「ええっ…ううん、わかった！マヤがこの短冊を吊るしてきてあげるね！」
へこへこと拝みながらお願いする老婆を見て断りきれず、マヤノトップガンは短冊をポケットにしまい込んだ。
「ありがとう、ありがとう…そんで、申し訳ないんじゃけど、どうか短冊は折り畳んだまんまで吊るしてくれんかのお…？」
「えっ？うん、いいけど…。」
老婆は何度も何度も頭を下げながらその場を後にした。手を振りながら見送るマヤノトップガンは、老婆が見えなくなると肩を落とした。
「む〜っ…結局またここ昇んなきゃじゃん…いーや、明日で！…あっ、もうこんな時間じゃん！早く学園に帰ろーっと！」
マヤノトップガンはそのままトレセン学園まで駆け出して行った。

次の日、放課後のトレーニングも終わり日も暮れかけたころ、更衣室でマヤノトップガンが着替えをしていた。ハーフパンツを脱いだとき、ポケットから湿った折りたたまれた紙がポロリと落ちた。
「ん？これって…あっ！あのおばあちゃんの…！」
完全に存在を忘れていたそれを手に取る。よく見ると汗が染みて紙に書かれた文字が少し透けていた。
「…そういえばこれって何が書いてあるんだろ？うーん…閉じたまんま吊るしてって言ってたし見られたくないのかなぁ…？でも…ちょっとくらい…いいよね。ちゃんと吊るすときは閉じたまんまにするし…。」
好奇心に負け、短冊を開く。

『短冊を吊るしてくれた子と○×◆△が仲良く遊んでくれますように』

途中難しい漢字で書かれた箇所があったものの、内容だけを見れば恐らく孫と『短冊を吊るしてくれた子』─マヤノトップガンが仲良く遊んでほしい、というようなお願いだろうと容易に推測で来た。余りにも平凡なお願い事で、肩透かしをくらったような気分になる。

「なあんだ…でも、これってなんて読むんだろ？こんな難しい名前なんて珍しいなぁ…。そーだ！トレーナーちゃんなら何か知ってるかも！」
本当のところは最近付き合いの悪いトレーナーとおしゃべりする口実だったが、トレーナー室へ向かう足取りは軽かった。
「ねーねートレーナーちゃん！これって何て読むのー！？」
「うん？マヤがわかんないことがあるなんて珍しいな…ってかさっさと帰れよ、七夕デートは無しだぞ。」
「ぶーっ…あんまり釣れない事言ってたらマヤどっか行っちゃうよ？」
少しだけ怒ったように言って見せると、トレーナーからの反応がない。いつもであれば何かしらの返事はあるはずなのだが。
「…トレーナーちゃん？じょーだんだよ？本気にしないでね…？」
「…マヤ。これ、どうしたんだ。」
短冊を見るトレーナーが、いつもと違う真面目な声色で聞き返す。よく見れば、トレーナーの顔から血の気が引いているようにも見えた。

「えっ…？昨日トレーニングしてるときに、おばあちゃんに頼まれて…あっ、そう！その短冊を神社に吊るしに行かなきゃ！」
「待て！行くな！！」
びくっ、と身体中が跳ねる。トレーナーが声を荒げることなど滅多にないことだった。
「と、トレーナーちゃん…？」
「…ごめん。でも、今日はその神社に行くな。それと…一人で帰らないようにしてくれ。誰でもいいから一緒に帰ること。絶対に一人で帰っちゃダメだ。いいな？」
「う、うん…分かった…」
有無を言わせぬトレーナーの圧力に負け、その日はトウカイテイオーと共に寮に帰宅した。老婆との約束を守れなかったことで少しだけ心が痛んだものの、それよりもトレーナーの真剣な表情の方が気になったままよく眠れなかった。

次の日、マヤノトップガンは放課後すぐにトレーナー室に向かった。当然、昨日の件について話してもらうためだった。
「トレーナーちゃーん…うえっ！？どうしたの！？」
トレーナーは身体中にあざを作り、湿布塗れで机に向かっていた。マヤノトップガンの姿を認めたトレーナーはぎょっとする。

「あっ、これは…」
「トレーナーちゃん、それってもしかして昨日の短冊が関係してる？」
トレーナーの動きが僅かに止まる。少しして、息をついた。
「相変わらず勘がいいな…うーん、あんまり話したくないんだけど…」
「だめ！トレーナーちゃんがそんなことになってるのにマヤに内緒なんて…マヤ怒るよ！？」
トレーナーが頭をぽりぽりと掻くと、少しずつ話始めた。

「…マヤ、昨日の短冊で、読めない所があったって言ってたな？」
「うん、あれってなんだったの？」
「あー、俺も正しい読み方は知らんがあれがどういうものかは分かる。マヤ、”戒名”って知ってるか？」
「…？ ううん、知らない…。」
「あの名前はな、お寺の坊主さんが死んだ人につけてあげる名前なんだよ。」
「えっ…？」
「あの短冊には、『吊るした人と死んだ人が仲良く遊ぶように』…つまり、吊るした人が死ぬようにって内容だったんだ。」
マヤノトップガンは、自分の背筋に凍るような感触が這い上がるのをはっきりと感じた。
「あの後気になって神社に行ったんだ…そしたら、案の定ばあさんが居てな。マヤが来てないって分かった途端に鎌を振り回してきたんだ。しょうがねーから俺もすぐ逃げたんだが…正直、マヤがあのまま神社に言ってたらと思うとぞっとするよ」

それから、マヤノトップガンはしばらく神社の周辺には近づかないようにした。もしあの日、トレーナーに相談せず神社に向かっていたら…そう考えるたびに寒気が止まらなかった。

人が一番怖い

孫かな…

コワ〜……

トレーナーもよく無事ですんだな…

背筋が冷えるわ…

ほっといたまま帰るなよ…

こわ〜

冥婚みたいなことしようとしやがって…ウチの娘に手は出させないからな

なんか新鮮だなウマでほん怖してるの…

やること為すこと怖くてもう警察に任せるしかない…
鎌ってお前…

さらっと勝ってるトレーナーもなんなの…？

寺生まれのT(トレーナー)なんだろう

パパ助けて！

マジホラーやめて！

マヤが怯えきって一人で過ごす時間が減りそう

>マヤが怯えきって一人で過ごす時間が減りそう
まだ狙ってないとも限らないから一人で行動されちゃ困る
本当に困る

鎌振り回されて痣って転んだのかよほど鈍らだったのか

>鎌振り回されて痣って転んだのかよほど鈍らだったのか
多分石段を転げ落ちるようにして逃げたとかそんなん

鎌振り回してきたババア相手にしょうがねーから逃げたで済ませるトレーナー頼もしいな…

下手すりゃ死んでたな……婆さん

>冥婚みたいなことしようとしやがって…ウチの娘に手は出させないからな
パパノトップガンのレス

パパに知られていたら…
あの神社はクレーターに代わっていただろうな

ばあさん捕まえて無い方が怖くね？

>鎌振り回してきたババア相手にしょうがねーから逃げたで済ませるトレーナー頼もしいな…
やっぱり中央のトレーナーって人外じみてない？

>ばあさん捕まえて無い方が怖くね？
とはいえ殺しに来ている人間を捕まえられるかと言われればうーん

婆がマヤ殺そうと待ち構えてたのが肝冷えるわ

>ばあさん捕まえて無い方が怖くね？
警察に任せてほっとくでしょ
関わりたくない

パパが上空で戦闘機ホバリングしてるから大丈夫だろう

婆は怪異でもなんでもないのか…じゃあ本来どうするつもりだったんだ
というかウマ娘に婆が立ち向かえるのか...？

神社の治安悪すぎる
何とかしろフクキタル

よし行けフクトレ

破ァーーーーーッ！！！！

>というかウマ娘に婆が立ち向かえるのか...？
だから幼そうなマヤに声掛けたんじゃない？
実際不意をつかれたらやばいかも知らん

>婆は怪異でもなんでもないのか…じゃあ本来どうするつもりだったんだ
>というかウマ娘に婆が立ち向かえるのか...？
ウマ娘だと知らなかったとか…？

>マヤが怯えきって一人で過ごす時間が減りそう
トレーナーとより親密に！

>というかウマ娘に婆が立ち向かえるのか...？
狂人に理屈があるわけ無いだろ

刃物持った奴に追われるのは
マヤ程のウマ娘ともなれば慣れっこである

これこそ学園からのお知らせ案件なのでは？
下手すりゃ他に被害者出るぞ

ホッとしたのは呪い的な死ではなく
物理的に殺しにきたところかな…物理的になんとかできる

いやまぁウマ娘とか関係なしにいきなり襲ってきたらビビって動けなくなったりしそうだけど

一周回って恐怖よりババアの対して純粋に怒りが湧いてきた…
でも流石に刃物相手に一対一はキツいから逃げるね

下手したらトレーナーの方が死んでたなこれ…

多分短冊渡された子はほぼ無条件で抵抗出来ずに殺されるとかなんだろうな…

マヤが怯える方でよかった
逆上するタイプだったら危なかった

実際冥婚は地域の者じゃなく旅人とか学者とかを使ってたりしたのも多いとか

>実際冥婚は地域の者じゃなく旅人とか学者とかを使ってたりしたのも多いとか
なぜ学者？研究に訪れた？

マヤトレーナーはハリウッドの人かもしれない

悪霊や狂人からの防御もトレーナーの仕事

昔は旅してる人間を殺しても後腐れなかったからでは
インターネットもSNSも携帯もないし

おの世界のウマ娘はこっちの馬くらい認知されてると思うんだが

マヤトレは素手対素手なら戦ってたんだろうな

>>実際冥婚は地域の者じゃなく旅人とか学者とかを使ってたりしたのも多いとか
>なぜ学者？研究に訪れた？
形だけでも体験してみてっつってやらせて押し付けたりとか

異世界の魂受け継ぐなんてオカルトが存在するんだから呪いみたいなのもあるんだろう多分

もし別のウマ娘が行った場合は…ゴルシなら普通に帰ってきそうだな
その代わりホラー空間ではなくギャグ時空に改変されそうだが

グラスになんとかしてもらおう

いくら身体能力では圧倒的だとしても鎌持って殺しにくるってなると…ね

普通のオカルト案件なら
フクキタルとゴルシとマーベラスあたりを送り込めばなんとかなる

ババアが一方的に見初めてあの世に送ろうとしてるのが許せんな…
とは言え尋常な手段で逮捕出来る存在なんだろうか

カフェでも良いかも知れない

>もし別のウマ娘が行った場合は…ゴルシなら普通に帰ってきそうだな
>その代わりホラー空間ではなくギャグ時空に改変されそうだが
笹の代わりに去年のクリスマスツリーのてっぺんとかに飾ってきそう
そんで普通にガキと遊んで解散して後日特徴伝えたら婆さんが何やら満足しそう

今んとこはまだ怪異が出てきてないのが救いか

>ババアが一方的に見初めてあの世に送ろうとしてるのが許せんな…
>とは言え尋常な手段で逮捕出来る存在なんだろうか
所詮ヒト老婆だし...

なんかやってたらばあさんを位牌にせねばならない

老婆ごときが最強種であるウマ娘を鎌を持った程度でどうにかできると思い上がるなよ

ターボババァVSツインターボは見てみたい

なんにせよ危うく命の危険があった訳だしパパに謝罪と報告しないとね…

鎌老婆ならウマ娘は怖くないけど
足払い老婆や膝カックン老婆だったら危ない

鎌じゃなくてショットガンだったら戦えるかもしれん

ハウディ…

取り敢えずウマ娘5人くらいで行ったら大丈夫だったかもしれん

これわりと重要なネタバレになっちゃうんだけど
マヤノがピンチの時にはパパノトップガンが横から飛び出してくる世界の法則になってんだよ

この後しばらく恐怖心が消えないマヤがトレーナーちゃんと一緒に寝る展開はどこですか

何バリキあろうが腹に刺されば危ないし首切られたら死ぬからな…刃物は怖い…

トレーナーちゃんも危ないことするのやめて
ちゃんとトレセン学園に処理を任せてね