二次元裏@ふたば

画像ファイル名:1711111520341.jpg-(355816 B)
355816 B24/03/22(金)21:45:20No.1170282466そうだねx1 22:52頃消えます
こんばんは、そしておはよう
用事が丁度済んだ村雨令音だ
発注の仕事とか初めてしたよ…
グダったり原作から外れるだろうしGM権限を発動するかもしれないけれど許して貰おう

そんなわけで夜と朝の運勢
dice3d13=12 11 5 (28)
このスレは古いので、もうすぐ消えます。
124/03/22(金)21:49:07No.1170284260+
少女:........
少女は無言のまま、手にした本の紙面に視線を這わせていた
そして瞬く間にそこに記された文字を読解し、数秒と待たずにページを捲る
今手にしているのは、歴史資料集という書物、この世界が構成されるに至った履歴を、大まかにだが纏めたものである
真人という青年の部屋にあったそれは、所有者が読み終えた為に御役御免と化しかけていた物だ
学習を目的に編纂された代物であるらしく、平易な文章で記されているため理解がしやすい
先ほど読破した小説という本は、本来ならば一言で済む事柄をわざわざ難解な言い回しで以て表現していたため、その意図を探るのに少々時間がかかってしまった
けれど、それが人心の機微というものなのだろう…少女は軽く目を細めながら、鼓膜を襲わせる音声の変化を感じ取った
これは真人だけでなく真士の部屋にもあった
どうやら兄弟で貸し借りしあって読んでいた物のようだ
今少女の周囲には、テレビやラジオ、カセットプレイヤーといった電子機器が幾つも並べられ、それぞれが思い思いの音声を響かせている
報道、ドラマ、音楽、アニメ
様々な形態を持った音が、幾重にも折り重なりながら少女の脳に染み渡っていく
224/03/22(金)21:52:17No.1170285641+
少女:……ふう
どれくらいそうしていただろうか
少女は最後の本をパタンと閉じると、小さく息を吐いた
少女:なるほど…言語体系はおおよそ把握できたよ
辺りをガヤガヤと騒がせていたテレビやラジオの電源を切り、そう言う
すると、少女の対面に座っていた真士と真人、そして真那は、唖然とした様子で少女を見てきた
少女:……?どうしたの?
真士:いや、どうしたの?っていうか
真那:つい昨日まで「あ……」とか「うぅ……」とかしか話せなかった子が、いきなりそんな流暢に喋り始めやがったら、驚きもするってもんです
真人:学習能力というか、記憶力と読解力が半端じゃないね…
324/03/22(金)21:56:15No.1170287307+
真士達はそう言うと、顔に汗を垂らしながら訝しげに眉をひそめた
少女:文字と音声の情報が十分量あれば、それらの共通要素から言語体系を類推することは可能だよ?もちろん、推測を多分に含むから…細部が異なっていることは否定できないけれど
真那:いや、聞く限り完璧でいやがります
真士:うん…何なら真那より正しい日本語使えてるんじゃないか?
真人:真士…そういうのは良くないよ
真士:う…ごめん
真士の失言を真人が咎めていると真士の背後から凄まじいプレッシャーが感じられる
真那:兄様はこれからしばらく「あ……」とか「うぅ……」とかしか言えなくなりやがるので、少なくとも兄様よりは上になりますね
真那がにこやかな笑みを作りながら竹刀袋に手をかけ…真人が慌ててそれを止める
真人:真那も直ぐに暴力に訴えない…それを握るのは誰かを傷付ける為じゃない筈だよ?
真那:う、申し訳ねーです…
真那はしゅんと俯き、反省する
その様子を見て真人は頭を撫でて今度は気を付けてね?とお願いし、真那は頷く
424/03/22(金)21:58:48No.1170288445+
と…そこで真那が、何かを思い出したように視線を向けてくる
真那:───そうだ…言葉が通じるようになったところで聞きてーんですが
少女:…?なに?
真那:あなたは一体何者でいやがるんです?あなたの力は明らかに普通じゃねーです…兄様が言うには、あなたはあの大爆発の跡地にいたらしいですが、あれはあなたの仕業でいやがるんですか?
真那が、視線を鋭くしながら問う
とはいえそれも無理からぬことである、テレビのニュースから流れてくるのは、昨日関東を襲った大災害のことばかり
その現場にいた者が目の前にいるとなれば、気にするなという方が無理な話だ
しかし…少女はしばしの逡巡ののち、頭を横に振った
少女:……ごめん、わからない
素直に、そう答える
実際のところ、自分にも何が何だかわからない
一体自分が何者なのか、なぜあんなところにいたのかがさっぱりなのだ
524/03/22(金)21:58:49No.1170288450+
来たか…
624/03/22(金)22:00:06No.1170288954+
結末が決まってるとは言えもうつらい
724/03/22(金)22:01:44No.1170289676そうだねx1
真那:ふむ……嘘を言っている感じはしねーですね
真士:じゃあ、わかることだけでも教えてくれないか?その、なんだ、君のことが知りたいんだ
真士が優しく問いかける
真人は少し離れ、メモ帳を用意すると澪が話すのを待ち
なぜか真那がそんな2人を横目で見て、や
れやれと肩をすくめた
少女:わかること……
少女は記憶を浚うように目を伏せると、頭の中に浮かぶ断片的な光景を、先ほど覚えたばかりの言話に当てはめて表現し始めた
少女:覚えてるのは……一面の地平、そこに……三人の人間がいた、若い男が二人と、少女が一人…あのときは何を言っているのかわからなかったけど───多分あれは、英語と呼ばれる言語だったと思う
真士:三人の人間……?
真那:一面の地平......もし爆発と関係があるとすると、もしかしてユーラシア大空災のことですか?いや、でも、もしそうなら人がいるはずは……
少女:わからない…集める、生み出す……創り出す?それに類する言葉を発していた気がする、あとは……つ────」
少女は軽い頭痛を覚えて、額に手を置き
真士が心配そうに顔を覗き込んでくる
824/03/22(金)22:06:29No.1170291820そうだねx2
真士:だ、大丈夫か?無理しないでくれ
少女:大丈夫。少し、痛みを感じただけ
少女が言うと、真士は安堵したようにほうと息を吐いた
真人:ちょっと薬探してくるね、多分あそこにあった筈…
そう言って頭痛薬が無いか棚を確認しに行き
そんな様子を見てか、真那がくしゃくしゃと頭をかく
真那:ま……思い出せないものは仕方ねーですね…その辺は追々ってことにしときましょう
そして前髪をかき上げるようにしながら、真那は少女に無い視線を向けてきた
真那:────さて、言葉が通じたついでに、私のあなたに対する率直な感想をお伝えしておきます
少女:感想…?
真那:ええ、正直なところ…胡臭すぎです、警察に連絡して、保護してもらうのが一番だと思っていやがります
924/03/22(金)22:10:14No.1170293474+
真人:真那…………
少年が、真那に困ったような顔を向ける
真那ははあと大きなため息を吐きながら言葉を続けた
真那:……とはいえ正確には、思っていやがった、です…何もないところから衣服を揃えてみたり、知らない言語をすぐに習得してみたり……どう考えても普通の人間じゃねーです…もし適当に放り出したりしたら、それこそ研究機関でモルモット、なんて可能性もありやがります…さすがにそれはぞっとしやがります
そう言って真那が、ま…と肩をすくめる
真那:とりあえず今のところは、様子見ってことでいいんじゃねーですかね。幸か不幸か父様も母様も今いねーですし、部屋も余ってやがりますしね
真那が腕組みしながらそう言うと、真士の顔がパアッと明るくなった
1024/03/22(金)22:10:56No.1170293819そうだねx1
何だかんだ兄妹みんな甘いところはそっくりなのいいよね…
1124/03/22(金)22:11:58No.1170294275+
両親の安否は分からないままなんだよね
1224/03/22(金)22:12:03No.1170294319+
ここで手放しておけばあるいは未来の悲劇は無くなってたのかもしれないけど…そんなこと分からんからな…
1324/03/22(金)22:13:45No.1170295118+
少女:……
数瞬置いて、少女も耳にした情報を理解する
正確に言うならば、言葉の意味はすぐにわかったのだけれど、彼らがそれをどういった意図で発しているのかを理解するのに、少しだけ時間を要してしまった
どうやら彼らは、自分をこの場に置いてくれるつもりらしい
真人:あったよー頭痛薬…ってあれ?
少女:なぜ……私を?
真那:ええ……それ聞いちまいます?そこは流れでオッケーなとこじゃねーですかね?その調子じゃあ、どうせ行くとこなんてないんでしょう?
少女:それは、そうだけれど
真那:じゃ、いいじゃねーですか。あなた……ええと
と、そこで真那が、困ったように頬をかいた
真那:そういえば、名前を知らねーですね…ありやがるんですか?名前
1424/03/22(金)22:17:08No.1170296623+
少女:名前……
名前…名称の事物を区別するための記号、そういえば、自分にはそういったものが存在していなかった
少女が無言でいると、真那が「ですよねー」と言うように肩をすくめる
真那:困りましたね。いつまでも「あなた」と呼ぶわけにもいかねーですし…何か────
真士:────澪

真那の言葉の途中で、少年がそんな声を発した。
真那:え?
少女:………?
真那と少女が、目を丸くして少年の方を見る、少年はそんな反応をされるとは思っていなかったのか、少し気まずそうに頬をかいた
真士:や、おかしかったか?良い名前かと思ったんだが…
真人:うん、可愛いと思う
真那:いえ、おかしくはねーですよ…むしろ、兄様の若干外れたネーミングセンスからは考えられないくらい良い名前だと思います
真士:ええ……
1524/03/22(金)22:20:06No.1170297845+
微笑ましいな
1624/03/22(金)22:22:46No.1170299048+
運命をただ辿る事しか出来ない…何も変えられない…
1724/03/22(金)22:23:16No.1170299286そうだねx1
真那の端な言葉に、真士が汗を垂らす
しかし真那は気にすることなくあとを続けた
真那:────何か由来でもあるんですか?漫画のヒロインの名前とか、脳内恋心につけてた名前とか、脳内恋人につけてた名前とかだったら、心からドン引きしやがりますけども
真士:いやいや、さすがにそんなことしないって…ただ、ほら…出会った日が三〇日だったろ?だから、ミオ......なんて
真那:……う、うーん……?
真那が複雑そうに眉根を寄せる
何だろうか、あまりに安直過ぎはするものの、名前自体は悪くないため否定しづらいというような表情だった
真士:ま、まあ、とはいっても本人に聞いてみないとな…なあ、どうだ?
真人:というか言葉だけじゃわからないよね…ちょっと待ってて…
メモに真士からどんな名前なのかを再度聞いてから漢字を書き…澪に見せる
真人:はい、これが君の名前だよ
少女:え────?
1824/03/22(金)22:24:18No.1170299735+
名前は大事なんだよね
1924/03/22(金)22:28:45No.1170301749そうだねx1
真人に文字を見せられて、少女は目を丸くした
そこでようやく、真士が自分の名を決めてくれたのだということを実感したのである
真那:まあ、対外的なこともありますから、もしここで過ごすなら、私たちの親戚って掘いにしといた方が面倒はなさそうですね。なんで、フルネームは『崇宮澪』ってとこじゃねーですかね
澪:崇宮、澪……
澪は、その言葉を────自分の名を、唇から零した
文字にして僅か三文字
発音にして僅か六文字
たったそれだけの文字列
けれど、なぜだろうか…その言葉を喉から発したとき、少女は胸の裡にじわりと暖かいものが広がっていくような感覚を覚えた
そしてそれと同時に────頬を何かが伝うような感触も
真士:わっ!
真那:え……っ!?
真士と真那が、驚いたような顔をする
真人だけは…少しだけ心配そうな顔をしていた
2024/03/22(金)22:34:03No.1170304072そうだねx1
自分達は何か取り返しのつかないものに足を踏み入れてしまったのではないか
だけれども…それから逃げようとは思えなかった
澪:……?
そして澪は首を傾げたが、すぐその理由に気づく
自分の目から、ぽたぽたと体液が溢れていたのである
先ほど習得した言語にて表現するのならば、それは、涙と呼ばれる液体だった
澪:あれ……おかしいな…なんでだろう、こんな………
澪は余分な体液の流出を防ごうと手で目元を押さえたが、涙は止めどなく溢れていった
澪:う、あ、ああ
そしてそれに合わせて、心臓がきゅうと引き絞られるような感覚が彼女を襲い、その身体を前方に届ませた
2124/03/22(金)22:40:41No.1170307052+
真那:兄様、兄々様
真士:……ああ
真人:うん
すると、それを見た真那達は小さく微笑みあったかと思うと、少女の両脇に腰掛け…その背を優しく撫でた
真人はハンカチを持って来ると澪に差し出し…頬を垂れる涙を拭き取る
その心地よい感触を背中に感じながら、少女────崇宮澪は、しばしの間、泣いた
2224/03/22(金)22:41:24No.1170307368+
兄妹が増えた日だ
2324/03/22(金)22:42:45No.1170308115+
今日は此処まで
また明日続きをやる予定だ
2424/03/22(金)22:44:03No.1170308745+
こんなに暖かいものだったのに…どうして…
2524/03/22(金)22:45:24No.1170309420+
それを許すほどアイクは優しい存在じゃなかった…それだけなんだ…


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