きたか…

「いやマジで一人で泳いでて溺れたんだなぁ、ってよ。もしかして歳かぁオヤジ？」
「誰が歳だ、しばくぞ」

こっちが病室で寝込んでいるからか、調子に乗ったフェスタを睨みつける。
ビビッて小さくなるくらいなら、余計な事を言うんじゃねぇ。

ちらりと視線を横に向ければ、オルフェとゴルシが速攻で目を背けやがった。
こいつら、普段の恨みを晴らす気でいやがったな。
どっちが上か分からせる必要があるかも知れねぇなぁ？

「あ、あーっ！　ドリジャの奴がオジキと合流したってきたっス」
「おー、そうかよ」

そいつは朗報だが、オルフェは許さねぇ。
まぁドリジャ達には手間かけさせたし、何か礼はしなきゃいけねぇな。

その前に部屋の全員に分からせるべく、指を鳴らす。
と、急にゴルシがマジ顔で振り返った。チッ、やっぱり勘が良い奴だ。

「なぁオヤジ……その、マジで事故、なんだよな？」
「あぁん？　テメェ、オレが下手こいたのがそんなに面白ぇか？」
「いや……そういうことじゃなくて」

スッとぼけてやると、ゴルシは言い難そうに口をまごつかせた。
相変わらず変なとこで知恵が回る。

口封じのために飛び掛かる寸前、病室のドアがノックされる。
気を削がれて目をやれば、もうオルフェが扉を開けてやがった。
……いや違うな。さてはあいつ、一人で逃げる気だったな。

が、目論見は外れ、部屋の外からどんどこと客が入って来る。

「リョテイさん、お見舞いに来ました！　これ、お母ちゃんが送ってくれたカボチャです」
「うわー、足が攣って溺れたって本当だったんですね。あ、水難除守差し上げましょうか？」
「スぺにフクかよ……」

言いたい事を言いやがる、騒がしいったらありゃしねぇ。
少々辟易しながら、更に二人の奥に視線を向けた。
古い馴染みだ、組み合わせで客がもう一人いるのは分かる。
最後に入ってきたのは、栗色の髪をたなびかせるウマ娘。

「よぉお前も来てくれたのかよ、スズカ」
「入院したって聞いた時はビックリしたわ。トプロは笑ってたけど」

あいつは退院後にゼッテー〆る、憶えてろよ。

ギャイギャイ騒ぐスぺとフクを尻目に、スズカが傍に立った。

「それで攣った足は大丈夫なの？　走れるのよね？」
「――――当たり前だろ。今日の入院も念の為、ただの検査だ」

心配げに脚を見るスズカの様子に、嘘は感じられなかった。
本心からオレの容体を気遣ってくれている……本当に良い奴だよ。

しかし分の悪い賭けだと思っていたが、どうやらオレは勝てたらしい。

「で、お前らは何をぼさーっと立ってんだ」
「けどオヤジ、その……いいのか？」
「客に茶の一つも出さねぇ方が悪ぃだろうが」

スズカの登場に色めき立つフェスタ達にガンを飛ばす。

慌てた様子で椅子と茶を用意する奴らを眺め、内心で安堵した。

この場の誰もが、昨日あった事を知っちゃいない。

ゴルシみたいに薄々何かを感じ取っていても、真実には程遠い。
つまりトレちゃんは、オレとの約束を最優先してくれた。

――――誰にも、スズカやゴルシにさえ口を割らなかった。

昨日の夜、オレが頼んだのは口裏合わせ。

これ以上何も聞かず、ただ足を攣って溺れた事にして欲しい。
戸惑い何か言いたそうだったけど、結局は飲み込んでくれた。

勝負服は洗濯機にブチ込み、沈んだ蹄鉄は水を抜いて回収したらしい。
メチャ怒られたと言ってたので、後でトレちゃんをたっぷり慰めてやろう。

だが一番重要なのは、アリバイなんかじゃあない。

スズカの奴に少しでも真実を匂わせないかどうか。

オレとトレちゃんの関係を測る試金石。
結果として『今の恋人』のスズカは何も知らない。
少なくともオレとトレちゃんの間には、まだ強い絆がある。

呑気に茶を啜っていたスぺが、不思議そうに首を傾げた。

「リョテイさん、なんだか上機嫌ですね」
「まぁな、人の縁に恵まれたとしみじみ思ってよ」
「えっ？！　明日はもしや雨なのでしょうか？！」

どういう意味だとフクの頭を絞めながら、ちらりとスズカを盗み見る。

あぁマジで感謝してるんだぜ？
お前のおかげで、ようやく自分の気持ちを自覚してゲート試験に合格できた。
そして先着されて、恋人って賞を捕られたのも理解した。

――――だが、それがどうした？　恋はダービー？　バァカ。

オレ達ウマ娘は死ぬか、勝負から引退するまでレース漬けだ。

ダービーを失ったのは手痛い、そいつは認める。
だけど、これから続く何十戦ものうちの一つ、許容範囲だ。

（まずは一敗、そいつはくれてやるが――――テメェの背中と影は捉えた）

込み上げてくる感情に肩が震え、にんまりと笑みが深まる。
ふんぎゃらと騒ぐフク達も、息を呑んで怯える可愛い舎弟共もどうでもいい。

とことんまでやってやるさ。

先頭を行くお前の脚が尽き、骨が折れ、斃れ伏すまで追い回してやる。
誰を本気にさせたのか、今度はオレが教えてやるぜ、なぁスズカちゃんよぉ。

と、また病室の扉が遠慮を感じさせず、勢いよくスライドした。
まぁ足音で誰が来たのかは分かっていたが。

「リョテーおかゆが出来た、って人増えたな」
「そいつらは気にすんなトレちゃん。それよりあーんしてくれ、あーん」
「「「「「「えっ！？」」」」」」

目を丸くし何か言いたげな奴らを、視線で黙らせる。
扉の前で困った様子のトレちゃんを手招きし、腕を引き寄せた。

「んだよお前ら。オレが飯食うのを見たいのか」
「いえ、そういう訳じゃないけど……」

距離が近いんじゃないかとでも言いたげなスズカの視線を無視した。
慌てるトレちゃんを腕組みで黙らせる。さぁ第二ラウンドと行こうか。

「ちょ、ちょっとリョテイ。近い近い！」
「うっせぇ。これでも食らえ」

まだもごもご言うトレちゃんの口に、おかゆを突っ込んで静かにさせる。

スズカは脳味噌の走りバカって中身が漏れなきゃ美人だ。
オレのトレちゃんも顔は、まぁ、及第点だろう。性格も悪くない。

だから惹かれ合い、結ばれるのも分からなくはない。

無論オレが頼み込めば、トレちゃんはスズカと別れてくれるだろう。
が、それをしてスッキリするのはオレだけだ。
きっと影でこいつはきっと心を痛める。そういう奴だって知ってる。

フクキタルじゃないが、オレもトレちゃんの不幸を望んでる訳じゃねぇ。
だから今はスズカとの火遊びも認めてやる。

けど最後はオレの隣に引っ張り上げる、必ず。

キンイロリョテイの側こそが、最も幸せになれる場所なんだと。

匙を渡しながら、トレちゃんの顔を眺める。
今までこいつから与えて貰い、引っ張り上げてくれたように。
いや、それ以上の想いでオレの気持ちに沈めてやる。

「ほれ、次はオレの番だぞ。あーん」
「まぁリョテイが望むならいいけど……」

衆人環視の下で、差し出されたおかゆを口にした。
数日ぶりの食事が、身体の内を満たす。

一歩一歩、やっていこう。すぐに遅れは取り戻すさ。
運命も心も思いのままにならない、全ては出たとこ勝負。
それでも諦めるのはキンイロリョテイ様の流儀じゃねぇ。

「トレちゃん」
「ん？」
「いつもありがとな」

スズカ達が一斉に席を立ち飛び退いた、トレちゃんすら目を丸くしてる。
驚きすぎだろうがテメェら……けど、まぁいいさ。

鼻息を吐いて、眉をひそめるに留める。
まず差し当たっては、照れずに素直になる処から。

今までトレちゃんが想ってくれた以上に想いを返そう。
間違っても、こいつの手を離したりしないように。

窓の外に視線を向ける。空には何処までも澄み渡る蒼穹が。
その中を鳥が力強く羽ばたき、何処までも遠くへと飛翔していった。

　
　
　・　・　⏰　・　・
　
　

あまーい！

「ところでなんでオレの居場所が分かったんだよ」

この屋内プールに来るなんて証拠は残してないし、GPSだって切っておいた。
誰にも、それこそゴルシの奴にさえ、気付かれなかったのに。

「マンハッタンカフェが教えてくれたんだよ、ここに居るから急げって」

なんであいつが？　何処かで見られてたのか？　そんな筈ねぇんだが。
首を傾げると、トレちゃんが思い出したように付け加える。

「あと『あの間抜けをよろしく』って言われたんだけど、知り合い？」
「ほとんど喋った事もねぇ、と思う」

意味が分からないが、誰かがすぐ傍でせせら笑ってる気がして震える。
悪寒に後押しされるまま、オレは更にトレちゃんへと身を寄せた。

一人逃げるオルフェかわいい

三女神がやれと言った、遅くなった
出会い編からラストランまで書きたいが、適性がないので失礼する

それマンカフェじゃない…

完走おめでとう…

それSSの親父では？

マンハッタンカフェ サンデーサイレンス 似てる

おい待てェ失礼するんじゃねェ
俺はこの後どんなオチが待ってるのかハラハラしてたら綺麗に終わってすごい満足したありがとうって言わないとだろうがァ

お疲れ様
お前はすげえよ…

あれスズカさんとは結局付き合ってるのトレピッピ？

いい幻覚だったぜ

出会い編読みたい！

>あれスズカさんとは結局付き合ってるのトレピッピ？
前回の反応的にグレーだけどだとするとリョテイが見たものは一体…

もし可能ならtxtで欲しい…

おい待てェ
12001/12000以上になってもいいんだぞ

すみません初めてこのスレに来たものですが過去スレはどちらにありますでしょうか？

>それマンカフェじゃない…
実は登場ウマ娘のトップバッターがマンカフェじゃない人

第一話でカフェにしては変だなと思ったらやっぱり違ったのか

このトレちゃんなら言いそうなもんだけどなあ
割と謎になってしまった

俺は通りすがりだけど某所で810883748.htmと810331324.htmって検索するといいらしいよ

クソが…あのクソ女…
スピードの向こう側だ先頭の景色だの吠えてた奴が…
公式のスリーサイズ…あれ…かなり盛ってるだろ…
てめぇ相当洗濯板だろ…あばら骨が痛ぇよ…
お前は本当に優秀な奴だった
どんな時でも走る事に一生懸命で…けど時には仲間のこともちゃんと考えて…
オレもお前みたいに、もうちょい真面目になれたらいいな…とか思ってたっけ…
なぁスズカ
今お前がどんな顔してんのか知らねぇが、テメェ本当に泥棒ウマ娘だよ
多分…いもげ史上こんなに悪いＮＴＲした奴はいねぇよ
消さなきゃ…テメェはトレちゃんの隣にいちゃいけねぇ女だ
一体何考えてたんだ？　本当に気持ち悪いよ
ぺったんこの乳をトレちゃんに押し付けてる姿を思い出すだけで…吐き気がしてくんだよ
このデケェおろし金が
オレが今からウイニングライブで大根おろしてやる

ウワーッ！続き！？

チンピラみたいな喋り方しやがって…

確かに平たいけれども
間違いなく平たいけれども
すごい平たいけれども
そこまで言う事ないんじゃないか…

持ってあれかよ

なあリョテイよ
それやると最後最愛の人にアレされるぞ

>あれスズカさんとは結局付き合ってるのトレピッピ？
もし続きを渋とかで書くなら、手前に変更するかな
付き合ってても全く問題ないけど、トレちゃんはお熱って訳でもない

入水リョテイの続きか
そうだよな諦めるのは一番向いてないよなリョテイは
ありがとう続き待ってるぞ

SSだと目つきと口調の悪いマンカフェか…

50回負けても最後に勝てばいいのだ…

>SSだと目つきと口調の悪いマンカフェか…
ヤクザだこれ！

>そこまで言う事ないんじゃないか…
愛しのトレちゃん盗ったんだぞ

>>SSだと目つきと口調の悪いマンカフェか…
>ヤクザだこれ！
本場仕込みのギャングだ目つきが違うぜ

リョテイとスズカさんでトレちゃんサンドイッチ
あると思います

オヤジの親友マックの血がリョテイとベストマッチって運命を感じる

スズカさんがむっとしてるあたり言葉通り付き合ってはいるのか

甘えリョテイさん強すぎるけど同時に怖い

>リョテイとスズカさんでトレちゃんサンドイッチ
>あると思います
そりゃサンドイッチじゃなくて金床と鎚になっちまうだろ

>>リョテイとスズカさんでトレちゃんサンドイッチ
>>あると思います
>そりゃサンドイッチじゃなくて金床と鎚になっちまうだろ
ゴルシのレス

>>>リョテイとスズカさんでトレちゃんサンドイッチ
>>>あると思います
>>そりゃサンドイッチじゃなくて金床と鎚になっちまうだろ
>ゴルシのレス
黙って逃げ出すオルフェ

>>>SSだと目つきと口調の悪いマンカフェか…
>>ヤクザだこれ！
>本場仕込みのギャングだ目つきが違うぜ
黒いけだものとか呼ばれた奴だ
面構えが違う

その場にいたキンイロ組のやる気が一段階下がってそう

>>リョテイとスズカさんでトレちゃんサンドイッチ
>>あると思います
>そりゃサンドイッチじゃなくて金床と鎚になっちまうだろ
トレちゃんが包囲殲滅されてしまう

クラウザーさんみたいなこと言ってた女優のカフェはどう思う？

>その場にいたキンイロ組のやる気が一段階下がってそう
(アタシ達は…いったい何をみせられているんだ…？)

オヤジ気遣うキンイロ組好き

ゴルシが一番オヤジ気遣ってるの解釈一致

リョテイとスズカさんとフクとスペちゃんの絡みの安定感よ

カフェ似のウマ娘もリョテイさん愛してるんだろうなぁって思うといい…

マンカフェに似た人はふんぞりかえって脚机に投げ出してウィスキーとか飲んでたりするんでしょうか

>マンカフェに似た人はふんぞりかえって脚机に投げ出してウィスキーとか飲んでたりするんでしょうか
テキーラの可能性もある

そういやリョテイが好かれやすいよう『面倒見と金払いがよいコッソリ人情家』との味付けにしてしまいました
大丈夫だった？

よかったよ…

>そういやリョテイが好かれやすいよう『面倒見と金払いがよいコッソリ人情家』との味付けにしてしまいました
>大丈夫だった？
全然オッケーです

一向に構わん

口も手も出すが金も出すチンピラ
いいですね

最高かよ…

いいだろ？ゴールドだぜ？

>なあリョテイよ
>それやると最後最愛の人にアレされるぞ
そんなの嫌だ！トレちゃんがオレ以外の女とうまぴょいするだなんて…！
俺が死んだあともしばらく…十年以上は引きずってほしい！