二次元裏@ふたば

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213166 B21/06/05(土)23:02:51No.810185067そうだねx2 00:03頃消えます
3月、快晴の日曜日。私はトレセン学園内の自室で次のレース出走に向けた対外的な各種調整、手続等の準備を進めていた。担当ウマ娘のサクラバクシンオーが高松宮記念に出走するためである。二連覇がかかる重要なレースだ。

普段はウマ娘たちで活気あふれるトレセン学園校舎は日曜日という事もあってか、廃墟のようにしんと静まり返っている。

トレーナー室の出口に繋がる長い大廊下にも人の気配や物音は全く無い。私がキーボードを叩く際に生まれる微かな音だけがこの部屋の中で断続的に響き続けている。

13時。本日予定していた仕事は全て終えた。…が、体が重い。延々デスクに向かい続けていたためか体の節々が強張っている。…仕事は区切りがついた。少し休もう。

椅子の背もたれに身体全体を預け深い溜息をつく。休息ついでに高松宮記念までに残された日数とそれまでに行う事でも再確認しようと3月のレーススケジュール表を開く。

…なるべく見ないよう意識したつもりだったが、表内に点在する『中長距離重賞レース』の数々にいつしか私の視線は奪われていく。金鯱賞。日経賞。阪神大賞典……大阪杯。
このスレは古いので、もうすぐ消えます。
121/06/05(土)23:03:15No.810185218+
私は取り出したばかりのレーススケジュール表をすぐに折りたたみデスク上へ雑に放り投げ、目を閉じた。

中長距離への未練などとうに無い。あの日、彼女と共に下した決断への後悔は無かった。だが、時折考えてしまう事がある。

『もし私ではなかったら、彼女のキャリアはどうなっていただろうか』を。

彼女の手を取り、私が挫折したあの領域に彼女を導ける者がいたとしたら。

時折空想する『もしも』の世界の中には、常に全力で挑戦を続ける彼女の姿があった。ただ目前の栄光のみを見据え、敢然かつ凛然と苦難に立ち向かう彼女が居た。勝つ事を諦めない彼女が居た。

諦めたのは私だった。可能性として存在していた岐路の扉を閉じる決心をしたのは、私自身だった。

目頭が熱くなり、体が小刻みに震えだす。答えのない妄執に囚われ続ける私は、負け犬のように声を潜め嗚咽することしかできなかった。
221/06/05(土)23:03:35No.810185362+
・・・

本日は日曜日。トレセン学園の校舎は寂しくなるほどひっそりとしており、平穏そのものです!

3時間の特別補習をバクシンし終えた私は、帰宅前に校舎内を見回りしていました。とは云え本日の学園内は見回りの必要が無いほどに模範的な風紀を維持しているように見えます。

ですが、休日と言えど私が訪れたからには一通り校舎内を巡回しましょう!それが学級委員長たる私のツトメですからね!

最上階から階段を降り、下の階の廊下に出ます。左向け左。フム。異常ナシ。右向け右。オヤ?突き当たりのお部屋から明かりが漏れています。

あちらはなんのお部屋だったでしょうか。確か…そうそうトレーナーさんのお部屋ですね。見覚えのある…………

「ちょわ!?私のトレーナーさんのお部屋では!?」

なんということでしょう。電気の消し忘れ?ドロボー?ムム。いずれにしてもこの事態を見過ごす事はできず、私は奥の部屋に向かって歩を進めました。
321/06/05(土)23:03:58No.810185482+
トレーナー室の前に到着。やはり室内には電気が付いていました。…中から物音も聞こえます。私は深呼吸し、勢いよくドアノブを掴もうと体を前のめりにしました。

その瞬間、ちょうど室内から人が出てきたため、ドア前にいた私と中の人物が、ドンっと正面から衝突しました。

「ちょわ−−−−−−−−っっ!?!?」
『うわ−−−−−−−−−ッッ!!!!』
私は恐怖のあまり絶叫しましたがそれ以上に部屋の中の人物も相当に驚いたようでした。私は総毛立つ思いで目の前の人物の姿を凝視します。

…目の前に居た人物は、驚愕の表情で私を見つめるトレーナーさんでした。もう、びっくりさせないでください!トレーナーさん。

………。

……………………。

「…なんでトレーナーさんがいらっしゃるのですか!?」
421/06/05(土)23:04:16No.810185591+
「…なるほど、高松宮記念の準備をされていたのですね!」
お部屋の中でトレーナーさんと並んでソファに座り、淹れたてのお茶をいただきます。ズゾゾ!アツいッ!

「そっちはオフ日に補習・見回りか…大変だな」
「ハイッ!バクシン的スピードで補習は終わりました!あ、見回りは途中ですが!」
「…そうか。お疲れ様」
…横目で隣のトレーナーさんをチラリ。オヤ、トレーナーさん、あまり元気が無いような。

「……お疲れですか?トレーナーさん?」
「………え?あぁ…大丈夫だよ。そうそう…高松宮記念、勝てるといいな…」
ミャクラクも無くトレーナーさんがポツリ。レースの心配をされているのでしょうか?

「ええ!この学級委員長、今年の出走レースは全勝と決めてますッ!年間無敗!共に真・バクシンロードを駆け上がりましょう!!」
「ぜんしょう…」
オヤ。トレーナーさんが目を丸くして固まっています。ムム。
521/06/05(土)23:04:35No.810185699+
「トレーナーさん、もしや…私が負けると思ってらっしゃるのですか?」
私は眉間に皺を寄せ口を一文字にしてズイと顔を押し出します。トレーナーさんをジトッと見つめ、言葉を待ちます。

「…いや、思ってない。…勝てるさ」
トレーナーさんは正面から私の顔を見て言いました。

「バクシンオーは先頭で、最速で、ゴール板に到達する。それを待つのが俺の役目だよな。今までも…これからも」
「ハイッ!私も、応えてみせますともッ!」
嬉しくなった私は、トレーナーさんの腕に抱き付きました。

「私は、トレーナーさんが勝利に導いてくださると信じてますから。…だから、トレーナーさんも私を信じて待っていてくださいね!」
「……うん…全勝、しような……ありがとう…ありがとう」

ん?トレーナーさん声が震えてますが大丈夫ですかトレー…
621/06/05(土)23:04:53No.810185806+
ぐぅ〜〜〜…。
突然、長く、低〜い音がお部屋に鳴り響きました。…私のお腹の音です。

「いやぁ…あはは。お昼、忘れていました」
「…どこか昼ご飯食べにでも行くか」
「トレーナーさんと!よろしいのですかッ!!」
「仕事は片付いたから。じゃ出ようか」
「ハイッ!」
トレーナーさんと久しぶりのお食事です。早く、早く。私もトレーナーさんと一緒になってお部屋の電気を消したり窓を閉めたりとお手伝いをします。

「そういえばトレーナーさんのお部屋、なんだか甘い、心地よいニオイがしますね」
「あぁ、沈丁花だよ」
「ジンチョウゲ。ジンチョウゲ?このお部屋に?」
「窓の真下の植込みに咲いてて、この季節だけ香りが風に乗って部屋まで届くんだよ。…もう、春なんだな」
721/06/05(土)23:05:14No.810185935+
「ええ、春ですッ!私の大好きな桜が咲く美しい季節ですよ!トレーナーさん!今度一緒にお花見に行きましょうね!」
「ああ、行こう」
消灯・窓の戸締まりを終えた私達はお部屋から出ます。トレーナーさんはスーツのポケットから施錠するための鍵を取り出しています。私は隣で待つ間、以前、このお部屋で練習したお手繋ぎの事を思い出していました。

トレーナーさんと手を繋ぐ練習をした、楽しい思い出。素敵な思い出。

ハテ、どうやるんでしたっけ。たしか、指を…。 隣に立つトレーナーさんの左手の指先を、そっと私の右手で包むように掴みました。そうそう、こんな感じ………あッ!

「あわッッ!!」
ほぼ無意識に私はトレーナーさんの指を掴んでいました。私は繋いだ手をすぐにパッと放します。あわわわ、ここは校舎の廊下ではないですか。はぁ、失礼しました………。

でも、手を繋いでみたくもあったような。

瞬間、今度はトレーナーさんが私の手の指先を握りました。そっと、優しく。
821/06/05(土)23:05:38No.810186077+
「ちょわ!?」
「見回りの道順、わからないので…。このまま案内をお願いできますか、学級委員長」
「………!…は、ハイッ!模範的学級委員長の校舎見回りに、ご案内致しますッ!」

ギュっとトレーナーさんの手を握り返し、2人一緒に並び歩き始めます。

誰もいない校舎内を2人で歩いています。何だか夢の中のような光景です。……夢ではないですよね?

手を繋いでいない、空いた片手でトレーナーさんに手を振ります。トレーナーさん、トレーナーさん。トレーナーさんの顔を見上げ呼びかけながら片手をフリフリ。トレーナーさんは、見えてるよと言って、笑いかけてくれます。

なんだか嬉しくなってしまい、私もニッコリとスマイルをお返しいたしました。
921/06/05(土)23:05:59No.810186221そうだねx10
オワリ
糖度の高い元気な委員長が書きたくなったので書きました
1021/06/05(土)23:08:13No.810187163+
風紀を乱しているのでは!?
他に人がいなければいいか
1121/06/05(土)23:08:40No.810187338+
続きものになったので心情とか置かれている状況が独自です
ごめんね
4年目1月 fu62005.txt
4年目2月 fu62007.txt
4年目3月 今回
1221/06/05(土)23:13:21No.810189188そうだねx1
>糖度の高い元気な委員長が書きたくなったので書きました
その調子で「」を糖尿病にしてほしい
1321/06/05(土)23:14:00No.810189446そうだねx3
あっ続きがきてる…嬉しい…
1421/06/05(土)23:19:00No.810191465+
ここの二人お互いを思い合っててしゅきぃ…
1521/06/05(土)23:19:14No.810191560+
>風紀を乱しているのでは!?
学級委員長が新人委員長と見回りしているようです
私の風紀は保たれていますよ
1621/06/05(土)23:19:59No.810191883+
やっぱり車椅子委員長の続きか
もっともっと甘々にしてもいいのよ?
1721/06/05(土)23:29:32No.810195567+
清純な交友の二人であれば手を繋いでも風紀を乱さないんですよ
◆知らなかったのですか?
1821/06/05(土)23:40:49No.810200542+
模範的な関係過ぎて健康的に糖尿になっていく
1921/06/05(土)23:54:34No.810206334+
バクトレが救われていっている…
2021/06/05(土)23:59:50No.810208490+
毎年お花見行って桜餅食べるのが当たり前と思う関係になってそう


1622901771760.png fu62005.txt fu62007.txt