そんな私を選んで、一緒に駆け抜けてくれた。…あの時も、天皇賞も一緒に乗り越えることもできた。
だからプロポーズされて、本当に嬉しかったの。恋とは違うかもしれないけど、とっくに好きになっていたの。
その後も走って、走って、やっぱり一緒に走って。気がついたらあの娘を授かって…。

あなたと出会えて、あなたを愛して、本当に良かった。

それと、もう一つ。今日は大事な日になったわ。
…休んでいる間に診てもらってきたの。ええ。…４人目よ。
ふふふっ♡今度は男の子かしら？三人揃ってウマ娘だったもの。そろそろじゃないかしら。

あの子達や、この子には、どんな景色が広がっているのかしらね…。

…ほら、早く食べないと冷めちゃうわよ？

――――ああ、とても。とても幸せな光景。
きっと、私はこうなるのかもしれない。これは未来を示しているかもしれない。

けれど、これは夢。夢でしかないの。
私達はその道程を、その景色を、一緒に見ていないもの。
夢がそのとおりになる、なんてこともなかったもの。
…大丈夫。絆はちゃんと形になっているもの。

だから起きないと。今日もトレーナーさんと一緒に歩くために。


――ああ、いい夢だった。きっといいことがあるわね。今日も頑張りましょう。コレもしまわないと…

…早く、コレを指に嵌める日がくるといいな。

おはようございます。トレーナーさんっ。今日のトレーニングはどうしますか？
？アグネスタキオンさんのラボですか？タイシンシンドローム…？？

あっ…そうそう、今朝、夢を見たんです。
内容は…、えっと…、あれ…？…忘れちゃいました。
…あ、でもきっといい夢だったと思います。

夢といえば、思い出しますね。あの時のこと。あんまり思い出したくないですけど、二人して見てしまったあの夢のこと。

トレーナーさんは見た日から追い詰められたみたいになるし、私は走るのが怖くなって…。
でもその日からシニアの天皇賞に向けてこの足を鍛えはじめて、夢のとおりにはならずに走りきれた。
確かに走れなくなるのも怖かったんですけど、トレーナーさんともう会えなくなるのが怖くて。

まあ、終わったことですね。それより…なんでしたっけ？
そういえば聞いていませんでした。タイシンシンドロームって何ですか？

あの日見た悪夢は、俺と彼女を恐怖のどん底に陥れた。
担当しているサイレンススズカの、レース（場所や規模からして天皇賞か？）の光景。
途中までは素晴らしい走りを見せていた。見た当時よりも洗礼されたフォーム、力強さ、仕上げられた肉体。

第４コーナー。
足はあらぬ方向に曲がり、血が流れ出している。地面に倒れ伏し、身動き一つしない姿。
そんな彼女の姿を、体を動かすこともできずに、遠くから見ていた。

おい、やめろ、待ってくれ、やめてくれ、連れて行かないで、行かないで――。

…あまりに最悪で、耐え難い悪夢だった。
飛び起きた直後、即座にトイレに駆け込み胃の中のものをすべて出した挙げ句、結局一睡もできなかったものだ。

翌日彼女の姿に安堵するとともに明らかに様子がおかしい事に気づく。聞いてみれば、自分が見た夢を彼女は自身の視点で見ていたそう。
その日はトレーニングどころではなくなってしまった。あれほど好きだった芝に立てば、体が震えだす有様だった。

そこからなんとか精神を持ち直し、あの悪夢を現実のものにするまいとする日々が始まった。
学園内にある過去のウマ娘のデータ、特に故障に関するデータを片っ端から探ったり。
体作り、フォーム、クールダウンやマッサージ、シューズの素材や蹄鉄に至るまでありとあらゆる要素を見直し彼女の負担を少しでも減らしたり。
先に脚の弱さを克服していたアグネスタキオンとその担当トレーナーにデータの徹底採取を条件に協力してもらったりと、トレーナーとして行えるあらゆる手を尽くした。

そうして彼女は…見事、栄光の日曜日の主役となったのだった。

その後も彼女はそれはもう楽しそうに駆け抜けている。URAを勝ち抜き、初代王者の一員となった後も、リングを贈った後も。
今日もまた、彼女との一日が始まる。きっとこれからも続いていくであろう日々のうちの１日が。

「おはようございます。トレーナーさんっ。今日のトレーニングはどうしますか？」

「あっ…そうそう、今朝、夢を見たんです――」

ウッスラタイシンで笑う

もともと構想があったのでタイシンシンドロームに便乗させてもらいました
幻覚を出力できたので満足です

世にも奇妙な物語じみてて…好き…

スズカは夢や幻覚とか理解して乗り越えるよね…

サブリミナルタイシン

昨日のスズカさんも自力でシンドロームから抜け出してたな
天然の抗体持ちか

先に経験していたからなのかそれとは別に効かなかったのか

ウワーッ！画像めっちゃガビガビ！