赤子の世話を始めて3ヶ月が経つ。 別に、自分が保育か何かを始めたわけではない。 同期の伝手で、腕の確かなトレーナーの下に共に付くことを選んだら、結果としてそうなったに過ぎない。 同期が子供の世話が得意なことは知ってはいたが、ここまで出来上がっている彼女の手腕は、見事としか言いようがなかった。 まぁ、性癖はどうあれ、トレーナーとしての指示と計画については不満は無い。 私にとってはそれが何よりだ。 不意に、腹の虫が鳴る。昼食から絶食しているのだから仕方ない。 安田記念も近いその日、夕立は、トレーニング中の陽の高いうちから降り出した。 雨が降ろうと、私のトレーニングに変わりはない。重バ場の感触と、トレーニングウェアが水を吸う感覚を覚えておきたい。 その日の練習メニューは半ばを過ぎた。雨は強くなり、流石に後半は室内練習に切り替えるべきかと思い始めた頃。 芝コースの走り込みを終えると、はい、と気まずそうな素振りのトレーナーに上着を渡された。 お互い着替えに気を使ったことなど無かったが、なるほど、己を見返すと、白いトレーニングシャツが雨を吸って、下着が透けていることにはいささか無頓着だった。 と、そこでまた腹の虫が訴える。久々の雨天練習に身が入りすぎてしまったのかもしれない。 トレーナー、お腹が空いた。何か食べに行こう。と上着を被りながら告げると、彼は無言で私の手を掴んだ。 私の手を乱暴に取り、早足で歩きだす。その様子から、只事ではないことは察した。しかし、いくら赤子といえトイレくらいは一人で行けるだろう。 連れて行かれたのは、学園の隅にある倉庫。トレーナーがおもむろにジャージを下ろすと、パンパンに張り詰めた下着が飛び出した。 ここから出るの、あげるからと。息も絶え絶えの声。ああ、気が狂ったのだなと思った。それとも、私が何も知らない子供だとでも思ったのだろうか。 あの母親は、こういうこともしているのか? と問う。数秒の間を待って、頷きが返ってくる。薄々そんな気はしていたが。 ただ、不思議とそこまでの嫌悪感は無かった。それは、私が度を越して従順なだけなのか、ヒトと違う者としての宿命なのかは分からない。 だが憎からず思う者の指示に従っていることは、何であれトレーニングとさして変わらない安心感がある。 私達は、本質的にそういうところがある、と思う。今の状況は、さておき。 下着の隙間からはみ出してくる程、屹立した肉棒を手に取る。流石に、これがどういうものかくらいの知識はある。 痛かったら言ってくれ、と告げてから、ゆっくり皮を下げていく。思いの外抵抗はなく、つるりと先端が露出した。 これで不潔だったらへし折ってやろうかと思ったが、幸いか臭いも薄く、清潔にしているようだ。母親の丁寧な手入れが想像できる。 髪をかき上げ、先端を口に含む。表皮とも違う、口の中とも違う、ぱんと張った粘膜質の感触に、触れてはいけない場所に触れている実感が湧き上がる。 先端から、少しずつ唾液で濡らしていく。鈴口を舌でつついてやると、張った亀頭がさらに固くなるのがわかる。 だが、どうすれば気持ち良いかがわからない。中央出身の子であれば詳しい子がいるかもしれないが。 そんなことを聞きに行く暇は無いので、正直にそれを告げると、棒飴を舐めるように、と助言がかけられた。 飴か。そういえば、合宿の時、夜店で飴を食べたことを思い出す。 仄かに漂うかき氷のシロップと、焼きそばのソースの焦げる匂い。普段は食事制限で甘味は数が限られるが、夜店に立ち寄ったあの時は、買い食いも許された。 長い棒を横にして、全体を少しずつ舐め取らないと、落ちてしまう。 舌を出して、芦毛の少女にみっともないとどやされたことも思い出した。 でも、今はトレーナーと私しかいない。だから、どれだけ下品に舐めても、誰も怒らないだろう。 唇で竿を締めながら、喉を閉じるようにして吸い付いていく。息継ぎをすると、倉庫の埃っぽい臭いが鼻についた。 鈴口の少し下から、唾液以外の水分が混じっていくのを感じる。なるほど。こういうのがいいのだろうか。 口の大きさと肺活量には自信がある。一息置いて、口全体を使って竿を吸うと共に、膨らんできた亀頭を頬の裏で撫でてやる。 声が漏れているのが聞こえた。手応えを感じるが、試行錯誤をするには腹の虫の余裕がいささか足りなかった。 空腹も限界だ。とにかく出してもらおう。 肉棒全体を大きく口に含む。不意に、食堂でBLTのホットサンドを食べた時を思い出した。 張った亀頭は分厚く切られたトマトの皮に思えるし、雁首にまとまった包皮はベーコンの柔らかい脂身に思えたし、竿の表皮は柔らかく焼き上げたパンのように思える。 このまま噛みちぎってしまえたらどれだけ幸せだろう。と、おもむろに頭をタップされる。無意識に歯を立てていたらしい。 すまない、と詫びて本来の仕事に戻る。 唾液を少し溜め、中のものを少しずつ出してあげる意識で小刻みに吸い上げる。水音と空気の混ざった音が周囲に響く。 小刻みな吸い付きを繰り返すと、トレーナーの腰が自然と動いていった。性交を模しているのだから当然か。 ならば出してもらおう。吸い付きを徐々に早めていく。腰の動きが早まるに合わせて、根本から一気に吸い上げると、脈動するように精液が溢れ出た。 それは思っていたよりも随分と飲み辛かった。 苦い、とか美味しい、とかそういうものは無い。無味だ。若干の塩気はあるだろうか。 若干の生臭さはあるが、それは事前知識として持っていたからか、あまり気にならなかった。 それよりも、喉の奥に大量に吐き出されたものを飲み下すのに、使ったことのない喉の筋肉をずいぶんと酷使することになったことには文字通り閉口する。 しおれていく竿を軽くぬぐってやる。残り汁がわずかにティッシュを滲ませ、行為の終わりを告げた。 美味しい? と能天気な声がする。 率直に言うと、飲み辛いことを除けば、悪い気はしなかった。思っていたよりも大量に分泌されたゼリー状の物体は、空気を飲み込んでしまう面もあるだろうが、腹に溜まること間違いない。 そしてきっと、これで悦ぶのなら、私もやぶさかではないのだろう。 屋根を叩く雨は、既に止んでいた。