めざめちゃんのお腹が音もなく爆ぜた。
「えっ…あっ…え…？」
そのまま体が膝から崩れ落ちる。
血が一瞬にして地面を染め、彼女は一言も発さなくなった。
「めざめちゃん！めざめちゃん！！」
夕立ちゃんがなかば狂乱で叫ぶ。
燃える森の煙の向こうから、簡単に私達を殺せるなにかが迫っていた。
留まれば私達は死ぬだろう。泣く暇なんて存在しない。
がーくんも、もんざえモンも、ムゲンドラモンさんですら既に倒れ、
その上にテントモンもサンドヤンマモンもぼろぼろで、私達が背負い走っている。

「…どうしてぇ…！！」
混乱しながら泣き言を発していると、頭上を眩い光が走った。
余波で突風が吹き荒れ、私達はあおられて地面に叩きつけられる。
眼前にあった崖が熱したバターをナイフで切ったようにドロリと割れ、崩れ落ちて谷間に流れ込んでくる。
退路を塞がれてしまった。
「ああ…あああ！」
夕立ちゃんの顔が絶望に歪み、地面をかきむしる。
もはやこれまでなのかもしれない。
私はゆっくりと立ち上がると、振り向いて、脅威が存在するであろう暗闇の向こうを睨みつける。
「サンドヤンマモン、テントモン。あとちょっとだけ、飛べないかな」
地面に転がっていた木の枝を手に取り構えた。手足の震えがまるで止まらない。それでも。
「ふたりでなら、もしかしたら土と岩を飛んで越えられるかもしれない。だから…」
「そんな事したら！真宵ちゃんまで！やだぁ…そんなのやだよぉ！」
「そ…そうでっせ…みんなで…生きて…」
「ｼ…ｼｭ…」

私は応えずにそっと背中にいるサンドヤンマモンを夕立ちゃん押し付けた。
「あとは…おねがいね」
後ろから聞こえる声を無視して、私は淀みへと数歩踏み出し、木の棒を構えた。
「私が少しでも時間を―」
言い終わる前に、今度は巨大な火球がゆっくりと飛んできた。
数mはあろうそれは、端で崖を飲み込んでも止まらず迫ってくる。
…かっこつけてみたけれど、みんなは崖を越せただろうか。
10秒くらいしか経ってないからどうだろう。せめて先の無事を祈っておこう。
私が目を閉じ覚悟をしていると、程なくして爆音が響いた。
土が舞い飛び喉に入り込んでむせてしまうが、一向に炎は私の身を焼かない。
何が起きたのだろう？恐る恐る目を開けると、土砂が炎を遮っていた。
地すべりでも起きたのだろうか。土砂の上には木々が倒れることなく繁茂していた。
「真宵ちゃん！今ならみんなで逃げれる！」
振り向くとすぐそばに3人がいた。
勇気を振り絞ったもののやはり時間稼ぎにはなっていなかったらしい。

山が震えるような低く、険しく、激しい唸り声が遠くに聞こえる。
この向こうにはまだあの怪物が待ち構えて吠えているに違いない。
サンドヤンマモンはその声に怯えているのかびくんと大きくはねた。
ｼｭｲｼｭｲと言いながら、崩れた山を指さした。
「どうしたの？サンドヤンマモン…あっ！」
彼は捕まっていた夕立ちゃんの手から降りると、張って進んでいく。
ここまでするとは、あそこになにか見つけたのだろうか？
疑問を浮かべつつ、私達は山の中に入っていった。
「…めざめちゃん…え゛うっ…みんなぁ…」
山を進みはじめて数分、さっきまで窮地への興奮で考えられずにいたが、
遅れて悲しみがこみ上げてきた。
泣けば声で居場所が割れてしまうというのに、涙も声も止まらない。
夕立ちゃんもずっと嗚咽を漏らしている。
もうここでへたりこんですべてを忘れてしまいたかった。

そうやって立ち止まろうとするたび、
振り回されてもいるかのように地面が揺れ、猛烈な破壊音がする。
あの恐ろしい怪物たちがずっと暴れているのだろう。


しばらくすると、森がひらけ、炎で赤く染まった空が見えた。
大きな崖に出ようだ。
岩にも見える乾燥した地面のなかに草が茂っている。
その中にぽつりとひとつたっているものがあった。
「そんな…」
信じられなかった。ほんのついさっき、ひどく血を流して倒れていたというのに。
「めざめちゃん…？」

---------XX日後---------
うるさい
気持ちよく寝ているというのになんだかひどく騒々しかった
今は何時だろうか？土木工事でもやっているかのようにやかましい
もしかしたら寝過ぎたのかもしれない
わたしは上体をゆっくりと起こして周囲を見回すと、緑色の髪の少女と目があった。
「あ、おはよう、夕立ちゃん」
わたしは軽く挨拶を交わすとベッドから降りた。
そういえばここはどこだろう、記憶がない。
またアトラーカブテリモン様の森にきて…それからどうしたんだっけ。
「夕立ちゃん？」
挨拶から数秒ほど経ったが反応がない。ずっと目を見開いたままこちらを見つめている。

「え…ぁ…え゛…ゔぁぁあああああああああ゛あああああああああ！！！！！」
「夕立ちゃん！？どうしたの！？」
目に大粒の涙をためたかと思えばけたたましく泣き始めこちらに飛びついてきた。
「めだべぢゃあああああああああああばああああああああああああああああああ！！！！！」
「夕立ちゃん！？なに！？なんなの！？」
彼女が騒々しくしたからか、外から真宵ちゃんとテントモンが駆け込んできた。
「真宵ぺへっ！」
「めざめちゃん！！！！」
目に入るやいなや彼女もまた抱きついてきた。
彼女もまた瞳に涙を浮かべている。
どうにもなにか大変なことが起きていたらしい。
「まって！苦しいよ！なにがあったの！！」
ふたりを引き剥がすと、ずっと涙と鼻水でまみれている
夕立ちゃんの頭をなでてなだめながら聞いた。

「覚えてないの？」
「うん」
「すごく大きな戦いがあって…攻撃でめざめちゃんのお腹がなくなって…」
「…えー嘘だあ」
私は軽く笑とばしたが、夕立ちゃんの目は真剣そのものだ。
「嘘じゃないよ！」
「嘘だよぉ、だって…」
私は開け放たれたままの出入り口に目をやった。
「あんなに森がきれいでしょ」

青々と茂った草木は風に揺れながら太陽の光を跳ね返して輝いている。
アトラーカブテリモン様の森は成長が早いとはいえ、
たびたび焼けるものだから、育ちきっていることはそうない。
でも外はいつになく命に満ち溢れていた。
だから嘘に決まっている。そもそもお腹がなくなったら死ぬだろう。

「それについては僕から説明しましょ」
ずっと様子を眺めていたテントモンが口を開く。
「あれはケレスモンのおかげですわ」
「あいつの落とした木の実、ひどく臭いし毒なんですけど、
ちょっとしたらごっつええ肥料になるんですわ。それでぐんぐん育ってな？」
「そうだよケレスモンだよ！山みたいに大きな鳥！
その頭の上にめざめちゃんが刺さっててね？」
食い気味に真宵ちゃんが割り込んできた。
興奮してるのか、話していることは相変わらずよくわからない。
するとようやく落ち着いたのか夕立ちゃんが口を開いた。
「ぐずっ…だぶん…ぎみをつづんで…治療してだんだとおもう…
そういう力があるかはしらないけど…戦いが終わって、
あいつが光になって消えたあとに君が倒れてたんだ。
…傷は塞がってたけど、ずっと目が覚めなくて…」

それから何が起きたかを聞いた。
妙な噂でたくさんやばい人たちが来たこと。
それと同じくらい助けにきてくれた人がいたこと。
ここの復興を手伝ってくれている人がいっぱいいること。

「はぁ…なるほどぉ…」
しかしまるで実感がわかない。体は動くし、痛みもない。
外は復興作業でやや忙しそうだがいつものことだし、森はいつになく活力があった。
「そうだ、がーくんは？サンドヤンマモンも」
「あいつら外で日向ぼっこしてるよ。薄情者め」
「まぁまぁ、あの子達だって疲れてるんだから…」
数日も顔を見せてないのだ、ちょっくらねぎらってあげよう。

靴を履いて外に出ると、すぐに彼らは見つかった。
草の上でがーくんの背中にサンドヤンマモンが乗って日にあたっている。
「がーくん」
「んがっ？」
寝ているところをそっと声をかけたが、
がーくんとサンドヤンマモンは横目で私を見る程度で、
まるで私の無事を知っていたかのようだ。
「…なんかがーくんおっきくなったねえ」
寝ている間に尻尾の芽がお高めの盆栽みたくなっている。
こぶりな木の実がかわいらしい。
「色々あったみたいだねえ…
お腹なくなったり、ケレスモンって子が助けてくれたり…」
切り株に腰掛けてゆったりと話しいると
私を追うように3人がやってきて、しばらくそのまま話し込んだ。
そんななか、なぜだかがーくんは誇らしそうにずっとニヨニヨしていた。

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おしまい！

よかった…生きてた…
がーくん頑張ったねぇ…

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あとsetteiです！

生えてると思ったらすごいsetteiも生えていた

挿絵つきでしゅごい…

めざめちゃん…
デジモンになってる…！

1日で書くの早くない！？

>デジモンになってる…！
頭に生えた状態で生きてることにしようと思ったら
ケレスモンメディウムの設定が都合良すぎてびっくりしたんですよね

デジモンになったなら進化する可能性もあるのか…？

良かった…
朝起きて一番驚いたのがめざめちゃんの状態だったから…
これでやっと真実の設定開示ができる…

これめざめちゃんふとした瞬間にあのドスケベボディになっちゃうってことなの

激動の1日すぎる…

>これでやっと真実の設定開示ができる…
真実！？

>朝起きて一番驚いたのがめざめちゃんの状態だったから…
そうだね…
>これでやっと真実の設定開示ができる…
まってくれ

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めざめちゃん…メディウムになって森に来い…

>朝起きて一番驚いたのがめざめちゃんの状態だったから…
これでテントモンくんヘラクルカブテリモンになれるね♡
サンドヤンマモンくんもタイラントカブテリモンになれる激アツイベントよ♡がんばれ♡がんばれ♡
してたらほかの交友関係みんな死んだり暴走したりでマジで焦った
モブだけどヒーローにするしかねえ…！！

>これでやっと真実の設定開示ができる…
ﾅﾆｿﾚ…

>fu3475909.jpg
ピンク髪なんだなメディウム

>これでやっと真実の設定開示ができる…
おいまてぇ…！

なんの意味も無い戦いだったかもしれないの…

人が死んでんねんで！

>めざめちゃん…メディウムになって森に来い…
そのうち描くかもしれない
でも事実上ただのコスプレかな…

始めから真偽不明の怪情報やろがい！

サンドヤンマモンすら進化出来るってマジ？

後で絡まって大変だけど今は良いよね…
ハッピーエンドでよかったなー

>後で絡まって大変だけど今は良いよね…
>ハッピーエンドでよかったなー
何も捨てない！そばにいてねフレンズ

せっかくなのでTEGAKIまとめとくね
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よか……ねえこれめざめパパのところにちゃんと帰れるやつ？

ｷﾀ━━━━━━(ﾟ∀ﾟ)━━━━━━ !!!!!

ドライ…！

おてがきまとめありがたい…

お手書きでカラー量産できるのすごい…