二次元裏@ふたば

画像ファイル名:1623928502218.png-(213619 B)
213619 B21/06/17(木)20:15:02No.814233250そうだねx1 21:15頃消えます
小倉記念を勝利で飾り、次の目的地へと向かうべくプラットフォームで列車を待っているときのことだった。
「あ、預けてたお菓子もらっていい?」
「いいよ、はい」
「さんきゅ、……何か落ちたよ?」
「あっ!それは……」
荷物からお菓子袋を取り出したときに、ひらりと落ちたのは一枚の折り紙。
「へろへろしてるけど…トロフィーかな?」
かわいい趣味してるじゃないですか、となんだか温かい気持ちになる。昔は商店街のおばちゃんによく教わった。
などと考えていると、隠し事の見つかった子供のような顔をしてトレーナーはこう言った。

「ネイチャに、あげようと思って……」

上手くいかなくて、とか捨てるつもりだったとか、そんな言い訳はもう彼女には聞こえていなかった。
このスレは古いので、もうすぐ消えます。
121/06/17(木)20:15:19No.814233340+
よれた、質素な一番の証。
わざわざどこかで買ったのだろう、思い付きでやったに違いない。
ともすればごみと間違えそうなそれは、しかし彼の不器用さをこれ以上なく表している。

(私の、ことを)

こんなに思ってくれているとは知らなかった。思えばこの巡業も彼の提案ではないか。
負けて悔しがる私を、私以上にに心を痛めてくれていたのが彼ではないか。
だから遠回りでも堅実な道を選び、できることはどんなに些細でもやる。
負けて笑う顔を見たくないから。
勝って輝く私を何より誰より望んでいるから。
221/06/17(木)20:15:34No.814233421+
「……うっ、うっく」
「……ネイチャ?」
「はあっ…ぐすっ……ひぐっ、うう……」
「な、なんで……!?ネイチャ!?」
たまらず涙があふれ出る。人目などはばかる余裕はない。
脚に力が入らなくなってへたり込んだ彼女を彼はどうにか慰めようとする。
「ぐうっ……ひっ…ごめ、ごめん…なさぁっ……」

それは彼の信頼への裏切りへの謝罪。弱い自分が弱いまま犯し続けた罪への懺悔。
あらゆる記憶が混じりあって瞼を突く。後悔が心を割き、押し込めて膿となったものを嗚咽に変えて吐く。
ふわふわのおさげをぐしゃぐしゃに振り乱し、涙も鼻水も構わず袖に擦り付ける。

トレーナーは何も言わず、言えない。何が彼女の痛みであるかを知らない。
背中をさするばかりの彼は、いつも以上に自分の無力を憎むほかにすべきことが分からなかった。
321/06/17(木)20:15:49No.814233499+
「……落ち着いたか」
「…ん、ごめんね、トレーナー」
あの後列車に乗るどころではなくなった一行は駆け付けた駅員に事情を話し、ひとまず駅併設のビジネスホテルで一泊することにした。
泣き止むころ、空に橙色の扇以外には何も残っていなかった。

マグカップに紅茶のパックが入ったものをベッドテーブルに置き、二つあるベッドの向かい側に腰掛けた。
泣き腫れ、赤ん坊のようになった顔を俯けて隠す。外では真っ黒な背景にぽつりぽつりと音のみが聞こえていた。

自分が今まで隠してきたこと、トレーナーの存在を盾に快楽を貪ったこと。
巡業の話を聞いて、一番に心配したのが商店街に行けないことだったこと。それほどまでに自分が腐り果てていたこと。
根底にあるのは変わらずあなたへの思いであること。けれど今まではその気持ちにどこか軽薄さがあったこと。
時間がたつにつれて雨が激しくなる。この場の全ての音を、彼は押し黙って受け入れた。
421/06/17(木)20:16:02No.814233614+
「辛かったな」

唯一発された音に彼女の顔が久しぶりに光を浴びた。
憎むでも失望するでもなく、あなたはこんな時まで、私のことしか考えていない。
朱い顔がまたみるみる歪む。彼の胸に飛び込んで、また盛大に泣いた。
シャツに涙と声を吸わされても、やはり彼は黙って彼女の背を撫でる。
外に出せば誰もが鼻をつまむであろう汚れた自分を抱きしめてくれる、こんな彼を思って三度泣いた。
雨が降り止むのと泣きつかれて眠りに落ちるのと、どっちが速かったかは誰にも分からないままである。
521/06/17(木)20:16:13No.814233683+
肌を重ねずに男の胸の中で目覚めるのは初めてだった。寝ぼけ頭にも、そんな清い付き合いが彼と出来て嬉しいと感じることができた。
小倉の始発から、いくつか乗り継いで合宿所に着いたとき出迎えてくれた友人たちは
「「あー!ネイチャがトレーナーとイチャイチャしてるー!」」
なんて騒ぎたてたものだからいつもの調子を取り戻すのに苦労はしなかった。
621/06/17(木)20:16:25No.814233755+
告白と夏合宿を経てからは菊花賞を初め快進撃をつづけ、有馬記念やURAファイナルズといった大舞台で結果を残すことに成功した彼女らはとうとう二人で温泉を楽しむほどの仲になっていた。
彼はというと、実は彼女の告白でかなり心を乱されており、湯煙にしなだれる彼女を相部屋に連れ込みそれはそれは長く激しく交わりあった。
学生の身分に手を出すのはどうかと思うが、むしろ2年半穏やかでない心中でよく耐えきったほうだと感心するべきかもしれない。
彼女は彼女で昔取った杵柄で彼の一物を玩び、それに嫉妬したトレーナーに"折檻"されるのが一つの流れになっていた。このときばかりは肉屋のオヤジに感謝し、それが更に彼を焚きつけることになった。永久機関である。

温泉から帰った彼女らは熟年夫婦も苦笑いするほどに相性が良く、順当に結ばれ沢山子どもに恵まれた。一人目が二人目であったことで彼がまた燃え上がったのは言うまでも無いだろう。
肉屋含む商店街の面々に祝福された時の彼女の笑顔は、今でも居間を飾る一輪として大切に立てられている。
721/06/17(木)20:17:19No.814234085そうだねx1
謎の覆面集団に脅されて書きました
多分これで満足してくれたと思います
821/06/17(木)20:23:46No.814236526そうだねx1
こいつら
うまぴょい
したんだ!
921/06/17(木)20:31:35No.814239469+
書き込みをした人によって削除されました
1021/06/17(木)20:33:00No.814240060+
ありがとうございます
脅した甲斐がありました
ネイチャには最後は幸せになってもらいたいと思っています
1121/06/17(木)20:39:09No.814242573+
最後に幸せになるなら途中はどれだけ落としてもいいんじゃない?
1221/06/17(木)20:42:40No.814243971+
「そうか……そりゃあ良かったじゃないか」
肉屋の二階、普段は繁殖所と化すそこは今やただの居住区画であった。
小倉から帰って荷解きも終わったころ、彼女はそこにまた訪れた。交わるためではなく、対等に向き合うために。
「……うん、だからもうここには来ないと思う」
お肉は変わらず買いにくるけどね、と慌てて付け加える彼女をオヤジは穏やかな目で見ていた。
元々が彼女の暴走で始まった関係なのだから、彼女から卒業してくれるのに勝るものは無いだろう。
名残惜しいと言えば嘘になる。これを逃せばもう二度と十代の女を抱く機会は無いと心の底に確信があった。


だとしても、彼女はやはり、娼婦ではなく娘同然の存在だった。
1321/06/17(木)20:42:55No.814244057+
「すまなかった!本当は最初から止めておくべきだったんだ!」
膝と頭を畳に擦り付け、愚行を詫びる。今さら30字にも足らぬ謝罪で消える傷をつけたわけでは無いことは分かっていた。
「いいよ今更、トレーナーさんもあんまり気にしてなさそうだったし」
これは嘘であるのは先に述べたとおりである。
1421/06/17(木)20:43:18No.814244209+
「すまなかった!本当は最初から止めておくべきだったんだ!」
膝と頭を畳に擦り付け、愚行を詫びる。今さら30字にも足らぬ謝罪で消える傷をつけたわけでは無いことは分かっていた。
「いいよ今更、トレーナーさんもあんまり気にしてなさそうだったし」
これは嘘であるのは先に述べたとおりである。

しかし彼女にも怒りや憎しみは無かった。むしろ迷惑をかけたのはこちらだと謝りたいくらいだった。
しかし、言葉以上に渡せるものは無く、せめて、彼が今後も肉を売れるように口をつぐむくらいのことしかできない。


「じゃあ、言うべきことは言ったよね。あ、肉料理はまた習いにくるかも」
玄関で爪先をたたきつけながら、背中越しに軽口をたたく。
それを黙って見送る、いつもの光景の最期。
「ああ、気をつけてな」

夕陽を背に去る少女の背中に手を振りながら、初めてかけられた一言を噛みしめ、肉屋のオヤジは本業に戻るのだった。
1521/06/17(木)20:43:43No.814244390そうだねx1
「それじゃあ、またね」
1621/06/17(木)20:50:55No.814247382そうだねx2
長くなったので序盤が削ってあります
完全版 fu90366.txt
1721/06/17(木)20:53:09No.814248251そうだねx2
fu90372.txt
fu90373.txt
fu90374.txt

連作なので前作前々作も貼っておきます
2と3番目は1スレにまとめて上げたものです
1821/06/17(木)20:57:59No.814250286そうだねx1
良かった…ハッピーエンドに終わって良かった…脳が少し回復したよありがとう…
1921/06/17(木)20:59:35No.814251039そうだねx1
良い文章だった
とっても好き
2021/06/17(木)21:01:36No.814252023そうだねx1
よくやった
えらいぞ
コロッケをやろう
2121/06/17(木)21:01:49No.814252133+
実は誰にも気づかれない程度にスレ画を少しいじってあります
こっちの方が純正に近いですが…
2221/06/17(木)21:03:17No.814252873そうだねx1
最初見た時は呆然としたけど最後ハッピーエンドならいいんじゃないかな…
2321/06/17(木)21:06:14No.814254303+
トレーナーのためって建前なくなって相性最高な体だけの関係続けるエンドじゃないのか…
2421/06/17(木)21:08:29No.814255401+
目のハイライトが復活してる...
2521/06/17(木)21:11:35No.814256818+
まあ若いうちは色々あるよね…
最後にこのラオウの横に居ればいいよ
…もっと脳を破壊してもいいよ?
2621/06/17(木)21:12:11No.814257105そうだねx1
>…もっと脳を破壊してもいいよ?
やめ…やめて…


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