ラストスパート145秒。 それが自分が射精できるようになった手淫の秒数だ。 残り一分です。いけそうですか? 難しそうなら、もう少し強くしますので。 耳元で、青鹿毛の少女の声がする。 メトロノームのように正確に刻まれる手淫が、背後から抱きかかえられるように施される。 グラウンドでは、テントウムシのストップウォッチを手にペースを秒単位で管理している側が、風呂場では逆に性器を握られて射精のタイミングを秒単位で管理されている。 機械的な手の動きは物足りなく感じなくもないが、むしろ、真面目で堅物なこの少女と性行為に没頭する一つの機械になっていると思えば愛おしい。 日本では、肩までつかって100秒数えるんだよ、と教えたことがある。 少女は、キョトンとした顔でそれを聞いていた。曰く、ドイツでは入浴自体が頻繁ではなく、専らシャワーで済ます事も多いとのこと。 気候の違いもあって入浴することが多いのは来日してから理解したが、それでも100秒という時間に根拠が見出だせない。 一方、少女がバスタブに入っている時間は5分。これは知っている。 身体が温まり、筋肉の回復効果が期待できる時間だからです。根拠を問われればそう答えるだろう。 釈然としない顔で考え込んでしまった少女の隙を見て、その胸元に潜り込む。 下半分ほど湯につかった豊かな乳房に顔を埋め、色素の薄い先端を口に含む。あと4分20秒ですからね。そう告げられ、頭を優しく撫でられた。 これも堅物の少女に対して半分悪戯のつもりでしていたことだが、驚かれこそすれ、拒絶されることはなかった。 厳格に管理された彼女の世界で、自分の不埒な悪戯が優しく受け止められてしまったのは予想外に嬉しく、また興奮した。 残り3分50秒。あ、と小さく声を上げた。 大人は、100秒で我慢できるからですよね。その回答に、強く吸い上げて答えた。 はい、お時間です。まだ母親のそれと言うには色白で小振りだった先端が赤くなる頃、乳房と頭が強引に引き離された。 赤ちゃんの時間はおしまいですよ。僅かながらの抵抗も虚しく、脇に手を入れられ、あっさりとバスタブから引き揚げられてしまう。 バッファ込み7分。それが自分の身体を洗う時間だ。男の一人暮らしの浴場では二人同時に洗うことはできないので、自然と交代で洗うことになる。 頭を流しますね。自分で洗うはずが、シャワーもシャンプーも後ろで膝立ちする少女の手元にある。 自分で洗っても一向に構わないのだが、厳格な管理がご所望ですので。の一言でこうなっている。 丁寧に爪を手入れされた、柔らかい指が頭皮を走っていく。細かく泡立てながら、左から右へ。この動きは今まで寸分違わず決まっている。 前髪を洗う時は、顔にかからないよう前かがみになり、自ずと少女の胸の柔らかさが背後に広がる。 シャンプーを流し終えると、既に少女の手で泡立てられていたボディーソープが全身に塗りたくられていく。 肩、胸、腰から鼠径部、陰茎、尻の奥まで柔らかい指が撫でていく。 最後に足先の指の間まで丁寧に洗われて、すっかり出来上がった陰茎が少女の眼前に差し出される形になる。 それでも彼女は表情を全く崩さず、シャワーでソープを丁寧に流していった。 陰茎も意に介さず、雁首の裏、皮のまとまった場所まで指で擦られる。 最後に自らの手を洗い、正座の形で背筋を伸ばし、風呂場の防滴時計を一瞥。 終了予定まで、今……150秒です。如何されますか? 完璧な時間管理だと思う。もちろん、空いた時間は有効活用しなければならない。 ――。 その左手に広がった精液を、少女は右手の指で寄り集めた。 徐々に粘性を失っていくそれを注意深く眺め、目測ですが、ほぼ7ml。平均より少し多いのですね。と独り言ちる。 よく分かるな、と聞くと、ケーキ屋の娘ですから、と苦笑いした。 あの柔和な夫婦を精液で汚したような、罰当たりな感情が去来するが、自分の出したものを真面目に分析する少女の顔を見ていると、それもどうでもよく思えた。 では、私の番ですので。射精し終えた倦怠感も構うこと無く、首根っこを掴まれバスタブに放り込まれる。 女性の身嗜みに、男が手出しすべきではない。 尻尾の長さを丁寧にチェックする少女の腰付きを見ながら、自分は就寝時のバッファは何分あったかを思い出そうとした。