日本ダービーでの骨折からおおよそ半年。 予定よりも大幅に早くリハビリが進み、年明けのOPで私は復帰を果たしました。 執事さんにもお医者様にもお墨付きを貰い、次走の高松宮記念を快勝。 レコードも飾り、ようやくメジロの名にふさわしい結果を残すことが出来ました。 ですがやはり半年のブランクは大きく、その後は後輩に後塵を拝してばかり。 夏の特訓を経て、今度はマックイーンのように天皇賞の盾を狙いに行くことになりました。 秋は過ごしやすい時期で、発情期に悩まされることもありません。 私の体調も良好で、脚も痛みはありません。 これなら…… 『スーパークリーク!秋の天皇賞は、スーパークリークが制しました!! 次点はオグリキャップ!魔王の後塵を拝しました!3着はメジロアルダン!』 「負けて、しまいました……」 「お疲れさまでした。アルダンお嬢、さ、ま……」 疲れ果てて控室に戻り、彼が出迎えてくれると思いきや、その顔色はみるみる酷いものになりました。 素早く私の脚を撫でまわす姿を見て、私もようやく事情を察しました。 レースに夢中で、自分では気づかなかったんですね。 「屈腱炎です」 お医者様の診断を聞いても、私の心は穏やかでした。 無論悲しくない、という訳ではないのですが、友人も通った道ですし、我ながら脆い脚にしては頑張った方だと納得もできました。 ただ執事さんはそうではないようで、 「申し訳ございません。私が、私がもっと……」 「いいんですよ。ここまで、よく頑張ったと思います」 「では……」 「引退、ですね」 マックイーン程ではないけれど、高松宮のレコードはおばあ様も認めてくれました。 また頑張ればいいところまでは行けるかもしれないけれど、もう疲れてしまったのだと思います。 私はもう、これ以上輝けない。 「……分かりました。手配します。本当に、」 「本気ですよ」 意を汲み取ってくれたのか、彼はそれ以上何も言いませんでした。 それからはあっという間で、引退ライブもあまり脚に負担を掛けない形で行われました。 「アルダンー!ダービー最高だったぞー!」 「高松宮おめでとーっ!天皇賞は惜しかったねー!」 「えー焼きそばー、焼きそばはいらんかねー!」 半年の療養を挟んだのに、沢山の人が集まってくれて、 私の歩んだ道は間違いじゃないと言い切れるほどに、華々しい幕引きを飾れました。 「お疲れさまでした。今回も、今までも、本当に」 「ありがとうございます」 その晩、彼と寝室で夜のお茶会です。寝間着の私と相変わらず執事服の彼の組み合わせはちょっとちぐはぐかもしれません。 お菓子はありませんが、思い出話はたくさんあります。 「高松宮はお見事でございました。療養明けにも関わらず……」 「うふふ、あなたのおかげですよ」 「微力ながら役に立てたのなら幸いです」 「そんな、微力だなんて……」 思えば、彼無しに私のレース人生はあり得ませんでした。 体の弱い私の体調管理はさぞ大変だったでしょう。沢山わがままも言いました。 そのどれもに嫌な顔一つせず……あっ (嫌な顔をしたことが、一回だけありましたね……) デビュー前に一回、フケに悩まされたことがありました。 男の人に触れたことがほとんどない私にとって、頼れるのは彼だけで、それで…… (お、思えばこの部屋で……どうして今まで忘れてたんでしょう……) 思い出したら止まらなくなって、みるみる内に体の奥から熱っぽくなりました。 それに応じてか、一つの考えが頭によぎります。 (私も、彼といつか別れるときがくるんだろうか?) 彼は雇われの執事に過ぎなくて、私がいつか結婚して嫁入りしたときに、彼が付いてくるとは限らない。 新しい旦那様が私専用に女のお付きさんを見繕うだろう。そうしたら彼とは…… 「お嬢様……?」 心が冷え込む感覚とはこのようなものを云うのでしょう。 どうしようも無く切なくなって、とにかく人肌が恋しい気持ちになります。 だんだんと頭がぼうっとしてきて、するべきことが克明に頭に浮かびあがります。 はしたないかもしれないけど、嫌われるかもしれなくても、しなくてはどうしようも無くなりました。 「おっと……?」 椅子に座っていた彼をベッドに座らせます。 そうしたらしなだれかかって、ちょっとだけ強めに押し倒しました。 『こう、決めた相手にはグイグイいかないとダメですよ!』 恥ずかしいけど、あの子の言葉を信じて、アルダン、頑張ります…! 「お嬢様、どうかいたし……」 「聞いて、執事さん」 状況の分かっていない執事さんに私の髪がかかって、光を遮ります。 すだれのようなカーテンになって、私たち二人きり。 「今まで、本当にご苦労さまでした。あなたには沢山苦労を掛けたと思います」 「とんでもない、それが私の仕事ですから」 「それでも、貴方は私に沢山尽くしてくれました。どれだけお礼を言っても足りないくらい」 「それが全部お仕事だと分かっていても、私にはどうすることもできないんです」 「お嬢様……」 「主従関係に過ぎないのは分かっていても、全部考えすぎかもしれなくても、貴方無しで私はもう生きていけませんっ……」 彼の胸に顔を埋める。安心する匂いが胸いっぱいに広がる。 「一生、一緒に居てください。どんな形でもいいから、どうか……」 「お嬢様は、メジロの令嬢です」 「…はい」 「他の名家との縁談も沢山舞い込むことでしょう。そうしたら、私は一緒に居られません」 「そう、ですよね……」 「だから」 ころりと体勢がひっくり返って、私が彼に押し倒される形になりました。 「私が、お嬢様をいただきます。それなら、縁談も来ないでしょう」 「……っ、はいっ!」 二人の唇が重なる。二度、三度重なって、舌を絡めあい体液を交わす。 手をつないで、心を通じ合う。今までずっと近くに居たのに、それがとても遠いことのようにすら思えてしまう。 「……ぷぁ」 「これで、クビ確定ですね」 首筋に頬ずりされて、脚を割り入って彼の膝が体を抑える。 「ずっと、お慕いしておりました。……実を結ぶとは夢にも」 「ふふっ、じゃあ夢にならないくらい、深く刻んでくださいね」 了承を取ってから彼の手が胸に触れる。布越しにも豊かに形を変え、つつけば波打つ極上の果実である。 肩ひもを外して、直接それを吟味される。背ばかり見ていた彼が今だけは小さな赤子のように見えて、思わず頭を撫でてしまう。 撫でるたびに吸いつきが強くなって、母性がくすぐられる繰り返し。 「あうっ……❤」 舌で乳首を転がされて軽く達してしまった。肌と肌のふれあいとはこんなに快いものだったのかと、今更ながら納得する。 体を起こした彼が少し遠ざかったかと思うと、そのままワンピースのすそに顔を突っ込んでしまった。 「きゃっ、な、何を!?」 スカート部の中でもぞもぞと下着を捲って、直に温かいぬめりが触れる。舐めるような、というか実際に秘部を舐められていることに気づいた。 「き、汚いですから止めてください……!あっ、だめっ……」 手で頭を抑えても舌の動きは止まらず、ひだから、少し出っ張ったところ、そして割れ目の間にまで侵入してきてしまう。 くすぐったいような気持ちがいいような、脳裏を直接舐められているような知らない感覚に大きく乱されてしまい、 数分すると、すっかりふやけきった女陰と、出来上がって無防備なお嬢様が、大の字になってくたりと寝転がっていた。 ワンピースのすそをまくり上げ、重たくなった下着を放り捨てる。 ガチガチに勃起した一物を取り出し、彼女にまじまじと見せつけた。 その迫力に思わず息を呑む。 (こんな物が…あの時……!?) びくりと脈打ち、黒々と聳え立つそれは彼女が見たことのない類のグロテスクさを湛えている。 しかし不思議と嫌悪感は無く、むしろあれがハマっていた時の感触を思い出し期待に胸が膨らんでしまう。 ぺちぺちと下腹部に打ち付け、臍のすぐ下、ここまで届くぞと暗に示す。 待ちきれずに腰が上がって、衝撃に備えてシーツに手がかかる。 広い腰ががっしり掴まれて、熱の塊が入り口をこじ開けた。 剥き出しの肉杭が一息に彼女を貫く。それにぴったりと膣が纏わりついて侵略者を歓迎した。 (来たぁっ……これ、知ってるっ……❤) 数年ぶりの再会に肉が歓びで打ち震える。あのころよりも痛みも少ない気がして、それもなんだか嬉しくて、 最初から遠慮のない抽挿が子宮を打ち据え、溢れる蜜が泡立ちみちりと下品な音を立てた。 抜き身のカリ首が柔肉に食い込み、自分の種を植える土壌をせっせと耕す。 一突きする度に抵抗感や羞恥心を丁寧に削ぎ落として、剥き出しの雌を露わにする。 何も取り繕わない生のぶつかり合いが、秘めたる魅力を開花させ、彼女を真の意味で女にするのだ。 蕩け切った唇から甘露を吸い出しながら何度も、何度も必死に腰を打ち付ける。 城門はとっくに陥落して、ゆりかごと化した玉座に収まるべき者を待っているというのに、ごりごりと残骸まですり潰すように執拗な攻めに思わずうめくような嬌声がこぼれる。 そんな攻めにも限界は来る。 もっともっと彼女を貪りたいのに、こみあげる濃汁がそれを許さず、催促するように堰を突く。 「お嬢様、そろそろ……っ」 歯を食いしばって最後のスパートを掛けんとしたとき、彼女の指が唇に触れた。 思わず腰を止めて、熱に潤んだ瞳に縫い留められる。 「あ、る、だ、ん、❤」 「っ!アルダンっ!アルダンっ、出すぞっ!!」 「はいっ❤全部っ♥受け止めっ、ますからっ♥」 病弱な体を欠片も労わらない乱暴な杭打ちも、痣が出来るほど強く握りしめられた腕も構わない。 ある者は愛する人に自身を刻み付けるために、ある者は愛する人の全てを受け入れるために、 「アルダンっ、アルダンっ!」 「はいっ、大好き、大好きですぅっ♥」 ぶくりと大きく穂先が膨れて、そのまま爆ぜるように熱の奔流を吐き出した。 それは瞬く間に胎いっぱいに広がって、余波の熱は脳髄までも蹂躙する。 小さい頃から見守ってきた主人を組み敷いて、自分の種を植え付けている征服感が股間を搾り最後の一滴まで残さず彼女の中に吐き出す。 大きな絶頂に意識を手放さないようになんとかこらえ切り、ぐったりと果てた彼女の下腹部が小さく盛り上がる。 濃厚な一回戦は終わりを告げた。けれども、惚けた彼女の蠱惑的な表情や、重力に負けて潰れた果実には、なんともそそるものがあり…… 「お嬢様、申し訳ございません。今夜は……」 「えぇ、心ゆくまで……❤」 夜が明けて、染みだらけのシーツに沈み込む男女二人を朝焼けが照らす。 先に目が覚めたのは、一晩かけてお腹いっぱい詰め込まれたお嬢様の方だった。 「あぁ、このままだと風邪を引いてしまいますね……」 足元で丸められた布団をなんとか引っ張り上げ、彼と共にもぐりこむ。 分厚い布地がシーツから沸き立つ匂いや、彼の香りを閉じ込めて、むせかえるような聖域を作り上げた。 文字通り精魂尽き果て、穏やかに眠る彼の髪を撫でて眠りにつく。 「ふふっ……」 その前にふと思い立って、彼の耳元に唇を寄せる。 「病めるときも、健やかなるときも、愛し、敬い、慈しんでくれたのは、いつもあなただったんですよ……❤」 言い終えた途端に恥ずかしくなって、小さく悲鳴を上げながら彼の腕にもぐりこんだ。 ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~ 夢を見ていた。 目の前には、自分そっくりな、それでいてハッキリと自分ではない何者かが立っている。 彼女はゆっくりと近づいてきて、私を抱きしめた。 『おめでとう』 「……ありがとう、ございます」 互いに抱きしめ合って、溶けていく。 溶け合って、一つになる。 二人は一つになって、温かい底に染みこんでいった。 ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~ 「お嬢様、本国からのお手紙でございます」 「あら、マックイーンのところの……随分大きくなって……」 「……どうして金べらを振り回してるのでしょうか」 「元気があるのは良いことですね♪」 彼女たちは現在、海を越えて中国に居を構えていた。 …… 『アルダン。近々中国でもウマ娘のレースが盛んになるでしょう。あなたにはそこでメジロの名を広めてもらいたいのです』 おばあ様からの突飛な呼びかけを彼女はあっさりと承諾した。 住み慣れた故郷を離れて、言葉の通じぬ異国の地に不安はあったはずだ。 「でも、私には一心同体の旦那さ、執事さんがいますから」 なんて茶化したように応えていたが、恐らく本気でそう思っていたのだろう。 執事はというと急ピッチで日常範囲の中国語を習得。主人について同じく母国を後にしたのだった。 …… 「妈妈,我回来了!」 「あっ、うーちゃん!欢迎回家!(おかえりなさい!)」 「无敌,去洗手。 有饼干给你吃。(手を洗ってきなさい。今日のおやつはクッキーだよ)」 そして当然というか何というか、この主従は一人のウマ娘を設けた。 今は幼稚園に通っており、ゆくゆくは中国におけるトレセンに相当する学校に進学させる予定である。 中国生まれ中国育ちということで母語が中国語になったため、母親は意思の疎通に苦労しているようだ。 それでも愛情は伝わっているのか、話の通じる父親よりも母親に懐く始末である。 名前を『无敌(ウーディ)』 無敵の意味を冠する、将来のスターウマ娘である。 「あっ、そうだ執事さん」 「なんでしょうかお嬢様」 椅子から立ち上がり、彼の耳元で囁く。 「…今夜は、アルダンって呼んでくれませんか……❤」 「……仰せのままに」 ……あるいは、もっと殖えるかもしれない。 「あっ❤やだっ、また、イっ……❤」 「んー……また大きくなった?」 「はっ…、はい❤そろそろサイズが無くて……」 「オーダーメイド下着の店に心当たりがある。今度そこへ行ってみようか」 「はっ…❤ああんっ❤」 自身を押しつぶしながらたっぷりと注がれる種汁を、尻を震わせて一滴残らずお腹で飲み干す。 じわじわと広がって、剛直を引き抜かれてもなお熱で煮え立つ胎を撫でさすりながら何となくこう思う。 (また、ウマ娘ですね……❤) 新たな種が芽吹くまではそう長くない。