どうしたスカーレット、そんなに改って。 …はあ、トレーナーポイントカードねえ… 乗り気じゃないって?…スカーレットがどうしてもやりたいなら話は別だけど、どうもなぁ。 そもそもスカーレットは普段から頑張りすぎなくらいだ。そこに更に鞭入れるのは、トレーナーとしてどうかなと… 優等生でいるのはいいけど、俺といる時くらいは、そうじゃなくたっていいんだぞ? それにその、なんだ… そんなカードがなくたって、スカーレットのお願いだったら、俺なんでも聞いちゃいそうだから…意味なさそうだなぁ…なんて…あは。 いや、気持ち悪かったな!忘れてくれ!さ、今日も一日頑張ろうな! …スカーレット?なんか近くない? スカーレット?ちょっと離れて…あっ力強っ…イヤッちょっと…! なんでもとは言ったけどそういうのは段階を踏むべきというかまだ早いというか! あっこの目はやべ…ムグッ!? ン゛ン!?…っぷは!いやっちょっと待って!せめてカーテンを…あっ… ン゛ン゛〜〜〜〜〜ッ!?!?!?? ――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――― 静さを取り戻すと、さっと血の気が引いて冷や汗が背筋を伝う。 いっときの感情に任せてトレーナーを襲うなんて、あってはならない。 あってはならないが、そうなってしまった。覆りようのない事実が目前に横たわっている。 ベッドの上のアタシたちはどちらのものともしれない汗や体液にまみれ、 噛み跡、爪痕、吸い付き痕だらけのトレーナーはぐったりとしたまま意識を手放している。 我ながら容赦のない蹂躙ぶりに頭を抱える。やってしまった。 いや待って。そもそもこの男が悪いんじゃないかしら。 3年にわたって散々アタシの男性観を破壊し尽くし、あまつさえ誇りだ一番だなどと。 アタシのお願いならなんでも聞いちゃいそうなどと。バカなの?アホなの? アタシじゃなくても遅かれ早かれこうなると思うし、なんならアタシはよく我慢した方だと思う。 この男は隙が多すぎる。優しすぎる。誘い受けが過ぎる。 ワザとやってんの!?そんなふうにされてたら好きになるなって方が無理なのよ! ああ、でもこれでアタシたちの関係も終わり。 ウマ娘のパワーに任せて、力づくでトレーナーを蹂躙した事に変わりはない。 逆の立場だったならどれだけ恐ろしいことだろう。 愛するパートナーに突如ねじ伏せられて組み敷かれ、一方的に愛の言葉を囁かれながら、一晩中あんな事やこんな事… …それはそれで興奮するわね…じゃなくて! ああ、とにかくアタシはなんて取り返しのつかないことを…!! 「…その、スカーレット…」 隣から、目が覚めたらしいトレーナーの声が聞こえる。ああ、これが最後通告。 でも受け入れなくちゃ。アタシが築いたものを、アタシが壊しただけなんだから… 「いきなりでびっくりしたけど、君の気持ちはきちんと受け止めないとと思って…  俺も、君のことをその、好きだから。あまり気に病まないで…」 …何言ってんのかしらこいつ。 アタシはアンタをレイプしたのよ!?その上で何!?許すどころか好きだからって!? 自分の身体のこともっと大事にしなさいよ!アタシがバカみたいじゃない! ていうかもっとムードのある時にそういう事言いなさいよ!?…悪いのはアタシか! ああもう訳わかんないわ。怒っていいのか、泣いたらいいのか、喜んでいいのか…! …いや待ってアタシ気づいちゃったんだけど、これセーフって事?双方同意の上ってことよね?えっマジでいいの?! …あっこいつめっちゃ顔赤いじゃない。その反応はダメよ。これ100%誘ってるわよね? いや絶対そうよこれ。もう考えるのも面倒ね。喰うわ。 ---------------- …スカーレット?ホントに俺は気にしてないから… ただ、学生なんだしこういうことはもうやめ…スカーレット?聞いてる? うわっと…ごめんなスカーレット。不安にさせ…ン゛ン゛!? ン゛ン゛ーン゛ッン゛!? …ぶはぁっ!せ、せめて電気を…ッ ン゛ク゛ゥ゛~~~~っ!? ――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――― アタシがトレーナーのことを性的な意味で食い散らかしてから、少し時間が経った。 あんなことをしでかしたにも関わらず、アタシたちはそれまで以上に上手くやっている。 雨降って地固まる、と綺麗に纏めるつもりはないけど、結果としてはそうなった。 アタシたちは互いの気持ちを確かめ合い、パートナーとして一つ上のステップへと進んだ。 でも、相変わらずトレーナーのお人好しぶりには、正直ウンザリしているところがある。 ウマ娘のことばかり考えて、自分のことはほったらかし。 アタシがそれを咎めても、それが俺の仕事だから、と言って笑うだけ。 あまりに度が過ぎるから、今後のためにもちょっと釘を刺してやる必要がありそうね。 ずいっと近寄って壁側に追い込み、逃げ場を絶って詰問する。 アンタまさかとは思うけど、誰にでもあんなに優しくしてるわけじゃないでしょうね! 「スカーレットにしかしないよ。今までもこれからも、スカーレットにだけ。」 「君の気持ちを受け止めるって言ったのは、嘘じゃないから。 最近はその、ずっと君の一番になれるように頑張ろうと思って…」 …こいつ絶対ワザとやってるわよね? 前回なんでアタシに喰われたか理解してたらこんなこと言うわけないと思うんだけど? そもそもここまでしておいてアンタがアタシの一番じゃなかったらなんなのよ。もうちょっと自分のことを理解した方がいいと思うわよ。 ていうかアレかしら。そういう感じで誘っといて、いつアタシが掛かるか試してるの? あーはいはいなるほど?オトナなトレーナーさんはそうやってアタシを手玉にとろうって魂胆なワケね? でもおあいにくさま。そんな見え見えの挑発に乗るほどアタシは あっこいつめっちゃ恥ずかしそうな顔してるじゃない。 カッコつけといてその顔はなんなの?ダメよこれは。カワイイったらありゃしないわ。 アタシのトレーナーがこんなにもカワイイ。これはちょっと他所様に見せらんないヤツよ。 他のウマ娘にめちゃくちゃにされる前にアタシが捕まえておかないといけないわね。 興奮してしてきた…服を脱ぎなさい。ていうかもう面倒だから剥いて喰うわ。 ---------- スカーレット?あの、顔が近いんでもう少し離れてもらえると… ウワーッ!!?どうして服を…スカーレット離して!…スカーレット!? ちょっ…やめ…あっイヤ…あっ…そこは… ン゛ン゛ーーーーーーッ!?? ・・・ またやってしまった。 いくら半分同意の上とはいえ盛りすぎかしら。 とはいえヤっちゃったもんはしょうがないわよね。 正直7割…いや8割5分くらいトレーナーが誘ってくるのが悪いと思うのよ。 喰われたくなかったらあんな物言いしないと思うもの。誘い受けもいいところだわ。 それにほら、キスマークだらけで幸せそうな顔して寝てるし…いや、気絶かしらコレ。 …冷静になると、流石に申し訳なくなってきたわね。 いくらトレーナーの誘い受けが9割悪いとは言っても、アタシが襲ってることに変わりはないわけだし… …あんまり自分本意で嫌われちゃったりしたらどうしよう… トレーナーはアタシのことを一番に考えてくれてるけど、常にそうとは限らないものね… 「…スカーレット…起きてる?」 目を覚ましたらしいトレーナーの声が聞こえる。 「乱暴なのは確かに困るけど、この程度のことでスカーレットを嫌いになったりしないから… でも服を破くのは勘弁…」 はいダメでーす。アンタ本当に発言には気をつけた方がいいわよマジで。 今日はアンタが10割悪いわ。もうアタシ気にしないから覚悟しなさいよ。 -------- 実はトレセン指定のシャツって結構高くて…ウワーッ何!?ちょっ…ムグッ!?…………… …ぶっは!ちょ、ステイ!スカーレットステイ!お願いだから待っ… ああ〜〜〜〜〜っ!?!? ――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――― 流石に反省したわ。アタシは優等生だもの。 いくらアイツが超ド級の誘い受けだったとしても、いくらアイツが隙だらけでも… いかにアイツがカワイかろうと、今日からアタシは負けないわ。 やるべきことは山ほどあるんだから、アイツにばっかりかまけてる暇はないのよ! ------- …耐えた。耐えたわ…偉いわよダイワスカーレット… こんなにアタシ、アイツのやることなすこと気にするタイプだったかしら… ミーティング中なんか、アイツの視線やら声やら顔やら気にしてたらそれどころじゃなかったし… とはいえトレーニングの仕上がりは完璧。これなら次のレースでも1番になれるわ。 …それにしてもやたらと疲れたし、今日はもう上がって… 「スカーレット!ちょっと待って!」 あっ…何よ。今日はもう疲れて 「…なあスカーレット、今日は何か我慢してないか? 雰囲気とかツンケンしちゃって、なんだか初めて会った時みたいだぞ。」 「よくわからないけど、俺と君の仲で何か我慢することなんてないだろ。 俺たち、一心同体のパートナーなんだから…隠し事はナシにしたいよ。」 …はあ〜〜〜〜〜〜っ!???? …人の気も知らないでよくも言ってくれたわね!? アタシもね?アンタの1番であろうと思って日々頑張ってるわけよ。 勉強もレースも1番目指して、かつ1番に相応しいウマ娘になろうと努力してるわけ。 それをこうも容易くぶち壊しにしてくれるじゃない。やっぱり悪いのはアタシじゃなくてコイツだと思うの。 あまりにもひどい。これでアタシにだけ我慢しろってのは酷じゃないかしら。 全身隙だらけ人間なの?まぁ好きだらけなのは間違いないけど…じゃなくて! 何より自覚ないのがいっちばんタチ悪いわ! アンタの迂闊な言動がどれだけアタシの情緒を狂わせてるかって話なのよ。 目の前で兎が跳ねてるのを見逃す狼がいる?いるわけないでしょうがこのおたんこにんじん! 中等部の性欲ナメてるとアンタ本ッ当に死ぬわよ!? ここらで一つ身の程を弁えさせてやらないといけない気がするわ。 いやそうよ。そうに決まってるわ。調子に乗らせるわけにはいかないもの。 上等じゃない。そっちがその気なら望むところよ。 今日という今日は目にもの見せてやるんだから。 ------ ンンー!ンンン゛ーーー!?……………………っぷぁ! スカーレット!わかった!わかったから落ち着いて…! 何もわかってないなんてそんな…ン゛ム゛ッーーー!?………… っはぁ!そうだ鍵!せ、せめて鍵を…あっ、ああ〜〜〜っ! いやぁ〜〜〜〜っ!?? ――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――― ここ数日、アタシはトレーナーと会っていなかった。 別に襲った後の気まずさからとかではなくて、単純にトレーナーが出張に行っているから。 年に一度の行事らしく、トレセンで働くトレーナーはみんな留守にしている。 …ま、そもそも喰った喰われたで気まずくなるようなステップはとっくに過ぎてるわけ。 なんてったってトレーナーの1番のオンナなんだもの、アタシ。 …とはいえ、それを享受するだけじゃダメよね… トレーナーはアタシの1番のオトコなんだから、アタシの気持ちもきちんと伝えなきゃ。 歳下だからって甘えてたらダメよ。1番どうし、対等な付き合いをしなきゃね! そうと決まれば、やらなきゃいけないことはたくさんあるわね。 トレーナーがいない期間のトレーニングは軽くするように告知が出てるし、時間は十分あるわ。 なんだかんだトレーナーには今まで甘えてばかり。ここできちんと恩返しをしないとね! トレーナー!おかえりなさい!出張お疲れ様。 さ、上着と荷物は持つから貸してちょうだい。ご飯作ったから、一緒に食べましょ! …何よ。ぽかんとしちゃって。 外泊届は出して来たし、部屋に入るのにもきちんと許可は取って来たわ。 …あのね?今までアンタに甘えてた分、ちょっとでもお返ししなくちゃって思ったの。 それでね、アタシにできることはなんだろうって考えて…美味しいもの作って出迎えてあげることくらいはできるかしらって… レシピはママに教わったから、味には自信あるの。でも、よく考えたらアンタの好きなものとか、何も知らないなって…だから… 「嬉しいよスカーレット。ほかに言葉が出ないくらい…本当に嬉しい。」 「俺たちパートナーだろ。だから…2人で1番を目指そうよ。 1人で抱え込まないで、2人で支え合って…お互いに1番でいられるようにさ。」 …そうね、アタシたちパートナーなんだもの。 らしくなかったわ、こんなことでウジウジするなんて。 …アタシにはこんなに頼りになる、1番のヒトがついてるっていうのにね。 さ!冷める前にご飯を食べましょうよ!ほっぺたが落ちて無くなっても知らないんだから! -------------- あの、スカーレット?流石にちょっと恥ずかしい… あ、あ〜ん…うん、とってもウマいよ!ただ、その… そんなに見つめられると食べにくいっていうか… ほ、ほら!スカーレットも食べよう!ほら、あーんして! ・・・ よし…作戦No1は無事に成功ね。No2の実行に移るわよ。 タキオンさんにもらったこのアロマを焚いて…と。うん、いい香り。 疲労回復効果があるとかで使ってみたかったんだけど、寮だとウオッカがうるさいものね。美味しいご飯とこれで、トレーナーにはきっちり疲れを癒してもらって、また頑張ってもらわなきゃね… 「いや〜…勉強にはなったけど、結構大変だったよ。タキオンのトレーナーがさぁ…」 …!?ちょっと!アンタ何脱いでんのよ!アタシがいるんだからちょっと遠慮しな…さいよね… 「着替えようかと思って…ごめんごめん。自分の部屋だからかな?ちょっと気が抜けちゃって。 …スカーレット?スカーレットさん?」 瞬間、アタシの目はトレーナーの躰に釘付け。 細めかと思いきや意外とがっちりした体つき、筋肉。食後の赤みさした白い肌。 そして…アタシがつけたであろう無数の痕。こんなにたくさん、アイツのこと食べたんだ。アタシ。 ふらりと近寄って、痕をひとつひとつ指先でなぞる。 そうして、いつつけた痕なのかを思い出す。これは最初の時。これは2回目。これは3回目。 興奮がフラッシュバックする。目の前の男の善がり顔が蘇る。 もっとカワイイ顔が見たい。もっとアタシの物にしたい。もっとコイツを貪りたい。 お腹はいっぱいのはずなのに、腹が減ったと本能が叫ぶ。呼吸が浅くなる。 指先に、すぐ目の前に、何日かぶりに愛しい男の体温を感じる。これが欲しい。 身体は熱さと反比例する様に、頭は驚くほど冷えていた。 …先に謝っておくわね、トレーナー。ごめんなさい。今日はアタシが悪いわ。 めちゃくちゃにするから。 ----------- ごめんなさいって何が…あいたぁ! え、俺何かした!?スカーレット!?目がマジじゃない?!あっ… ウワーーーーーーーーッ!?!!!! ――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――― アタシがトレーナーのことをいつ好きになったのかはとりあえず置いといて… トレーナーはいつからアタシのこと好きなのかしら。気になるわ。 アタシとトレーナーの初対面の印象って、正直最悪だと思うのよ。 猫被ってるし、いちいちキツい言い方しちゃうし、どう贔屓目に見ても頑固だし。 そこを超えてアタシの担当になって、どうしてアタシのこと好きになってくれたのかしら。 ウオッカに負けた自分の不甲斐なさを棚に上げて、はじめて会ったアイツに八つ当たりして、遠ざけようとして… それでもアタシを支えたいって、アタシの1番のトレーナーになるってアイツは食い下がって…それからずっと… な、なんだか最初からとんでもないこと言われてる気がするわ!ほとんど愛の告白じゃないこんなの! この段階で「あっ好きになるな…しかも歯止め効かないな」って予想できるわけないと思うのよ。 そこから3年間、あの無自覚誘い受けクソカワトレーナーにじっくりコトコト煮込まれた乙女心に爆発するなって方がどだい無理じゃない? 性別が逆でも同じことになると断言できるわ。アタシがウマ娘で良かったわね…喰われる絵面がいくらかマイルドで済むもの。 …話が逸れたわね。 トレーニングが済んだら、トレーナーに聞いてみようかしら。 もっとも?あの無自覚誘い受けクソカワアタシの1番トレーナーのことだから、当たり前みたいな顔して恥ずかしい返答するんでしょうけど? ここんとこ連続して気持ち狂わされちゃってるんだもの。流石に慣れたわ。 ちょっとやそっとの発言で、今のダイワスカーレットを止められると思わ 「いつから…うーん、ちょっとわからないなぁ…」 「最初に会った時から、スカーレットのことがずっと頭から離れなくて。 君のことを支えたい。自分の全てでもって君を1番にしたいって思ってここまで来て…。 …そうか。多分、一目惚れだったんだろうね。最初から好きだったんだから、分かるわけないよなぁ…」 …そういうとこよ。ホントそういうところよアンタ。冗談じゃないわ。 あっさりアタシの予想の範疇超えてくるのやめてくれないかしら。問題発言もいいところよ。 相変わらず完璧ね。狼の前で全裸ステップする兎のムーブ取らせたらアンタの右に出る男はいないと思うわよ。 ていうか、どんだけ恥ずかしいこと言ってるかわかってる?アタシまだ学生よ? 覚悟があっていってんのよね?そうよね?そう取るわよ。そう取ったから。 アンタが覚悟見せてるのに、アタシが覚悟見せないのは対等じゃないわ。そうよね? じゃあしょうがないから、アンタを婿に取る女の覚悟ってやつを見せてやろうじゃない。 骨も残さず喰ってやるから、アンタも喰われる覚悟しなさいよね。 -------- な、なんだか恥ずかしいな!こう、改まって言うとさ…はは。 改めついでに、これからもよろしくな、スカーレット。…えっなんの覚悟って ぎゃーーーーーーーっ!?!!!!? ――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――― トレセン学園での生活もなかなかハードよね。 勉強、ダンスレッスン、レースのためのトレーニング、トレーナーの捕食。 なんだかんだとやってこれてはいるけど、優等生は疲れるもの。 ゆっくり休みたいけど、寮はちょっとノロケ聞かせるとウオッカがうるさいし、他所は他の人の目があるから気は抜けない。 消去法で、最適な休憩場所はトレーナー室、あるいはトレーナーの部屋ということになるわね。 休憩中のトレーナーの隣に座って、何も言わずに寄りかかって目を閉じる。 すると決まってトレーナーは困ったみたいに笑ってから、アタシの頭を自分の膝に乗せるの。 アタシたちの間では決まりきったやりとりだけど、こうしているとお互いの気持ちを実感するわ。 アタシはトレーナーを信頼して身体を預ける。トレーナーはアタシを気遣って労る。 この角度から見るトレーナーの顔も、世界でアタシしか知らない景色。 こうしてアタシの顔をじっと見られるのもトレーナーだけ。お互いが1番である証拠。 よく見ると長いまつ毛、赤みを帯びた頬、噛みつきやすい唇。 カレンじゃないけど、よく見るとほんとにカワイイ顔してるのよ。 じっと顔を眺めていると、熱っぽいトレーナーの顔がふいにずいっと近づいてきて、唇に触れた。 しばらくの間のあと、互いの唇が離れて、唾液が橋になって流れた。 …嬉しいけど、急にどうしたのかしら。もっとして欲しいんだけど? 「スカーレット、俺だって男なんだ。カワイイだなんて言われて黙ってられないよ。」 「いつもやられっぱなしじゃないってこと。…いいね?」 …アタシとしたことが、うっかり口に出してたみたい。 なるほど。こうするとそう来るわけね。テンション上がってきたわ。 結局のところウマ娘パワーの問題で主導権はアタシにあるんだけど、それはこの際いいわ。 あっちからその気になってるってのが重要なのよ。猛烈に滾るわね。 普段あんな無自覚ムーブかまして、アタシの前でぴょこぴょこしてる男がよ?顔真っ赤にしてアタシに覆い被さって、目に物見せた気でこんなこと言ってるわけ。これでその気にならなかったら女じゃないわ。 ここで一歩引いでキュン❤ってなっておくのがイイ女なのかもしれないけど、だったらアタシはイイ女じゃなくていいわ。大丈夫、アタシは1番の女だもの。 今までのはアタシの暴走でギリギリ言い訳できても、これは言い逃れのしようもないわよ。 アンタが間違いなく120%悪い。恋が罪になる世の中ならアンタA級戦犯なんだから。 そんな悪いヤツは責任を持ってアタシがキッチリ捕まえておかないといけない。そうよね? そういうわけだから容赦なく喰うわよ。ごちそうさま。 ------- 君の気を引けるのはうれしいけど、カワイイとかってのは男としてさ… …ん?スカーレット…ちょっと身体起こせないんだけど…あっ んッ………………………………………………………………!……!!…………!!!? っぷは!…ちょ、息が…ン゛ム゛ーーーーーーッ゛!??! ――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――― 担当のダイワスカーレットに性的な意味で喰われるようになってから少し経つ。 事に至るたびにスカーレットが少々乱暴なのが気になるところではあるが… それ以外についてはこれまで通り、うまくやっていると思う。俺とスカーレットのやることなのだから当然だが。 勉学と鍛錬そっちのけで事に及んでいるというわけでもなし、ひっきりなしに求められて干からびるということもない。 行為について週に一度とか、そういった取り決めがいるわけでもない。…取り決めがない故に、訳もわからず衝動的に襲われるわけだが。 ウマ娘の肺活量に付き合ってキスするのは死を覚悟する瞬間があるとか、やたらと行為中に噛みつかれるとか… する時は電気を消して欲しいとか、施錠ができてるかの確認はさせて欲しいとか…不満がないわけではないが、些細なものだ。 スカーレットは良い娘だ。彼女が静止を振り切ってまで自分を求めてくれるというのは…男冥利に尽きるというか、愛されているんだなと思う。 …でも電気だけは消させてくれないかなぁ恥ずかしいし…消すとなんでかすごく不満そうな顔するんだよな… ふと時計を見ると、じきにスカーレットが戻って来る頃合いだ。 席を立って牛乳を温め、ココアをいれる。出来上がるタイミングで、予想通りにスカーレットが現れた。 いれたてのホットココアを差し出して、彼女を労う。今日も一日頑張ったな。お疲れ様。 …どうした?俺の首になんかついてる?…大きな傷パッド? ああこれか。君がつけた痕が思ったより目立つから、隠しておこうと思って。 痛むわけじゃないから、そんなに気にしなくても大丈夫だよ。 …別に気になんかしてないよ。億劫だなんて思った事だって今まで一度もない。 それに…君からこんなに痕つけられるくらい好かれてると思ったら…その… これもスカーレットの1番の印なのかな、なんて思ったりしてさ。もっとつけてもらってもいいくらい…なんてね。 …き、気持ち悪かったかな!忘れてくれ!あはは! あ、でももう少し力も位置も加減してもらえると助かる… …スカーレット?ココア飲まないの?もしかしてどこか具合悪いのか!? ちょっと待っててくれ!今すぐ保健室に連ら おわーーーーーーーーーっ!!?!?? --------- この顔ね!?この口なのね!?この唇からあんな言葉が出てくるわけね?!フーッ、フーッ! フーッこのっ、誘い受けの唇!フーッきっちり塞いでやるわ!こら逃げるな!フーッ!! んっ………っ………………………………………ふ………………………………………❤ ふうっ!これで少しは理解…何よその顔は。なんでこんな事になってるかまるで分からないって感じね。 …いいわ。アンタがその気ならこっちも受けて立とうじゃないの。 理解するまで全身むしゃぶり尽くしてやるから観念しなさい…❤