ウマ娘トレーナー達の朝は早い 早起きをして自主的な朝練を行うような娘を含めまだ大半のウマ娘が夢見る時間にベッドの同居人の動く感覚で目を覚ます。 ゆっくりと眼を開くと向こうもまだ完全覚醒一歩手前という様子の理事長代理…理子の姿が視界に入り、「……おはようございます。」と挨拶をされ、こちらもそっと耳元に挨拶を返す。 彼女らしい飾り気の少ないパジャマ姿を堪能しながらのそんなやり取りに軽い幸福感を覚えながらもベッドを出ると部屋の窓を開け、朝の空気を取り込みつつ次は朝食の準備にかかる。 女性の方が身だしなみに時間が必要なのだからと彼女に先に洗面台とシャワーを使用させている間にキッチンに立つと自分用に簡単な朝食と彼女に為に胃の負担になりすぎないヨーグルトを準備してしまう。 そして残りの時間で今日のスケジュールを軽く確認していると「終わりました。」と声をかけられるのを待って今度はこちらが身だしなみを整えるためにシャワールームへと向かう。 手早くシャワーを済ませると今度は洗面台に立ち二つ並んだ歯ブラシの内、自分の物を手に取って歯を磨く。 そんなルーティンを終えてシャワールームを出るとその間に彼女が用意していた紅茶の芳香が部屋を漂っている。 かつて自分が独り身であった時にはインスタントのコーヒーの香りが担っていた筈の部屋を染め上げる馥郁たる目覚ましは気が付けば完全に彼女好みの紅茶が取って代わってしまっているようだ。 「「いただきます。」」と声を揃えて手を合わせ朝食を済ませてしまえば先ほどまでの甘いひと時はいったんお預けしてそれぞれのクローゼットの前に立つとその日一日を共に戦う我々の勝負服とも言うべき衣服で身を包む。 そしてお互いが責任をもって預かるウマ娘達のデータなどが記載された資料を確認し始める。 それはこれからのトレーニングを考えていくうえで欠かせないものであり、日々最新のデータを入力しても尚ウマ娘達に最高の環境を与えるのに随時適切な判断と様子観察をもってして挑まねばならないトレーナーという役職の大切な作業なのである。 お互いの領分であるこの作業の間は一切の言葉もなく、しかしどこか気持ちの良い沈黙と共にたっぷり1時間程データとにらめっこをしつつ前日までの担当ウマ娘の様子から本来決められていた一日のトレーニング予定に簡単な変更を入れておく。 ある程度満足いくまでその作業に没頭したところで部屋に置かれたアラームが出勤の時間を告げるのに合わせて部屋を出るために紙の資料やデータが入力されたパソコンを鞄にまとめてしまうと揃って玄関に向かう。 一歩家の外に出てしまえばウマ娘達の目があるので最後の確認としてお互いに向き合ってそれぞれの衣服を最終チェックする。 担当ウマ娘以外にも多数のウマ娘が在籍する場で模範となるべきトレーナーとしてそういった所にも気は抜けないのだ。 髪、顔、衣服、靴とそれぞれに乱れがないことを告げ合うと何かを期待したようにリップを片手にそっと目を閉じる彼女に行ってきますという言葉と共に唇を落とし、部屋を出る。 そうして部屋の外で朝一番の陽の光を浴びながら彼女がリップを整えて出てくるのを待ち、今日も一日戦う職場へと向かうのであった。 トレーナーのやる気は絶好調をキープしている