二次元裏@ふたば

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323777 B24/04/21(日)02:15:38No.1180605856そうだねx4 08:04頃消えます
ヴィアベル様達と別れ何日か経った夜から、フリーレン様は体調を崩してしまっていた。
全く動けないほどではないが、食欲もなく熱がある。最寄りの大きな街で治療してもらおうと、彼女をおぶってもたもた街道を歩いていた時、なんと貴族の馬車が通りかかって、私達を街まで乗せてくれた。とてもありがたかったが、それはタダではないということがわかったのは、街に着いてからのことだった。
フリーレン様を教会まで運んでくれた馬車の主、ダッハ伯爵様の提案はこうだった。魔族に盗まれた、伯爵家の宝である宝剣を取り戻してほしい。そうすれば、報酬以外にもフリーレン様の治療費や、滞在費をすべて都合する、と。
路銀も乏しい中、私とシュタルク様は二人でこの依頼をこなそうと決めたのだった。
このスレは古いので、もうすぐ消えます。
124/04/21(日)02:16:19No.1180605980+
「とはいっても、わかってるのは魔族が逃げた方角くらいか」
「伯爵様の兵士も探索に出ているとのことですから、情報を教えてもらいながらですね」
魔族との会敵を求めて歩く。二人だけで行動するのは、かなり久しぶりの気がした。森は相変わらず深く厚く太陽を遮り、魔力探知にはまだ何も引っかからない。警戒しながらも…話したいことがあった。だから、なんとか重い口を動かす。
「怖くはないんですか?」
「何が」
「私と二人だけで、魔族と戦うの」
断頭台のアウラの一味と戦ったときは、随分グズっていたのを思い出す。あの時は根性のない男だな、と呆れたけれど、長く一緒にいるうちに、別の顔も見られるようになった。色々な人と会って、別れて。私なりに、彼の良いところも悪いところも知ることができた。それは紛れもなく、私の大事な思い出だった。
「いや…怖いけど、さ」
「それにしては、二つ返事でしたよね」
「うん…フリーレンの治療はしてもらわないとだし」
224/04/21(日)02:16:37No.1180606029+
…まあ、私も同感だ。だけど、私と彼で、その意味は、果たして一緒なのだろうか。目線より高い彼の横顔を見る。木漏れ日でできた陰影は物憂げなイメージを作るけど、言葉に込められた感情をうかがうことはできない。わからないな、と思って気を抜いた私に、彼は続けた。
「それに…フリーレンなら断らないと思ってさ」
「…何故、ですか?」
「剣をさ、以前も盗まれて、勇者ヒンメルが取り返してくれたって言ってたろ」
伯爵様は、確かにそんな話をしていた。だが、それは私達に関係あるのだろうか。
いや…関係はある。フリーレン様にとっては。
「ヒンメルのやった事が無駄になるのは…イヤだろうから、あいつ」
少し目を伏せた彼の言葉に、混じった気持ち。それは、寂しさだと感じた。何に、誰に、対してだろう…いや、気付かないふりをしてはいけない。私は分かっている。それを認識した時、また、呼吸が浅くなり、動悸と共に、不快な血流の音が耳元で聞こえた。
やめて…どうか、収まって。拳を握りしめて、努めて無表情のまま、歩調を変えないようにした。シュタルク様は鈍いから、気付いてはくれないだろうと分かっていても。
324/04/21(日)02:17:34No.1180606181+
「フェルンは一級魔法使いだろ。頼りにしてるぜ」
「…ちゃんと前衛の役を果たしてくださいね」
「善処します…」
頼られている。裏表のない言葉。だけれど柔らかく笑う彼に、私はそんな言葉を返すことしかできなかった。
「あ、あれ」
シュタルク様がふと、上を指さす。木々の合間を縫って、一羽の鳥が翼をバタつかせながら近づくと、鉤爪のついた脚からぽとりと一本の巻紙を落とした。
「これは…伯爵の手勢からか」
「もっと北の方でそれらしい目撃証言があったようですね」
それは使い魔による通信だった。偵察はするが、魔族との直接戦闘は任せるとの旨が書かれていた。魔族は単独行動を取っており、行く先々で人を襲っていると。
魔族との戦い方を知らない兵士がそのまま挑めば、ほぼ確実に殺される。それくらい生き物としてのスペック差があるのだ。賢明ではあるが、体よく使われているようで少しムカつく。
「行こうぜ。すぐやっつけなきゃな」
「はい、気を引き締めていきましょう」
424/04/21(日)02:17:49No.1180606222+
…魔族との戦闘で雑念を挟めば、死ぬ。判断力が重要なのだ。私もそれくらいは骨身にしみている。
私達の関係を…私の疑念を、今だけは頭から必死に追い出す努力と、脚を進める作業を並行する。魔力探知を絶やさぬように…

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あ、と思った時には、間合いに踏み込まれていた。
旅の僧侶を名乗った女と、廃墟と化した村の惨状について話していた時だった。突如女から急激に魔力が溢れ、外套の下から得物が見えて…それが剣だと気付いた時、魔族は私に向けてそれを振りかぶっていて。
防御魔法。
間に合わない。
「フェルン!」
衝撃に身体が泳ぐ。一瞬遅れて、ざぐ、という音がした時、なんだかお料理の時に聞いた音だな、と、間抜けなことを思った。音の発生源が何なのかを考える前に身体が動く。倒れこみながら杖を取り出し、魔族に向け、体に染み込んだ術式で瞬時に魔力を炸裂させる。わずかな髪の毛や角の破片を残して、魔族の頭が弾け飛んだ。飛び散った血や肉片が魔力の塵になっていくのを確認してから…眼前の魔族に気付かなくて今更だけど…立ち上がり、魔力探知を巡らす。
他に動く物はいない。終わったようだ。
524/04/21(日)02:18:23No.1180606333+
「シュタルク様」
振り返ると、シュタルク様がうずくまっている。その足元には赤黒い水たまりができていた。塵にならない血糊が、私の身体にもついていた。私を庇って剣を受けた、シュタルク様のものだ。冷たさが背筋を通っていく。
「シュタルク様!」
「うぅ…いってぇ」
駆け寄ると、音の正体がわかった。彼も武器を抜く間が無く、腕で受けたのだ。銀色の刃がバンテージを巻いた前腕に食い込み、どくどくと鮮血が溢れている。美しい細工のほどこされた刀身に、幾筋も、赤い流れを作っている。だが、戦士の呆れるほどの頑丈さ。斬撃は骨に達する前に止まっているようだった。
「フェルン…大丈夫か?ケガは」
「黙ってて」
こんな時に何を言ってるんだ、こいつは。どう見ても、自分が大丈夫じゃないくせに。とにかく止血するため、二の腕をきつく縛る。シュタルク様がすこし身じろぐと、剣が抜けて、ピンクと赤の傷口から更に血が滲みだす。無我夢中で包帯を巻きつけるが、そのたび白い布は赤く染まっていく。ザイン様がいれば、とか、なんで私は僧侶の魔法が使えないんだ、とか、とにかく色々な思考がないまぜになりながら、包帯をたぐった。
624/04/21(日)02:18:51No.1180606429+
「すぐに教会へ行きましょう」
「ありがと…大丈夫、歩けるぜ」
お互い血まみれになってなんとか手当を終え、すぐ出発することにした。忌々しい剣も、血のべっとり付いたまま持って行ってやろう。
「へへ…前衛の仕事、上手くやったろ」
血が足りないのか、死線を潜ったからなのか、シュタルク様の顔は青白い。だけど、心配をかけまいとして、軽く笑ってそんなことを言う。
「……バカ」
またしても私は…そんなことしか言えなかった。
この人にとって、命がけで誰かを庇うということは、特別でもない、当たり前の行為なのかもしれない。だけど、そんな気遣いも、護ってくれたことも、嬉しくて。胸が苦しくて。
今の私にはたまらなく…辛かった。

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724/04/21(日)02:19:25No.1180606529+
「えーと、この部屋かな」
ダッハ伯爵領の教会はとても立派で、病人を収容する療養所も併設されていた。フリーレンはその一室に運び込まれ、僧侶たちの治療を受けていた。
依頼を終え、血で汚れた格好で治療を頼みに来たシュタルクに、僧侶も仰天していた。だが、見た目ほどの深い傷ではなかったので、女神様の魔法は瞬く間に傷口を塞いでくれた。そのついでに、フリーレンに会って、依頼をこなしたことを自慢しようと思った。
…ただ会いたかったというのも、あった。
「フリーレン、具合はどう?」
「…シュタルク」
伯爵の賓客であるからか、フリーレンには贅沢にも個室が与えられていた。シュタルクがドアを開けると、ベッドに入り、上体だけ起こして魔導書を読むフリーレンの姿が目に入る。白い寝間着姿で、血色は良くなっているように見えた。窓からは、沈みかけた夕陽の赤い光が飛び込み、部屋に陰影を作っていた。
「僧侶の魔法で大分楽になったよ…酷い有様だね」
「ケガは治してもらったぜ。服だって、後でフェルンの魔法で洗濯してもらうさ」
ベッドサイドにあった椅子に座り、胸を張るシュタルクに、フリーレンは顔を綻ばせる。
824/04/21(日)02:20:11No.1180606660+
「フェルンはどうしたの」
「伯爵に宝剣を返しに行くって」
「ケガは」
「ちゃんと守ったさ」
「そう」
フェルンとは、街の入口で別れた。シュタルクとしては、一緒に行っても別に不便は無かったのだが…早く治療に行けと急かされたのだった。
「俺とフェルンで、魔族をやっつけたぜ」
「ふふ…よくやったね、偉い」
部屋に二人きりだとわかると、途端に距離が縮んでいく。抱き合うと血で汚れるからと、シュタルクは自分の頭をフリーレンの胸元に近づけた。エルフの細い腕が伸びて、当たり前のように、抱きしめる。赤い髪をくしゃくしゃと、不器用に撫でていく。頭に押し当てられた彼女の胸から伝わる体温は、ほのかなものになっていて、熱が下がっているのがわかった。
「…フリーレンも、早く良くなれよ」
「そうだね…」
息をすると、フリーレンのにおいがする。シュタルクにとってそれは、一番の安らぎを感じるものになっていた。戦闘の緊張が解けて、いつもより甘えたくなる。頭を少し振って、もっと撫でてくれとねだる。フリーレンはただ、それに応えていた。
当たり前のように。ずっと前から、そうしていたように。
924/04/21(日)02:20:34No.1180606746そうだねx2
「そういえば…結局ただの風邪だったのか?」
「……そうだよ。だけど」
「だけど?」
「僧侶の魔法で調べてもらった時、別の原因もあったらしくて」
「…何?ちゃんと、治るのかよ?」
重い病気とかだったら、どうしよう。無邪気にそう思った。フリーレンは、言おうか少し迷ったが…話すことにした。いずれ分かることだし、シュタルクにとっても、大切なことであると信じていた。
「私も、信じられなかったんだけどね」
「…何だよ」
「…ここに、いるらしいんだ」
腕の力が少し強まって、シュタルクは少し息苦しくなった。それに、いるとは何のことなのか、まだよく理解できない。
「ここ…?」
きょとんとした声は、フリーレンの心を少しだけ軽くした。人間とエルフという違いがある自分たちの間に、こんな事が起きるとは彼女も知らなかったから。だけど、彼とは別に、変わらないと思った。その純粋さと、暖かさを信じた。
1024/04/21(日)02:21:04No.1180606853そうだねx2
「そう、ここに、私の中に」
「…え?」
それって…暫くの沈黙が病室を埋めた。フリーレンの心音が、少しずつ高鳴っているのが、抱きしめられた頭から伝わってくる。それが、良いドキドキだと嬉しいな、とぼんやり思った。実際を問いただすことは、今のシュタルクには難しい。何故なら、自分の感情を整理することで精いっぱいだったからだ。
「多分…私と、シュタルクの」
「…フリー、レン」
やがてさざなみのように、何かが心の奥底から湧き上がってくる。それは驚愕か、喜びか、恐れか。シュタルクには、全てがごちゃごちゃになっているように感じた。
ただ…このままフリーレンを抱きしめて、キスをしたいと思っていることは確かで、それを我慢するのに必死だった。

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1124/04/21(日)02:21:33No.1180606940+
「あ…あぁ……」
ぶるぶると指が震える。歯の根が合わず、腰が抜けてしまい、彼女は病室のドアの前でうずくまった。いけないことだとわかっていたが、彼女は疑念に勝てなかった。剣を返却し、すぐさま教会に向かったのだ。二人は多分、会って話をするだろうと思って。
「あぁ…あ、あぁ…」
そこで、彼女は聞いてしまった。決定的な内容を。何も理解できない、したくないと荒れ狂う心の中でも、一つだけ、確実だとわかったことがあった。
もう、元には戻れないということ。
あの旅の始まりには、かえれないということ。
1224/04/21(日)02:22:03No.1180607041そうだねx17
書いててフェルンがかわいそうになってきてるんですよね
1324/04/21(日)02:27:37No.1180608002+
1424/04/21(日)02:31:44No.1180608582+
1524/04/21(日)02:32:18No.1180608651+
おつらい…
1624/04/21(日)02:33:10No.1180608759そうだねx4
かわいそうはかわいい
1724/04/21(日)02:33:21No.1180608782そうだねx2
孕みエルフ
1824/04/21(日)02:38:37No.1180609505+
殺。
1924/04/21(日)02:46:49No.1180610513そうだねx2
>かわいそうはかわいい
イジメですよね。
2024/04/21(日)02:47:59No.1180610700そうだねx13
>書いててフェルンがかわいそうになってきてるんですよね
本当にそう思ってますか。
2124/04/21(日)02:49:32No.1180610894+
勃起してるよ
2224/04/21(日)02:54:19No.1180611515+
心変わりしたとかじゃなくて最初から芽が無かったとわかるのいいよね
芽が無いから変わらず優しく接してくれるんだよね
2324/04/21(日)03:06:51No.1180612988+
終わりですね。
2424/04/21(日)03:26:45No.1180614893+
2人の関係に気づいてそうなのがなおおつらい
2524/04/21(日)03:39:23No.1180615823+
いつから疑念を抱いていたんだろうね
かわいいね
2624/04/21(日)03:57:23No.1180617076そうだねx2
もしかして今最終回に向かってる?
2724/04/21(日)04:00:42No.1180617335+
ここにも魔族がいたようですね
2824/04/21(日)04:12:43No.1180618186+
愛の結晶が出来ちゃったねぇ…
2924/04/21(日)04:26:06No.1180619042+
ひどい
あまりにもひどい
3024/04/21(日)04:50:32No.1180620507そうだねx2
避けられるでも邪険にされるでもなく変わらず優しくされるのが
最初からうっすら望む枠の中に自分が入っていない証左だと
敏いから納得して飲み込むより先に理解しちゃうのがいいね…
そんだけ理解が早いのに取り返しのつかない物証を突きつけられるまでどこか喉の手前で留め置いちゃって
一気に飲み込まされた分一気に焼けるのもいいよね…
3124/04/21(日)04:56:18No.1180620812+
子供の名前ヒンメルにしようぜ!
3224/04/21(日)06:37:49No.1180626210そうだねx2
いろんな意味で終わりに向かうこの焦燥感たまんねえ
3324/04/21(日)07:10:53No.1180628739+
女の子だったらフェルン
男の子だったらヒンメルにしようか
3424/04/21(日)07:11:23No.1180628794そうだねx3
>女の子だったらフェルン

>男の子だったらヒンメルにしようか
3524/04/21(日)07:28:03No.1180630507+
まあここまで決定的になったらあとは全部シュタフリ2人きりの問題だからフェルンは何も気にしなくていいじゃん?
3624/04/21(日)07:34:10No.1180631244+
しかしあんだけヤッてて孕まねえわけねえよなって思ってたけど
ここでくるかあってちょっと驚いてる
てっきりエピローグまでとっとくとのかと
3724/04/21(日)07:43:02No.1180632429+
もう旅は終わりってコト!?
3824/04/21(日)07:44:15No.1180632601+
>もう旅は終わりってコト!?
大丈夫きっとまた始まるよ
新たに芽吹いた命と共に
3924/04/21(日)07:50:12No.1180633563+
男なら責任を取るしかあるまい…
今度こそ
4024/04/21(日)07:52:33No.1180633926そうだねx1
これまでの下品の流れ考えるとヒンメルに無くて自分にあるものが出来ちゃったら
いよいよ嫉妬も薄まっちゃって順当にいちゃついちゃうんじゃ
4124/04/21(日)07:57:38No.1180634715+
まあ女の子ならフランメでもいいし
何よりそういうの考えるの楽しいよねきっと
4224/04/21(日)08:00:21No.1180635159+
全く知らずともろくでもない痴情を察せざるを得ないであろう僧侶の人たちかわいそ…
……いや案外楽しんでるかも?
4324/04/21(日)08:01:21No.1180635303+
>全く知らずともろくでもない痴情を察せざるを得ないであろう僧侶の人たちかわいそ…
なんかあからさまに浮気してて〜みたいな物証出て来たらそりゃ同情するけど
お腹に子供がくらいでそうはならんだろ!


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