二次元裏@ふたば

画像ファイル名:1622203945288.png-(189087 B)
189087 B21/05/28(金)21:12:25No.807404084そうだねx1 22:12頃消えます
「父ちゃん」
墓前で手を合わせていると、横で同じように手を合わせていた息子が話しかけてきた。
「若い頃の母ちゃんってどんな人だったの?」
今、妻はいない。もう墓参りに飽きたのだろうか、息子は妻の話に興味津々のようだ。
「そうだなあ。母さんは今のお前よりも小さくてな、でも足はそこらのウマ娘に負けないくらい早かったぞ」
このスレは古いので、もうすぐ消えます。
121/05/28(金)21:13:09No.807404498そうだねx1
隣にいる息子は、今年で小学3年生になる。身長は同年代の子たちよりも高くて140cmを超えていた。将来はバスケ選手になるのが夢だそうだ。
息子に何を話してやろうか考えながら、手に持っていた袋から線香や買ってきた果物、それに小瓶に入った日本酒を取り出した。
食べ物も飲み物も、この夏の暑さで全てが温くなっていた。
「父ちゃん、それは何回も聞いたって。その後の話だよ!」
また同じ話かとうんざりとした様子の息子は、早く次の話をさせようと私の袖を引く。
「あれ、そうだったか? じゃあ母さんのライバルだったオグリキャップの話をしよう」
「えーそうだったの!? 母ちゃん、あのオグリキャップのライバルだったの?」
目を輝かせて食いつく息子。
オグリキャップ、かつて妻と鎬を削った最大のライバルにして、妻の親友の1人だ。
彼女は引退後、フードファイター兼グルメリポーターとして名を馳せている。
221/05/28(金)21:13:50No.807404837そうだねx1
彼女のトレーナーだった男とは定期的に連絡を取っている。相変わらず食費は馬鹿にならないそうだが、先日2人目の息子が産まれたとの嬉しい知らせを受けた。送られてきた写真は、オグリキャップが愛おしそうに子を抱く姿だった。その写真を見て、隣にいる息子が産まれた時を思い出した。
あの時は大変だった。元々体の小さい妻が妊娠することは相当に負担のかかるものだと医者からも説明を受けていて、お互いに覚悟はしていた。
私も妻も万全の準備を整えて、この子の出産に望んだ。それでも予想外の事は起きるものだ。あれがきっかけで妻は__
「父ちゃん! それで、オグリキャップと母ちゃんってどんな関係だったの?」
ついつい意識が昔に飛びがちになっている所を息子に軌道修正される。
「母さんとオグリはルームメイトだったんだよ。大食いのオグリに対して母さんは少食で、それで母さんはいつも__」
話を続けようとしたその時、こちらに人影が1人近づいてきた。
321/05/28(金)21:14:26No.807405111そうだねx2
「あんたー水持ってきたでー。ん? 何の話してたんや?」
バケツを片手にやってきたのは私の妻であるタマモクロスだった。
「母ちゃん! オグリキャップのライバルだったって本当!?」
妻を見つけるなり、そばに駆け寄る息子。慌ただしい様子の息子に彼女は苦笑すると、バケツを置いて、墓前に手を合わせた。
「本当や。てか誰から聞いてん? どうせ父ちゃんから聞ぃたんやろ」
そう言って横にいる私にジト目を向ける彼女。私は気まずそうに目を伏せて勝手に話した事を謝った。

結果から述べると、タマは至って無事に息子を産んだ。私も彼女も、相当な長丁場になることを覚悟していたが、出産当日になると息子はすぐに産まれた。拍子抜けした私たちは、息子の誕生を祝うと同時に、今までの準備が取り越し苦労になったことがおかしくて、お互いの顔を見て笑い合った。
「ええよ別に。それよりもどんな話をしたん? …かっこええ話やろうな?」
これはまずい。息子を口止めしようした時はもう遅かった。
421/05/28(金)21:14:57No.807405360そうだねx1
「母ちゃんが俺よりもチビだったのに足が早かったって」
「ちょっそんな言い方は」
慌てて息子が言い放った失言を訂正しようとしたが、時既に遅し。彼女はその単語を聞いて肩を震わせた。
「誰がチビや! いくらあんたでも許さへんで! 」
そう言って現役時代の時のように怒った彼女。妻の前で身長の話は厳禁だ。
右隣にいる息子に助けを求めると、彼は悪戯が成功したことに満足して、妻に詰め寄られる私をにやにやして眺めている。どこでそんな事を覚えてきたんだ。
しばらくタマを宥めていると、彼女は落ち着きを取り戻した。現役時代ならこうはいかなかった。
「はあ…まあええわ。それよりも、ほら掃除始めんで! お爺ちゃんもお婆ちゃんも綺麗にしてやらんとな」
「はーい」
私が水をかけた後を、妻と息子がスポンジで磨いていく。灰色だった墓石が水に濡れて黒く染まった。
521/05/28(金)21:15:31No.807405698+
よかった曇らせじゃない平和な世界だ…
621/05/28(金)21:15:33No.807405719そうだねx18
タマ死んだかと思ったわ!
721/05/28(金)21:16:02No.807406009+
よかった…息子だけ遺して逝っちゃったかと…
821/05/28(金)21:16:03No.807406011そうだねx4
掃除を終えて、すっかり綺麗になったお墓に果物とお酒を供える。線香の束に火をつけて台に置くと、煙が空へ昇っていった。
目をつぶって再び手を合わせる。父さん、母さん、今年も来たよ。息子もここまで無事に成長して、家族3人で幸せな毎日を送っています。それに、今年は家族がもう1人増えるんだ。
そう心の中で報告して、タマのお腹を見る。膨れたお腹は、小さい生命が宿っていることを示していた。
「ん、 何や? ウチの顔になんかついとるか?」
「何でもないよ。ただ、今幸せだなって」
こっちの視線に気づいて、目を開けて私を見てきた彼女に笑顔で答えた。
「何や急に改まって。まあでも、分からんこともないで。この子も無事に産まれてくれるとええけどなあ…」
私の視線の先にあった自分のお腹を撫でて優しい顔を浮かべるタマは、慈愛に満ちていた。
921/05/28(金)21:16:23No.807406189+
タマモクロスを偲んで来たな…
1021/05/28(金)21:16:28No.807406225そうだねx1
「父ちゃんもう帰ろうよー!」
本格的に飽きて、機嫌が悪くなり始めた息子に急かされる。そろそろ潮時だろう。
「そうだな、帰ろうか」
右手に息子、左手にタマの手を取って墓地を後にする。
「せや、明日はウチの弟たちが来るで」
「やったー! お小遣いお小遣い♪」
「弟たちからもらったお小遣いは、母ちゃんがきっちり預かるから安心しぃや」
「えーそんなー…」
肩を落とす息子とそれを見て笑うタマ、二人の体温が手を通して伝わってくる。その温もりは、夏の暑さのように不快なものではなかった。
これが家族。この幸福を守ろう、決して失うことのないように。
また来年も、今度は4人で来るから。
両親の墓を背にして、私はそう誓った。
1121/05/28(金)21:17:38No.807406832そうだねx2
おわり
叙述トリックなるものに挑戦したけど上手くいかなかった
光のトレーナーなのでウマ娘が死んじゃう展開は書けない
期待して開いた人はごめんね
1221/05/28(金)21:17:45No.807406885そうだねx6
たまらん…良いものをありがとう…
1321/05/28(金)21:17:49No.807406909+
ありふれた幸せを享受してるの良い…
1421/05/28(金)21:18:02No.807407010+
ウワーッ!二人目仕込んでるーッ!?
1521/05/28(金)21:21:44No.807408921+
ひぃん…ってなりながら読んでたら幸せの光に包まれてた
1621/05/28(金)21:25:43No.807411063+
タマちゃんはマジでいいカーチャンになるだろうな…
オグリクリークのシナリオどっちでもライバルしつつ要所要所でサポート的立ち回りするし
1721/05/28(金)21:25:46No.807411075そうだねx1
>今、妻はいない。もう墓参りに飽きたのだろうか
ここがヒントだったか死んでたら墓参りに飽きたって表現はしないもんね
1821/05/28(金)21:27:15No.807411817そうだねx7
>>今、妻はいない。もう墓参りに飽きたのだろうか
>ここがヒントだったか死んでたら墓参りに飽きたって表現はしないもんね
たぶんそこ
>もう墓参りに飽きたのだろうか、息子は妻の話に興味津々のようだ。
の区切りでしょ
1921/05/28(金)21:28:07No.807412295+
>>>今、妻はいない。もう墓参りに飽きたのだろうか
>>ここがヒントだったか死んでたら墓参りに飽きたって表現はしないもんね
>たぶんそこ
>>もう墓参りに飽きたのだろうか、息子は妻の話に興味津々のようだ。
>の区切りでしょ
あー飽きたのは息子か読解力がないな
2021/05/28(金)21:32:00No.807414444そうだねx4
「」は句点と句読点が読めないからな…
2121/05/28(金)21:41:53No.807419667そうだねx2
マジなのかネタなのかわからないくらいには、。にキレ出す「」とかたまにいるからな


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