「……」 「……あの、ヌバタマ=サン。なにか言ってください……」 グリッチは太腿を擦り合わせ、尻に食い込んだレオタードを後ろ手に直す。ヌバタマはむひょうじょうでちんもくし、その隣のイダテンは顔を真っ赤にして、口を丸く開けたまま固まっている。 「い、イダテン=サンも……」 グリッチは上目遣いに二人を見た。そしてまた人差し指でレオタードを直す。何もかもが落ち着かない。ふたりはマヌカンめいて不動……否。 「保護が必要でございます」 「ほっ……保護?」 唐突なヌバタマの発言を、イダテンは鸚鵡返しした。 「斯様なお姿をヨタモノに目撃されることあれば、誘拐は必定かと」 「そんなわけないですよ!?」 グリッチが口を挟む。 「そもそもわたしはニンジャで……」 「…………そうですね」 「イダテン=サン?」 「イディル=サンを……していいのは、私達だけです」 イダテンの目が据わった。グリッチは喉の奥からひきつった声を漏らす。 「では」 「はい」 ヌバタマが速やかにグリッチを抱きかかえ、イダテンはそそくさと寝室へ。 「え、あ……」 グリッチはあまりの唐突さに何もできない。 「眼福のお礼をたっぷりお愉しみくださいませ」 「……ア、アイエエエ! アイエーエエエエ!」 ヌバタマの囁きにぞくぞく体を震わせ悲鳴を上げたグリッチの声は、イダテンが外をキョロキョロ見渡しドアを閉めると、ぷつりと途絶えた。