彼女をスカウトしたのは、その距離バ場を問わない万能な走りに惹かれて、だった。
なにしろ彼女は、多種多様な距離の選抜レースに、芝ダート問わず多数出場登録していたのだ。
そして、どこを走ってもある程度の成績を残している。物凄い逸材のように思えるのだが、俺がその存在に気がついた時、まだ彼女には担当トレーナーがいなかった。
俺が喜び勇んでスカウトをしに行ったとき、彼女は目を輝かせながら答えた。
「あたし、とにかくたくさんのウマ娘ちゃんと一緒に走りたいんです！　そのために兎に角いろんなレースに出たいんです！」
──成る程。恐らく俺の前に彼女をスカウトしたトレーナーは、「闘争心に難アリ」ということで、契約を渋ったのだろう。
「あたしは推されるより推す側なんです〜」と呟くのを見るに、競争ウマ娘としての自覚も薄い。
そんな些細なことは、どうでもよかったが。

「よし、なら一緒に頑張ろう」
「へ……？　あたしで、いいんですか？」
「ああ。折角だし、出るだけじゃなく勝とうじゃないか！俺が君を最強のオールラウンダーにしてみせる！」
「えっ……ええと……ふへへ……」
照れたように頬をかいた後、彼女は少し陰のある表情で呟く。
「……あたしの目標、あんまり良い言い方されてないのは知ってて……でもそこは譲れないところなので……」
「何を言う、変える必要なんてないじゃないか。素晴らしい目標だと思うぞ」
「…………」
俺の言葉を聞いて、彼女は目を丸くした後にふっと微笑んで、俺の手を取った。
「……そんなこと言ってくれたの、初めてです。よろしくお願いしますね、トレーナーさん」
「ああ、よろしく。アグネスデジタル」
しっかりと握り返す。こうして、俺とデジタルの三年間が始まったのだった。

彼女は、何を言われずとも猛烈にトレーニングを積む努力家だった。ウマ娘への愛から来るストイックさは、目を見張るものがあった。
ウマ娘のトレーニングやレースにおいて、非常に重要とされるモチベーションについても、レースでウマ娘と走れば勝手にグングン上がっていくので、基本的にメンタルケアの必要がないくらいだった。
だが、そんな彼女も落ち込んでいた時期があった。マイルCSを制してさあ強豪ウマ娘の仲間入りだ、と思っていたら、突如スランプに陥ってしまったときのことだ。
安田記念で11着と大敗した日、彼女はロッカールームで暗く沈んだ表情をみせていた。
俺が気を紛らわせようと、色々な話をしていると、彼女はぽつりぽつりと語り始めた。

「あたし、小さい頃から身体が強くなくて。強くてキレイでかわいくて、キラキラ輝いてるウマ娘ちゃんたちは、あたしの憧れで、希望だったんです」
「トレーナーさんのお陰で、あたしも少しは強くなれて、キラキラ出来るようになってきたと思ったんだけどな……」
「……あれ？えへへ、あたし、ウマ娘ちゃんと走れるだけで幸せなのに、なんでこんな弱気なこと……」
「……君は、出会ったときからキラキラしてたよ」
「え……？」
彼女が、俯いていた顔をあげる。俺は素直な気持ちを続けた。
「どんなレースでもいつも楽しそうに走る君は、誰よりも輝いて見えた。俺はその時一目惚れしたんだ」
「ひとっ！？」
デジタルの走りに心底見せられたということを熱く語ると、彼女は感極まったのか顔を真っ赤にし、口元を両手で押さえている。

「だから、デジタルは俺の最推しだ！　どんな時も絶対支え続けるって誓う！」
「トレーナーさん……」
しばらく目を閉じて言葉を噛み締めたデジタルは、次に目を開いたときには、いつもの彼女に戻っていた。
「でゅふふ、落ち込んでなんていられませんねトレーナーさんっ！　次のレースで、推しがあたしを待っている！」
「その調子だぞ、デジタル！」
よし、トレーナーとして担当ウマ娘のメンタルケアに成功したな！と、俺は元気を取り戻したデジタルを見てご満悦だった。

それからのデジタルの躍進は素晴らしかった。地方のG2,G1を連勝し、完全復活を遂げると、その勢いのまま天皇賞(秋)に乗り込んだのだ。
だが、デジタルが登録したことで、クラシック級の期待のウマ娘が出走登録から弾かれてしまい、その事で一部のメディアからバッシングを受けるという出来事があった。
『推しのウマ娘とレースで一緒走りたい等というふざけた理由で、期待のウマ娘の未来を潰した』『戦績を見ればダートのマイラーなのに、そんな目的で伝統ある天皇賞に出走するなど』
俺に対するバッシングもあったが、それはいい。だが、あらゆるレースに対応するために、彼女が誰よりも汗を流し努力を重ねたことを、誰よりも知っている。
抗議しようとした俺を引き留めて、デジタルは真剣な表情で言った。
「トレーナーさん……今回だけはあたし、勝ちたいです。ウマ娘ちゃんたちと一緒に走るだけじゃなくて……勝ちたい」
そうだ。彼女だってこれまでの努力を貶されて悔しいはずだ。
「ああ、勝とう！」
二人で見つめあい、頷きあった。

天皇賞(秋)の最大の敵は、テイエムオペラオー。支配的なレース運びで、並びかけられればけして相手に先頭を譲らない。
ゆえに、レースでの作戦はただひとつ。
並びかけることなく、圧倒的な末脚で差しきることだ。

本番のレース。やはり終始レースを支配していたのはテイエムオペラオーと、それに次ぐ実力者、メイショウドトウだった。
最後の直線、内で競り合う二人は、ただ互いに競い合い高めあうように二人の世界を作り上げている。
大外でもがくデジタルは苦しそうだ。芝2000mの経験がない彼女にとって。この直線は未知の世界だろう。
それでも、君が誰よりも輝きを放ち、誰もに認められる存在になるところが見たい。
必死で末脚を伸ばすデジタル。先頭はオペラオーが抜け出した。前とはまだかなりの距離が空いている。

それでも信じる。俺は……俺の最推しのことを、心から信じている！
「デジタルぅうううーーっ！！俺に向かって走れぇええええーーーーっ！！！」
観客席から乗り出して、喉が枯れるくらいの声で叫んだ。
彼女の朦朧とした目が、はっきりと俺を視界にとらえ……その瞳に、炎が宿るのを見た。
芝を思い切り踏み込んだ彼女。一歩一歩踏みしめるその足が、先頭を行く覇王の背に徐々に近づいていく。
あと5歩。4歩、3歩、2歩──
「ぅ、うあああぁああーーーっ！！！」
咆哮をあげ踏み込んだ身体が、1歩前に出たところが、ゴールだった。

地鳴りのような歓声の上がるレース場を背に、彼女は控え室に戻ってきた。
滝のように汗を流す彼女にタオルを被せ、わしわしと頭を撫でてやる。
「よく頑張った！　最高の走りだったぞ！！」
「あ……あたし、勝てた……」
彼女は、いままで見せたことのない涙を滲ませると、俺の服の裾を握り、トン、と頭を預けてきた。
「あたし……悔しくて……あたしが言われるのはいい、あたしのわがままに付き合ってくれたトレーナーさんが、あんな風に言われるのが許せなくて……」
「そうか……俺は、逆だったな」
「ふふ……それじゃあたしたち、似た者同士ですね」
少し涙で濡れた目でこちらを見上げると、彼女はじっと俺を見つめて問いかけた。
「トレーナーさん……あたしは、トレーナーさんの推しらしくいられましたか？」
「ああ──さすが、俺の最推しだっ！！」
一番、そして最初のファンとして、力強く答えた。
最推しの活躍を最前列で見られる幸せを噛み締めながら。

デジタルは、もう一年走ると、ドリームトロフィーリーグに向かうこともなくあっさりと引退した。
その類稀なる万能性、条件を問わない戦いぶりを称え、『勇者』の異名をとった彼女の早期引退を惜しむ声は多く上がった。かくいう俺もその一人だったが、最後には引き留めることはできなかった。なぜなら──
「でゅふふ、デジたんのサブトレーナー姿、似合ってます？」
「ああ……あんまり新入りの子たちを獲物を狙う目で見るんじゃないぞ、怯える」
「これは失礼……ってヒョエエ〜〜〜！！あっちてプイプイさんとウララちゃんが仲良くランチを！！しゃしゃ写真をばっ！！」
「デジタル、ステイ！」
彼女は、トレーナーとしてウマ娘の育成に携わる道を選んだ。その決断を聞いたとき、俺は同じトレーナーとして、引き留めることはできなかった。
ウマ娘がトレーナーとなる例は、無いわけではないが珍しい。特に、彼女のように実績あるウマ娘に際しては、前例がないほどだ。
とはいえ、ウマ娘をこの上なく愛する彼女にとっては、天国のような環境なのかもしれないが。

「うーん、レースでいつまでもウマ娘ちゃんたちと走るのもよかったんですけどね。こっちの方がウマ娘ちゃんのことを深く広く知れそうですし……うへへへへ」
「犯罪で捕まるのはやめてくれよ？　……とはいえ、デジタルの走りをもっと長く見たかったファンは多いだろうな。もちろん、俺も」
「んー。ファンに応援されるのは楽しかったし、たくさんの喜びをもらえましたけど、やっぱりあたしは、推されるより推す側なんですよ。それに……」
彼女は人差し指を唇に添えて、にっこりと微笑んだ。
「あたしが推し続けて欲しい人は、ただ一人だけですから」
そこまで想ってもらえるファンは幸せだな、と少しだけ嫉妬しながら、俺はデジタルと二人で、希望に満ちた顔で学園の門をくぐるウマ娘たちを眺める。
春真っ盛り。出会いの季節だ。

昼間のデジたん怪文書を見てこれはいいものだと幻覚を広げて書きました
思った三倍ぐらいの分量になってビックリした

ク

なんか湿ってないですか…？

ソ

ボ

>よし、トレーナーとして担当ウマ娘のメンタルケアに成功したな！と、俺は元気を取り戻したデジタルを見てご満悦だった。
クソボケがーっ！

プイプイちゃん入学してる…

なるほどいい感じの距離感パートナーだな…トレデジだとこういう風に収まるのか

>プイプイちゃん入学してる…
ウララが高等部になってる…

最適な距離感ですね…
なんかぬかるんでる気もするけど

海外レース編たりなくない？

これもまた一つの一心同体ですわ！

>そこまで想ってもらえるファンは幸せだな、と少しだけ嫉妬しながら
クソボケがーっ！！！

ク　　　ク
　ソ　ソ
　　ボ
　ケ　ケ
が　　　が
　は　は
　　よ
　抱　抱
け　　　け

クソボケダブルクロス…！

トレデジ良い…

おいサプライズ桑山千雪連れてこい！

デジたんの育成シナリオ先行公開されていたか…

香港Cで完勝したのに別のウマ娘の勝利に話題を持っていかれてウチのデジタルが一番凄かっただろうが！！ってキレ散らかすトレーナーが足りないようだが…

トレーナーが別の担当ウマ娘を褒め始めると普段と振る舞いは変わらないけど妙に身を寄せてくるデジたんいいよね

デジたんが女になってる…

色を知るデジたん
やっぱピンク髪ですわ！

最初の台詞が最後でリフレインしてくるのいいよね…

よし！ちょっと距離感は変わったかもしれないけど推しアイドルとファンの関係だな！

世界で一番かわいい変態

可愛いデジたんは健康に良い

>彼女の朦朧とした目が、はっきりと俺を視界にとらえ……その瞳に、炎が宿るのを見た。
ウマ娘ちゃんの姿を間近で見届けたかったデジたんがトレーナーの為に勝つって目標が転換するの…いいよね…

俺知ってる
こういう子は全てを楽しめる一番ずるいタイプの子だ

苦労するよねー☆

基本的に一緒にいるだけで満足タイプだけど
あんまり他のウマ娘を褒めすぎると最推しはあたしじゃなくなっちゃうんですか…？って逆ぴょいされてしまうかもしれない

キラキラ輝くウマ娘に憧れた子が他のウマ娘の憧れになれたのいいよね…

ふと思ったが入れ替わり薬使って襲うのが一番捗るのってデジたんなんだろうか
合法的にウマ娘ちゃんとうまぴょいできるわけで

>ふと思ったが入れ替わり薬使って襲うのが一番捗るのってデジたんなんだろうか
>合法的にウマ娘ちゃんとうまぴょいできるわけで
ウマ娘ちゃんが嫌がることするわけねぇだろ！？

>>ふと思ったが入れ替わり薬使って襲うのが一番捗るのってデジたんなんだろうか
>>合法的にウマ娘ちゃんとうまぴょいできるわけで
>ウマ娘ちゃんが嫌がることするわけねぇだろ！？
でも中身はトレーナーさんだし…

実際第二のにぶ野郎になりそうな雰囲気はあるよねデジタルトレーナー…

デジたんってああ見えてわりと自己肯定感低そうなのはわかる

デジたんのことを勘違いしてる人たまにいるよね

>合法的にウマ娘ちゃんとうまぴょいできるわけで
あっあたしそういうのじゃないんで…

この時点まで逆ぴょられてないのは適切な距離と言ってもいいと思うわ
引退後なら結ばれても問題ないし

ボディが解釈違いを起こして襲おうとした瞬間に砂になるよ

多分一年もたてば回りからも夫婦みたいだ…と思われ始めてる

ジャスタの推しムーブには性欲皆無だけどデジたんの推しムーブには微妙に性欲混ざってるから誘惑があったら苦悩しそうではある

本当に適切な距離感保ってるの初めて見た

デジたん身体測定の時ウマ娘の裸見て鼻血出してたからな

>本当に適切な距離感保ってるの初めて見た
適切かな…適切かも…

適切な距離感だけど新しい教え子にトレーナーにグイグイ来るタイプの娘がいたらそのまま差し切られそうであたしゃ心配ですよ

私が今一番期待しているウマ娘
早く実装されてほしいですね

>適切な距離感だけど新しい教え子にトレーナーにグイグイ来るタイプの娘がいたらそのまま差し切られそうであたしゃ心配ですよ
ウマ娘ちゃんへの愛と恋愛感情の間で揺れ動いて曇るデジたんは私の性癖にあっていますよ

>「デジタルぅうううーーっ！！俺に向かって走れぇええええーーーーっ！！！」
名台詞すぎる……

デジたんって実は主人公適性あるよね

やはり白井最強…

>デジたんって実は主人公適性あるよね
大半のウマ娘とバトれるバ場適正持ちの勇者だからな…

>デジたんって実は主人公適性あるよね
勇者だよ？

むしろちょっとトレーナーいいかなって思ってもデジたんの存在感がすごすぎてあ…これ無理だ…ってなるやつですね

史実の成績は言わずもがなでスポーツやアイドル作品のロジックとしてもかなり主人公適性あるのは間違いないよデジたん

クラシック期がなんか丸ごとスキップされたけど何があったんだ…

>むしろちょっとトレーナーいいかなって思ってもデジたんの存在感がすごすぎてあ…これ無理だ…ってなるやつですね
ディフェンスタイプの推しはじめて見た…

>クラシック期がなんか丸ごとスキップされたけど何があったんだ…
ウマ娘ちゃんのケツを追っかけてあちこち走ってた

覇王に引導を渡したという点だけでもシナリオ作れるしな…

新しい担当の子にアプローチかけられてるトレーナーに嫉妬してちょっとだけ裾つまんでデジたんを見てください…って呟くデジたんください

基本ふざけてるけどウマ娘ちゃん想いで真面目な場面では有能な仕事ぶりのデジたんサブトレ
だけどそんなサブトレがトレーナーと話すときだけは恋する目になるのは担当ちゃんたちにもバレバレなんだ

シニア安田記念〜秋天の間って地方GⅠあったっけ
未実装？

観客席に向かって走れ！の逸話は実際かっこいい

>基本ふざけてるけどウマ娘ちゃん想いで真面目な場面では有能な仕事ぶりのデジたんサブトレ
>だけどそんなサブトレがトレーナーと話すときだけは恋する目になるのは担当ちゃんたちにもバレバレなんだ
推せる〜〜〜〜！！！！

>シニア安田記念〜秋天の間って地方G�Tあったっけ
>未実装？
南部杯ってのがあるが未実装だね

デジたんは勇者だからな
勇者は自分のためでなく人のために戦うものだからな

デジたんにスキンシップされそうになったらトレーナーさんとのことをからかうと勝手にネチャネチャし初めて逃げられることは有名

>シニア安田記念〜秋天の間って地方GⅠあったっけ
>未実装？
細かいことは気にするな

良い物を見せてもらった……

>デジたんは勇者だからな
>勇者は自分のためでなく人のために戦うものだからな
こう考えるとやっぱりトレーナーに推し宣言されて覚醒するイベントがあるんだろうな…

クソボケ度は低めだったな
そのお陰で助かった

>クソボケ度は低めだったな
>そのお陰で助かった
そうかな…そうかも…

>クソボケ度は低めだったな
そうかな…
>そのお陰で助かった
助かってるかな…

このクソボケいちいち選択が完璧すぎる…