二次元裏@ふたば

画像ファイル名:1716977160575.jpg-(397029 B)
397029 B24/05/29(水)19:06:00No.1194533752そうだねx1 20:18頃消えます
ある日突然、自分の身体が全くの別人になってしまったら。
それも、有名なウマ娘と瓜二つになってしまったら。
あなたの身内は信じてくれるだろうか。今まで通りの生活を送れるだろうか。
俺の場合、無理だった。
職場も知人も信じてくれず、頼れる伝手は何も無い。
その上ウマ娘の肉体はヒトよりも遥かに燃費が悪く、収入が途絶えた状態では決して多いとは言えない貯蓄を食い潰すのも時間の問題だった。

「OK,理解したわ」

そんな世にも奇妙で荒唐無稽な話を、サトノクラウンは信じてくれた。
自分と同じ顔で同じ身体の、気味悪い存在の言うことを。
このスレは古いので、もうすぐ消えます。
124/05/29(水)19:06:38No.1194533979+
「……信じて、くれるんですか」
「そうね。普通ならあり得ないことだけれど──信じるに値すると判断できる材料が、二つあるの」

サトノクラウンは右手の指を二本立てる。

「まず一つ。目の前にあるのが寸分違わず『私』の身体であること。そこに置いてある勝負服もね。多少荒れていても見間違えるだなんて有り得ないわ」
「……もう、一つは?」
「『有り得なさ過ぎる』の。もしあなたの言っていることが嘘だったとしたら──『偶然存在する私に瓜二つなウマ娘が自分のことを成人男性だと思い込んで、更にセルフネグレクトしている』ということになるのだけれど。そっちの方が有り得ないと思わない?」

サトノクラウンは手を下げると、ぐるりと周囲を──俺の部屋を見渡した。
辺りにゴミ袋が散乱し、衣服は畳まれずに放り出されている。
散らかっている衣服はどれも今の俺が着るにはサイズが合わない男物の服。奮発して買ったブランド物のジャケットも、就活の頃からずっと着ていたスーツも、全て今の俺には似合わない。お気に入りの靴も履けなくなった。
何もかもがどうでも良い。語られずとも、この部屋を見れば部屋の主人の心境は理解できるだろう。
224/05/29(水)19:07:23No.1194534244+
「……すみません、汚くて……」

この身体になって、持っていた繋がりを失って。いつしか整理整頓という習慣を失ったことに気付いた頃にはもう手遅れだった。何を片付ければいいのかわからない。
俺はサトノクラウンのファンだ。逆境でこそ輝く彼女の『ように』なりたいと思ったことはあっても、彼女『そのもの』に成る日が来るとは思いもしなかった。
サトノクラウンそのものにされて──逆境に叩き込まれて。結果としてサトノクラウンとはかけ離れた生活をしているのは、皮肉なんだろうか。

「あなたの状況を考えれば仕方のないことよ。でも、いつまでも澱んだ空気の中にいるのもよくないわね」

しかしサトノクラウンはこの有り様を見ても嫌な顔一つせず、窓辺に寄ると締め切られていたカーテンを勢い良く開いた。
薄暗い室内に正午の日差しが差し込む。目が眩み、思わず瞼を手で覆う。
薄目で見る逆光の中で、彼女は溌剌と笑っていた。

「まずは部屋の片付けから。業者は既に手配したから、気分をリフレッシュさせましょう」
324/05/29(水)19:07:52No.1194534428+
俺がサトノクラウンの行動力に呆然としていると、あっという間に汚部屋は新居同然へと生まれ変わった。彼女が手配した業者は非常に優秀で手際も良く、捨てるべき物と残したい物をあっという間に仕分け、脱ぎ捨てられた衣服も清潔に洗濯・乾燥されてクローゼットへと仕舞われた。

「好! 見違えたわね!」
「あ、はい……部屋、明るくなったな……」

ピカピカに磨かれたフローリングが周囲を反射する。部屋の景色や、俺の顔を。

「……そうだった……」

思い出してきた。部屋を散らかすようになった理由を。少しでも、自分の顔を反射する物を覆い隠したかったからだ。
どうやっても自分の身体からは逃げられないというのに、ただ現実逃避をしたかった。
だけど今、床に映った俺を見つめ返している『サトノクラウン』の顔は、昨日よりも少し明るくなったように見えた。
424/05/29(水)19:08:45No.1194534792+
──くぅ、と唐突にお腹が鳴った。

「……すみません。気が、抜けたら……」

身体というのは贅沢なもので、一つ満たされると更なる欲求を訴え始める。
今まで少ない貯蓄をやりくりして騙し騙し飢えを凌いでいた。安い惣菜と水道水でお腹を満たし、気を張って耐えていた。
だけど今、安心感を覚えたことで、一気に空腹が襲いかかってきた。
もう手持ちのお金は無い。だけど、もしかしたら、サトノクラウンなら──しかしそれを強請るのは、いくらなんでも厚かましいにも程がある。
唇を噛み、お腹を押さえて俯くと──サトノクラウンが頼もしげに笑う声が聞こえて、顔をあげた。

「無問題! 安心してちょうだい、既にそれも想定済みよ」

彼女が胸を張るのと同時に、インターホンが鳴った。
524/05/29(水)19:09:57No.1194535295+
ウマ娘という生き物は基本的に燃費が悪い。
細身で清楚な印象を持った美人な子も、澄ました顔でハンバーガーを4〜5個は平らげる。それはこの身体も例外ではなく、満腹という感覚を味わったことが無かった。
今の、今までは。

「……ごちそう、さまでした」
「いい食べっぷりだったわね。ちょっとシュヴァルを思い出しちゃった」

サトノクラウンは清掃業者と同時に食事の宅配まで手配してくれていた。この部屋に足を踏み入れてから、俺に何が必要なのかを即座に見抜いていたのだ。
どこまでも優秀で、頼もしい才女。だけどここまで良くしておいてもらいながら、どうしても浮かぶ疑問が抑えきれない。

「……どうして、ここまでしてくれるんですか……?」
「あなたのことを知ったから。理由なんてそれで十分じゃない?」

……お腹がいっぱいになったばかりだというのに、眼から止めどなく熱い水分が溢れ出すのを、止められなかった。
う、ぅあ、あ、そんな言葉にならない嗚咽が漏れてくる。情け無さと安堵感がごちゃ混ぜになって、何も言えなくなって──彼女の目の前で意識が落ちるのも、止められなかった。
624/05/29(水)19:11:49No.1194535984+
──安心しきってお腹いっぱいになって、泣き疲れて。ついには私の目の前で眠ってしまった『彼』。
事情を何も知らなければ、私の双子の妹のように見えるのかしら、なんて。
『彼』の話を信じた上で、それでもその中身が成人男性と疑うことは難しかった。

「!……」

ふいにポケットの中で感じた振動。スマートフォンへの着信。『彼』の目覚ましになってしまわないかと気になったけれど、余程疲れ切っていたのか多少の声では起きそうにない。安心して受話器のマークをタップする。

「……そう、わかったわ。ありがとう。何か進展があったらまた連絡してちょうだい」

その内容は先程依頼した『彼』に関する調査の結果。『彼』が勤務していたという会社や、この部屋に置いてあった『私の』勝負服のこと。
結論から言えば、『彼』の発言は正しい。『彼』がとある会社に所属しており、長らく無断欠勤となっていることも判明した。
清掃と同時に回収した勝負服についても、素材から採寸の1mmに至るまで全てが『本物』と同じだということが判明した。
あの勝負服はプロジェクト・シルクスの結晶。この世に二つとないモノ。
決して、容易く複製できるものではない。
724/05/29(水)19:12:13No.1194536137+
「……どんな気分なのかしらね……これまで生きてきた身体を取り上げられちゃうっていうのは……」

きっと、私には想像もつかない程の苦しみだったのだろう。
寝転がる『彼』の頬に指を伸ばし、髪をそっと撫でた。
指先に軋む感触。自分と同じ色の髪が大分痛んでしまっている。泣き腫らした瞼の下には色濃く残るクマ。この様子では衣服の下の素肌も荒れているに違いない。
さっきまで散らかっていた部屋にボロボロの身体。これまでの人生で築き上げてきたものを全て失い、自暴自棄になっていたであろうことが読み取れる。

「……放っておくことなんて、できないわよ」

独り言ちると、またスマートフォンに通知の音。
メッセージの差出人はダイヤ。私がお願いしたもの──美容ケア用品一式と、着替えを持って来てくれたみたい。
ここの部屋番号を伝えて、ノックは不要だからそのまま入って来て欲しいと返信。
程なくして、ドアノブが回った。
824/05/29(水)19:13:01No.1194536431+
「クラちゃん。頼まれていたもの、持って来た……よ……?」
「多謝。助かるわ」

『彼』が目を覚ましたら、ウマ娘の身体のメンテナンスについてレクチャーしてあげよう。この部屋の浴室は然程広くはないけれど、私二人分程度のスペースはある。今後の方針について話し合うのはその後からでも遅くはない。
ダイヤから諸々一式の入った紙袋を受け取る──寸前で、ダイヤの指が力無く開き、紙袋が落ちてしまった。

「クラちゃん……? その子は……?」

大きな瞳を目一杯広げるダイヤ。驚愕の眼差しは眠っている『彼』に向けられていて──

「……あ」

──すっかり、忘れていた。『彼』のことについて、ダイヤに話すのを。
この状況を、どうやって、説明するのかを。
924/05/29(水)19:13:43No.1194536684そうだねx9
ちょっと前のクラちゃんTSの続き
クラちゃんそっくりにされて何もかも失ってボロボロにされてからクラちゃんに拾われて救われたい
1024/05/29(水)19:15:18No.1194537251+
良かった…ハッピーエンドに迎えそうだ…
1124/05/29(水)19:20:03No.1194539025そうだねx3
色々余裕持てるようになったら今度は日常生活の中で女の子の大変さに振り回されてほしい
1224/05/29(水)19:22:52No.1194540232+
かつての知人に街中でクラちゃんと間違われてダメージ受けるのいいよね
1324/05/29(水)19:27:16No.1194542173そうだねx3
最終的に救われるならどれだけ堕としても良い
1424/05/29(水)19:35:28No.1194545760そうだねx2
TS怪文書の供給有難い…
1524/05/29(水)19:46:09No.1194550432+
本当にクラちゃんの妹になっちゃえ
1624/05/29(水)19:48:03No.1194551171+
三女神様も喜んでいます
1724/05/29(水)19:54:07No.1194553638+
あとなんかネタあったら書きたい…
1824/05/29(水)19:57:41No.1194555093+
雨の中傘もささずに歩くシービーに思わず傘渡そうとしたら一緒に踊ることになって気づいたらシービーになってるのとか...どうですかね?
1924/05/29(水)19:57:48No.1194555159+
>あとなんかネタあったら書きたい…
タップにプリンセスにされるのが見たいです…
2024/05/29(水)20:01:30No.1194556731+
ウマスタを見てたら自分もカワイクなってるとか
2124/05/29(水)20:03:30No.1194557636+
ジョーダンとかにおバカギャルウマにされちゃうやつとか見たい
2224/05/29(水)20:10:41No.1194560592+
どんどん世界からヒトオスが減っていく…
2324/05/29(水)20:11:56No.1194561147+
スレッドを立てた人によって削除されました
カタ落ち自演で感想文まで書かなくていいから


1716977160575.jpg