「「イヤーッ!」」 「アバァーハハハァー!」 薄暗い研究所内でシャウトとカラテがぶつかり合う音が響く。炎の拳を纏ったカラテとカラテ粒子で強化されたカラテを約10フィートはある化け物…ズンビーニンジャはその巨体とは裏腹に軽々と避けその目が光りレーザー光線めいた光が発射される。 「なんでその図体で避けれるんだよぉ!」 「クソズンビー野郎が!そんなに二度も死ぬのが嫌か!」 デザートイーグルとシガーライターは同じ方向で避ける。光線は壁に当たり、よく見れば石化してるのがわかる。このズンビーニンジャが放つ光線はカナシバリジツめいた効果を持ち、当たったものを石化させる恐ろしい効果がある。無論、ニンジャといえど当たれば無事では済まない。このズンビーニンジャの名はライトニングマシーン…と呼ばれたニンジャを素材にし誕生したフェイリア、ヨロシサンがズンビーを生物兵器として作り上げようとし完成した失敗作である。 「アバァーハハハァー!」 フェイリアは奇妙なシャウトを叫びながら巨大な拳で二人を同時に叩きつけようとする。 「ホリゾンタル=サン!スノービット=サン!スリケンとカラテミサイルで援護を!」 「「イヤーッ!」」 マーシレスカタナの命令に従いスノービットは正拳突きを素早く行いカラテミサイルを、ホリゾンタルは正確な位置を目掛けスリケン投擲を行う! 「アバァーハハハァー!?」 周囲をよく見ていないフェイリアはよけきれず全て被弾。その隙を二人は逃さない。 「よしッ!今だ!」 「くたばりやがれクソズンビー!」 二人は同時にフェイリアの胴体にカラテをぶつける。フェイリアは勢いよく吹き飛び壁に叩きつけられる。崩壊した壁に埋もれ砂煙がたつが、その中で蠢く巨大な影。 「アバァーハハハァー…」 フェイリアはダメージを負っているがまだまだ戦い続けれる状態だ。 「どうするマーシレスカタナ=サン!結構ダメージは与えれてるけどこのままだとジリー・プアー(訳注:徐々に不利)だ!」 「俺様のカトンはまだいけるが…スノービット=サンとデザートイーグル=サンは限界に近いぞ!」 「だが奴の駆除が目的である以上撤退はできない…今この時に倒さねば奴は外に出てしまう…!」 マーシレスカタナは心苦しい声を出しながら答える。実にもう1時間は戦い続けており、フェイリアの攻撃が単調であるのが功を奏し増援であるハイデッカーが全滅してるのを除けば五忍とも致命的なダメージは負ってない。だが、一番の問題はフェイリアの異常なまでの体力にある。何度も攻撃を当て続けてるにも関わらず一向に勝負を決する一撃を与えれてない状態にあり、五忍のニンジャ集中力とカラテミサイルを使うスノービットとデザートイーグルの血中カラテ濃度は限界に近い。特にデザートイーグルに関してはもうカラテを強化させるのに精一杯であり自慢のカラテミサイル弾丸を撃てるだけの余裕はない。 「おのれ汚らわしいズンビーめ…とっと死ねばよいものを…」 「ハァー…ハァー…」 ホリゾンタルはスリケンによる援護をメインしてたのもありまだ余裕はあるが、元々血中カラテ濃度が低いスノービットは長時間に及ぶ戦闘により息切れしつつある。幸いにもフェイリアは目の前で動き回るシガーライターとデザートイーグルに夢中で他三忍には目もくれてないが、もしスノービットが狙われたら無事では済まないだろう。 (((このままジツを使い続けたら気絶してしまう…そうなれば皆さんの迷惑になって最悪統率が崩れてしまう…どうすれば))) スノービットは己の弱さに嘆きながらもどうすべきか考えた。普通のカラテミサイルでは大したダメージにはならない、だがすぐにでも決着をつけねば息が上がるのは自分自身。 (((いくら数があっても一発の火力が低ければ意味はない…一発の火力…))) この瞬間、スノービットの脳内にある一つの策を思いついた。 「マーシレスカタナ=サン!少しいいですか!」 「どうした!スノービット=サン!」 ホリゾンタルと共にスリケン投擲をしているマーシレスカタナに思いついた策を伝える。 「…悪くない、少し賭けになるがこの状況を打破するならそこは仕方ない。だが問題はスノービット=サンが…」 「私は大丈夫です…いざとなったら私を」 「スノービット=サン」 近くで聞いていたホリゾンタルはスノービットが言おうとした言葉を遮る。 「おれたちは何度もこの状況を切り抜けてきた、時には今のような危機的状況であっても、汚らわしいニンジャが相手であっても勝ち続けてきた。だがそれは誰一人欠けることなく五忍でやってきたからだ…自分がいなくても大丈夫など考えるな」 「ホリゾンタル=サンの言う通りだ。私の策もシガーライター=サンとデザートイーグル=サンによるカラテとホリゾンタル=サンとスノービット=サンの的確な援護があって成立している。もし初めから死ぬ気でいるなら私はその策は採用しない」 「ホリゾンタル=サン…マーシレスカタナ=サン…」 スノービットは改めて感嘆した。もし今フェイリアの恐るべき古代ローマカラテを避け続けてる二人も聞いていたら同じことを言ったであろうと心の中で思うほどこの五忍のチームワークは完成されている。言葉で言うことは決してないが、そこにはユウジョウがあるのだ! 「わかりました…絶対に死にはしません!もともと私は後方で直接危険なことはしたくない主義ですし!」 「正直だなスノービット=サンは…ホリゾンタル=サン!やつに接近して気を引き付けるぞ!」 「汚れたくはないが仕方ない…おれの手で直接掃除してくれる!」 二人はスリケン投擲をやめフェイリアに接近しカラテで勝負を仕掛ける! 「何してんだてめぇら!?」 「ちょ!?二人ともなんで近づいてるの!?」 「スノービット=サンが提案してくれた策がある!とにかく奴をスノービット=サンに近づけさせないようにしろ!」 マーシレスカタナの言葉を聞いた二人は焦りを消してフェイリアに再び集中する。 「仕方ねぇ!俺様の邪魔すんじゃねぇぞ!」 「アブナイと感じたらいつでも下がって大丈夫ですよ!」 四忍のカラテがフェイリアの身動きを封じ自由に動かさないようにする。二人では隙をつかれ抜け出されるだろうが、四人も相手になればただでさえ知性を失ってるフェイリアでは不可能である。 「スゥー…ハァー…」 一方スノービットは深呼吸をしセイシンテキを整えながら体内の血中カラテ濃度を引き出す。やることは実際シンプル、一点集中した高火力のカラテミサイルをぶつけフェイリアを爆発四散させることだ。単純すぎると思われるが溜め込んだカラテミサイルをなめてはいけない。その一撃を食らえば並みのニンジャは一瞬でネギトロすら残らず殺すことができ、直撃すればフェイリアとて無事では済まない。 「アバァーハハハァー!」 だがこのジツには欠点もある。それは集中状態でいなければ発動できない以上避けるのどの動作ができないのだ。フェイリアはスノービットからただならぬほどのカラテ粒子を感じ取り、生物としての本能故か危機感を覚え真っ先に叩き潰すために近づこうとする! 「させねぇよ!イヤーッ!」 「二度死にやがれ!クソズンビー!」 だがそれをデザートイーグルとシガーライターはインターセプト!二人は何が何でもスノービットにフェイリアを近づける気など一切ない!デザートイーグルからはカラテ粒子を纏った拳が、シガーライターからは炎を纏った拳がフェイリアにぶつけられる! 「アバァーハハハァー!?」 よろめき動きが若干鈍くなりはじめる。ズンビーと言えど攻撃を受け続ければその疲労は高まりニンジャ耐久力の低下にもつながる。だが、フェイリアの攻撃はまだ終わっていない、その両目が怪しく光りスノービットを視界に入れる! 「アバァーハ…」 「貴様の動きは既にお見通しだ!」 「汚物め!その汚らわしい視線をスノービット=サンに向けるなッ!」 光線が放たれようとしたその時、マーシレスカタナとホリゾンタルがそれぞれ投げたスリケンがフェイリアの両目に深く命中する! 「アバァーハハハァー!?」 両目に致命的ダメージを受けたフェイリアは痛みにもがき苦しみその場で暴れはじめる。なりふり構わず周辺にある本棚や研究道具にコケシなどを破壊し続け、四忍はそのヤバレカバレめいた攻撃をやすやすと避ける。 「…皆さん!離れてください!」 カラテ粒子により体が白く発光し始めてるスノービットの声を聴いた四忍はバク転しフェイリアから距離を取った。 「いっけー!スノービット=サン!」 「最悪生きてても俺様がトドメをさす!無理はするなよ!」 「あの汚物をこの世に残さないつもりでやれ!」 「スノービット=サン!トドメヲサセー!」 四忍からの声を聴いたスノービットは静かに目を閉じ、開眼する! 「イィィヤアアァァァッ!!」 普段では出さないカラテシャウトと共に巨大な一発のカラテミサイルがフェイリア目掛けまっすぐ放たれる!フェイリアは目の痛みに今だ苦しみ避けようともせずそのまま直撃! 「アバァー!?アバァーハハ…」 最初は悲鳴が聞こえたが、次第にその声は薄れ始める。万全の状態であれば耐えれたであろうが、ダメージを蓄積し続けたフェイリアにもはや耐えられるほどのニンジャ耐久力は残されていない。 「サヨナラ!」 フェイリアは爆発四散した。 「よかっ…た」 断末魔を聞いたスノービットは安堵し、そのまま気を失った。 「スノービット=サン!」 デザートイーグルは真っ先に近づきスノービットの状態を確認する。 「おいッ!?大丈夫か!!」 「…大丈夫ですよシガーライター=サン。これは血中カラテ濃度を使い切ったことによる症状です…よかったぁ…」 何度か同じ経験をしたことがあるデザートイーグルは少し安心しながら答えた。 「目標の撃破ができた以上ここに残る必要はない、すぐに医療班に運び出すぞ」 「あぁ、とっととこんな汚れた場所からおさらばしたいからな。シガーライター=サン、激戦のあとですまないがスノービット=サンを背負ってくれないか?」 「しゃあねぇな…後でスノービット=サンにタバコ要求しといてやるか」 「エンカイは後日になりそうだなぁ…」 気絶したスノービットをシガーライターが背負い五忍は急いでその場から去っていった。