ズドドドドドド、とでも形容すればいいのだろうか。そんな足音が接近してきているのを察した
静かに走ることが許されている、というのに……この騒々しい足音には覚えがある
引き出しから取り出しかけたナッツを仕舞って、大きくため息をつく。そして、訪れるであろう来訪者を待ち構えた

「………ソングラインちゃああああああああああああああああああん！！！！！！！！！！！！！！！！」

スパァン！！と扉が開け放たれて。彼女はそこに立っていた
誰よりも、うん、誰よりも見慣れているであろうその姿。間違えるはずなどない
だからこそこうしてスッと立ち上がって、落ち着いて手を手刀の形にして

「商店街にいきま
「うるさいぞメイケイエール！！！！！！！！！！」
「みーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー！！！！！！！！！！！！！！！？？？」

その脳天にチョップをお見舞いできるのだから

●

「コロッケ？」

チョップを受けて蹲っているメイケイエールの言葉を、そのまま聞き返す
我ながらいい一撃だった。ちょっと手が痛いけど

「はい！！！！！！！！この前商店街のコロッケを食べてみたんですが、それがすっごく美味しかったんです！！！！！！！！！おやつがてら行きませんか！！！！！？？」

またなんとも予想外の方向できたものだ
てっきりまたカラオケか何かかと思っていたけど。今日のテーマは『食』か
しかし、そうなると

「ソダシちゃんたちは誘わなかったのか？」

そう、メイケイエールには仲のいい同室の、あの真っ白な友人もいる
そっちも誘っててもよさそうなものだが。トレーニングでもあるのか

「部屋でＤＶＤを漁ってたので」
「ああ、そういう………」

要するに逃げてきたと。スンッとプレーンな状態になった彼女で一瞬で悟った
あの子、いい子なんだけど時折Ｂ級……いやＺ級映画をみんなで視聴する会を開催する悪癖がある
前回は私も巻き込まれて大変な事になった。なんだっけ……『ゾンビシャークＶＳメカアナコンダ』だっけか。あの時間は本当に酷かった。流石に少人数ではきついと思って巻き込んだタイムにも散々恨み言を言われたものだ

「というわけで、おやつに行きましょう！！！！！！！！！」

ふむ、と少し思案する
今のところ多少お腹もすいてるし、体重関係で制限もかけたりはしていない
商店街だったら遠くもないし、悪い選択ではなさそうだ

「わかった。ちょっと準備するから待っててくれ」
「了解です！！！！！！！！！！！！！！！」

それにしてもコロッケか。久しく食べてなかった気もする
あれって自作しようとすると意外と手間がかかるし、買って食べるのは全然ありなんだよね。なにより腹持ちもいいし

「タイムにお土産も買ってこよう。そっちはどうする？」
「ソダシちゃんに買ってきます！！！！！！！！！！！！」
「よし、じゃあ財布と鍵と………」

そうして身支度を整えて、出発準備完了
こうして、突然の襲撃者……もとい騒がしい来客によって唐突に予定が決まってしまったけど
それも悪くない。ということで、私達は寮を後にした

●

学園から少し来たところにある商店街は、我々ウマ娘にとっては縁の深い場所だ
ちょっとした買い物なら少し足を延ばして大型ショッピングモールに行かずとも揃ってしまうし、店舗の揃いも悪くないから見てるだけでも結構目を引かれるものがる
商店街のシャッター街化が騒がれる昨今、ここは本当に珍しいことに賑わいを保ったままだ
トレセン学園の存在もあるんだろうけど、様々努力しているんだろう。頭が上がらない

「お、先輩方が好きなたい焼き屋だ。セール中らしいな」

あの、本来は別チームで独特の語尾の某先輩一押しの店だ。何度か食べたけど確かに美味しい
カリカリに焼かれた尻尾がまた美味しいんだよね、あれ

「白玉入りのが好きですね！！！！！！！！！！！！！！！！！！もちもちの手作り白玉が最高です！！！！！！！！！！」
「まあ、今回は目的が別だから今度にしよう。そうだ、先輩方の分もコロッケ買っていくか？」
「いいですね！！！！！！！！！！」

ここでお腹いっぱいにしてたら後が大変だしね
ちなみに個人的にはこしあんが好き……と、この話題は戦争になりかねないから注意っと

「っと、あそこ閉まってたのに新しい店になったのか」
「たこ焼き屋さんですね！！！！！！！！！！ソースの匂いで小腹が空いてきました！！！！！！！！！」

グルルルルルルルルルル、と猛獣の唸り声のような音

「いや、その音は小腹ってレベルじゃないだろ………もうすぐなんだろ？今日は我慢だ。今度みんなでまた来よう」

ウマ娘は総じて燃費が悪い子が多い。その、私も結構、まぁ、多少は？食べる方なんだけど
メイケイエールも例外ではなく、なかなかの健啖家なのは前から知ってる。前にプレハブ小屋で焼きそば祭りになった時も凄い食べてたしな………お腹が風船みたいになってたし
……鼓みたいにポンポンしたら怒られたっけ

「あ、あそこです！！！！！！！！！！」
「あのお総菜屋さんか。確かに、もういい匂いがしてきた」

見た感じ、規模も小さめでいかにも町のお総菜屋さんって感じの店だけど
揚げ物を今も作っているのかじゅわあといい音が聞こえてくる。それに、この特有の臭い……あ、駄目だ。お腹鳴りそう
これじゃメイケイエールを笑えないじゃないかもう

「すみません！！！！！！！！！！！！！コロッケ３つください！！！！！！！！！！！！！！！！」
「あ、私もコロッケを３つで。それとは別に、持ち帰りで２０個おねがいできますか」

……お土産除いて３つくらいなら大丈夫だよね？メイケイエールに釣られて、つい頼んじゃったけど

「あいよー、たくさんありがとうね。今丁度揚げてるから、揚げたてを出してあげるよ。ちょっと待ちな」

あ、本当だ。今揚げてるのコロッケだったんだ。丁度良かった
他のメニューを見て見ると、メンチカツやちくわ天、串カツなんかもある。これも美味しそうだな……
あ、白米のパックもあるんだ。コロッケ丼にしても……それは流石に食べ過ぎか。自制自制

「お嬢ちゃん達、トレセン学園のウマ娘だろ？あ、そっちの元気な子はこの間も来てくれたね」
「はい！！！！！！！！！！！！！！！美味しかったのでさっそくまた来ました！！！！！！！！！！！！！！！！！！！」
「嬉しいねぇ。ほい、揚がったよ」

そう言って、店員さんは油をよく切ったコロッケを紙袋に詰めてくれる。あ、もうお腹が………

「サービスでメンチカツ一個入れておくね」
「え、でも………」
「いいのさ、今後もごひいきにって事で。あと、レース頑張ってねってことさ。食べ盛りなんだから」

なんか申し訳ないけど……そう言われてしまうと、断るのも逆にアレな気がする
そうとあれば、素直に受け取っておくべきか。ちょっと食べ過ぎな気もするけど、明日のトレーニングで消費すれば……うん

「ありがとうございます」
「ありがとうございます！！！！！！！！！！！！！！！！」
「どういたしまして。ほい、熱いから気を付けてね」

お金を払って、袋を受け取る。これは確かに熱々だ

「ソースは小袋の入れてあるからね。またおいで」
「ありがとうございます。ごちそうさまです」
「ありがとうございます！！！！！！！！！！！ソングラインちゃん、向こうのベンチで食べましょう！！！！！！！！！！！」

揚げたてのコロッケよりほくほく顔のメイケイエールに誘われて、少し歩いたところにある共用ベンチに腰掛ける
まずさっそく一個。熱々のコロッケだ、火傷しないように気を付けて、と
ペーパーで挟んで小袋に入ったソースをかけて……一気にガブッといきたいところだけど、まず火傷しないように少し
サクッという衣の割れる音が、口の中に響いた

「あっ、あふ………！！」
「熱いです！！！！！！！！！！！！！！！」

二人してほふほふ。いやこれは仕方ない、だって正真正銘の揚げたてなんだもん
でも、これは………

「………美味しい」

適度な厚さの衣の下に、ほっくほくのジャガイモ。それが甘いのなんの
え？じゃがいもってこんなに甘いものだっけ？そう思ってしまうほどに味が濃いコロッケだった
そしてその甘味がしっかりしたソースに負けていない。むしろソースがその甘味をより引き立たせてて……
なんだこれ。コロッケってこんなに単品で満足できる食べ物だっけか
熱くて火傷しそうなのも忘れて齧りついてしまう。あ、これヤバい。３個じゃ足りなかったかも

「はふ！！！！！！！！はふ！！！！！！！！！！！！おいしいです！！！！！！！！！！！！！！！」
「うん、これは本当に美味しい………こんな満足感のあるコロッケ、久々に食べたかも」

サク、サク、サク。食べる手は止まらない
これは、メイケイエールが慌てて誘ってきたのも納得だ。いくらだって食べられてしまう
２個食べたところで、ふとおまけのメンチカツの存在を思い出した。これにもソースをちょっとかけて………
ザクッと音がした瞬間、それが爆発した

「〜〜〜〜〜〜〜〜！！！！！！！」

じゅわぁ！と弾けた肉汁に言葉を失う
旨味の洪水だ。弾け飛ぶようにして溢れてきたその脂、大ぶりに刻んで入れられたタマネギの甘味。肉のしっかりした食感は、噛めば噛むほどその味を引き出してくる
そこに衣のザクザクした香ばしさ………嗚呼
今更になって「白米も買っておけばよかったかも」なんて考えが出る程度には、本当に美味しいメンチカツだった

「おいひいれふね！！！！！！！！！！！！！！」
「うん、本当に美味しい……こんなお店、ここにあったんだ」

商店街は頻繁に買い出しとかで来てたけど、まだまだ知らない場所があるものだ。少なくともこの店舗はもうリピート確定だろう
最後のコロッケに口をつける。変わらずホクホクで甘いジャガイモの食感に思わず満面の笑みに
商店街に来るたびに買っちゃいそうだ。………体重には気を付けないと

「ふう………ごちそうさまでした」
「ごちそうさまでした！！！！！！！！！！！！！！！！！！！」

二人揃って完食。ああ、美味しかった
………もう１個２個買ってもいいかな。なんて邪念が沸くけど我慢我慢。流石に食べ過ぎだって

「メイケイエール、連れてきてくれてありがとうな。本当に美味しいコロッケだったよ」
「どういたしまして、です！！！！！！！！！私もまた食べられてうれしかったです！！！！！！！！！！！」
「これは早くみんなに食べさせてあげたいな。プレハブに立ち寄ってみるか？」
「そうですね！！！！！！！！！！！！温かいうちに帰りましょう！！！！！！！！！！！！！！」

後で温めるにしても、せめて衣サクサクのうちに食べてほしいからね
二人してベンチを立ち、紙袋を抱えて帰路に就く

「………にしても安かったな」

そう。あそこのコロッケ、明らかに他所より安かった
これだけ買っても全然お財布に痛くないし、むしろ安すぎて心配になるレベルと言うか。経営的に大丈夫なんだろうか
とはいえ、手軽にお腹を満たせる美味しいコロッケがこんな場所で見つけられたのは幸運という他ない
これからもありがたく贔屓にさせてもらおう。今度はここで白米も買ってコロッケ丼にして食べてみたいし

「地味にちくわ天も気になってるんだよな………」
「私は天むすが気になります！！！！！！！！！！！！！次はコロッケと一緒に買ってみます！！！！！！！！！！」

二人でコロッケを抱えながら話しつつ歩く

「結構冷えてたけど、コロッケのおかげで随分温まったな。ここ最近少しずつ暖かくなってきてるってのもあるけど」
「そうですね！！！！！！！！！！！！！この間もやりましたけど、そろそろまたお花見の時期でしょうか！！！！！！！！！！」
「河津桜はもう満開過ぎたからな。ここから本格的なシーズンだろ」

少し前にプレハブ小屋の面々で行った少し気の早いお花見を思い出す
あれは楽しかった。トレーナーさんも参加できた久々のイベントだったし、随分盛り上がったものだ
新しい子たちも含めたお祭り騒ぎ。歓迎する側になったのは初めてだったけど、うまく歓迎式できただろうか
まぁ、きっと次のお花見も楽しいものになるだろう。そう思えるくらいには、あの空間は私達にとって居心地がいいものなのは……間違いないから

「そうだ。次のお花見の時期が決まったら、あの店でお惣菜買って行かないか？前回はかなり先輩方が用意してくれてたし、今度は私達もってことで」
「そうしましょう！！！！！！！！！！！！唐揚げとメンチカツと串カツも買っていきましょう！！！！！！！！！！！！！」
「あ、揚げ物ばかりになるな……そのあたりは検討しようか」

気が早い、というのは私達のチームのお家芸だ。嬉しい事、めでたい事についてなら尚更に
少しくらい気が早い方が楽しみも増す。チームに入ってから今まで、そう教えてもらってきたのだか

「……一応言っておくが、帰り道に食べちゃうなよ？みんなへのお土産が足りなくなるぞ」
「　大丈夫です！！！！！！！！！！！！！！！！！」
「ワンテンポ遅れたのはなんだ？」

一応夕飯前なわけだし、ね？

「さて、帰ろうか」
「帰りましょう！！！！！！！！！！！！！！！！！」

日が傾かないうちに急ごう
今日のお楽しみを少しでも早く、みんなに届けてあげたいから

「走りますか！！！！！！！！！！！！」
「お、おい！！！！こけるなよメイケイエール！！！！せっかくのコロッケ台無しにするなよ！？」

さあ、帰ろう。帰って、いつものあの場所へ
笑顔とやさしさと騒々しさが満ちた、私達の居どころへ

「次の電車に間に合わせますよおおおおおおおおおおおおおおおおお！！！！！！！！！！」
「落ちつけメイケイエール！！！」

親友のトンチキな発言から始まった休日は、なんとも美味しい一日になって
そのお裾分けのために、私達は騒がしく帰路についたのだった

以上。コロッケ美味しかったので酒飲んでメイソンした

「」弟復活したのか…

腹が
減った

また酒飲んでる…

エールちゃんいっぱい食べて高松宮記念頑張ってね

ソングちゃんスワーヴリチャードつけたんだ

美味しそうなんだけど三つは胃もたれしそう
歳かな…

>ソングちゃんスワーヴリチャードつけたんだ
早く子供が見たい…

一足早く子作りしたのか…俺以外の男と

ｷﾀ━━━━━━(ﾟ∀ﾟ)━━━━━━ !!!!!

>No.1164553595
お手描きありがとうございます！！

>No.1164553595
おちちも揺れてる……

>エールちゃんいっぱい食べて大外追込聖剣抜刀で高松宮記念頑張ってね

>>エールちゃんいっぱい食べて大外追込聖剣抜刀で高松宮記念頑張ってね
これマジでやられたら一生忘れられない自信がある

エールちゃんもうラストランなんだなあ

悔いのないように全力を見せてほしいね

>>>エールちゃんいっぱい食べて大外追込聖剣抜刀で高松宮記念頑張ってね
>これマジでやられたら一生忘れられない自信がある
ラストランで急に追い込みに覚醒するか!?するかもな…

名剣エール…

エールちゃんだしなぁ…