キョロキョロとあたりを見渡して、そんな事をしなくても耳で全部わかってしまうのに、弾む心臓をどうにか落ち着かせながら財布を開く。
お札、レシート、小銭、そしてカード類。
クレジットカード、ポイントカード、ポイントカード……ああ、これが例の風俗の……それに……これは？
一番下、きっとあまり使っていないであろう子綺麗なポイントカードの下、正方形の金属じみた包装。
私にだってわかる、保険で教わる、そうでなくてもみんな雑誌や動画で見たこともある、これは——
「なんで……コンドームなんか、はいって……」
少しばかりの悪事とちょっぴりの興奮に弾んでいた胸が、急激に締め付けられたかのように苦しくなる。
こんなところに入っているという事は、きっと日常的に使っているということ。それこそ風俗の、かもしれない。

例えそうであっても私には何も関係がない、大人であればそういう事もあるのだろう、そうわかっているのに。
「どうして私、泣いて……」
やだ、止まってよ。ぽろぽろと溢れ出した涙が、拭いても拭いても止まってくれない。
言葉にできなかった、したくなかった想いが急速にその形をはっきりさせ、その端から崩れていく。
そう、そうだったの。私は、あなたが。
「好き、だったの……」
口に出してそれが過去形になっている事に気づいた瞬間、嗚咽が漏れてしまう。
ごめんなさい、ごめんなさい、大丈夫、すぐいつもの私に、いつもの関係に戻るから。だから。
「っ、うう……ふっ、う……うううう……わああああ」
今だけは、少し、泣かせて……

予定の時刻をだいぶ過ぎて、もうすっかりあたりも暗くなった頃、彼が部屋へと入ってくる。
「ん、来てたのか。ごめんな相手できなくて」
別にいいの、あなたにだって仕事はあるし、私が急に来ただけなのだから。
「はい。財布、忘れてたでしょ」
なるべく顔を見ないように、握り締め続けていた財布を渡す。じゃあ、これで帰るから——
「どうして泣いてるんだ？」
泣いてなんて、ない。もう涙はとっくに枯れてるし、いつもの私、そのはずだしそうじゃないといけない。
「別になんでもない。あなたには関係ない」
「担当が、ベガがそんな顔してて放って置けるわけないだろ！」
……っ、なんで、ほっといて、踏み込まないで、好きにさせないで……！
「もしかして財布の中身、見たのか？」
「あなたがどんな私生活でも……私には関係ない」

そう、だからこの話はこれで終わり。釈明なんていらない、だって必要ない。
「今から話すことがセクハラだと思うなら後で他の教職員に言ってくれても構わない。その風俗の方も行ったことがなければ、避妊具も使った事はないよ。それでも信用できなければ、担当を降りてもいい」
ばか、ばか、ばかばかばか！
「ふざけないでよ！あなたは、あなただから一緒にやって来たのに降りるだなんて！」
思わず縋り付いてしまう、あなたが居なくなったら、私は闇夜に何を導に走ればいいの。
「勝手に覗いた私が悪いの……ごめんなさい」
「すまなかった、風俗の案内は捨てるよ。同僚からもらってしまい込んだままだった。それと避妊具の方だけど……あれはなんというか、お守りというか……」

「使う当てがあるんじゃないの？」
「まさか！ただ万が一の時に男のマナーとして持っておかないと……言葉にし難いんだけど……」
急にしどろもどろになった彼の様子に、思わず笑ってしまう。さっきまで泣いていたのに、我ながら酷く情緒不安定だと思う。
「万が一、ね……」
気に入らない。万が一にでも私以外に彼に好意を抱く人がいて欲しくない。彼の寵愛を受ける人がいて欲しくない。
「それ、私が貰ってもいい？」
「え、ああ、使う当てでも……ごめん、そういうのは聞くものじゃないな」
「いえ、当てなんてないわ。でもそうすれば、もし万が一使う当てが来たとして、私からあなたに渡せるでしょ？」
「ベガ……それは……」
ええ、そう、わかったの。
「私、あなたが好きみたい」

むちウマからヒントレベルを得ました

はーっはっはっは！
掛かりすぎじゃないかいアヤベさん！

いい…

やっぱり覇王世代は…

まだ爛れてないよ！？

アヤベさんかわいいね

圧が強い子ばっかりじゃなくてもいい

キャバクラを風俗店と言ってしまう重さよ

アヤベさんとそうなった時のためにって言うんだよ！

セクハラだよ！

重いよぉ…

>まだ爛れてないよ！？
これから爛れる！！！！

「今すぐ答えが欲しい、とは言わない。でも、いつかあなたに使いたい相手と思わせる努力はする」
私は何をいっているのだろう。彼もすっかり口を開けてぽかんとしている。
「それと、できれば今後もこういう施設には行かないで欲しい。まだ恋人でもなんでもないからこれは私のお願い」
「あ、ああ、わかった。うん、それも君に渡すよ。本当に使いたい相手が出来たら好きに使うといい」
「あなた以外に使う気はないわ」
それこそ、本当に生涯を共にする覚悟が有れば逆に使わないのかしら。まだそこまでは、想像できない。
「君くらいの年頃に酷なのはわかっているけど、少なくとも卒業まで、ないしは成人するまで答えを返すことはできない。ごめん」
ええ、わかってる。でもそこまで言ってくれるって事は、もう答えだと思ってもいい……そうよね？
お互いに、酷い呪いをかけてしまったと思う。でも、誰も見ていないこんな時に、これくらいなら、きっと。
「ん……ファーストキスって、ドキドキするのね」

何となく購買でコンドームを買ってとりあえず指でイジってみてる所をトレーナーに目撃されるアヤベさんだって？

徐々に挑発するように隙を見せるアヤベさん…

これ貰ったブツ、アヤベさん持ち歩かないで閉まっとくよね

多分卒業までに消費されると思う

オペラオー世代は凄いな…

>オペラオー世代は凄いな…
はーっはっはっはっは！
関係ないよね！？

持ち歩かない事でいざという時に生ぴょいを狙うんだ...