二次元裏@ふたば

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119454 B24/04/15(月)16:53:30No.1178632713そうだねx2 18:42頃消えます
 ベッドで眠る一人の男。
 そして、それを見守るもう一人の男。
 眠る男は魘されるようなうめき声を上げた後、ゆっくりと目を開ける。
「……キラ。そうか、俺は死んだのか……」
 眠っていた男……アスランの眼の前には、死んだはずの親友が居た。
「君も僕もちゃんと生きてるよ。ここはアークエンジェルだ」
「どうして……」
「ジブラルタルに潜入してたキサカさんが見つけてくれたんだよ」
「そうか……お互い、相変わらず中々死ねん物だな」
 そう言うと、アスランは皮肉気に笑った。
このスレは古いので、もうすぐ消えます。
124/04/15(月)16:53:46No.1178632768+
「アスラン!」
 キラの連絡を受け、カガリが一目散に病室へとかけてきた。
「良かった、心配したぞ!」
「カガリ……」
 アークエンジェルが沈んだと思った時は絶望しかけたが、カガリが目の前に居るのを見て心から安堵する。
「そうだ……メイリンは!?」
「一緒に乗ってた娘? 無事だよ。あの娘の方が軽傷だ」
「そうか、良かった……」
「でもお前、いったい何があったんだ?」
「……簡単な話だ。議長に用済みと見なされて消されかけた。議長は、世界を……うっ!」
 アスランは身体を起こそうとするが、痛みに思わずうめき声をあげる。
「アスラン、もういい。今は喋らなくていい。少し眠るんだ。僕たちはまた話せる。いつでも」
 それを聞き安心したのか、アスランは再び眠りについた。
224/04/15(月)16:54:00No.1178632827+
 一方、エターナル。
「ラクス」
「はい」
「前、ヘブンズベースが落ちたら次はオーブだと言っていたな?」
 バルドフェルドがラクスに問いかける。
「はい……まさか、落ちたのですか!?」
「思ったより早かったがな。だがどうして次がオーブなんだ? デュランダルが討つとぶち挙げているのはロゴスだろ?」
「オーブは強い国ですから。その力、理念。でもそれはデュランダル議長のやろうとしていることの前には、ただの障害でしかないだろうと思うのです」
「何だ? 奴のやろうとしていることとは」
「まだはっきりと分かったわけではありませんが。でも少しずつ見えてきたように思います。議長は地球、プラントを一つに纏めた新しい世界秩序を創ろうとしているのではないでしょうか」
「早い話が世界征服、ってか」
「端的に言えば、そうなります。もしかしたら、今のこの争乱の全て、そのための土台作りでしかないのかもしれません……」
324/04/15(月)16:54:29No.1178632925+
『陥落したヘブンズベースからは多数のロゴス幹部が連行された模様です』
『現在、連合とプラントは共同で国際法廷を開設し、身柄を拘束したこれら幹部の……』
 テレビから流れるヘブンズベース陥落のニュースを見ながら、アスランとカガリは語りあう。
「起きてたか。大丈夫か?」
「ああ。死にたいような気分だ。ぅぅ……残念ながら大丈夫みたいだ」
「やめろよ、そういうこと言うの。誰も嬉しくないから。……私は、オーブ政府に戻るつもりだ。ロゴス幹部の中にセイランと関わりの有る者がいたんだ。それに関係して色々心配なこともある。オーブは今道を誤るわけにはいかない」
「カガリ……」
「お前にも言われたけど、あんなやり方で戦闘を止めるなんて事は結局できなかった。私の非力ゆえに多くの犠牲を出してしまった。だが、生き残った者達の一部は死んだ者達の想いとともに、私の元に来てくれた。彼らのためにも、私は戻らないと」
「……そうか」
「あと……ユウナと結婚しようとした事。ゴメン、お前に何も言わずに……」
「守りたかったんだろ、オーブを。だったら、そんな顔をするな」
「アスラン……」
424/04/15(月)16:54:40No.1178632973+
「俺も、焦ったんだろうな。嫌だったんだ。何もできない自分が。カガリは国という重い責任を負って毎日死にものぐるいなのに。俺は何もできないどころか、ユニウスセブンがあんな……何かしたかった。止めたかったんだ。本当は、戦争になるのを」
「……みんなそうしたくって、そう言ってるのに。なんでそうならないんだろ…やっぱりロゴスのせいなのか? しょうがないのかな? もうほんとに……」
 アスランはその話を聞いた途端に表情を変える。
「ロゴスが碌でもない連中なのは事実だろうが……ロゴスが無くなったからと言って、そう都合よく世界から戦争がなくなるとは思えない」
 アスランの脳裏に、ユニウスセブン落下テロを起こしたテロリスト達の事が過る。
「じゃあ、議長は一体どうする気なんだ?」
「彼はそれを実現する為の『次の一手』を考えているだろうという事だ」
「次の一手?」
「ああ……」
524/04/15(月)16:55:04No.1178633081+
「すまねえな、こんな事ばっかり頼んじまって」
「いえ、いつ必要になるか分かりませんから」
 キラは格納庫で、マードックと共にストライクルージュの調整を行っていた。フリーダムを失った以上、まともに動かせる機体はルージュのみなので当然と言える。しかし、そこにマリューから放送で連絡が入る。
『キラ君、すぐにブリッジへ。エターナルが発進するとターミナルから連絡よ』
「えっ!?」
『ザフトに発見されたと』
「!」
 キラは、すぐさまブリッジへ戻る。
「マリューさん!」
「どのくらいの部隊に追われているのかは分からないけど、突破が無理ならポッドだけでもこちらに降ろすということよ」
「突破が無理ならって……ラクス!」
『おい!』
「「!?」」
 医務室から通信が入る。ネオだった。
『なんか隣の奴がジタバタうるさいんだが……』
624/04/15(月)16:55:15No.1178633135+
 ネオの後方には、無理やり体を起こしたアスランが映っている。
『行け……ラクスを守るんだ……絶対に! キラ……』
『お前が、守るんだ!』
「アスラン……」
 キラは、思わずフレイの方を見る。
「……いちいち見なくていいから、さっさと行きなさい!」
「そ、そうだね……カガリ、ルージュ貸りるよ! それからブースターの準備を! アスランも、ありがとう!」
 そう言うと、キラは格納庫をへとんぼ返りする。
 マリューは全員に命令を出す。
「全員でキラ君のサポートを! ……ブリッジの通信コードは覚えてるのね」
『えっ?』
 ネオはマリューの言葉に違和感を覚えつつ、通信を切る。
724/04/15(月)16:55:31No.1178633191+
「電圧や他のスペックはどうすんだ!?」
「全てストライクと同じに!」
「分かった!」

 下半身に巨大なブースターを装着したルージュが、カタパルトに入る。
『エターナルの軌道予想、いいわね?だいぶ降下してきてるわよ』
「はい、大丈夫です!」
『進路クリアー、システムオールグリーン。ストライクブースター、発進どうぞ!』
「キラ・ヤマト、ストライク、行きます!」
 そう言うと、キラは崖下に作られた秘密のカタパルトから発進する。それと同時にフェイズシフトを展開。その姿は、目とシールドの色を除きかつて彼が駆った愛機と全く同じだった。
「……懐かしい姿ですね」
「そうね」
 嘗てのこの艦の守護者を思い起こさせるルージュの姿に、フレイとマリューは少し複雑な、それでいて感慨深げな様子を見せた。
824/04/15(月)16:55:50No.1178633257+
 キラが到着すると、赤いMSが孤軍奮闘していた。
「ガイア……バルトフェルドさん!」
「ストライク……キラか!」
 キラはブースターを切り離すと、エターナルを狙っていたガナーザクの銃の先端をレールガンで破壊する。ライフルをガイアに投げ渡すと、そのまま、周囲に群がるザクとグフを無力化していく。
「ラクス!」
「キラっ!」
 ラクスはキラの到着に声を上ずらせる。
「ごめん、でも心配で……」
 キラはそのまま流れ作業的に敵MSを無力化していく。艦底からエターナルを狙うガナーザクの砲撃を、切り離したオオトリを身代わりにして防ぐ。帰ってきた砲撃をシールドで防御するが、左腕ごと吹き飛ばされる。
「くそ、やっぱムウさんおかしいよな……!」
 手元に残していた対艦刀をザクの頭部に投げつけ、破壊。そこに、バルドフェルドのガイアが現れる。
「馬鹿! さっさとエターナルに入れ! お前の機体を取ってこい!」
「えっ……? は、はい!」
924/04/15(月)16:56:30No.1178633410+
「緊急着艦システム用意!」
 ダコスタのアナウンスでキラはエターナルに着艦する。その時、ついでとばかりに足を破壊される。
 満身創痍となったルージュから降り、艦内に向かう道でラクスと再会する。
「ラクス!」
「キラ!」
 二人は、久方ぶりの抱擁を交わす。
「ラクス、良かった……こうして君がここにいる。それが本当に嬉しい」
「わたくしもですわ。キラ」
「あれは?」
「……こっちです」
 一瞬顔を顰めた後、ラクスはキラを案内する。向かった先には、フリーダムとよく似た、しかし異なるMSが鎮座していた。
 キラはそれを見て、口元に笑みを浮かべる。
「ありがとう。これで僕はまた、ちゃんと戦える。僕の戦いを」
「キラ……」
「待ってて。すぐに戻るから。そして帰ろう。みんなの所へ」
1024/04/15(月)16:56:56No.1178633505+
 そう言うと、キラは機体の元へ向かおうとする。
「あ……待ってください!」
「どうしたの?」
 キラが振り返ると、そこにラクスが唇を重ねてきた。
「……今は時間がないのでこれくらいにしておきますわ」
 そう言うと、ラクスは再びキラから離れる。
 時間があったらどうするのだろうと思いつつ、ラクスって結構キス魔だよなあととりとめのないことをキラは考える。
「っと、ぼーっとしてる場合じゃない!」
1124/04/15(月)16:57:06No.1178633536+
 新たなる剣ーーストライクフリーダムのコックピットに乗り込んだキラは、驚異的な速さでOSの最適化を進めていく。
「出力、火力共にフリーダムより更に上か。扱いきれるか……? いや、そんなことは言ってられないな!」
「ストライクフリーダム、システム起動!」
 システムが立ち上がったのを確認すると、ストライクフリーダムはカタパルトに向かう。
「X20A、ストライクフリーダム、発進どうぞ!」
 ラクスの声でアナウンスが流れる。
「キラ・ヤマト、ストライクフリーダム、行きます!」
 そういうと、ストライクフリーダムはエターナルより発進した。
1224/04/15(月)16:57:28No.1178633624+
「何だあの機体は!?」
「新型か? 早いぞ!」
「いや待て……あれはフリーダム!?」
 突如現れたフリーダムを思わせる機体に、グラスゴー隊の面々は意表を突かれる。
 とにかく攻撃を加えるが、それらは全て防がれるか躱され、逆に自分たちが頭や手足、武器を破壊され無力化されていく。
 しかし、とっさに二機のグフがスレイヤーウィップで右足と左腕を絡め取る。
「ちいっ!」
 キラは機体のウイングに搭載されているスーパードラグーンを射出・展開し、一斉掃射。瞬く間に二機を無力化し拘束を抜ける。更にそのままマルチロックオンシステムを起動し、照準を合わせる。
「当たれええぇぇぇぇっ!!」
 無数の砲門は敵を一機残らず捉え、完全に無力化した。
1324/04/15(月)16:57:42No.1178633683+
「一分半……? わずか一分半で二十五機のザクとグフが全滅だと!?」
 追跡部隊隊長のグラスゴーは目の前で起きていることが信じられず、叫ぶ。
「て、敵モビルスーツ接近!」
「くっ……全砲門開け、撃ち落とせーっ!」
 ナスカ級三隻から放たれる砲撃をキラは躱しながら、瞬く間にドラグーンでエンジン部を破壊する。
「スラスター大破!航行不能です!」
「ホルスト、カーナボン共に航行不能!」
「そ、そんな馬鹿な……」
 グラスゴーは、思わず椅子からずり落ちた。
 機体のお披露目を確認したバルドフェルドは、エターナルに通信を入れる。
「エターナル、帰投するぞ」
「はい!」
「ふう……」
 キラは一息つくと、エターナルを見ながら、そこに乗っている大切な人に思いを馳せた。
1424/04/15(月)16:57:55No.1178633727+
 エターナルに帰投したキラは一日ほど休息を取るが、状況はそれ以上を許さなかった。
「ザフトがオーブに侵攻だって!?」
 ラクスからの知らせにキラは動揺する。
「ええ。セイランが匿っているジブリールの引き渡しを拒否したため、とのことです」
「……ウズミさんの言った通りになった。『連合かザフト、どちらかに付けば付かなかった方に撃たれる』って」
 キラは苦々しげに毒づく。
「ラクス、あの機体借りるよ! 地球に降りる!」
「借りるも何も最初から貴方の物ですわ。後、地球に降りるなら私と『あの機体』もお願いします」
「えっ!?」
「地球に降ろすのであれば私が乗って運ぶ方が確実です。エスコートをお願いしますわ、キラ」
「でも今のアスランには……」
「わかっています。でも何かをしたいと思った時、何も出来ないことの方が辛いのです、きっと」
 ラクスの目は、どこまでも真っ直ぐにキラを見つめていた。
「そうだね……分かった」
1524/04/15(月)16:58:05No.1178633763+
「アカツキ、2時方向にて敵モビルスーツを交戦中!」
「デスティニー……シン!」
 ミリアリアのアナウンスと映像から、カガリの乗るアカツキがデスティニーと戦っていることが示される。
 カガリが亡きウズミから受け取った力……『アカツキ』はビーム攻撃に高い耐性を持つが、ビームサーベルや対艦刀との相性は悪いらしく、シールドを真っ二つにされ、左腕も切り落とされるなど、徐々に追い詰められていく。
 そして、デスティニーの放った二つのフラッシュエッジがアカツキに襲い掛からんとする。
「カガリ!」
 CICに座っていたアスランが絶叫する。
 しかし、その攻撃が届くことはなかった。
 上空から放たれたレールガンの正確な射撃により、フラッシュエッジは撃ち落される。
「!?」
「フリーダム!? 何だよ……そんな、何で!」
 アカツキを庇うようにデスティニーの前に立ちはだかったのは、フリーダムを思わせるMSと、それに手を引かれる赤いMSだった。
1624/04/15(月)16:59:01No.1178633998+
「間に合った……! マリューさん、ラクスと機体を頼みます! カガリは国防本部へ!」
「わ、分かった!」
 デスティニーは対艦刀を抜き、ストライクフリーダムに斬りかかる。紙一重でそれを躱すと、ライフルを連結し発射。シールドで防がれるも吹き飛ばす。デスティニーは長射程ビーム砲を引き出し発射、フリーダムもカリドゥスを発射し空中で激突、相殺する。
「強いな、インパルスのあの子か!?」
 デスティニーは再び対艦刀を取り出し、フリーダムに斬りかかる。
 キラは咄嗟にライフルを腰にマウントしようとするが、レールガンが使えなくなることに気付く。
(ああマジか、くそっ!)
 キラはライフルを二つとも空中に放り投げると、対艦刀をビームシールドを展開しながら白刃取りする。ビームシールドで対艦刀のビーム部分を無効化しつつ、手で実体剣部分を掴み取る賭けだった。
(何とか上手く行ったか!)
1724/04/15(月)16:59:38No.1178634156+
 キラは腰のレールガンを展開し、デスティニーに至近距離から砲撃を加え相手を気絶させることを目論む。しかし、デスティニーは吹き飛ばされただけで全く止まらない。キラは放り投げたライフルをキャッチすると、再び距離を取る。逆にデスティニーは背中のウィングを展開し、さらなる高機動戦闘に持ち込んでくる。しかし少し撃ち合った後、デスティニーはいったん引いた。
「? まあいいか……」
 キラは本土上空へ行き、既に地上展開しているザフトのMSを片っ端から無力化していく。それが終わると、アークエンジェルの救援に向かう。しかし、補給を終えたらしきデスティニーと、前大戦で見たプロヴィデンスに似た機体ーーレジェンドが飛来する。
「あれは……!」
 CICに居たフレイが思わず叫ぶ。
 同格の機体二機を相手取るのは流石に分が悪く、キラも防戦一方となる。
 そして混戦の中、遂にデスティニーの長射程ビーム砲がフリーダムをロックオンする。
「待てっ!!」
 そこに、第四のMSが現れる。
「止めるんだ、シン!」
 キラとラクスが運んできたジャスティスの後継機……∞ジャスティスだった。
 パイロットは、アスラン・ザラ。
1824/04/15(月)16:59:57No.1178634244+
「アスラン!」
「チィッ! 死に損ないの裏切り者が、今更出てきて何を!」
 激昂したレイの駆るレジェンドがジャスティスに襲い掛かろうとするが、キラがそれを抑える。
「キラ、済まない……シンと話をさせてくれないか?」
「……分かった」
 キラは、レジェンドの相手に専念する。
 それを確認したアスランは、ゆっくりとシンに語りかける。
「シン、それ以上進んではいけない……お前がオーブを撃っては駄目だ! 自分が今、何を討とうとしているのか、お前本当に分かってるのか! 思い出せ、シン! お前は一体何のために『力』を手に入れたんだ!」
「な、何をアンタは、また……! 俺は戦争を無くすために、ロゴスを……!」
「お前は言っただろう! 二年前の戦闘で家族を『殺された』と! それを許せなかったお前が、今度はその『力』で奪うのか!? かつてこの地で失ったものを……!」
「今、この戦闘を止める為にカガリたちも動いている。間も無く停戦交渉も始まるだろう、だからお前も……」
1924/04/15(月)17:00:20No.1178634328+
「……そこを退け、アスラン。アンタは何も解ってない……!」
 しばらく黙っていたシンが、絞り出すように言葉を発する。
「シン!?」
「アンタはザフトを裏切ったんだ! そしてオーブはロゴスを匿ったんだ!」
 デスティニーは再び対艦刀を構え、複合ウィングを展開する。
「『敵』になるなら、討つしかないじゃないかっ!!」
 悲鳴を上げるように叫びながら、シンはジャスティスに襲いかかる。
「なのに、なんでまた出てきて邪魔するんだよ! 俺にアンタをもう一度殺せってのか!?」
「くっ……そんなことはさせない!」
 ジャスティスはシールドのサーベルで対艦刀を両断するが、デスティニーのタックルを受けて怯む。
「うぐっ……!?」
 アスランは傷の重さもあり、その動きに精彩を欠く。それでも、必死にデスティニーの足を掴み縋るように止めようととする。
2024/04/15(月)17:00:36No.1178634396+
「シン行くな……! お前の力はそんな風に……」
「離せっ、このっ……!」
 デスティニーはジャスティスを足蹴にし、引き剥がそうとする。
 そして、ジャスティスーーアスランはとうとう手を放す。
 海に落下していくジャスティスを、キラのフリーダムが回収する。
 その直後、ミネルバから撤退命令が出される。
 デスティニーとレジェンドは、連れ立ってその場を後にした。
「ストレッチャーを!医療班を早く!」
 一方、基地に帰還したキラは、アスランをジャスティスから大急ぎで降ろす。アスランは傷が開いだのか、頭から大量に出血していた。
2124/04/15(月)17:01:00No.1178634502+
「こんなところにいたのね」
 マリューは、アークエンジェルの艦上に居たネオに語りかける。ネオには今回の戦闘が始まる前にスカイグラスパーを与え解放していた。マリューとしても記憶が戻る見込みがないなら、未練を断ち切る気持ちで彼に別れを告げるつもりだった。しかし、何故か彼は戻ってきてくれた。
「まあ、居場所がなくってね。……ネオ・ロアノーク。CE42、11月29日生まれ。大西洋連邦ノースルバ出身。ブラッドタイプO。CE60入隊。現在、第81独立機動軍、通称ファントムペイン、大佐。のはずなんだがな。だがなんだかちょっと自信がなくなってきた」
「えっ?」
「あんたを知ってる。ような気がする。いや、知ってるんだ。きっと俺の目や耳や腕や、何かが……だから飛んで行っちまえなかった」
「ぁ……」
「あんたが苦しいのは分かってるつもりだ。でも、俺も苦しい。だから、ここにいていいか? あんたの、傍に」
「うぅっ……」
 そう言うと、ネオはマリューを抱き寄せる。マリューもまた、彼を抱き返した。
2224/04/15(月)17:01:24No.1178634606+
 目を覚ましたアスランは、キラから状況を確認する。
「じゃあ、ジブリールはこのシャトルに?」
「確証はないけど、多分」
 部屋のモニターに、宙へ向かっていくシャトルの映像が映る。
「両軍で追撃したんだけど間に合わなくて……」
「そうか……」
「アスラン、あのシンって子は?」
「オーブ出身の奴なんだ。二年前の戦闘で家族を失っている。あいつにオーブを撃たせたくなかった……」
 キラは、言葉を返す事が出来ず沈黙する。
「ああそうだ、カガリと……セイラン親子はどうなった?」
「カガリは今会見の準備中。身も蓋もなく言えば今回の件の言い訳だ。彼女のせいだけじゃないけど、それが仕事でもあるからね。セイラン親子は戦闘に巻き込まれていつの間にか死んじゃってたって」
「そうか」
 アスランは、複雑な面持ちで目をゆっくり閉じた。
2324/04/15(月)17:01:35No.1178634638+
「……あのさ、前から気になってたんだけど」
 キラは、少し言いにくそうな表情で語りかける。
「ユウナ・ロマとの事、オーブに来た時から知ってたんだろ。どう考えてたのさ」
「別にどうも。今回の件もあいつの意思で決めたなら最悪それも仕方ないと思っていたさ。滅茶苦茶嫌だったしせめてもの抵抗はしたが」
「なんでそこまで……!?」
「俺の命はあいつに拾われたからな」
 アスランはどこか達観したように笑う。
「そりゃあ、男女の関係になれるのならそれに越した事はないが……それが無理でも、俺はもうあいつのために生きると決めている。俺の命は元よりあいつの物だ」
「アスラン……」
「カガリは俺の全てだ。たとえこの先どうなろうと、彼女の居ない人生なんてもう考えられない」
 言い切ってから、アスランは少し赤面しつつ目を逸らす。
「……今のはカガリはもちろん、他の誰にも口外しないでくれ。流石に少し恥ずかしい」
2424/04/15(月)17:01:46No.1178634677+
「ですって」
「……っ……ぅっ!」 
 ドア際にいたフレイは、僅かな時間を使って見舞いに来ていた、隣のカガリに小声で告げる。
 カガリは口を抑え声を押し殺しながら、その場に座り込んで嗚咽する。
 同じくドア際に居たラクスとメイリンは、それを見て満足そうな笑みを浮かべた。
2524/04/15(月)17:02:38No.1178634869+
 それから数日後、フレイはラクスを送りにオーブの首長官邸に来ていた。
「いいの?」
「はい。わたくしはもう逃げも隠れもしませんわ」
「アンタがそう決めたなら良いけどね。ま、どうせやるなら本物の違いをどんと見せつけてやんなさい」
 そう言うと、フレイはラクスの肩をポンと叩いた。
「じゃ、私は一旦艦に戻るわ。終わったらキラと適当なタイミングで迎えに行くから」
「分かりましたわ」
 アークエンジェルに戻ったフレイは、病室でキラ、アスランと共にカガリの会見を見る。
2624/04/15(月)17:02:51No.1178634909+
『オーブ連合首長国代表首長、カガリ・ユラ・アスハです。今日私は全世界のメディアを通じ、プラント最高評議会議長、ギルバート・デュランダル氏にメッセージを送りたいと思います』
『過日、様々な情報と共に我々に送られたロゴスに関するデュランダル議長のメッセージは衝撃的なものでした。他の国と同様、我が国の中枢にもロゴスに通じる者が存在していた事。また彼らによりジブリール氏の隠匿が計られ、それを事前に防げなかったことは慙愧に堪えない思いです』
『ですが、ザフトの国土侵攻に対しわが軍が防衛戦を行ったのは、決してジブリールを庇う目的ではなかったことを分かって貰いたい! 例えロゴスが悪であっても、たった一人の身柄を確保するための侵攻で、ただ静かに暮らしている多くの罪のない国民たちの命が脅かされ、犠牲になっている』
『我々は、それをただ黙って受け入れる訳にはいかなかった! このような結果になってしまったこと誠に遺憾に思う。だが我々は……』
 しかし、最後まで言い切る前に画面が砂嵐に包まれる。
「何だ……?」
2724/04/15(月)17:03:35No.1178635093+
 アスランの疑問の答えはすぐに現れた。
『わたくしはラクス・クラインです』
(ミーア!)
 カガリの放送に割り込んだ「プラントのラクス」を見て、アスランが顔をしかめる。
「あら、予想外の展開ね」
「……不味いな」
「そうでもないわよ。まあ見てなさい、思ったより面白いことになるわよ、これ」
「面白い……?」
『プラントとも親しい関係にあった彼の国と、このような形で矛を交えてしまったことは、私もとても悲しく残念に思っております』
『ですが皆さん、忘れてはなりません。ロゴスは私たちに戦争をもたらす邪悪な存在。それを撃ち滅ぼすための最後の戦いに、私たちは今共に挑んでいるのだという事を』
『プラントに核を放つことも巨大破壊兵器で街を焼くことも、子供達をただ戦いの道具とするこもと厭わぬ、『ブルーコスモス』の盟主ロード・ジブリール……わたくし達はまたも捕らえることが出来ませんでした』
『オーブの行動は自衛のための物だったのかもしれません。ですが本当にそれだけなのでしょうか? 非戦中立を掲げるオーブの強大な軍事力、その陰には恐らくロゴスの……』
 しかし、またしても画面にノイズが走る。
2824/04/15(月)17:04:25No.1178635277+
 それが収まった時、画面に映っていたのは……カガリの隣に立つ、本物のラクスだった。
『その方の姿に、惑わされないでください。わたくしはラクス・クラインです』
「お、来たわね」
 フレイが少し楽しそうに告げる。
『わたくしと同じ顔、同じ声、同じ名の方がデュランダル議長と共にいらっしゃることは知っています。ですが、わたくし、シーゲル・クラインの娘であり、先の大戦ではアークエンジェルと共に戦いましたわたくしは、今もあの時と同じ彼の艦とオーブのアスハ代表の下におります』
『彼女とわたくしは違う者であり、その想いも違うということをまずは申し上げたいと思います』
『わたくしはデュランダル議長の言葉と行動を支持しておりません』
 画面の中のラクスは毅然と告げる。
2924/04/15(月)17:04:39No.1178635320+
『確かに、ブルーコスモスやロゴスの非道な行いにはわたくしも心を痛めるところがあります。ですが、彼らを根絶やしにしたところで安易に平和が訪れるとも思っておりません。敵対するものへ全ての原因を押し付け、それを滅ぼせば済むという考えは、先の大戦で両軍が行った事と何一つ変わりがないからです』
 本物のラクスが話している間、右下に映っていた「プラントのラクス」は状況を飲み込めずずっとオロオロしていた。その内、放送が打ち切られたのか画面が消失する。
『我々はもっとよく知らねばなりません。デュランダル議長の真の目的を。どうか皆さん、甘い言葉の向こう側にある真意に考えを巡らせ、ただ妄信することのないようにお願いいたします』
3024/04/15(月)17:05:04No.1178635429+
「ぷっ、あはははは!」
 放送が終わった後、フレイはけらけらと笑い出す。
「見た? 偽者の顔! 後ろからご本人登場でポカーンって! いやー下手なモノマネ芸人より笑えるわ!」
 アスランはフレイをたしなめようと二人の方を見る。しかしキラも笑いこそしていなかったが、つかえが取れたような満足気な顔をしている。その様にアスランは大きなショックを受けた。
「うん。それに、今のを見ていた人にはどっちが本物か一目瞭然だろうね」
 キラのその一言にアスランは顔を引き攣らせ、もう何も映っていないテレビの画面を再び見る。
「どうしたのよ?」
「……何でもない」
 アスランは感情を押し殺すようにそう告げる。
3124/04/15(月)17:05:14No.1178635466+
「じゃ、私達はあの娘を迎えに行くわ。アンタも大事にしてなさい、傷開いちゃってんでしょ?」
「……ああ」
 そう言うと、アスランは腕で目元を隠すように横になる。それを確認するとキラとフレイは部屋を出ていった。
 ……キラ達からすれば、ミーアはラクスの名を騙り、議長と共謀して彼女を殺し成り替わろうとした悪女以外の何者でもない。
 その事実に、ようやくアスランは思い至った。
「あいつらからどう思われているかも、いずれこうなるのも分かっていたはずなのに……くっ!」
 一人呟くと、ベッド横の壁を思い切り叩きつけた。
3224/04/15(月)17:05:27No.1178635512+
 放送の翌日、フレイ、ラクス、ミリアリア、メイリンは艦を降り、街へ日用品や嗜好品などの買い出しに向かっていた。
「ふー、ようやくお日様の下を堂々と歩けるわ!」
 フレイは大きく伸びをしながら、久々の陸地と直射日光を満喫する。
「何か犯罪者とか前科者みたいな言い方ねぇ」
 フレイの言い草にミリアリアが突っ込む。
「実際似たような物じゃない? 勝てば官軍だから済んでるだけで」
「はは、冗談キツ……ところで、ラクスは何でそんな恰好?」
 ラクスは、髪を纏めて結い上げ、更に鍔広の帽子とサングラスを身に着けていた。服装も白いワンピースと今までとは少し趣が異なる。何より、トレードマークの髪留めも外していた。
3324/04/15(月)17:05:55No.1178635636+
「昨日の今日ですから、あまり目立たないようにしないと……」
「それもそっか。ところで、何買うの?」
「えーっと、私は化粧水にお菓子でしょ、艦長からは口紅とファンデと……」
「新しいお洋服もいくつか欲しいですわね」
「はあ、呑気なもんだ」
「はは……」
 既にこの面々の性格や立ち位置を理解しつつあったメイリンは、ただ苦笑いするしかなかった。
3424/04/15(月)17:06:06No.1178635676+
 一方その頃、キラ達はアークエンジェルの食堂で今後について語り合っていた。
「これがメンデルに残されていたノートか……」
 アスランが、古ぼけた大学ノートを手に取る。
「デュランダル議長の昔の同僚が記したものだってさ。あの人、昔はメンデルに勤めてたんだって」
 アスランはノートをパラパラと捲る。
「アスラン、何か思い当たることはある?」
「……彼は言っていた。人は自分の能力を知り自分の役割を果たすのが幸せだと。そんな世界なら戦争は起きないと……」
「人の能力を知るって、遺伝子で? 彼はそんな世界を創ろうとしているの?」
「でも彼はこんな事は何も……」
「まだ、その時期ではないって事かもね」
3524/04/15(月)17:06:17No.1178635719+
「出来るから、その能力があるからそう生きる。それって……幸せなの?」
 キラは、深刻な顔でアスランに問う。
「……違うと思う。でも、そう思う人間も……居るのかもしれない」
『キラ、アスラン』
 そこに、カガリから通信が入る。
「どうしたの?」
『ああ、急ぎではないんだが、少し気になるメールが入っているんだ。それも私ではなく、ラクス宛に』
「ラクスの宛のメールがカガリに?」
3624/04/15(月)17:06:40No.1178635795+
『拝啓 ラクス・クライン様
 私はデュランダル議長の本当の目的を知っています
 用済みの私は間もなく殺されるでしょう
 その前に、貴女にだけはお話しておきたい
 待っています
          もう一人のラクス・クライン』

 買い物から帰ってきたラクスは、その文面をキラ達と共に見る。
「罠だね」
「罠ね」
「罠ですねー」
「しかも場所は月面のコペルニクス……誘われていますわね」
 メールの内容を見て、キラ、フレイ、メイリン、ラクスが口々に言う。
3724/04/15(月)17:06:51No.1178635844+
「しっかしコスいわねー。立場がヤバくなったからってこんな見え見えの罠で釣ろうなんて……」
「前みたいに暗殺部隊差し向けられるよりはよっぽどいいよ」
「ま、確かに」
「っ……ミーアはそんな娘じゃない!!」
 二人の言い様に、アスランは机を思い切り叩き叫んだ。
「あ、アスラン……」
 その剣幕に周りはビクリとする。
「そんな娘じゃ、ないんだ……!」
 絞り出すようにそう言うと、そのまま机の上で突っ伏す。その様子を見て、ラクスは優しく告げる。
「……本当にそんな方でないのなら。わたくしもぜひお会いしてみたいですわ」
「なっ! 危険だ!」
 キラは当然制止するが、ラクスはキラに優しく微笑む。
「どこかでいずれちゃんとしなければならないことですから。ね?」
3824/04/15(月)17:07:08No.1178635912+
 ラクス達は、アスハ家所有のシャトルでコペルニクスに向かう。同行したのはキラとアスラン、護衛としてドムのパイロットの三人。
「コペルニクスと言えば、キラとアスランが子供の頃過ごした場所ですわね」
「うん、そうだね」
「まあ、こんな状況じゃなきゃ色々案内したりも出来ただろうが……」
「構いませんわ。二人がかつて居た所に行ける、それだけで嬉しいのです」
 指定の場所である廃劇場の近くに着いた一行は、周辺を警戒しながら近づく。
「では、周辺の警戒は護衛の方々にお任せして、私たちは参りましょう」
 キラ達はその護衛のヒルダ、マーズ、ヘルベルトに会釈すると、劇場内に入る。
「アスラン。ミーアさんと言う方は、どんな方なのですか?」
「少なくとも、こんな罠で君を消そうとしているのは彼女本人じゃない」
「……そうですか」
3924/04/15(月)17:08:04No.1178636118+
 劇場内には、ミーアが一人で佇んでいた。
「ミーア!」
「あ、アスラン! 貴方生きて……!?」
 ミーアは、アスランの方へ駆け寄る。
「ミーア……罠だというのは分かっている。だが、これがきっと最後のチャンスだ。だから来た」
「こんにちわ、ミーアさん」
 アスランの背後から、ラクスが現れる。
「お話があると伺いました。なら、もっとゆっくりできる場所へ参りましょう」
 ラクスの姿を見たミーアはあからさまに動揺する。
「ラクス様、アスラン……はっ、何よそれ……何で、貴方達が一緒に来るの……?」
「……ミーア?」
「何で!? アスランはラクスの婚約者でしょ!? だったら私の隣に来てよ!!」
 ミーアは懐から取り出した銃をラクスに向ける。アスランは咄嗟にそれを自身の銃で撃ち弾き飛ばす。
4024/04/15(月)17:08:23No.1178636203+
「ミーア……!?」
「私がラクスよ……その人じゃなくて私が……!!」
「ミーア、何を……?」
「分からないわよ! 最初から持ってる貴方達には! 人から奪ってでもしがみつきたい気持ちなんて! そうじゃなきゃ失くなっちゃうって、おびえる気持ちなんて!」
「……名が欲しいのなら差し上げます。姿も。でもそれでも貴方とわたくしは違う人間です。それは変わりませんわ」
「この戦争で人々の傷を癒したのは、他ならぬ貴女です。わたくしは、正直な感情を表現できる貴女の姿を、とても素敵だと思いましたわ」
 ラクスは、ミーアににっこりと微笑みかける。
「貴女に会えて、私は嬉しく思います。二人の人間として、貴女ともっとお話ししたい。だから、一緒に参りましょうミーアさん」
「ラクス様……」
 しかし、殺気を感じたアスランはとっさにラクスをか庇う。瞬間、ラクスの居た場所を銃弾が通過する。
4124/04/15(月)17:08:43No.1178636284+
「キラ、ラクスを!他にも居る!」
 アスランは正確な射撃で刺客を一人づづ倒していく。
「ラクス、こっち……!」
 キラがラクスを物陰に連れて行こうとする。しかし。
「危ないっ!」
 ミーアが咄嗟にラクスを突き飛ばす。そして、ミーアの身体を弾丸が突き抜けた。
「ミーアっ!!」
 アスランと駆け付けたヒルダたちは、潜んでいたスナイパーたちを一掃する。
 そして、ラクスに抱かれるミーアの元にアスランは駆けつける。
「ミーアさん!ミーアさん!」
4224/04/15(月)17:08:55No.1178636344+
 ミーアは鞄から、一枚の写真を取り出しラクスに手渡す。
「明るい、優しいお顔ですわ。これが貴方?」
 ミーアはゆっくりと頷く。
「もっと、ちゃんとお会いしたかった……みんな……」
「わたし……わたしの歌、命……どうか、忘れないで……」
 そう言うと、ミーアは動かなくなった。
「ミーア……ミーア!!」
 キラは、目の前で起きた事に、ただ呆然と立ち尽くすしかなかった。
4324/04/15(月)17:09:37No.1178636495+
 ミーアの遺体はシャトルに積み込まれ、オーブに早急に運び込まれた。
 ラクスは、その間ずっと彼女の側から離れることはなかった。
「俺が最初に認めなきゃ良かったんだ。ラクスの代役なんて……」
 アークエンジェルの艦橋で、キラとアスランは語り合う。
「うん。でも、後にならないと分からないことも多いよ。デュランダル議長の事とか色々……」
「私も悪かったわよ。あの娘の事笑い物にして……」
 キラの隣に居たフレイも、流石に少し落ち込んだ様子で話す。
「俺に謝ってもしょうがないだろう」
 アスランは目を伏せる。
「……ミーアは殆ど何も知らなかった。ただ、みんなの為に歌いたかっただけなんだ……それが、何でこんな……!」
 アスランは、思いっきり柵を叩きつける。
4424/04/15(月)17:09:48No.1178636540+
 しかしそれらの感傷も、ミリアリアが持ってきた知らせの前に吹き飛ばされる。
「あっ、ここに居た! 三人とも、すぐに戻って!」
「どうしたの?」
「大変なのよ、プラントが!!」
「えっ……?」
4524/04/15(月)17:10:05No.1178636593+
「こ、これは……!!」
 アークエンジェルのモニターに映し出されていたのは、完全に崩壊したコロニー数基の映像だった。
「何で……誰がこんな……!?」
『ジブリールだ……』
 官邸に居るカガリが通信で説明が入る。
『月面のダイダロス基地から放たれたらしい』
「ダイダロス!? 月の裏側だろ!? 一体どうやって……」
「ビームを曲げるシステムよ」
 ミリアリアが解説する。
「複数の廃棄コロニーに超大型のゲシュマイディッヒ・パンツァーを搭載して、それを中継点としてビームを屈曲させるの」
「ゲシュマイディッヒ・パンツァーってフォビドゥンのあれよね……あれをコロニーレベルに複数!?」
 その発想と規模の大きさにフレイは驚愕する。
4624/04/15(月)17:10:16No.1178636638+
「とにかく、僕達も何かしないと……」
『……おそらく、その心配はない』
 キラの焦りに、カガリが暗い表情で諭す。
『既にザフトのジュール隊含む複数の部隊と……ミネルバが向かっている』
「ミネルバ!? そんな、こないだまでジブラルタルに……」
 メイリンが驚愕する。
『理由は分からないが、議長の勅命で月に上がる準備をしていたらしい』
「……まるで、彼は今回の事を予期していたみたいね」
 マリューの発言に、アスランとメイリンは顔を強張らせる。
「シン……」
「お姉ちゃん……」
4724/04/15(月)17:10:31No.1178636682+
 それから半日もしないうちに、ダイダロス基地が陥落したという知らせが入る。
 一連の首謀者であるロード・ジブリールは今回の攻撃で死亡。デュランダルにより、ロゴスの討伐完了が宣言された。
「何も……出来なかったな」
「うん……」
 基地のドッグで、キラとアスランは語らう。
「だがこれで一件落着、ではないのだろうな」
「ロゴスもジブリールも確かに酷い奴らだったけど。でも、同時に地球経済に深く食い込んでいた。特に連合主要国は急なロゴス壊滅の余波でグチャグチャだ」
「今思えば、これも議長の計画の内だったんだ……」
「そうだね……そろそろ始まるよ、議長の声明」
 キラとアスランは、アークエンジェルのブリッジに向かう。
4824/04/15(月)17:10:59No.1178636793+
『今私の中にも皆さんと同様の悲しみ、そして怒りが渦巻いています。何故こんなことになってしまったのか。考えても既に意味のないことと知りながら私の心もまた、それを探して彷徨います』

『私達はつい先年にも大きな戦争を経験しました。そしてその時にも誓ったはずでした。こんなことはもう二度と繰り返さないと。にも関わらずユニウスセブンは落ち、努力も虚しくまたも戦端が開かれ、戦火は否応なく拡大して私達はまたも同じ悲しみ、苦しみを得ることとなってしまいました』

『本当にこれはどういうことなのでしょうか。愚かとも言えるこの悲劇の繰り返しは。一つには先にも申し上げたとおり、間違いなく『ロゴス』の存在所以です。敵を創り上げ、恐怖を煽り戦わせてそれを食い物としてきた者達。長い歴史の裏側に蔓延る彼等、死の商人達です。だが我々はようやくそれを滅ぼすことが出来ました。だからこそ今敢えて私は申し上げたい』
4924/04/15(月)17:11:12No.1178636839+
『皆さんにも既にお解りのことでしょう。有史以来、人類の歴史から戦いのなくならぬわけ。常に存在する最大の敵、それはいつになっても克服できない我等自身の無知と欲望なのです!』

『地を離れて宇宙を駈け、その肉体の能力、様々な秘密までをも手に入れた今でも人は未だに人を解らず、自分を知らず、明日が見えないその不安。同等に、いやより多くより豊にと飽くなき欲望に限りなく伸ばされる手。それが今の私達であり、ロゴスのような存在を生み出してきたのです。争いの種、問題は全てそこにある!』

『だがそれももう終わりにする時が来ました。終わりに出来る時が。我々は最早その全てを克服する方法を得たのです。恐れることはありません。全ての答えは皆が自信の中に既に持っている! それによって人を知り、自分を知り、明日を知る』
5024/04/15(月)17:11:25No.1178636869+
『これこそが繰り返される悲劇を止める唯一の方法です。私は人類存亡を賭けた最後の防衛策として……』

『『デスティニー・プラン』の導入実行を、今ここに宣言いたします!』

〈続く〉
5124/04/15(月)17:12:03No.1178637027そうだねx2
なにこれ?
長いだけでなにもおもしろくない
5224/04/15(月)17:14:59No.1178637738+
どうもお疲れ様ですキラフレ「」です
とうとうここまで来れました
恐らく次回のメサイア攻防戦で運命は完結です
予定としてはその次にショートエピソードみたいなのをやった後自由編に入ります
こんな駄文ですがどうせなら最後までお付き合いいただけると幸いです
5324/04/15(月)17:19:02No.1178638753+
あ、何時ものまとめです
先週言った通り渋に投げました
次回からはこっちのリンク貼ります
https://www.pixiv.net/novel/series/11861256
5424/04/15(月)17:21:30No.1178639385そうだねx3
フレイがラクスを大切に思ってて信頼してるからこそ偽物を笑いものに出来るってのが実にSEED
5524/04/15(月)17:48:05No.1178646229+
やっぱり議長の演説好き
5624/04/15(月)17:53:00No.1178647634+
>フレイがラクスを大切に思ってて信頼してるからこそ偽物を笑いものに出来るってのが実にSEED
正直フレイが笑いものにするシーンは入れるか結構悩みました
ただキラ達はミーアの事よく思ってないのは確実なのでまあ大丈夫だろうと判断しました
この辺は原作だと多分意図的に描かれてないんですよね
視聴者はアスランと同じ視点で見てて『健気で可愛らしいミーア』を知ってるから、そこ描くと嫌な奴に見えちゃうって理由で
その点素直なフレイはそう言うのズバズバ言ってくれて助かります
5724/04/15(月)17:54:52No.1178648189+
>キラが到着すると、赤いMSが孤軍奮闘していた。
ここ正しくは「朱い」…なのかな…?
>キラは咄嗟にライフルを腰にマウントしようとするが、レールガンが使えなくなることに気付く。
>(ああマジか、くそっ!)
ここでダメだった
5824/04/15(月)17:57:27No.1178648957+
アスラン曇らせが何気に強化されてない?
5924/04/15(月)17:58:56No.1178649407そうだねx3
キラとアスランが幼少期を過ごした思い出の場所がミーアの死と言う辛い記憶で上書きされるのよく考えると酷いな!
6024/04/15(月)18:05:54No.1178651487+
>ここでダメだった
さしたる問題はない
6124/04/15(月)18:06:00No.1178651518+
>>キラは咄嗟にライフルを腰にマウントしようとするが、レールガンが使えなくなることに気付く。
>>(ああマジか、くそっ!)
>ここでダメだった
ストフリの欠陥仕様による曲芸大好き
6224/04/15(月)18:13:09No.1178653677+
良い読み物をありがとう
6324/04/15(月)18:17:22No.1178654975+
>あ、何時ものまとめです
>先週言った通り渋に投げました
>次回からはこっちのリンク貼ります
>https://www.pixiv.net/novel/series/11861256
以前言っていたここ以外で投稿するってやつか
ありがとう
6424/04/15(月)18:19:30No.1178655683+
>こんな駄文ですがどうせなら最後までお付き合いいただけると幸いです
いや再構成二次創作としてはかなりのだし色々な媒体の小ネタ拾っていて面白いと思うよ


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