俺は裕福な家に生まれた、両親はかなりでかい会社を経営していたらしく生活に不自由したことはなかった。 だが、ある資産家一家との競争の末敗れ一気に没落し、様々な人に裏切られ気が付いたら貧乏暮らしに落ちぶれ地獄を見た。 それで貧乏暮らしから抜け出したくて死ぬほど勉強して中央のトレーナーになったわけだが、まさかだった。 俺が担当することになったウマ娘「サトノダイヤモンド」がまさかあの資産家一家の娘だったとは!! 少し戸惑った、自分の出自を明かして契約を解除しようとも思った、だが復讐しろと神が囁いてるような気がした。 そう復讐だ、彼女―ダイヤにも人に裏切られる気分を味わってもらおう。 人生の絶頂に導き、そしてそのあとで俺の出自と本性を明かすのだ。 くっくっく、どんな顔をするのか今から楽しみだ。 そして人生の目的を得た俺は水を得た魚のごとく仕事に励んだ。 徹夜でトレーニングメニューを考え、仕事を超えてプライベートの面でもサポートは徹底した。 レースには必ず付き添い、結果を出せば共に喜び、辛い時は支え、無茶をしたときは諫めた。 「あの…お兄さんって、呼んでもいいですか?」 と言われたときは笑いが止まらなかった、予想以上の成果だ、まさかここまで信頼関係を築けていたとは。 無論快諾した俺は本心を隠しつつその後もクリスマス、新年を共に過ごしたりダイヤの実家に挨拶に行ったり、長い時を共に過ごした。 そして、URAファイナルズを制したのだ。 このタイミングだと思った、全てを告げるのは今だと。 涙を流しながら俺はダイヤに告げた、後で話があると。 「私も、お兄さんに話したいことが……あるんです」 予想外の返しに驚きつつも快諾した、どうせ俺の話を聞けば言いたいことなど吹き飛ぶだろうと。 そして夜、祝賀パーティーやらなんやら一通り終えた帰り道、話を切り出すために足を止めると並んで歩いていたダイヤも止まった、話をするなら今だと言葉にしなくても通じたのだろう。 さあとうとうこの時が―― 「あの!!!」 え? 「あの……好きです…!!」 頭が真っ白になった、なんて? 「お兄さんのこと、愛してます!」 え、好き?愛してる?俺を、なんで? 「これからも一緒に、いてください」 脳が事態を咀嚼する前に柔らかな感触が俺を包み込んだ、抱きしめられてるのだと少し経って気が付いた。 目線を下に向けるとダイヤが何を求める顔で俺を見ていた、そんなダイヤを見て俺は 「んっ!!……ん……」 気が付いたら唇を奪いそのまま抱き返していた。 なんかもう全部どうでもよくなった俺は唇や体の柔らかい感触を味わいながらずっとこのままでいたいなーとか思ったりした。 途中通行人が来なければ1時間はこのままでいた気がする。 そして翌週 なんとか頭を復旧させた俺は復讐プランを練り直した。 恋人同士になったのだからもう少しダイヤを幸せにしてからでも遅くない。 いやむしろその方が効果的じゃないかと考えを改めたのだ。 そして来月俺達はダイヤの両親の厚意でオフに合わせて旅行に行くことになっている。 そうだ、そこで幸せの絶頂になったところで全部明かしてしまうのだ。 ダイヤの方も何か覚悟を決めた様子で調べ物をしたり親友のキタサンブラックに相談したりいろいろやっているようだ。 まあ全てどうでもいいことだ、俺が真実を告げれば全部吹き飛んでしまうのだから。 ……しかし保健体育の教科書なんて読み込んでた理由だけはちょっと聞いてみたいが、まあいいや。 くっくっく、どんな顔をするのか今から楽しみだ。