「せいっ!」ドガッ 爪先に力を込め足元の小鬼を蹴り飛ばす。ドガッ、きゅう。もう一体。ドガッ。 「こいつら数ばっかり多いデース。あと小鬼にしてはやけに強くないデスか?」 小鬼にしては、と付け加えずかずかと洞窟を進んでいく。 ここはウマネスト大陸、剣と魔法のファンタジー世界。 魔王と激しいレースを繰り広げたことで有名になったエル、グラスのコンビの下には連日誘いや依頼が届いていた。 今日の依頼は以前蹴った小鬼討伐の依頼。どうやらグラスが一人で出かけたきり戻ってこないようだった。 「小鬼退治程度ならなんとかなると思います。回復師ではありますが、その前にウマ娘なので。」 と一人言い残して出発してしまったらしい。それで帰って来られないのだから意外に抜けたところもあるというものである。 「しかし、この程度ならグラス一人でもなんとかなるはずデス。大物か、それとも罠か」 また一人小鬼を足蹴にしながら進んでいく。仲間がやられたかもしれない洞窟。気を抜くわけにはいかない。 しかし小鬼どもは奥から際限なく沸いてくる。油断すれば持っている棒で顔や脚を狙ってきて鬱陶しいことこの上ない。 「夜な夜なうめき声が聞こえると言っていました。なら死んではいないはずデース」 その噂では亡霊が言っていることになっているのだが、話半分に聞いていたので都合よく捉えていたエルだった。 小鬼を蹴散らし進んでいく。 道中落とし穴やロープトラップがあったが、夜目の利くスキルのおかげでスルーできる。 そうして歩いていると、大きく開けたドーム状の広間に出た。足元には枯草が敷いてあり、粗末な寝床の洋にも見える。 「あれは……!」 その片隅、ぐったりと壁にもたれかかる影。見慣れた緑の衣装は泥で汚れてこそあったが見紛うはずもない。 「グラス!!!」 周囲を警戒。あたりには小鬼すらいない。駆け寄って息があることを確かめる。 「よかった。生きていたんデスね……」 「え……る?」 「はい、世界最強のエルエルデスよ。さぁ早く帰りましょう」 肩を貸して立ち上がる。来た道を戻ろうとしたとき、体側にかかる彼女の体重に違和感があった。 「グラス……その、おなか、」 そっと、手で探る。下腹部からが不自然にぽっこりと膨れていた。弾力は無く、しっかりと皮が張っている。 「……だ、だだ大丈夫デス!村に帰れば対処方があるはずデス!!さぁ!」 底知れぬ恐怖に心が冷え込むのを、出まかせと虚勢で誤魔化す。今は怯えている場合ではない。ないのだ。 「ぐ……!う、うぅ……」 その矢先に、彼女に異変があった。 「グラス!?」 支えられていた肩を振り切り、お腹を押さえてうずくまる。それだけなら腹痛の症状とまだ自分を誤魔化せたかもしれない。 彼女は、その腰を、上げた。 「うううぅぅっ……あああああっ!!!」 「え…あ……うそ……」 捲れあがった形の良い尻に、あるべき装飾品は付けられていなかった。むき出しのそこがむくりと膨れ、丸い何かが顔を出す。 思えば、どうしてまだ大丈夫だと考えたのだろう。 そうだ、触ってみて”その大きさが大したことなかった”からだ。 けど、どうだ。ここは小鬼の住処で。彼女はここに長く居た。 あのお腹になら、”小鬼の子供くらい余裕で入りそう”じゃないか。 「ああああ…ああ…」 「いや……だめ……やめて、グラス……」 丸い何かがひり出てきたかと思えば、急にその形がくびれる。そうしてまた太くなって、二本ぷるんと小さい腕が揺れた 一緒にウマ王を倒した友人から、あの小鬼が生まれてくる。 いや、どころか、今まで無造作に殺してきたアレも…… 「うぅ、おええぇ…」 嫌悪感にむせかえり、目の前の悪夢から目を背ける。 「……足音」 ずしり、と地鳴りと音。間違いない、元凶だ。広間に続く道の一本から、大鬼が自分より一回り大きい姿を現した。 「お前が、」 嫌悪も、絶望も、今は振り切れ。 「お前がぁっ……!」 むくりと起き上がり、全身になんとか力を入れる。 「グラスのぉっ!!!!」 解き放て────── 「天使の雷(エンジェルフォール)!!!!!」 (なん、で……) 不意の一撃。全力を受けたエルは成すすべもなく倒れ伏した。全身が痺れ、指一本動かない。 「だめ……です。だって、その、人は…」 ああ、こんな醜悪な化け物を、貴女は人と呼ぶのか。 「う、裏切り者ぉ……」 力の入らない脚を何かに引きずられる。大鬼が、満身創痍の自分を引きずり寄せている。 (こんな……ところで……) その腰布を解くと、彼女も毒牙に懸けたであろう凶悪な呪物が鎮座していた。 (私も、犯される……) しかし、予想に反して大鬼は彼女を体を起こし、その手で肩をがっしりと捕まえた。 「いづっ……なんの、これしき……、!?」 そうなれば、目の前にそのブツがそそり立つことになる。間近でみるそれは畏怖と恐怖、そして (お、おっき……) 彼女自身も自覚しない恍惚を呼び覚ました。 大鬼は彼女の体を少し起こし、胸部にグロテスクな一物を押し当てる。 「な、何を……」 手で位置を整え、おあつらえ向きに空いたその衣装の穴にゆっくりと竿を埋めていく。 「ばっ……この衣装はそんなことするためのデザインじゃありませーん!!!!」 しかし豊満に育った胸はずぶずぶとそれをうけとめ、竿の半分いかないくらいをすっぽり覆ってしまった。 ゆっくりと腰を前後させ、乳肉を堪能する。カリの出入りするたびに形がたわみ、それがわずかに快楽として伝わる。 「ぐ、ううっ……」 (気持ち悪い……早く終わって……) そうして、随分と長いこと耐えていたような気がする。突如胸の奥に、熱い何かが迸った。 「ケ、熱っつう!?うげ……どろどろ……」 射精の大半を終えても、鈴口からどくどくと溢れるそれの匂いに包まれる。半身はみなぎる熱に覆われ、徐々に憎悪を削いでいく。 (やばい……デース。くらくらする…) やりたいことやって満足したのか、押さえていた体を放り出す。無防備に投げ出された体を敷草がクッションとなって受け止める。 「や、やっと放しま……あれ?」 今さっき外されたはずの肩の拘束が復活している。大鬼は向こうにいて、では誰が? 「エル……」 「グラス!?は、放してください!」 「大丈夫ですよ、怒ってませんから」 「な、何の話……」 いつものような慈愛に満ちた微笑みで 「私の子供、沢山殺したことですよ」 その精神は狂気に満ちていた。 「やっぱり…というか、アレ何匹いたんデスか!?」 「覚えていません。日に……多分4,5度くらいですかね」 グラスが失踪してから2週間が経過していた。つまり 「70匹……!?」 「ええ、すぐに元気に飛び出していくんですよ。かわいいですよね……」 「そんな……ひっ!」 彼女の狂気に満ちた子育てに慄いていると、その脚を再び掴むものがあった。目をやれば復活した一物を携えて大鬼が腰を下ろすところで。 「い、嫌ですグラス!放してください!エルはあんな子供産みたくありません!!」 ふるふると首をふっても、にこやかな微笑みばかりが帰ってくる。 「ひっ……嫌……」 股に十分熱した棒があてがわれる。下半身のスパッツが破り捨てられ、その亀頭が容赦なくエルの純潔を食い尽くした。 「はっ……はぁっ……」 「ふふっ……とっても気持ちよさそう、あなたも、エルも」 「ふ、め、目ん玉腐ってやがるデース……!」 不釣り合いな大きさのそれが内臓を抉り返す。呼吸を整えるのに必死で、快楽など感じる暇もない。 こんな異常事態にあって、一番異質なのがいつも通りの彼女の微笑みである。 「だって、私の時は上も下も分からなかったんです。私の体では、この人を受け止めるには貧相がすぎて……」 そうして自嘲気味に自分の腹を撫でるグラスは、よく知ってる顔の別人にも見える。いったい、この短い間でどこまで堕ちたのか。 責任の一端が自分にあるだけに心が締まる。そうしていると、再びグラスが口を開いた。 「あ、そろそろ出そうですか?いいですよ、エルにもたっぷり注いであげて下さい❤」 「はぁっ……だ、やめ……」 大きく反った腰から剛直が最奥まで打ち込まれ、怪物の遺伝子が無慈悲に格闘家の胎内に浸透していく。 「──────❤❤❤❤❤ぎぃいいいっ❤❤❤❤❤」 歯を食いしばり津波のような快楽に耐えようとする。こんな卑怯な手管で心まで屈したくないという彼女なりの最後の意地。世界最強を志したものの決死の抵抗。それは、 「ふぅっ…」 「はひゃっ……あ、」 文字通り、そよ風一つで吹き飛んでしまう。 「あ、ああああああ❤❤❤❤❤だめだめっ❤❤❤❤❤気持ちいいのとまんない❤❤❤❤❤っ❤くるくるくるっ❤❤来てるうぅぅっ❤❤❤❤❤」 僅かな隙に食い込んで一気に脳内に押し込まれる快楽の渦に彼女の理性が飲まれていく。たっぷりと蓄えられた精液の流れは留まることを知らず、注がれるたびに高潔な精神に消えない染みがこびりつく。 「あ─っ❤❤❤❤あ─っ❤❤❤❤❤」 「ほら、やっぱり気持ちいいでしょう❤」 友人が異形の快楽に飲まれてイクのを満足そうに見る彼女は、まるで我が子に歓びを教える母のようであった。 「あ、そうですね。確か……身体活性化(フォートエンハンス)!」 僅かな魔力を収束させ、強化の魔法を放つ。その対象は、今も逞しい精を注がれ続ける彼女のお腹。 「ふぇ?あ、温か……あっ❤やだっ❤❤たまごでるっ❤❤❤❤❤でちゃうっ❤❤でたっ❤❤❤❤❤だめっ❤❤❤❤❤」 活性化、すなわち身体が元々持つ効果を最大限にする、筋肉なら力の発揮、細胞なら増殖して傷の回復。 そして下腹部、卵巣は、熟した卵子の放出。 訳も分からず力のみなぎるまま、彼女の卵巣はその仕事を果たす。周期から外れた解放に困惑する卵は、すぐに侵入した怪物に許容を超えて遺伝子を詰め込まれる。一つ、二つ、三つ、二桁に届かないくらいの精子を受け止めてふらふらと力尽きるように分裂した胚が根を下ろした。 「やだ❤❤❤❤やだぁ❤❤❤❤おになんてうみたくない❤❤❤❤❤❤」 「大丈夫ですよエル、私が一緒にいますから」 口では抵抗を続けてはいるが、彼女が大鬼を害することはないだろう。お腹の子の父親、愛すべき種主。世界最強は今鬼の花嫁に堕ちたのだ。 彼女も戻らなくなってから、その洞窟は魔王の洞とよばれるようになった。数と力を増す小鬼、それらを統べる大鬼、そしてそれに使える勇者の成れの果て二人。この世界が蹂躙される日も近い。