消滅させんと決意する。  その時だ。違和感があった。変化があった。おかしなことがあった。  いつのまにやらオキグルモンの両手に刀が握られている。  片方は熱を吸収し蒼炎をまとった炎の刃。  片方は凍てつき凍える氷の刃。  これより繰り出されるはオキグルモンが長き戦の中で編み出した最強の奥義。 「私の奥義で倒されることを光栄に思え」  まずは第三の必殺技、『蒼燭輪廻』。これは『氷焉世紀』で集めた熱量を蒼い炎として放出するものである。  クトネシリカに纏ったまま斬ることも可能だがビームのように撃ち出すことも出来る。  これはドゥフトモンXは難なく避けた。  だが、即座にもう片方の刀が『氷焉世紀』を発動し撃った熱量を即座に吸収していく。  そして隙無く『蒼燭輪廻』が放たれ『氷焉世紀』で回収する輪廻の名にふさわしい無限ループである。  ドゥフトモンXは避ける。避け続ける。『ブラオンネーベル』ならばこちらも無限に回避し続けることが出来る自信があった。 「大技を振るい続けるお前の消耗のが激しいはず。この勝負、持久戦ならば私が勝つ……!」  そう、ドゥフトモンXの言葉通り無限に続けられることはなかった。 『蒼燭輪廻』『ブラオンネーベル』『氷焉世紀』『蒼燭輪廻』『ブラオンネーベル』『氷焉世紀』『蒼燭輪廻』『ブラオンネーベル』『氷焉世紀』 『蒼燭輪廻』『ブラオンネーベル』『氷焉世紀』『蒼燭輪廻』『ブラオンネーベル』『氷焉世紀』『蒼燭輪廻』『ブラオンネーベル』『氷焉世紀』 『蒼燭輪廻』『ブラオンネーベル』『氷焉世紀』『蒼燭輪廻』『ブラオンネーベル』『氷焉世紀』『蒼燭輪廻』『ブラオンネーベル』『氷焉世紀』 『蒼燭輪廻』『ブラオンネーベル』『氷焉世紀』『蒼燭輪廻』『ブラオンネーベル』『氷焉世紀』『蒼燭輪廻』『ブラオンネーベル』『氷焉世紀』 『蒼燭輪廻』『ブラオンネーベル』『氷焉世紀』『蒼燭輪廻』『ブラオンネーベル』『氷焉世紀』『蒼燭輪廻』『ブラオンネーベル』『氷焉世紀』 『蒼燭輪廻』『ブラオンネーベル』『氷焉世紀』『蒼燭輪廻』『ブラオンネーベル』『氷焉世紀』『蒼燭輪廻』『ブラオンネーベル』『氷焉世紀』 『蒼燭輪廻』『ブラオンネーベル』『氷焉世紀』『蒼燭輪廻』『ブラオンネーベル』『氷焉世紀』『蒼燭輪廻』『ブラオンネーベル』『氷焉世紀』 『蒼燭輪廻』『ブラオンネーベル』『氷焉世紀』『蒼燭輪廻』『ブラオンネーベル』『氷焉世紀』『蒼燭輪廻』『ブラオンネーベル』『氷焉世紀』 『蒼燭輪廻』『ブラオンネーベル』『氷焉世紀』『蒼燭輪廻』『ブラオンネーベル』『氷焉世紀』『蒼燭輪廻』『ブラオンネーヘ  ドゥフトモンXは、その身を青炎に焼かれた。  絶対回避の体術である『ブラオンネーベル』であったが、それを成すのはブラウンデジゾイドあってこそである。   金属は急速に熱し冷ますを繰り返せば膨張と収縮を繰り返し、亀裂が生じ脆くなる。  最も柔軟性を誇るブラウンデジゾイドであっても、同じような現象が起きたのであろう。 『蒼燭輪廻』と『氷焉世紀』の繰り返しによって、その体術の根幹をなすブラウンデジゾイドは崩壊したのだ。 「私は最初に言ったぞ。『貴様の敗北はすでに確定している』とな。この奥義まで使わねばならぬ相手と戦えたことは心から光栄だと思っているがな」 「私が……負けた……」 「そうだドゥフトモン。氷竜将軍オキグルモンに負けたのだ。誇りに思って消滅するがいい!!」  介錯を果たすべく『蒼燭輪廻』が放たれる。 「さらばだドゥフトモン。私が今まで屠ってきた戦士の中でも一番の強者だったぞ」   ここまでか。  死を前にしてドゥフトモンが思うことはこの世界の行く末であった。  かつてのデジモンイレイザーへの襲撃ではマグナモンが手酷い敗北を受けた結果、修行の旅に出ると言い残し行方不明となった。  エグザモンもまたどこへ消えたのかわからない。  他にもいるが、とにかくこのような世界の危機の中、ロイヤルナイツは欠けたままである。  イグドラシルもまたロイヤルナイツに世界の平和を守れと言い残してからは命令を出すことがなくなっている。  この世界はこのままデジモンイレイザーという悪の手におちてしまうのだろうか。  それを防ぐために自分が力を尽くせないこと。それだけが、気がかりであった。 「君にここで死んでもらうと、僕がつまらなくなりそうなんだよねぇ」  誰かの声が聞こえたかと思うと、ドゥフトモンの意識は闇に落ちていった。 ・・・・・・  オキグルモンが、自ら放った蒼炎が消えた後に見たのは、ダークエリアへのデジタルゲートが閉じる姿であった。  消滅寸前のドゥフトモンはその中へと消えていったのだろう。  それを見て、この決闘の勝利者はつぶやく。 「私、これは知らなかったなぁ……決着までしか知ろうとしなかったのやっぱり駄目かなぁ……」   次回予告  ダークエリアを作り出したとも言われるグランドラクモンに招かれたドゥフトモン。  一切信用できない相手との対話の中でデュナスモンはなにを見出すのか。  次回、デジモンイモゲンチャードゥフトモン外伝「相反する者」  今、妄言が進化する。 ・アルフォースブイドラモンはドラグーンヤンマモン様の罠にかかり、その速度を削り進化を防ぐデバフ型デジクロス戦法で敗北。捕まってても面白いかも。 ・デュナスモンはどうなったかわかんないけど、デュークモンは謎の爺口調の将軍が用いたブレイ…リベレイター由来のカード技術で封印されたことだろう。 ・デジモンイレイザー七大将軍はきっとこんだけ盛れるぐらい強いんだ! デジモンたちだけで解決出来ないレベルの強さなんだ! ・ウォーティラノモンくんもきっと強いと信じているぞ! ・デュークモンたちを相手にした架空七大将軍はガキみたいな若造と老練な爺キャラぶっこんどけばいいよね? たぶんそういうキャラ増えるよね。あとオカマとかいるか? ・デュナスモンはリアライズベースのカッコいい性格で書きました。